…この物語は聖王のゆりかごに住むナンバーズの日常を描いたものであり、
過度な戦闘や暴力行為、萌えシーンなどは無く、まったりとした気持ちで鑑賞する事をお勧めします。
AM5:00
…此処ゆりかご内に存在するナンバーズが暮らす区画にて、今回の物語の主役である濃いピンクの髪の少女ウェンディが目を覚ます。
ウェンディは一つあくびをすると、ベッドから降り寝巻きである赤いジャージからスーツに着替え、後ろ髪を結い始める。
その最中ウェンディは黄金の鶏の事を思い出し、鶏が入ったカゴへと向かう。
「コッコちゃ~ん、今日は何個産んだッスかぁ?」
現在、黄金の鶏はコッカトライス通称コッコ(名付け親セイン)と名付けられ一日交代でナンバーズが面倒をみている。
そしてコッコは与えられた餌によって金の卵を日に2~6個産むのである。
金の卵とは、見た目が金色で出来ている卵で、食せば色々な能力を一つだけ高めることが出来る卵である。
つまり…ある者は腕力が付き、ある者は脚力が付き、またある者は頭が冴えたりするのだ。
ウェンディはカゴの中にある巣の中を覗くと、巣の中には金の卵が六個産み落とされていた。
「おぉ~!今日は頑張ったッスね!!」
そう言うとコッコの頭を撫でるウェンディ、心なしかコッコは喜んでいるように見える。
だがそれを後目にウェンディは隣に置いてあるザルに金の卵を手早く入れると新たな餌を用意、コッコに別れの挨拶をすると部屋を後にした。
ウェンディはザルを片手に食堂へ向かう最中、トーレとピンクのロングヘヤーにヘッドギアをつけた少女、セッテと出会う。
二人はAM4:00から朝練を行っていたらしく、今から洗浄してくると告げる。
ウェンディは朝からよくやるッス…といった表情で二人を見送ると食堂へと向かった。
AM5:20
ウェンディは食堂に辿り着くと、厨房ではガジェットが朝食の用意を行っていた。
ゆりかご内のガジェットは防衛戦やゆりかごの修復作業、更に艦内の清掃や厨房での調理まで多彩な行動が可能で、
数キロメートルもあるゆりかごにとっては無くてはならない存在となっていた。
ウェンディは朝食を受け取り席に座るなり食べ始めているとチンクとノーヴェが仲良く現れ、
それを皮切りに次々とナンバーズが姿を現し、最後は洗浄しに行っていたトーレとセッテが姿を現す。
しかしその間にもウェンディは食事を済ませ片付けているとトーレに呼び止められる、どうやら金の卵の件のようだ。
AM6:00
メンバーはそれぞれ食事を終えると一つのテーブルに集められる。
テーブルの中央には金の卵が入ったザルが置いてあり、トーレはまず今日の世話係であるウェンディに卵を一つ選ばせる。
コッコの世話係を務めている者は必ず一つ貰える取り決めがあり、ウェンディは慎重に金の卵を選ぶ。
何故ならばどの卵が、どの能力を上げる物なのかは見た目では分からないからである。
金の卵の効果はランダムで与えられた餌により卵の数や効果の具合が変わる為、運的なものが多く含まれている代物なのである。
暫く考えたウェンディは金の卵を一つ手にする、そしてナンバーズは残りの金の卵の分配方法を相談し始める。
此処には居ないウーノとクアットロは自分達は戦闘用では無いからと自ら辞退している為、此処にいる残り八名で分配する事に。
そして金の卵は全部で五個、否応無く三人は口にする事は出来ない。
ではどの様に分配するか議論を始めようとする中、トーレが手を挙げ一つ提案を述べ始める。
「さて…私から提案があるのだが、この後行われる訓練の一つに模擬戦がある、その模擬戦の勝者順に渡すのはどうだろう?」
「異議あり!トーレ姉!!」
トーレの提案に立ち上がり指を指すノーヴェ、その理由とは一昨日の事である。
その日、コッコは二個しか金の卵を産まなかった、そのうちの一つは世話係に、そして残り一つを巡って模擬戦が開始され、結果的に戦闘力に勝るトーレの一人勝ちとなった。
つまりこの提案はトーレがナンバーズの中で一・二を争う実力者であるが故に必ず金の卵を得られる方法である為、平等では無いとノーヴェは熱く主張した。
「つまりこの提案はトーレ姉の陰謀が詰まっているんだ!!」
『なっなんだってー!!』
ノーヴェの台詞に乗っかる形で驚くセインとウェンディ、その中ノーヴェに目を背け舌打ちをするトーレ、どうやら図星のようである。
ならばみんなが納得する方法は無いか模索していると、茶色のロングヘヤーにカチューシャが印象的な少女ディードがゆっくりと手を挙げる。
「あの……くじ引きとかどうです?」
『ソレダ!!!』
ディードの提案に一斉に指を指すナンバーズ、思わぬ行動にビクッ!と反応するディード。
早速メンバーはクジを作り【はずれ】を引いた者が金の卵を食せない事となった。
そしてそれぞれがクジを引き渡り、辺りに緊張が走る中、一斉にクジを開くナンバーズ。
結果、トーレとセインとディエチが貧乏くじを引く事となった。
それぞれが喜び悲しんでいる中、セッテがトーレに金の卵を差し出す。
「トーレお姉様どうぞ」
「いやそれは勝者たるお前の物だ、それに敗者には敗者の矜持がある」
「………覚えておきます」
そのやりとりを聞き、とてもでは無いが自分優勢の提案を出した人物とは思えない…と目を細めて思うウェンディであった。
AM8:30
食事を終えたナンバーズは早速訓練所で訓練を行う事となった。
今回の訓練内容はスリーマンセルによる模擬戦、チンクはそれぞれの組み合わせを読み上げていく。
組み合わせはトーレとセッテとディエチ、オットーとウェンディとディード、最後はチンクとノーヴェとセインである。
チンクが組み合わせを読み終えると其処にはセインの姿は無く、それに気が付いたトーレは怒り心頭といった様子であった。
「セインめ、またサボる気だな!ウェンディ!ひとっ走り行ってセインを捕まえてきてくれ!!」
「えっ?私がッスか?!」
ウェンディの答えに頷くトーレ、ウェンディが持つライディングボードはこの広いゆりかご内では有効な移動手段だと語る。
ウェンディは頬を掻きつつ了承しライディングボードに乗ると、セインを探しに行くのであった。
「…でも何処に居るんッスかね、セイン姉…」
ライディングボードの上であぐらをかき腕を組むウェンディ、取り敢えず何も手掛かりが無い為、自分達が住む区画へと赴く事に決めた。
AM8:45
ウェンディは自分達が住む区画へ辿り着くと、其処ではガジェットが清掃に精を出している姿が見受けられた。
そしてセインの部屋に辿り着くと、部屋の中では叩きを持ったガジェットI型が清掃していた。
いくら何でも清掃中の部屋の中にセインが居るハズがないっと考えたウェンディは、次の移動場所にスカリエッティの施設を選び赴く事にした。
今現在スカリエッティの施設のモニターには、先日行われたガジェットII型の飛行実験の様子が映し出されており、
その実験を腕を組みながら見守るスカリエッティとデータを纏めているウーノがいた。
其処にウェンディがボードを片手にやってくる。
「ドクター、セイン姉見なかったスか?」
「セインかい?見てないな」
それを聞いたウェンディは頬を掻き、他に行きそうな場所は無いか模索していると、スカリエッティが言葉を口にした。
「やれやれ…セインはまた逃げ出したのかい」
「そうなんッスよ!探すコッチの身にもなって欲しいッスよ…」
「…あの子は自分の能力を気に入っていますからね」
突然変異によって得られた能力ディープダイバー、その効果は無機物に潜行し自在に通り抜けることが出来る。
その為セインは活発な子になったのかも知れないとウーノは語った。
ウェンディはセインを見かけたら連絡して欲しいとスカリエッティに告げるとライディングボードに飛び乗りその場を後にする。
その忙しなさはまるで、嵐のような感覚を覚えるスカリエッティであった。
AM10:35
ウェンディは暫くライディングボードを進めていると通路を歩いているルーテシアとゼストの姿を発見し声をかける。
「ルーお嬢、ゼストのオッサン、セイン姉見なかったッスか?」
「…セイン?見ていない」
「マジッスか!参ったなぁ~」
頭を掻きながら困惑するウェンディ、その様子にゼストがレザードの施設に居るのではないのかと進言する。
その言葉に腕を組み考え込むウェンディ、だがレザードの施設にセインが興味を持つ物なんかあったか…
そう言えば先日盗んだ設計図で何かを造っていた事を思い出したウェンディは、ライディングボードを走らせたのであった。
「忙しない奴だ」
「そうね………」
そう一言残しルーテシアは通路を歩き始めていた。
AM11:00
ウェンディはレザードの施設の入り口に辿り着くと其処にはレザードと談話しているセインの姿があった。
その姿を見たウェンディは指を指し叫ぶように呼んだ。
「あぁ!!こんなとこに居たんッスかセイン姉!トーレ姉がカンカンッスよ!」
「ゲッマジで?仕方がないな、それじゃ博士またね」
そう言って手を振るとライディングボードに飛び乗るセイン、
その様子を呆れた表情で見つめているレザードを後目にウェンディは一路訓練所へと進路を取った。
「ところでセイン姉?博士と何話してたんッスか?」
「ん~?あぁ、ベリオンの事~」
聞き慣れない言葉に首を傾げるウェンディに応えるセイン。
ベリオンとはレザードが作成しているゴーレムの名で新たな戦力であると。
「そろそろ計画も最終段階に入るんじゃないかな」
「って事はそろそろ私らの出番ッスね」
セインは頷くと腕が鳴る…そういった表情を表すウェンディにであった。
そして訓練所に戻ったセインはトーレにこっぴどく怒られ、更に機能不全ギリギリまで訓練を受けさせられたのであった。
「し………死ぬかと思った……」
「訓練をサボろうとした罰ッスよ」
PM6:00
訓練を終えたウェンディとセインの二人は一旦部屋へ戻り、
ウェンディはコッコに餌を与え洗面具を手にすると、その足で温水洗浄室・通称風呂場へと向かっていた。
そしてのれんに‘銭湯美人’と書かれた風呂場に辿り着くと、入り口付近をウロウロしているノーヴェと出会す。
二人はノーヴェの行動に首を傾げつつも声を掛けてみる事にした。
「何してるの?ノーヴェ」
「えっ?あぁ、風呂…入ろうと思ってな」
「入ればいいじゃないッスか」
「いや…オットーが先に入っているんだ…」
ノーヴェは顔を赤く染め、ぼそぼそと話し出す。
二人が此処に来る前にノーヴェは風呂に入ろうと向かったところ、オットーが先に入っていった処を目撃したという。
しかしウェンディは首を傾げあっけらかんとした表情で更に問い掛ける。
「いや…それが何なんっスか?」
「えっ?!いや…だってアイツ…男性型だろ?」
そう言うと更に赤く染めるノーヴェ、なぜ自分がこんなに恥ずかしがっているのかは分かっては居ないようである。
それを後目にウェンディはあっけらかんとした表情で話し始める。
「何言ってんスか?オットーは女性型ッスよ?」
「えっ!?そうなのか!?」
驚きの表情を見せるノーヴェに対し腹を抱えて笑うセイン。
どうやらオットーが女性型だという事をノーヴェは教えられては居なかったようだ。
恐らくコレはクアットロのイタズラと考えるウェンディに対し、イヤらしい笑みでノーヴェの肩を抱き話しかけるセイン。
「全く~、一体どんな想像をしてたの~?」
「っ!!!!!」
セインの一言に更に顔を真っ赤に染め上げるノーヴェ、
その反応に面白みを感じたウェンディもまたセインと同様な笑みを浮かべ二人は座り込み話し込む。
「そりゃあ、きっとアレッスよ!」
「うんアレだよね!」
{以下妄想シーン}
…ノーヴェは訓練の汗を流すべく風呂場に向かい、脱衣場にてスーツを脱ぎタオルで前を隠すと扉に手をかける。
すると扉の前にはオットーが一糸纏わぬ姿でその場に佇んでいた、どうやら洗浄も終わり浴室から出ようとしたようである。
しかしノーヴェはオットーの姿に思わず目を背け顔を真っ赤に染める。
「わっ悪い!入っているとは思わなかったんだ」
「別に…僕は気にしないよ」
「オットーが気にしなくてもアタシは気にするんだよ!……なんかついてるし」
そう言うとオットーの体をチラチラと見るノーヴェ、オットーの体には自分には無い明らかに異質なモノが付いていた。
だがオットーは気にもとめず無表情のまま答える。
「問題はない、男性型なら誰もが付いているモノだから」
「そっそうなのか?」
「うん、なんならもっと近くで見てみる?僕は構わないよ」
そう言うと徐々に近づくオットー、そしてノーヴェは―――
{以下妄想シーン終了}
「みたいな!」
「エロい!エロすぎッス!セイン姉!」
「なぁに、ホントにエロいのはノーヴェの頭の中だって!きっと今の私より――」
っといかがわしい妄想に盛り上がる二人、だがその二人の後ろから凄まじい殺気を感じ顔を向ける。
後ろでは先程とは異なった怒りで真っ赤に染まり、金色の目は真っ赤に輝き出し指を鳴らすノーヴェの姿があった。
二人は青ざめながらもノーヴェに謝るが、その声はノーヴェの耳には届かなかった……
風呂場の脱衣場にノーヴェが怒り肩でドガドガと音を立てて現れ、その後ろにはタンコブを一つ拵えた二人がトボトボと力無く現れた。
ノーヴェは怒りのままにスーツを脱ぎ捨てその足で浴室に向かい
二人もまたスーツを脱ぎタオルで前を隠しつつ浴室へと赴いた。
浴室は二人を正面に見て、左に壁に大きな山が描かれた広い浴槽があり、右側にはシャワーとカランが付いた洗い場が連なっている。
そして浴槽にはトーレとセッテが浸かり、脱衣所近くの洗い場ではノーヴェが体を洗っており、奥ではディードがオットーの背中を流していた。
二人は空いている席に座ると体を軽く洗い流し浴槽へと向かう。
そして足からゆっくり浸かっていき頭にタオルを乗せると―――
『ふぃぃぃぃ~~~~……』
二人は今日の疲れを吐き出すように息を吐く、そしてセインは辺りを見渡しているとトーレの胸元に浮く二つのモノに目が向く。
そして自分の前を見るとトーレとは異なり、浮いているモノが見当たらず大きくため息を吐く。
セインの様子を見たトーレはソレを腕で覆い隠すと顔を赤く染め、問い掛けて来る。
「なっなんだ一体!!」
「べっつにぃ~~~」
トーレの問い掛けを後目に今度は隣にいるウェンディを見つめる。
ウェンディもまたトーレ程ではないが、セッテ並のモノを持っていた。
するとまた大きくため息を吐き、顔の下半分を浴槽に沈めブクブクと泡立てる。
何だろう、この敗北感…訓練とは全く異なるこの胸の奥から湧いて出てくる感じ…
別に悔しくないハズ、そう悔しくないハズなんだ…
だいたい、戦闘機人である私達には不要なモノのハズなんだ…
そうだ!トーレ姉さんみたいなモノを持っていれば戦闘に支障をきたすハズ!!
……アレ?トーレ姉ってアレで不便な事ってあったっけ??
…イヤ!ある!絶対あるハズだ!!大体………
そんな事をグルグル考えていると、脱衣場の扉が勢い良く開く。
其処にはこれ見よがしに胸を張りモデル歩きをするクアットロの姿であった。
セインは未だ顔半分を浴槽に浸けているとクアットロと目の合う、するとクアットロはセインの胸元に見ると鼻で笑わる。
その反応にセインは理由も無く腹が立てる、するとウェンディがある計画を思い付いたと寄ってきた。
ウェンディの計画とはクアットロが体を洗っている隙に石鹸を置き、足を滑らせて恥を掻かせるというものである。
ウェンディの計画に親指を立て応えると、セインは早速ディープダイバーを使って潜行し、セインが浸かっていた場所にはタオルだけが浮かんでいた。
セインはペリスコープアイを頼りに使われていない石鹸を探し出し、それをクアットロが座る洗い場の後ろに置く。
そしてセインは元の位置に戻ると頭にはビショビョになったタオルが乗っかっていた。
そしてセインとウェンディはクアットロの無様な姿を観察する為見つめていると、
クアットロが背中の泡を落とす為、わざわざ手間の掛かるカランで洗い流し始めた。
するとセインが置いた石鹸が流した湯によって滑り出しノーヴェの後ろの位置に止まる。
予想外の出来事にセインとウェンディが目を見開いていると、丁度洗い終わっていたノーヴェが席を立ち、一歩踏み出した瞬間―――
「うああっ?!ギャンっ!!」
ノーヴェは物の見事に石鹸を踏み、足を高々と上げ後頭部を強打した。
あまりの痛みにノーヴェがのたうち回っている中、浴槽に浸かっているのに青ざめた顔の二人が静かに後にしようとしていた。
「つぅぅぅぅ!!誰だよ!こんな所に石鹸置いたの!!」
「其処でコソコソしている奴だ」
「なっ?!何でバラすのトーレ姉!!」
先程のお礼とばかりにセインの悪行をバラすトーレ、その事に必死に抗議していると後ろに先程と同様の殺気を感じた二人。
二人はゆっくりと振り向き見上げると其処には先程と同様、目を赤く輝かせ怒りに満ちた表情で指を鳴らし、
更に髪がふわりと逆立ち、こめかみに血管を浮かばせているノーヴェの姿があった……
「フンッ!!」
怒りに満ちた表情で浴室を後にするノーヴェ、そして浴槽には頭にタンコブを二つ拵えたセインとウェンディが浮かんでいた。
二人は頭を押さえつつ起き上がると、二人の間に割るようにクアットロが浴槽に入り、二人の耳元で囁く。
「お馬鹿なセインちゃんにウェンディちゃん…」
『っ!!!!』
クアットロは不敵な笑みを浮かべ奥へ進むと、二人は振り向きクアットロを睨みつけていた。
どうやらクアットロは二人の悪巧みに気が付いていたらしい、だからカランで体を流していたようだ。
二人は体はさっぱりしたものの、気持ちはスッキリしないので食事で解消しようと浴室を出る事にした。
脱衣場ではチンクとディエチが二人と入れ替わる形で浴室へ向かい、
着替え終わったノーヴェがマッサージ機に揺られており、
ディードが髪を乾かしている間にオットーは扇風機の前で「あ゛~~~~~」っと遊んでいた。
セインとウェンディはバスタオルで体を拭き、体に巻くと脱衣場に存在する冷蔵庫へと向かう。
冷蔵庫の中には、コーヒー牛乳やフルーツ牛乳、炭酸飲料やスポーツ飲料が冷やしてあり、
セインはフルーツ牛乳、ウェンディはコーヒー牛乳を手にすると、鏡の前で仁王立ちをし左手を腰に当て一気に飲み干した。
『っっぷはぁぁ~~!』
訓練で多くの汗を掻いた後に、更に浴槽に浸かる事で体内の水分を限界ぎりぎりまで絞り上げたこの体には格別なものがあった。
そして先程まであった胸の奥のもやもやも吹き飛び、髪でも乾かそうとウェンディはドライヤーに手を伸ばした瞬間、扉が勢い良く開く。
「しっかりしろ!傷は浅いぞ!!」
其処からセッテを担いだトーレが飛び出してきた。
どうやら浴槽で二人は我慢比べをしていたらしく、トーレに負けじとセッテは我慢していたのだが、
体内の水分が切れ限界を超えオーバーヒート…いや湯あたりを起こしたらしく、トーレはセッテに目を向けると浴槽で浮かんでいたようなのである。
トーレはオットーが遊んでいた扇風機を奪うとセッテに与え、自分もまた団扇で扇いでいた。
オットーは取られた扇風機をジッと見つめていると、ディードに早く着替えるように促され、いそいそと着替え始める。
そしてウェンディは髪を乾かし終え着替える頃、セインはトーレとともにセッテの面倒見ていた。
するとウェンディが代わりにセッテの面倒を見ている間に着替える事を促すと、二人は着替え始め
それが終えてる頃にはセッテの体調も良くなっていた。
そしてセインとウェンディの二人は風呂場を後にしたのであった。
PM7:25
ウェンディは自室の部屋に置いてあるコッコの面倒を見ているとセインに食堂に誘われ
一緒に向かうと食堂ではガジェットが夕食の支度に追われていた。
二人は食事を受け取り空いている席を探していると、一つのテーブルに目を向ける。
其処にはレザードとスカリエッティが面と向かって座っており、スカリエッティから見て左隣にはウーノ、右隣にはトーレとセッテが食事を行っていた。
そしてレザードから見て右隣には髪を下ろしたクアットロ、左隣にはチンクが座っており、更にチンクの左隣にはノーヴェが座っていた。
スカリエッティとレザードは未だ完成見ぬ“鍵”の製造について食べながら議論しており、“鍵”の製造の難しさを痛感しているようである。
その会話を隣で聞くウーノとクアットロもまた“鍵”について議論を交わしていた。
そしてチンクとトーレはノーヴェとセッテともに戦闘について議論していた。
随分と熱く語っているようで明日の訓練の内容やフォーメーションなどを決めているようである。
二人は適当に空いている席に座ると感想を述べる
「……あの輪には入りたくないッス…」
「んじゃあっちはどう?」
そう言って持っているフォークである方向を指すセイン。
ウェンディはその方向に目を向けると其処にはルーテシアを中心に右隣にゼストそして左隣にアギトが座り、
そして対面席にはオットーを中心に左隣にディードそして右隣にはディエチが食事を行っていた。
ルーテシア、ゼスト、オットー、ディードそしてディエチは一言も喋らず黙々と食事しており、
心なしかアギトはその重苦しい空気に苦しんでいるように見えた。
「アッチもアッチで地獄ッスね……」
「うん、アギト可愛そうに……」
そうセインが考えているとウェンディとアギトと目が合い思わず呼び寄せる。
アギトはウェンディに呼び出されたとルーテシアに告げ、食器を持って二人の場所へ向かう。
「ウッス、アギトも大変ッスね~」
「だぁれも一っ言も喋らないね、あの輪は……」
「あぁ、でもルールーはアレで楽しんでるみたいなんだけどな」
アギトの言葉に目を丸くする二人、アギトの言い分はこうだ。
ルールーは一緒に食べてくれるだけで十分楽しんでいると、そしてゼストもまた同様であると。
そしてオットーとディードもまた同様で、同じ最後発組であるセッテはトーレとよく一緒にいる為、
二人は同じくよくルーテシアといるディエチへと集まり、結果的に似たもの同志が集まったという事になったという。
「って事はオットーとディードもあの状況を楽しんでるのかぁ」
「何となくだけどな……つうかソレはそっちの方がわかんだろ?」
「いや…あの二人ノリが悪いから苦手なんっスよ……」
まぁ、悪い奴じゃないと付け加えるように話すウェンディ。
最後発組の教育はクアットロが行った為か、感情が乏しく機械に近い感じである。
尤もそれを容認したのはレザードのようではあるが…
だがそれでもディエチやルーテシアと仲良くなっているようなので安心していると今度はセインが語った。
「まぁウチらみたいによく喋る奴らは少ないみたいだけどね」
「そうッスね……」
「まぁ……な」
三人は深いため息を吐きつつも食事しながら談話を続けていた。
PM11:00
自室に戻りコッコの世話をしていたウェンディは、明日のコッコの世話の番であるディードの部屋へカゴを持って向かう。
その道中、ノーヴェの部屋から声がするのでウェンディは伺ってみると、
部屋の中では白いタンクトップに黒い短パン姿のノーヴェと、全身縦縞模様のパジャマを着たオットーが格闘ゲームで遊んでいた。
戦況はオットーが優勢で、熱くなっているノーヴェの攻撃を防ぎつつ、冷静なオットーは的確に攻撃を決めていた。
「だぁ!また負けた!!もう一回だ!もう一回勝負!!」
「……良いよ」
そう言って新たなキャラクターで挑むノーヴェ、どうやらカモにされている様子であった。
次にトーレとセッテの部屋を覗いてみると、戦闘スーツが無い事に気が付く、どうやら食事後すぐ訓練を行っているようである。
「二人ともよくやるッスねぇ」
そう言って足を進めるウェンディ、ディエチとセインは既に寝ているらしく、
ディエチはオレンジのジャージ、セインに至っては緑の怪獣の着ぐるみを着ていた。
そして白いジャージ姿のチンクは明日の訓練のメニューを纏めており、
ウェンディの目的であるディードは白いパジャマで明日の用意をしていた。
ウェンディはディードの部屋に入りコッコを渡すと足早に部屋を後にした。
PM11:20
ウェンディは一つあくびをするとベッドに潜り込み眠りについた。
「やはり…風呂は倭国式に限る……」
AM1:15
風呂場の浴槽にはレザードが一人、湯に浸かっていた……
最終更新:2009年05月19日 19:32