光の中にいるグラヴィオンを見てカリムはつぶやく。
「ソルグラヴィオン? ソルグラヴィオンですって!?」
そのグラヴィオンの名を叫び、カリムは驚きを隠せない。
一方のヴェロッサはソルグラヴィオンを見て叫ぶ。
「闇が集う中、光は必ず射す。輝け、新たなる太陽! 大地に光を、悪には正義を!」
第17話 太陽の炎皇
光の中から現れた「ソルグラヴィオン」は回りにいたゼラバイアを全てなぎ倒した。
ソルグラヴィオンの姿はゴッドグラヴィオンとさほど変わらないが、明らかに違うのは左手にドリルを携えており、二つ肩には砲台がある。
そして何よりもコア部分には左目が破損しているようで、そこからは涙が流れているようだった。その様子を見てスバル達は驚く。
「すごいパワー」
「あれも地上本部の奴なの?」
ティアナはドゥーエに聞くがドゥーエは知らないと言った。
「あの機体、地上本部は愚か教会のデータにもなかったわ」
そのグラヴィオンの姿を見てヴァイスは感激する。
「新型か! ダブル、いやオーグラヴィオンか!?」
ヴァイスとは違ってヴィータは違う反応をする。
「あの機体どこかで……っつ!」
ヴィータに突然頭痛が走る!
「な、なんだよ! 一体!?」
ヴィータは頭を抱え込む。そしてヴィータの頭には走馬燈のように色々な事を思い出す。ヴァイス達と会ったことやなのはと初めて会った事、そしてランビアスにいた時の事も……。
「くそ、思い出したぜ。あれはグランΣ!」
そうソルグラヴィオンのコアにはグランΣを使っているのだ。
「やっと思い出したぞ。あたしはヴォルケンリッター鉄槌の騎士ヴィータだ!」
実はヴィータはグランΣがゼラバイアと戦っていた際にシグナム達とはぐれてしまい、戦闘の影響で記憶喪失になり、運よくヴィータもランビアスを脱出したのだ。
しかしヴィータは今までの事を忘れ、また流れ着いた場所がミッドチルダではなく地球の海鳴市だった。しかしそれをグランΣが思い出させたのだ。
「グランΣ、どうするつもりだ? ヴェロッサ……」
ソルグラヴィオンは着陸して地面に手を付くゴッドグラヴィオンの前に立つ。ゴッドグラヴィオンの損傷は酷く、戦闘続行が不可能なレベルにまで達していた。
グランシグマのコックピットハッチが開き、そこから人が出てくる。その人はパイロットスーツに身を纏いヘルメットもしているため誰だかわからないが、意外にも小柄であった。
そしてその人のパイロットスーツとヘルメットが消滅した。そこから現れたのは薄蒼いドレスのような服を着、青いリボンで金髪ツインテール、そしてフェイトによく似た顔の少女だった。
『フェ……フェイト(さん)(ちゃん)!?』
皆が驚いた。死んだはずのフェイト(?)が目の前にいるのだ。フェイトによく似た少女は大きく手を振って皆に呼びかける。
「皆、大丈夫~~~~~~~?」
「あのあなたは一体?」
「フェイトちゃんによく似てるけど、君は……」
皆の疑問に少女は答えた。
「私はアリシア・テスタロッサ。フェイトのお姉さんだよ」
『お、お姉さん!?』
さらに驚き。フェイトの姉と名乗るアリシアは明らかにフェイトよりも小さい。いや幼い。
フェイトは19歳くらいなのに対し、アリシアはまだ5歳くらいの少女にしか見えないのだ。
「私はお月様からこのソルグラヴィオンに乗ってきたんだよ」
「お月様?」
「でもお姉さんがそんなところに?」
「フェイトと比べてキャラが違うわね」
「まあとりあえず説明するね」
アリシアが説明をした。
「フェイトが死んじゃった時に、フェイトの記憶がお月様にいた私に転送されて、それでヴェロッサが皆がピンチだから帰ってきてって言われたの」
「てことはフェイトさんの記憶を持ってるって事?」
「うん、そうだよ!」
アリシアが元気いっぱいに答えた。
「アリシアちゃん!」
「うん?」
「おかえり」
なのはは涙を流しながら、アリシアにお帰りを言った。
「ただいま、なのは」
その様子はフェイトが生き返ったかのようになのはとフェイトが再会しているかのようだった。
「でも私はフェイトじゃない。けど、フェイトの分も頑張る」
ソルグラヴィオンは地面に手を突くゴッドグラヴィオンの手を持ち、ゴッドグラヴィオンを支える。
「プロトグランディーヴァの力を持つ私がいる限り、グラヴィオンは不滅だよ。エルゴ、フォーーーーム!!」
アリシアが叫ぶと、ソルグラヴィオンは光だし、それは手を繋いでいるゴッドグラヴィオンにも伝わり2機は輝きだし、光の柱が現れる。
その光の柱を外で見ていたヴェロッサはつぶやく。
「搭乗者の精神を増幅させて、エルゴの力を爆発的に解放させる。それがソルグランディーヴァのシステム。システムは搭乗者の脳と双方構成。
アリシアの思いと共鳴したエルゴの力は、物理空間全てに影響を及ぼす『マインドフィールド』が現れ、アリシアの想いが超重神復活になる」
その暖かな光に包まれ、Gシャドウに乗っていたリインが完全に目を覚ました。
「リイン、目が覚めたんだね」
「おかえり、リイン」
「皆さん、ただいまです」
リインの目にも涙が見え、リインは涙を拭う。
「スバル、ソルグラヴィオンの操縦をお願いしたいんだけどいいかな?」
スバルのところにアリシアから通信が入る。
「やっぱり私だけじゃ少し心細くて……」
「スバル、行って。グランカイザーに乗ったことあるのスバルだけだし、ソルグラヴィオンのコアのグランΣに乗れるのも……」
「なのはさん、アリシア……、わかりました!」
スバルは急いでソルグラヴィオンに乗る。
「よーーーーし、いっくぞーーーーーーーー! 超重けーーーーーーーーん!!」
ソルグラヴィオンの胸部分から超重剣を展開させ、超重剣を上空に掲げる。
「ロッサ! あくまで私と戦うというのね!」
カリムは怒り、ゲートゼラバイアのゲートがさらに広がり、またしても大量のゼラバイアが出現する。
「それは『ゴーマ』のエネルギーを使って、無尽蔵にジェノサイドロンを生み出している。いわば、あなた達はこのゴーマそのものを相手にしているのよ。
そんなちっぽけな空間切断で相手にならないわ!」
ゴーマと言うのはカリムが今次元航行空間にいる移動要塞の事である。そして大量のゼラバイアがグラヴィオン達を襲う。
「ソルグラヴィトンアーーーーーーク!!」
ソルグラヴィオンの額から放たれるエネルギーはゴッドグラヴィオンのものを遥かに凌駕し、簡単に現れたゼラバイアを消滅させた。
「な!?」
「いきますよ、なのはさん!」
「OK!」
二つのグラヴィオンは上空に舞い上がり、片手を繋ぎ、もう片方は超重剣を握る。
『うおおおおおおおおおお!! 真! 超重光牙剣!!』
超重剣から伸びるとても長い光の刃が戦闘エリアにいた全てのゼラバイアを倒し、そしてゲートゼラバイアを空間ごと切り裂いた!
「あれが究極のグラヴィオンか?」
「いやあえて言おう、最強のグラヴィオンであると!」
「許さない、許さないわ。ヴェロッサ!!」
カリムの怒りはさらに高まったのだった。
それから数日後、ソルグラヴィオンは分離し各ソルグランディーヴァの試運転が行われていた。
「いっヤッホーーーーーーーーーー!!」
アリシアは自分とティアナの乗る機体を楽しそうに飛ばす。一緒に乗るティアナはアリシアの過激さにどうリアクションを取ればいいのか少しわからない状態だった。
「やっぱり、空を飛ぶっていいよね!?」
「え、ええそうですね……」
アリシアとフェイトが別人であるのはわかっている。しかしアリシアはフェイトに似ているだけでなくフェイトの記憶もあるのだ。それなのにこの無邪気さはまさに年相応の子供だった。
「そう言えばこれなんでしったけ?」
「この子は『Geoジャベリン』だよ」
「ありがとうございます…」
「もっとティアナも楽しんでよ!」
「は、はあ…」
Geoジャベリンが思いっきり飛ぶ様子をドゥーエは眺める。
「あの子達、よくはしゃぐわね」
「ドゥーエ、早く『Geoスティンガー』の試運転をマジメにしてくれ」
「はいはい、そう言えば他の三人は?」
「格納庫までは一緒だったけど……」
ドゥーエは姿を見せないスバル、なのは、リインの事に気付く。三人はと言うと……。
「うわあ、かっこいい」
スバルは「Geoキャリバー」を見てかっこよさを感じる。
「Geoキャリバーだよ」
「で、これは誰が乗るんですか?」
「私です」
リインが手を上げて答えた。
「リインが……」
「そしてなのはには『Geoミラージュ』に乗ってもらいたい」
「なのはさんがGeoミラージュに……」
「搭乗者の意思を力に変える。理論的には次元世界一つを壊す事も作り出すことも出来るソルグラヴィオンはこの世界にとっては諸刃の剣なんだ」
「その力を背負うには私がグランカイザーに乗るのは少しつらいのだから、私はこれに乗ってスバルを支えたいの」
「……、なのはさん。わかりました! だったらなのはさんもサポートお願いします!」
「うん!」
グランカイザーはGeoミラージュを背に付け、空を飛ぶ。その傍らにはGeoキャリバーもいる。
そしてヴェロッサはレジアスを呼び、重大な事を教えた。
「馬鹿な……。いやもはや真実なんだろうな。ヴェロッサ・アコース、もはや現存する地上部隊の戦力ではゼラバイアに対して有効な攻撃を与えるのは不可能と言う事なんだな……。
だったら力を貸して欲しい。それは地上本部の為でも、わしのためでもない。このミッドチルダ、いや全ての次元に住むものの命にためにだ」
レジアスが地上本部に戻った後、ヴェロッサの前には仮面を外したクロノ、いやギンガがいた。
「オリジナルのクロノさんの記憶が教えてくれたわ。ソルグラヴィオンはミッドチルダのための剣じゃない。
あれはあなたが刺し違えてでもお義姉さんを倒すためのもの。それでいいの!?」
ヴェロッサは思わず後ろを振り向く。後ろを向いたままヴェロッサは答えた。
「ただお互いの影を見ながら生きてきたカリムと僕は、未来に向かって羽ばたこうとする若者から見たら、姿をなくした亡霊だね。
僕は今までこの空を守ってきたあの子達の炎を絶やしたくない。僕はグラヴィゴラスを飛ばす! そのためのグランΣだよ」
「! ヴェロッサさん!」
「僕は今更誰にも許してはもらえない罪人。だけど、せめて僕は僕だけのカリム義姉さんを……」
「……」
ヴェロッサの覚悟にギンガはただ黙るだけだった。
それから数分後、ミッドチルダ全域にカリムのホログラムが流れ出す。
「ロッサ、聞いている? 私よ。あなたの義姉のカリム・グラシアよ。遥か故郷の世界を離れて、再び戦う時が来たようね」
「あいつは、カリム!」
そのカリムの姿をヴィータは思い出している。かつて八神はやてと共にお世話になった人だ。
その人がこの世界を滅ぼそうとしているのだ。
「2日後、私のゴーマはもてる全てのエネルギーを使って、地上にいる全ての人類の駆除を始めます!
ロッサ、あなたが守ろうとした人類の生命、既に圧倒的な力でこの私が握っているのよ」
「48時間後に全人類の抹殺だと!? ふざけんじゃねえ!」
ヴィータはカリムに対して怒りを隠さない。
「この世界を憎しみと悲しみ、鮮血と破壊で塗りつぶしてあげるわ。ロッサ。あなたとあなたのグラヴィオンはその生贄になって滅ぶのよ」
「こうなったらいくよ! 皆!」
『了解!』
ソルグランディーヴァは合体してGグラディウスになり、グランカイザーはそれに乗ってカリムのホログラムに攻撃しようとするとホログラムからエネルギー波が現れ、グランカイザー達は吹き飛ばされた。
そして三体のゼラバイアのホログラムが現れた。
「あの三体も立体映像なのか?」
クロノがシャーリー達に尋ねた。
「はい! ただ先ほどまでのものとは出力が桁違いです!」
「滅ぶがいいわ。太陽の力よ!」
「グラヴィゴラス、発進だ!」
ヴェロッサの承認により聖王教会全体が揺れる。
「じ、地震?」
「司令室のメインコンピュータが動力炉と直結」
「東館から強力なエルゴフィールド、クロノさんどうなってるんですか?」
「僕が今言えるのは、総員更なる衝撃に備えて体を固定しろ! 聖王教会は次元空間に向かう!」
聖王教会は激しく揺れ、そして地上から完全に離れ、そして変形しグラヴィゴラスとなった。
「いまあたし達の事太陽って言ってましたよね」
「そうだね。私達が太陽なら私達は沈んでも何度も上る! 皆いくよ!」
「炎皇合神!」
『了解!』
「エルゴ、フォーーーーーーム!!」
なのはが叫び、なのはの乗るGeoミラージュからエルゴフィールドが発生する。
そしてグランカイザーを中心にソルグランディーヴァは配置に付く。
「炎皇、合神!!」
スバルの合神声にあわせ、ソルグランディーヴァはグランカイザーと合神していき、ソルグラヴィオンが姿を現す。
『炎皇合神! ソルグラヴィオン!!』
ソルグラヴィオンに向かって赤と青の体をしたゼラバイアが突撃をかける。
「いくよ、スバル」
「はい!」
ソルグラヴィオンの両肩についてる砲台がゼラバイアに向けて発射体制に入り、ソルグラヴィオンの前には透明なレンズみたいなものが現れる。
「「ソルグラヴィトン、ノヴァ!!」」
肩の砲台と胸から放たれる重力子エネルギーがレンズを通して拡大し、突撃したものだけでなく、後ろにいたゼラバイアやカリムのホログラムも消し飛ばした。
(この光がどうなるかは48時間後にかかっているな)
ヴェロッサはソルグラヴィオンの放った光を見て心の中で思った。
その頃地上本部の格納庫では、ヴァイスがスカリエッティとウーノによってある倉庫に連れられる。そこはレジアスも知らない隠し倉庫だった。
「まさかこんなところがあったなんてな…」
「ここはレジアス中将も知らない倉庫です」
「へえ、中将が知らないってことはとんでもないものが眠ってるってことかい?」
「そういうことだね」
暗い中、スカリエッティとウーノはヴァイスを連れて行き、目的の場所に着くと回りのライトが付く。目の前にあったのは見たこともない機体だった。
その機体はグラヴィオンには似ておらず、グラントルーパーにも似ていない。全身真っ黒で頭部には表情が無かった。
「これは……」
「この機体は『GNフラッグ』」
「『GNフラッグ』?」
「そう、この機体には『GNドライブ』搭載されているのです」
「『GNドライブ』? 今度は何のことだ?」
ちんぷんかんぷんなヴァイスにスカリエッティ達は説明をする。
「原理はよくわからないが、どこかの世界で開発されたものでそれを私が拾ってそれを搭載したこの機体を作ったに過ぎないよ」
「ほう、で、何で俺にこれを?」
「あなたのグラントルーパーはもはや修復は間に合いません。ですのでこちらの機体に乗ってもらいたいのですが……」
「この機体は少々扱いづらくてね。搭乗者の体に負担がかかりやすいからね。これのテストパイロットは皆体をボロボロにされて最悪のものは再起不能だったよ」
「ですが、あなたならこれを使いこなせれると私達はそう考えています」
「まさに眠り姫だ!」
ヴァイスは飛んでもない事を口走った。
「どうします?」
「ふ、決まっているさ」
ヴァイスはGNフラッグを見たときから決めていた。そしてその答えを言うのであった。
最終更新:2008年10月24日 17:19