聖王教会の形をした戦艦「グラヴィゴラス」は次元航行をし、次元空間を移動する。
 全てはゼラバイア、そしてカリムとの決着を付けるため。
 そんな中ヴェロッサはグラヴィゴラスの動力源となっているグランΣを見つめながら、もの思いに耽っていた。

(全てはあの暴走から始まった…。グランカイザーの製作に250年、ゴッドグラヴィオンが倒れた時の為に全てを砕くソルグランディーヴァに製造にさらに200年、
そして、プレシアと出会いアリシアにプロトグランディーヴァの力をつけたまま眠らせ、完全プロトグランディーヴァのフェイトを誕生させるのにさらに50年かかったな……。プレシアには申し訳ない事をしたな…)

 ヴェロッサは心の中で今は亡きプレシア・テスタロッサに謝った。
 プレシア・テスタロッサはヴェロッサがミッドチルダに来て450年ほど経ってしばらくした後に出会った女性。時空管理局の第3研究所の研究長を務めていた。
 プレシアはヴェロッサと出会い、ヴェロッサからゼラバイアの事を聞きそれを真実だと考え、ヴェロッサと共にプロトグランディーヴァの作製をしようとした際、
 プレシアの実娘のアリシア・テスタロッサが実験台になると言い出し、アリシアにプロトグランディーヴァの力をつけ、実験は成功した。
 しかしプレシアはどうしてもアリシアを戦いに巻き込みたくないと言い、ヴェロッサはやむなくアリシアをコールドスリープでグランΣと合神させたソルグラヴィオン(ソルΣグラヴィオン)の中に眠らせ、
 アリシアの代わりと言う形になってしまい、アリシアのクローンであるフェイト・テスタロッサを誕生させた。
 フェイトの誕生にはかなりの年月が経ち、プレシアはフェイトが生まれて間もない頃に病気で亡くなった。
 そしてフェイトは自分がプロトグランディーヴァとして生まれたのを自覚しながらも礼儀正しい少女として育ち、綺麗な女性へとなっていったのだ。

「長かったね……」



 第17話 創世機



「諸君、決戦の時が来た!」

 ミッドチルダの地上本部の会議場ではレジアスが熱心な演説をメディアを通して世界に流していた。

「グラヴィオンは敵の本拠地であるゴーマへと飛び立った! そして我々も遅れを取ってはならない! 命無き機械に屈してはならない!
我らの勇者が戦う場所に希望の勇気を届けるのだ!」
『おおおおおおおお!!!』

 レジアスの言葉に皆が咆哮を上げた。皆わかっているこれで勝てなければミッドチルダはおしまいであると…。そのためにも少しでも自分達の思いをグラヴィオンに伝えたいと皆が考える。
 その演説の様子を隠し倉庫でGNフラッグの操縦訓練をしていたヴァイス達は見ていた。

「ふふ、言ってくれるね、中将殿は……」
「でもさすがに今回はあのおっさんの言うとおりだぜ」
「そうですね、ここで負けたらドクターも研究が出来ません」
「そのためにも頼むよ、ヴァイス陸曹」
「わかってますよ」

 調子のいいヴァイスはさらに熱を入れてGNフラッグの特訓に入った。


 グラヴィゴラス司令室では自分達の遥か先にあるゴーマが映し出されていた。

「何か、怖そうですね……」
「ルキノ、ゴーマの進路予測をやって」
「マリーさん、整備班、各グランディーヴァの整備は終わりましたか?」

 アルトが通信で格納庫にいるマリーに聞く。

「バッチリだよ。システムはもうバッチリにしてあるよ。まあ、今アリシアちゃんも手伝ってもらってるけど……」

 そのアリシアは下の方で整備班の人にソルグランディーヴァのシステムチェックに注意を呼びかけていた。

「1時間事に必ずチェックしてデータを取ってね。それからね……」
(この人5歳くらいにしか見えないけど……)
(私達よりも年上なんですよね……)

 実際のところアリシアはコールドスリープの時間を入れれば50歳以上であるが、コールドスリープで年を取っていないが為に体は5歳のままである。
 しかしフェイトの記憶も持っているので実際は19歳くらいである。しかし19歳だとしても見た目は5歳児。その事に抵抗を感じる整備班の人達だった。


 グラヴィゴラスの窓の特殊フィルターで次元空間から宇宙空間に繋がる場所からミッドチルダの様子を見ていたなのはとリインが話していた。

「まさかこの教会が飛ぶなんて思わなかったですよ」
「私もだよ。それにヴェロッサさんはこれを最後の戦いにするつもりだよ」
「すごい人ですね、ヴェロッサさん。さすがは私のマイスターのお兄さん分だけはあります」
「あの時はごめんね、リイン…」

 なのはが少し悲しそうな顔でリインに謝る。

「いいんですよ、なのはさん。私は一人じゃないってわかったんですから…」
「昔ヴェロッサさんと約束したことがあるの。強くなって世界を守って、戦えない人達の代わりに戦う牙になるって…。それをスバルや他の皆に思い出せた」
「そうですか……。それにしても綺麗な所ですね。ヴェロッサさんがこの世界を選んだのもわかる気がします」

 なのはとリインは穏やかな心でミッドチルダを見る。


 その頃グラヴィゴラス内のエレベーターの中でたまたまドゥーエとクロノが二人きっりになっていた。

「あなた達は私が帰ってくるのをお見通しだったかしら、ギンガ……」

 ドゥーエの言葉にクロノは少し驚いたがすぐに観念したかのように仮面を外す。

「いつわかったの?」

 ギンガがドゥーエに尋ねた。

「正直に言うとあなたがいなくなった時から疑っていたわ。まあピクニックの時クロノからあなたの匂いがした気がして、確信になったのは夜、あなたの部屋の前でね…」
(ああ、あの時か……)

 ギンガはあの時の事を思い出した。あの時は酒のせいで頭が痛くなり思わず仮面を外してぼやいていた時だ。
 ギンガはうかつだった思い、自分の髪をかきむしる。

「あの時たまたまあなたの部屋に通りかがって聞いたの。私も戦闘機人、耳はよくてね」
「まいたわね……」
「ところでなんでスバルには言わなかったの?」
「それは……」

 ギンガはその事を聞かれると黙りこくってしまった。

「まあいいわ、それは戦いが終わったら聞く事にするわ。でもその時は答えてもらうわよ」
「ははは…」

 その時、エレベーターがギンガの目標階に着いた。

「それじゃあね」
「ええ、また」

 ギンガは急いでクロノの仮面をつけて、クロノに戻りエレベーターから降りた。
 エレベーターのドアが閉まりゆく中、ドゥーエを独り言をつぶやく。

「あいからわず、不器用ね」


 ミッドチルダ地上本部ではグラントルーパー部隊が待機しており、ヴィータは外で空を眺める。

「あいつ、何であたしの事を見捨てたんだ…。あたしもはやてやシグナム達と一緒にいたのに……。何で…」
「それには少し訳がある」

 ヴィータがヴェロッサの文句を言っているとヴィータのそばに喋る犬、いやザフィーラがヴィータのそばにいた。

「ザフィーラ」
「捜したぞ、ヴィータ。ヴェロッサやシグナム達も心配しているぞ」
「へ、どうだかな」

 ヴィータはそっけない態度をとる。

「本当にあたしの事を心配してたんならなんであの時なのはと一緒にあたしを連れて行かなかったんだ?」
「……」
「あたしの事、どうでもいいって思ってたんだろ? あいつのいい加減なところは昔と……」
「違うぞ!」

 ヴィータがヴェロッサの悪口を言い終える前にザフィーラが強く否定した。

「奴は断じてそう思っていたわけではない!」
「じゃあ何でなんだよ!? 何であたしも連れていかなかんだ!?」

 気付くとヴィータの目には涙が溜まっていた。そしてザフィーラはヴィータの質問に答えた。

「それはお前が変わっていたからだ」
「え?」

 ヴィータは思いもよらない答えに一瞬戸惑った。

「ヴェロッサが言っていた。お前はランビアスに居た時と海鳴市でなのは達と遊んでいた時と全然違っていた。だからすぐにヴィータだと気付けなかったと……」
「…」
「ランビアスにいた時のお前はヴェロッサは愚か我々守護騎士にも心を開こうとしなかった。主が死んでからはなおさらだ。記憶をなくしていたとは言え、なのは達と一緒にいたことでお前の心は開いていき、明るく元気な少女になっていた。
ヴェロッサはそう言うお前を見たことがなかった」

 ヴィータはザフィーラにその事を指摘されてその時の事を思い出す。
 確かにランビアスにいた時は戦争や色々嫌な事が多かったために心を開こうとしなかった。はやてが自分達の主になった時は心を開いていたが、そのはやてが死んだ事でヴィータは再び心を閉ざした。前以上に。
 しかしなのはと会った事によってその凍りついた哀しい心は溶かされ、心を開くようになった。

「それに見た目や雰囲気も随分変わっていたそうだな」
「う、うるせい」

 ヴィータは思わず頬を赤らめた。

「さてと行くか…」
「健闘を祈ろう」
「ああ」

 ヴィータは地上本部ビルへと戻る。ザフィーラはそのヴィータの後ろ姿を眺める。

「ふ、大きくなったな……うん?」

 ふと空が暗くなったと思い上を見上げると空がいや空間がわずかにねじれているように見えた。
 それは時空航行空間にも影響があった。

「大規模な重力異常を感知」
「ゴーマが活動を始めたようです」

 グラヴィゴラス指令室でその様子が観測されていた。

「外郭部が現在の速度で展開を続けると、20時間後にはミッドチルダを完全に覆いつくすと思われます!」
「ミッドチルダを飲み込むの?」

 ヴェロッサがゴーマに展開されるシステムを説明する。

「再世機、重力子による時空間歪曲で取り込んだ次元世界を原始の世界に作り変えるシステム。つまり世界をリメイクする装置。現存するミッドチルダにいる生命は絶滅する。
例えグラヴィゴラスが落ちても、ミッドチルダを守らなきゃいけない!」
「重力子バリア、最大出力で展開!」

 クロノの指示でグラヴィゴラスの周りに広範囲の重力子バリアが展開され、ゴーマの斜線上つまりミッドチルダへの直線ルートで留まる。

「グラヴィゴラスはゴーマの衝撃からミッドチルダを守るためにここから離れられない。グランナイツの諸君はソルグラヴィオンでゴーマ内部に入ってこれを撃破してくれ」
『了解!』

 グランナイツの皆が自分達の機体に乗り込み、グラヴィゴラスから発進し次元航行空間に飛び出す。
 そしてそのゴーマの前には数時間前にミッドチルダでカリムのホラグラムと一緒に出てきた三体のゼラバイアの本体が現れ攻撃を仕掛ける。

「グランナイツの諸君、炎皇合神せよ!」
「エルゴ、フォーーーーーム!!」

 ヴェロッサの承認となのはの叫びによりGeoミラージュからエルゴフィールドが展開され、グランカイザーを中心に集まる。

「炎皇合神!」

 スバルの掛け声によりグランカイザーの両手にGeoジャベリン、足にはGeoスティンガーとGeoキャリバー、胸にGeoミラージュが合神し、グランカイザーの口にマスクが展開される。

『炎皇合神! ソルグラヴィオン!!』

 ソルグラヴィオンはゴーマへと向かう。しかしその前には三体のゼラバイアが阻む。

「いちいち相手をしてられない」
「こいつらどう見ても時間稼ぎですよね」
「だったら一気に決めて行く! ティア、アリシアいい!?」
「「いいわ(よ)」」

 ティアナとアリシアがスバルと息を合わせる。

「まずは私が行くね。ソルグラヴィトンプレッシャーパーーーンチ!」

 アリシアのいる右手が一体のゼラバイア目掛けて飛んで行き、そのわずかな時間も惜しみなく次の攻撃に入る。

「そしてあたし、ソルグラヴィトンブリンガーーーーー、フレイムアップ!」

 ソルグラヴィオンの左手のドリルが回転をはじめそのドリルには炎が展開される。そしてその回転はソルグラヴィオン自身にもかかりソルグラヴィオンも回転し始める。

「いっくぞーーーーーーーーーー!!」

 炎を纏って回転するソルグラヴィオンはアリシアの後を追うかのように回転してゼラバイア目掛けて飛んでいく。
 ゼラバイアは攻撃を防ごうとするが、ソルグラヴィトンプレッシャーパンチを防ぎきれず穴が開きその穴はソルグラヴィオンによりさらに大きくなり爆発した。
 ソルグラヴィオンが回転を終え、アリシアを回収した途端残ったゼラバイアの一体がソルグラヴィオンの正面から攻撃しソルグラヴィオンはそれをガードするが、動きを止められる。

「時間が無いのに……」

 その時突然他の方向から攻撃が入り、ソルグラヴィオンの前にいたゼラバイアは思わず退く。
 攻撃された方向を見るとそこには4機のグラントルーパーが飛んできていた。

「ここはあたし達に任せて早く行け! ソルグラヴィオン」
「頼んだよ! ヴィータちゃん」

 ソルグラヴィオンは急いでゴーマに向かう。

「くそ、ヴァイスの奴何してんだ?」

 グラントルーパーは5機が揃わないと「ライトニングデトネイター」が使えない。ヴィータはヴァイスがいないことに腹が立ったが今はそんな場合ではない。
 自分達は後方支援だろうがミッドチルダを守るために戦う今はそれだけだ。

「アタックフォーメーションZでいく。いいな!」
「「「了解」」」


 ヴィータ達の足止めのおかげでソルグラヴィオンは何とかゴーマ内部に侵入する事ができた。
 しかし入ってみたらただ広い通路がまっすぐにあるだけで敵も何もない。

「盛大な歓迎があると思ったけど……」
「何も無いですね…」

 ドゥーエとリインは怪しむ。戦いにおいては本拠地に敵の侵入を許してしまったのなら全力で敵で殲滅するはず。それなのに何もしてこないのだ。

「ずっと前に高エネルギー反応があるよ。多分動力炉かな?」

 アリシアが分析していたものを言う。

「それを止めればジェノサイドロンもゴーマも止まるのよね」
「それじゃあ派手にいこうか!」

 スバルが意気込みを入れる。そしてソルグラヴィオンは動力炉のあると思われる場所にたどり着く。そこはただっ広い広間であった。
 そして部屋の上を見てみるとそこには青い炎がたちこまっていた。

「あれだね!」
「ようこそ、我が城ゴーマへ…」

 突然声が聞こえる。その声の主はカリム。青い炎の前にカリムのホログラムが現れた。

「滅びの太陽ソルグラヴィオン、そして私の義弟ヴェロッサ」

 カリムのホログラムと声はグラヴィゴラスの方でも伝わっていた。

「ここまで来なさいヴェロッサ。そんなところにいないで…。決着をつけたいのでしょ? だったら来なさい。ぐずぐずしてたらあなたが愛したその世界を飲み込んでしまうわよ。
汚らしい人類も壊れた自然も全部浄化される。あなたのそんな正義よりも効率がいいわ」

 その言葉にリインが違和感を覚える。

「カリムさん…」
「リイン大丈夫?」

 なのはがリインを気遣う。

「大丈夫です。あれが本当に騎士カリムならリインは止めます!」

 リインは改めてカリムと戦う決意を固める。

「早くしなさいヴェロッサ…」

 カリムのホログラムが消えるとソルグラヴィオンが通ってきた通路の扉が閉ざされた。

「閉じ込められた」

 ティアナがわずかな焦りを見せる。しかしドゥーエはそれを論し、スバルは意気込む。

「どうせここで倒さないといけないなら同じことよ」
「そして絶対勝つ!」


 グラヴィゴラス内部でコアとなっているグランΣがある格納庫ではヴェロッサが立っていた。そうヴェロッサはグランΣで乗り込もうというのだ。そこにクロノとシャッハもやって来た。

「ロッサ、これは罠だ!」
「あの人に乗せられてますよ」
「わかってるよ」

 クロノとシャッハはヴェロッサの目を見る。ヴェロッサの目は覚悟を決めた目だった。

「あなたが持っていたG因子は永久新陳代謝機能に変換されて、今の不死の体を作っているのよ。それに乗るってことは……」
「G因子を復活させて不死の力をなくすことだろ…。わかってるよ」
「それでも行くんだね」
「行かなきゃいけなんだよ。これは僕の戦いだからね」

 ヴェロッサの覚悟をもはや誰にも止める事は出来ない。ヴェロッサはそのままグランΣに乗り込み、起動させる。

「だったら約束しなさい」

 クロノが仮面を外しギンガが喋る。

「必ず戻ってきなさい! でないとシャッハさんが許しませんよ」
「な、何で私なんですか!?」

 ギンガの言葉に隣にいるシャッハは思わず顔を赤くした。

「それはわからない……。グランΣ発進するよ!」

 そしてグランΣはグラヴィゴラスから発進した。グランΣに付いていくかのようにゴッドグラヴィオンのグランディーヴァも一緒に飛んで行く。

「エルゴ、フォーーーーーム!」

 ヴェロッサの掛け声と共にグランΣからエルゴフィールドが展開される。 

「超重合神!」

 ヴェロッサがグランΣのコックピットのパネルを押し、グランディーヴァはグランΣと合神する。

「超重合神、ゴッドΣグラヴィオン!!」

 そこにはグランディーヴァと合神したゴッドΣグラヴィオンの姿があり、その色はゴッドグラヴィオンの青基調とは違いグランΣの黒に合わせての黒基調の姿だった。
 ゴッドΣグラヴィオンはゴーマへと向かう。


 ゴーマ付近の空域ではグラントルーパー隊が戦っていたがヴァイス機がおらず苦戦を強いられており、それぞれの機体の損傷は少し問題があるくらいのものであった。

「グラヴィティ、ラーーーーング!」

 ヴィータの機体がグラヴィティラングを放つが、それは簡単に砕かれゼラバイアの一体がヴィータを襲うとしたがその攻撃は通らない。
 何故ならその攻撃をゴッドΣグラヴィオンが防いだのだから…。ゴッドΣグラヴィオンは攻撃を防ぎきった。

「グラヴィトン、ランサーーーーー!」

 ヴェロッサの声に反応してゴッドΣグラヴィオンの両足の横脛から二つの槍が飛び、ゴッドΣグラヴィオンはそれを掴み一つの槍にした。
 ゼラバイアは小さなエネルギー弾でゴッドΣグラヴィオンを攻撃するが、ゴッドΣグラヴィオンはグラヴィトンランサーを回して盾のようにして攻撃を防ぐ。
 攻撃が止んだ隙を見て一気にゴッドΣグラヴィオンはゼラバイアに斬りかかった。

「グラヴィトン、ブレイク!」

 斬られたゼラバイアにはΣの文字が切り刻まれ、爆散した。

「後一体」

 残りの一体に斬りかかろうとしたその時、突然横から赤いエネルギー弾が飛んで行き、ゼラバイアに命中する。
 全員がその方向を見る。そこにはゴッドΣグラヴィオン以上に黒く、背中から赤い粒子を散布している機体であった。

「会いたかった、会いたかったぞ! グラヴィオン!」

 それはGNフラッグ。乗っているのはヴァイスだ。

『何だあれは!?』

 オットー、ディード、グリフィスやヴィータだけではない。モニターで見ていたレジアスも驚き隣にいるスカリエッティに尋ねた。

「あれはGNフラッグ。ま、極秘開発していた機体ですね。ふふふ」


 ヴァイスはゴッドΣグラヴィオンに向けて通信を入れる。

「会いたかったぞグラヴィオン。だがその前にあれを片付けねばな……」

 GNフラッグは手に持つライフル腰に付け、代わりに腰についていたサーベルを一本取り出す。そのサーベルの色も背中の粒子と同じ真っ赤な色で、GNフラッグはゼラバイアに斬りかかる。
 ゼラバイアはその攻撃を振り下ろされるサーベルを防ごうと腕を前にクロスしてガードする。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 ヴァイスのものすごい叫び、そしてそのサーベルの威力は思いもよらないものでいとも簡単にゼラバイアを一刀両断した。

「す、すごい……」
「何て威力だ……」

 グラントルーパー以上の攻撃力に思わずオットーとディードは驚きの声を洩らした。

「さてとこうやってきちんと会うのは始めてだな」
「ああ、そうだね」

 ヴァイスの興奮状態を受け流すかのようにヴェロッサは普通に答える。

「本当ならこのGNフラッグとどちらが強いかやりたいところだが今はその余裕はない。だから行くがいいさ。だが全てが終わったら一度手合わせ願いたい」
「出来たらね……」

 ヴェロッサはゴーマに行こうとする前にヴィータに声をかける。

「ヴィータ、強く、そして美しくなったね。それじゃあ」

 ゴッドΣグラヴィオンはゴーマへと飛んでいった。その飛んでいく姿をヴィータはただ見守るだけだった。

「ヴェロッサ、死ぬなよ」


 ゴーマ内部では青い炎が床に落ちていき、そこから炎が周りの柱と合体していき、一つの姿へと変わる。
 そこにはグラヴィオンよく似た炎。その名はゼラヴィオン。ゴーマの動力炉してゴーマ最大の守護神である。

「あれは……」
「グラヴィオン!?」

 ゼラヴィオンの姿はグラヴィゴラス司令室でも確認されている。

「な、何あれ!?」
「敵は超高密度のエネルギー集合体の模様」
「そのエネルギー数は次元世界二つ分に相当します」
「セリアスとランビアス、二つの世界の壊滅エネルギーを封じ込めたというのか……」

 クロノが冷静に分析する。
 ゴーマ内部にカリムの声が響き渡る。

「愚かな人達よ。私達の故郷の嘆きの炎。魂の慟哭をその身に受けるがいいわ」

 そしてカリムのいる部屋ではヴェロッサがゴッドΣグラヴィオンで強行突入し、ゴーマ内部に侵入した。
 ヴェロッサはゴッドΣグラヴィオンから降りる。目の前には何と死んだはずの八神はやての姿があった。

「はやて!」

 ヴェロッサはかけだし、はやてを抱きしめようとした瞬間そのはやてにナイフで腹を刺された。

「う……、はやて。すまない……」
「!」

 ナイフで腹を刺されながらもはやてに抱きつく。はやての後ろにはカリムの姿があった。
 しかし自分の知っているカリムとは少し違っていた。左目には機械的な部分が見え、優しそうな顔ではなくその顔は憎しみに満ちた顔をしていた。

「謝罪のつもりかしら?」
「カリム義姉さん…」
「今こそ罪を償う時よ。ロッサ……」


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最終更新:2008年10月29日 21:20