西暦21XX年…
それは、人間と機械が共存する未来の世界。
一人の科学者が、あるロボットの設計思想を参考にして限りなく人間に近い思考能力を持った
本格人型ロボット「レプリロイド」の第1号を生み出したのはそれ等よりも前の事になる。
これを機に、数々のレプリロイドが造られる事になる。

家庭の手伝いから始まり土木作業、建設工事、コンピュータ制御、エネルギーの制御、
海底調査、人間と全く同じ思考能力と人格を持つレプリロイドの活動範囲は
活動圏を徐々に拡大。留まる事知らず。

人間とロボットは、互いを最高のパートナーとして迎え入れ共存の道を模索し始めた。

しかし、人間と同じ考える情報処理能力を持つ故か、代償も伴って行く。
ロボットの社会が広がるにつれて、レプリロイドによる犯罪が発生、
その原因としては、プログラムのエラー、思考回路の故障等が主となっている。
人間に危害を加えるレプリロイド、無人格作業用ロボット、メカニロイド、
そしてこれ等による行為は「イレギュラー」と称される。

レプリロイドを生み出した一人の科学者は、イレギュラーを取り締まる為、
最高の判断能力、戦闘能力を持ち、レプリロイド史上最高傑作と呼ばれる「シグマ」を筆頭に
レプリロイドによる警察機関「イレギュラーハンター」が組織される。
発足後、イレギュラーによる犯罪を速やかに鎮圧する彼等は大いに評価され、
次第に世界の各所に支部を設立、局地戦の特殊部隊も編成。更に戦闘が激化するに伴い、
ハンタータイプのレプリロイド即ち戦闘用レプリロイド開発も進められて行く。

いつしか世間では「レプリロイドの相手はレプリロイド」と言う概念が当たりと化して行った。

しかし、その概念は覆された。
レプリロイドの最高傑作であり、最強のイレギュラーハンターと呼ばれたシグマのイレギュラー化。

『同胞達よ、時は来た!武器を手に取れ!我々レプリロイドの進化の時である!』

高いカリスマ性を持つシグマの言葉に、感化された全体の約半数のイレギュラーハンター達がこれに賛同、
それも大半が組織で屈指の実力者ばかりだった。彼等は人間に取って代わり、世界の指導者として
反乱軍として人類に宣戦を布告したのだ。

その時人類は戦慄した。人間の守護者である筈のレプリロイドが
守るべき対象である自分達に刃を向けたのだから。レプリロイドの社会が本格的に進んだ事により
戦いを忘れつつあった人類は反乱軍に成す素手なんて無かった。

無論、全てのハンターが反乱した訳でない。残されたイレギュラーハンターは
シグマ率いる反乱軍全体をイレギュラー認定。迎え撃つが、優秀なハンターだった実力者が
中核を成す彼等の圧倒的な力を前には余りにも無力だった。

迫り来る刃に人類は恐怖した。もはや自分達には滅び以外の道は存在しないのか?
怯え伏せながらも、人間達はある一つの名前を思い出す。
それはかつて、恐怖から幾度にも渡って世界を救ってきた伝説の英雄の名前。
その名は―――



それから数ヶ月が流れ、とある海上で一つの大規模な空中要塞が爆発を起こし海に沈んだ。
その海上から離れた崖に、先程まで戦っていた一人の戦士が静かにそれを見届けていた。
要塞の爆発の光によって、照らされたその戦士の体はただ冷たく震えていた。

彼もイレギュラーハンターのレプリロイドだった。強い正義感と繊細で心優しい性格を持つ。
しかし、同胞を討つ事に躊躇う程の優しさを持つが故に他のハンター達から軽蔑されていた。
彼は人間達を守る為に自分の所属していた部隊の上司であったシグマ率いる反乱軍、即ち
自分と同じ同胞と傷つきながらも最後まで戦い抜き、首謀者であるシグマと、死闘を繰り広げた末、
これを撃破する。

しかし、戦いを終えた彼の代償は決して安いモノではなかった。
この戦いで多くの仲間が死んでいったからだ。この戦いを引き起こした主導者は自分の上司だった。
反乱軍に加担したハンター達も自分と面識のある者達が多くを占めていたのだ。
そして迎え撃ち、倒れていったハンター達も自分と顔見知りが多かった。
その中には、自分が誰よりも尊敬し、信頼した先輩であり、親友も含まれていた。


戦いを終えた戦士に残ったのは、破壊による虚しさと悲しみしかなかった。
何故、レプリロイド同士が戦わなければならないのか?
「悩む」事ができる故に大きく抱える苦しみ。
優しさを捨てきれぬ一人の戦士はただ崖から、自分の腕に冷たく輝く武器と共に
冷たい夜を照らす暖かい朝日を見つめていた



後に数々の運命が自分を待ち受けている事など彼はまだ知らなかった。
本来出会う筈の無かった物語と出会う事も。



彼の名前はイレギュラーハンター・エックス。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2010年01月12日 16:42