時間ははやてがレザードを追い始めた頃、オットーとディードと共闘する事となったヴィータは、
目の前で対峙するカノンに狙いを定めて、シュワルベフリーゲンを八発撃ち抜き牽制、
続いてディードがカノンに迫り、それに合わせるかのようにオットーがレイストームを撃ち抜く。
しかしカノンは左手を向けてバリアを張りシュワルベフリーゲンを弾き、
次に右手をディードに向けて直射砲を撃ち抜くが、オットーが放ったレイストームが障壁となってこれを防御、
その間にディードがカノンの懐に入り、ツインブレイズをクロスさせて振り下ろすが、
カノンのバリアを砕く事が出来ず、むしろ右手から巨大な魔力弾を放たれ地面に叩き付けられるディードであった。
リリカルプロファイル
第三十三話 解放
それを見たオットーは怒りのままレイストームを撃ち放つが、カノンのバリアを砕くところまでには至らなかった。
すると今度はヴィータが迫りカートリッジを二発消費、ギガントフォルムに変え振り抜くと、その衝撃によりバリアにひびが入る、
其処でヴィータはもう一撃とばかりに振り下ろしバリアを破壊するが、カノンはすぐさま後方へと移動、
右手をヴィータに向けてグラシアルブリザードを放ち氷の刃がヴィータに襲いかかる。
しかしヴィータはパンツァーヒンダネスを発動させて攻撃に耐えていると、地上からディードが姿を現し、
ある程度の距離を保つと、ツインブレイズの一刀を高々と掲げエネルギーで出来た刀身を伸ばして一気に振り下ろす。
ディードの刀身がカノンに迫る中で左手を向けて攻撃を防御、
すると氷の嵐から姿を現したヴィータがギガントハンマーを水平に振り抜く、
しかしその攻撃も右手のバリアで防ぐカノンであったが、今度はオットーがレイストームを撃ち抜いた。
「貴様らぁ!!鬱陶しいわぁぁ!!!」
次の瞬間カノンは自分を中心にエクスプロージョンを撃ち出し、
ヴィータ、ディード、オットーの順に飲み込まれ、辺りは爆発による閃光に包まれた。
そして閃光が落ち着くと三方向に吹き飛ばされる三人がおり、
ヴィータはビルの壁に、ディードは道路に、オットーはビルの屋上にそれぞれ激突した。
「クソッ!なんて強さだ!!」
ヴィータは歯噛みしながら起き上がりカノンを睨み付けると、オットーとディードも同様に起き上がる。
…このまま不利な状況が続けば、倒されてしまうのも時間の問題、
それだけ手加減できない相手であると悟ったヴィータはエクストラモードを起動、
するとヴィータの赤い騎士甲冑が黄色に染まり、瞳も黄色く体の周りには稲妻が音を立てて走り、
右手は金属で出来ていたゴッツい手袋がつけられており、
グラーフアイゼンもまた金色に似た輝きを放ち、柄と槌はうっすらと離れて浮いていた。
ヴィータの変貌にオットーとディードは目を丸くする中で、
カノンは一人手を組み考える様子を浮かべ、言葉を口にする。
「なるほど…それが貴様の全力か……」
「覚悟しろよ!エインなんたら!!」
するとグラーフアイゼンの槌を下に向けて降ろしヴィータは半身で構え、
全身の稲光が輝く中、グラーフアイゼンを下から上へと投げ飛ばすかのように振り上げる、
すると荷電されあるグラーフアイゼンの槌が勢い良く飛び出し、槌は回転しながらカノンに迫ると、
カノンは右手を向けてシールドを張るが、シールドは簡単に打ち砕かれカノンの右肩を掠めた。
ミョルニルハンマー、電気変換能力により荷電・加速されバリア破壊の効果を持った槌を飛ばす奥義である。
無論、飛ばした槌と柄は雷によって繋がれており、手元へと戻す事が出来るのである。
「チッ…掠めただけか」
飛ばした槌が弧を描きながら柄に戻り、一つ舌打ち鳴らすも不敵な笑みを浮かべ見上げるヴィータ、
すると自慢のシールドを破壊されて怒り心頭といった表情を浮かべるカノンは左手をかざし、
サンダーストームを撃ち出しヴィータに迫ってくる。
だが次の瞬間カノンの周囲に魔力阻害効果を帯びた結界が張られサンダーストームを打ち消す。
オットーがレイストームを用いて結界を張りカノンを攻撃ごと封じたのである。
だがカノンは結界の中で魔力を高めると巨大な魔法陣を張り詠唱を始める。
「絶望の深遠に揺蕩う冥王の玉鉾、現世の導を照らすは赤誠の涓滴!!」
するとカノンの広域攻撃魔法グローディハームが発動、魔法陣の中心部分から毒々しい液体が結界に張り付いて溶かし、
結界を破壊すると辺りに四散し溶かしながら消えていく、その中で上空へと移動していたヴィータがカノン目掛けて急降下していた。
そしてグラーフアイゼンを一気に振り下ろし直撃、更に大地に突き刺さるようにカノンを激突させる。
カノンが激突した場所は土煙が立ち上がり、視界が悪い中ゆっくりと立ち上がる影を目撃したディードは、
左に持ったツインブレイズの刀身を伸ばし、影に向けて右から左へと振り抜く、
すると人影の部分で受け止められた感触を感じ、無理やり振り抜くと左の刃が砕け散った。
だがディードは間髪入れず今度は右のツインブレイズを延ばし一気に振り下ろすと、今度はスムーズに刃が通り砕ける事もなかった。
その感触に手応えを感じたディードであったが、土煙が晴れると其処には左腕を無くし右手を向けているカノンの姿があった。
「貴様!よくも俺様の左腕を!!!」
カノンは怒り心頭といった表情を浮かべ、その表情にディードは萎縮するとカノンはアースクレイブを発動、
ディードに石の刃が襲いかかる瞬間、右から強い衝撃を受けディードは吹き飛ばされると、
先程まで彼女が立っていた場所にはオットーが変わりにおり、その顔は少し微笑んでいるように思えた。
「オットー!!」
だがディードの声も空しくオットーの体に次々と石の刃が突き刺さり、最後に巨大な石の刃がディードの腹部を貫き、
その光景はまさに、百舌の速贄を彷彿としていた。
オットーの変わり果てた姿に膝を付き目を見開くディードであったが、
カノンの怒りは未だ収まらず再度ディードに右手を向け攻撃を仕掛けようとしたところ、
上空にいたヴィータが急降下してカノンに襲いかかり、カノンの左こめかみ目掛けグラーフアイゼンを振り抜き、
カノンは吹き飛ばされ瓦礫に直撃するが、カノンは一瞬にしてヴィータの体をバインドで縛りつけた。
「ぐう……其処でじっとしていろ!此奴が終わったら今度はお前の番だ!!」
そう言いながら瓦礫から姿を現すカノン、そしてその足でディードの下へ向かうと、
オットーの仇とばかりに逆上したディードが右手に持つツインブレイズを振り下ろす。
だがカノンは素早くバリアを張り受け止めると、右手を向けてサンダーストームを撃ち出し、
ディードは全身に雷を浴び絶叫を上げるとカノンは更に撃ち出し合計五発のサンダーストームを浴びせた。
その外道な振る舞いにヴィータは怒りを覚え、ディードの助けに入ろうとするがカノンの放ったバインドは、
レストリクトロックと呼ばれる強固なバインドである為、今だ解除する事が出来無いでいた。
一方で五発のサンダーストームを受けたディードは立ち尽くし目は虚ろであったが、
辛うじて意識を失ってはおらず右手が動く事を確認すると、
カノンが近づくギリギリまで待ち続け目の前に立った瞬間、勢いよく振り上げる。
だがカノンは既に様子を察していたようで右に半歩身を引いて攻撃を躱すと、
ディードの左手を掴み捻り込むように関節を決めて押さえつけた。
「この程度で…左腕代価、支払えたと思うなよ!!」
そう言うとそのままディードの左肩を外し、更に引き上げ腕の関節が引きちぎれていく音と叫び声が辺りに響き渡り、
カノンは左手を手放すと、全身をバインドで縛り上げ、今度は腹部に手を当てエクスプロージョンを発動、
ディードはなす統べなく光に飲み込まれその後爆発、辺りに爆音が鳴り響き一時静寂に包まれると、
力無く仰向けに倒れカノンはディードの顔側面を踏みつけると、ディードはか細く呻き声を上げる。
「しぶとい…まだ生きているとは」
そして止めとばかりにディードの頭を踏み抜こうとした瞬間、後方から強烈な光を感じ、
振り向くと其処には右のこめかみに血管を浮かばせ、徐々にレストリクトロックを引き千切り、
激怒の表情を浮かべ全身が稲光により強く輝くヴィータの姿があった。
「……なぜ怒る?貴様にとって此奴等は敵ではないのか?」
「あぁ確かに敵さ!だがなぁ…テメェみてぇな外道よりかはよっぽどマシだ!!」
確かにカノンの言う通りヴィータにとって二人は敵である、だが敵とはいえ共闘し感じた事があった。
それは二人の純粋さ無垢さである、つまり真の敵はこの純粋さを利用した者の存在であると言う考えにヴィータは至ったのである。
…しかしそれよりも今ヴィータはカノンの外道な行動の方に怒りを感じ、
二人よりもカノンを優先的に倒すという考えに至り、今こうして対峙していると怒気を含んだ口調で話す。
「…理解出来んな」
「……だろうな!!」
ヴィータの一言を合図に姿を消すようにカノンの後ろを取ると、グラーフアイゼンを振り抜くが、
カノンは全方向のバリアを張り攻撃を一時的に防ぎ更に間髪入れずアースクレイブを発動、
岩の刃がヴィータに襲いかかる中、ヴィータは一つ一つグラーフアイゼンで叩き割って防ぐと、
後方に移動したカノンがサンダーストームを撃ち鳴らす。
しかしヴィータの全身は稲妻を纏っている為か対したダメージとはならず、飛びかかるようにカノンに襲い掛かる。
しかしサンダーストームが効かない事はカノンは察していたようで、右手を向けてエクスプロージョンの準備を既に整えていた。
そしてヴィータがカノンの目前に迫り頃合いを見てエクスプロージョンを発動、
爆発が始まろうとした瞬間、ヴィータの脚にはフェアーテを纏っており、一瞬にしてその場から移動、
先程と同様カノンの背中を捕らえるとグラーフアイゼンをラテーケンフォルムに変え
カノンの腰辺りに突き刺し更に先端が回転を始めそれにより電気が発生、カノンは叫び声を上げた。
「ぐあああああああ!!」
「まだ終わりじゃねぇ!!」
ヴィータは叫び上げるとその場でカノンごと回転を始め、そのスピードは全身に纏う雷の影響を受けて小さな台風と化していた。
すると今度は回転の勢いを維持したまま、大きく弧を描き上空へと上がりそのまま振りかぶると、
カートリッジを三発消費、そして地上に向けて大きく力強く振り下ろした。
「ラテェェェケン!!ハンマァァァァァ!!!」
するとグラーフアイゼンの槌が外れ、更に噴射口から大量の魔力が放出、
それにより更に加速されていき地上に突き刺さると激しい爆音が鳴り響く。
ヴィータの放った攻撃は遠目で見るとまるで、雷が落ちたかのような印象を受ける光景であった。
そしてグラーフアイゼンの槌が柄に戻るとゆっくりと降下、
攻撃の跡地は大きなクレーターとなりその中心には、
腹部に大きな風穴を空けたカノンがうつ伏せの状態で呻き声を上げていた。
「くっ…クソ……この…俺が………」
「…しぶてぇ野郎だ」
ヴィータは見下ろしながら言葉を口にしてとどめを刺そうと降りようとしたところ、
左腕を引きずりながらもディードが先に降りていきツインブレイズをカノンの首下に当てる。
「チッ!こんな…所で…終われる……かよ……!」
「いいえ、アナタは此処で終わりよ……」
そう言うとディードは躊躇無くカノンの首を跳ね足下に首が転がるが、
ディードは見向きもせず串刺しになっているオットーの下へと急いで向かう。
そしてオットーを見上げる形で見つめ、目から大粒の涙をこぼしていると、
微かだが…確かにオットーから小さな息遣いが聞こえてくる。
「オットー!!」
「……ディー…ド……」
ディードの声に反応したオットー、するとエクストラモードを解除したヴィータがゆっくりと二人に駆け寄り、
ディードはオットーを守る為、ツインブレイズを起動させて警戒すると、ヴィータは首を横に振る。
その後暫くすると医療チームが到着、チーム内にはマリーの姿もあり、
少し疲れた様子を見せながらヴィータに話しかけ始める。
「今日は満員御礼ね」
「どういうこった?」
最初はシャマル、次にティアナ、今はヴィータの要望を受けて、
これで六人目の戦闘機人を見ることになったという。
確かにマリーはギンガとスバルの調整に一役買い、戦闘機人の情報も頭に入っている、
だがいくら何でも要望しすぎではないか?…と愚痴をこぼすマリーであったが、
ヴィータの「緑茶ラテでも飲んで落ち着け」の一言で返され、
マリーは医療チームと共にこの場から去り、ヴィータも次の場所へと赴くのであった。
一方、ティアナは急いでスバルの下へ戻ると、二人の戦いぶりに唖然としていた。
遠目では藍紫色の魔力光と水色の魔力光が幾重にも重なり、至る所で火花が散る様子であった。
だが実際の戦闘は熾烈を極めていた、スバルはA.C.Sドライバーを常に起動させたまま攻撃を仕掛けており、
その突進力を生かして右のナックルダスターをギンガの頭部を狙って打ち抜くが、
ギンガは頭部を右に振ってこれを回避、逆に左の拳がカウンターとなってスバルの頭部を狙う。
するとマッハキャリバーがプロテクションを発動、ギンガのカウンターを受け止めるが、
徐に拳から手刀の構えに入ると高速回転、リボルバーギムレットを用いいるとバリアから火花が散り亀裂が入り始める。
するとスバルはA.C.Sドライバーを利用して瞬間的に後方に突進、バリアが砕け散る前に難を逃れたが、
ギンガは追い打ちとばかりに突進、続け様にリボルバーギムレットを振り抜くが、
スバルの右こめかみを掠める程度に終わり、先程とは逆にスバルの右拳がカウンターとなってギンガの左こめかみに突き刺さる。
それにより体勢を崩すギンガであったが、右足を踏み入れそのままスバルの懐に入ると、右拳を振り上げスバルの顎を捉える。
ギンガの一撃により顎は跳ね上げられ半歩引き隙間を開けると、左の手刀を拳に変えてナックルバンカーをスバルの脇腹目掛けて打ち貫いた。
その一撃によりスバルは右足を半歩下げ九の字に曲がり苦しみながら前のめりで倒れそうになるが、
その動きを利用してギンガの頭上に向かって弧を描くようにウィングロードを作り滑走、
自動的に右の踵落としを繰り出しギンガの頭部に直撃すると、スバルの左足が先に着地、
すぐさま左足を軸に右回転し右の裏拳でギンガの右脇腹を狙うが、ギンガはそのままの姿勢で後退、難を逃れた。
そして互いに睨みつけている中で、スバルがゆっくりと言葉を口にし始める。
「ギン姉!目を覚ましてよ!!」
「黙れタイプゼロ・セカンド!!よくも私の“妹達”を傷付けてくれたな!!」
ギンガの思わぬ言葉にスバルは目を丸くして動揺を隠せないでいると、ギンガは説明を始める。
ナンバーズは私達の妹達、その中でノーヴェは自分達と同じ母クイントの遺伝子から生まれた存在であるという。
「それにこの世界はもはや終わりを迎え始めている!!」
時空管理局は魔法技術を独占する事により、エインフェリアやヴァルハラなどの兵器を生み出し混乱させている。
既にこの世界は腐敗している、だがその原因である膿みを全て取り除いたとしても既に世界は手遅れな状態、
故にスカリエッティ達はこの腐敗した世界を材料にして、新たな世界ベルカを創り出すことにした、
たとえその際に痛みが伴おうとも血が流れようとも、腐った世界をいつまでも放置する訳にはいかない。
「死に瀕したこの世界を苗どころにして何が悪い!!」
この戦いは自分達が生きられる場所を獲得する為の戦い、
それはつまり妹達が安心して暮らせる世界を手に入れる為を意味する。
この意味を同じ存在でもあるスバルであれば理解出来るハズだと、
ギンガの言葉に出しスバルは俯き暫く沈黙を守ると、ゆっくりと顔を上げ口を開き始める。
「ギン姉…それは間違っているよ……」
スバルは決意ある瞳でギンガの主張を断ち切る、
確かにギンガの主張は尤もである、だからといって関係無い人達を巻き込む戦いは間違っている、
たとえこの戦いによって新たな世界が構築されたとしても、人々の血の上で成り立つ世界が認められる訳が無い。
「どれだけ奇麗事を並べても…体のいい理由を並べても!犯罪は犯罪なんだよ!!」
スバルの言葉にギンガは俯きジッと静かに立ち尽くしていると、
最早語る言葉が無いと悟ったのか構え始め、スバルも呼応するように構え始め、互いに言葉を口にする。
「私は絶対にギン姉を助けて見せる!!」
「私はタイプゼロ・セカンドの目を覚まさせる!!」
それぞれの思いをと共にスバルはエクストラモードを起動、リボルバーナックルとマッハキャリバーは真っ黒く染まり、
バリアジャケットとリボンは黒に近い緑色へと変わり、リボルバーナックルには赤い魔力が帯びていた。
一方ギンガはレリックを全開にして魔力を上昇、体に魔力を纏うとブリッツキャリバーから左右合わせて四枚の魔力翼を発生させる。
すると先にスバルが動き出し右拳を頭部目掛けて振り抜くが、ギンガは頭を下げてこれを回避、
逆にカウンターとして左のアッパーが襲い掛かるが、スバルは右足を半歩下がらせて前髪を掠める程度に終わらせる。
すると今度は身を引いたと同時に引いた右拳でギンガの顎を打ち抜き
更に左足を軸に左回転、その勢いを乗せたまま再度顎を打ち抜き、ギンガの身と共に跳ね上がる。
そしてギンガは勢い良く跳ね上げられ宙を舞う中でスバルは一足先に着地、
するとギンガはウィングロードを空中に作り出し足場にすると真っ直ぐスバルの下へ延ばす、
続いてリボルバーナックルから三発カートリッジを消費させると手刀に構え高速回転させる、
そしてA.C.Sドライバーを用いて一気に加速、スバルに襲いかかった。
「これで終わりよ!!!」
ギンガの攻撃が迫る中でスバルはギンガを見上げると更に半歩下がり、
右のリボルバーナックルから三発カートリッジを消費、纏ってた赤い魔力が更に濃くなる。
「うおおおおおおおおおっ!!!」
そして一気に拳を地面に振り下ろし地面を砕くと、亀裂から赤い魔力が姿を現れギンガに襲いかかり、
ブラッディカリスはギンガの体を何度も叩き打ち続けその中、レリックが胸元から姿を現し始める。
どうやら非殺傷設定による魔力への攻撃によりレリックを制御する魔法陣が支障を来たし、
レリックの制御が出来なくなった為、表に現れたようである。
だが物理破壊設定も設定されている為、魔力に晒されたレリックにヒビが入り爆発、
ギンガは宙を舞い地面へと落下、その姿にスバルは駆け寄るとギンガの戦闘スーツは爆発の影響により、
至る所が破けており、仰向けのまま倒れいて暫くするとギンガがゆっくりと目を覚ます。
「………ス……バル」
「ギン姉!!」
スバルはギンガの身を抱えるとゆっくりと笑みを浮かべ、その表情に涙を浮かべるスバル。
どうやらギンガは今までの記憶を覚えているらしく、自分が犯罪に荷担していた事に猛省していた。
「ゴメン…ね……スバル」
「そんな!ギン姉は悪くないよ!!」
悪いのはギンガを洗脳した人であると力強く答えスバルの答えを静かに聞くと、徐に左手のリボルバーナックルを取り外しスバルに渡す。
どうやらギンガはスバルとの戦闘や発言から成長を感じ、本来のリボルバーナックルを扱う事が出来ると考えたのである。
スバルは暫くの間、目を閉じ沈黙すると意を決したように目を見開きリボルバーナックルを受け取る、
そして左手に填めると拳を合わせ左のリボルバーナックルは右のリボルバーナックルと同じ色形となった。
スバルの凛とした勇姿をこの目で見たギンガは安心したのかゆっくりと目を閉じ、
その反応にスバルは駆け寄るとティアナが姿を現し、ギンガの様子を調べ気を失っている事を確認、
スバルはホッと胸を撫で下ろすとティアナは医療チームに連絡、その後暫くして医療チームが姿を表し、
ギンガとノーヴェが搬送される事を確認すると二人は新たな場所へと赴くのであった。
一方レザードは順調にヴァルハラに向かっており、行く手を阻むアインヘリアルなどまさに一蹴とも言える攻撃で蹴散らしていた。
そして目の前にヴァルハラの姿を捉えると、丁度間にエインフェリアのゼノンが睨みつけており、
足下には巨大な魔法陣を敷き詠唱を行っているように見えた。
「我が手に携えしは悠久の眠りを呼び覚ます天帝の大剣、古の契約に遵い我が命に答えよ!!」
するとレザードを中心に巨大な魔法陣が現れ、周囲から炎がレザードに向かって迫り火柱となって燃えさかる、
その光景にゼノンは確かな手応えを掴み勝利を確信した表情を浮かべるが、直ぐに驚きの表情に変わる。
「ふっ…この程度の炎で私の相手を?」
不敵な笑みを浮かべ眼鏡に手を当てるとグングニルを向けて、
まるでこれが本当の炎であると言わんばかりにえ詠唱を始める。
「我焦がれ誘うは焦熱への儀式、其に捧げるは炎帝の抱擁!!」
レザードの詠唱によりゼノンの周囲は炎に包まれ逃げ場を無くすと、炎は臨海点を超えたかのように大爆発を起こす。
イフリートキャレス、レザードが扱う炎の広域攻撃魔法の一つである。
「…己の分を弁えることですね」
ゼノンはなす統べなく一瞬にして消滅、レザードは何事も無かったかのように先に進む、
…その後方でははやてが唖然とした表情を浮かべていた。
あの男レザードは局員が手こずるエインフェリアを一撃で葬った、
それ程までに奴と我々との間には差があるという事を見せつけられた瞬間であった。
…とは言えはやてもまたエインフェリアを一蹴していた事実は棚に置いているようである。
それはさておき、そんな事を考えながらもはやては引き続きレザードの後を追うのであった。
場所は変わり此処ゆりかご内ではアリューゼとグレイが協力し合ってガジェットや不死者を撃破していき、
そして目的の地であるスカリエッティのラボへ続く管制室に辿り着くと其処にはクアットロが佇んでいた。
「まさかぁ不死者が反旗を翻すなんてねぇ」
不死者は基本的に自分の意志を失っており、普通であれば有り得ない事である。
つまり珍しい検体、本来なら解体して念入りに調べたいところであるが、
ゆりかご内でこれほど暴れてられて貰っては処分せざるを得ない、
そう言うとクアットロは指を鳴らし、周りからガジェットIV型が五機姿を現す。
「チッ!めんどうだな!!」
アリューゼは一つ舌打ちを鳴らしガジェットを睨みつけていると、グレイから念話が届く。
その念話の内容とは此処は自分に任せて先に進めというものであった。
(…任せていいんだな)
(あぁ…)
二人は念話で段取りを合わせると、意を決したように剣を構える。
するとそれを見たクアットロは右手をかざし振り下ろすと、ガジェットIV型は一斉に動き出し襲い掛かってきた。
「行くぞ!アリューゼ!!」
「おぅよ!!」
二人もまた飛び出すとガジェットの一体が右前足の刃でアリューゼに襲い掛かる、
だがアリューゼは刀身にて受け流すと、そのまま胴を断ち切った。
するとアリューゼの動きに合わせてグレイが氷の弾丸を用いて二機を足止め、その隙にアリューゼは先に進み、
クアットロに迫ると残りの二機が立ちふさがるようにして襲い掛かってきた。
「邪魔を…するな!!」
するとバハムートティアのカートリッジを一発消費して全身を闇に包み込み、
ダークを発動させてガジェットの後ろを取ると、レンチングスイングで二機を一瞬にしてスクラップへと変える。
そしてそのままクアットロを飛び越え先へと進み、クアットロは振り返り邪魔をしようとしたところ、
後方から何かが砕け散る音が響き、振り向くと其処にはガジェットを凍り付かせ、
更に砕きバラバラとなった残骸が足下に広がり、その中心にはグレイが佇んでいた。
「あら?もうやられちゃったのぉ~あっけなぁい」
「……残りはお前だけだ」
グレイはクアットロが戦闘型では無い事を知っている為か、降参するように促すと、
クアットロは不敵な笑みを浮かべ拒否、そして徐に眼鏡を外し髪留めも外し始める。
するとクアットロから魔力が溢れ出し、思わずグレイは目を疑う。
「まさか、リンカーコアを!?」
「ご名答~」
クアットロはレザードの役に立つ為に自らの手でリンカーコアを埋め込み、それにより魔力を手に入れた、
だがそれだけではない、更にレリックをも埋め込み能力を向上、更にはお手製のデバイスを用いるという。
「J・D、セットアップ!」
するとデバイスは起動、シルバーカーテンはフードの付いた妖美なバリアジャケットとなり、
髪の色も赤く変化、顔色も変化し手には頭蓋骨をモチーフとした禍々しい杖が握られていた。
「ふふふっアナタの命運も此処までぇね!」
そう言って杖を振るうと三本のダークセイヴァーがグレイに襲い掛かる、
だがグレイは一つ一つ丁寧に叩き落とすと、クアットロに迫る、がシャドーサーバンドと呼ばれる闇魔法を発動、
グレイの足下から悪霊を模した魔法が姿を現しグレイを跳ね飛ばす。
そして空中に投げ飛ばされる中でグレイは氷の弾丸を発射、
氷の弾丸はクアットロに迫る中、杖を振り抜き衝撃波を発生させてこれを相殺した。
相殺された氷の弾丸が粉雪のように散りばめる中でグレイは床に着地、すぐさまクアットロに向かうと、
クアットロは先程と同様にダークセイヴァーを放ち、グレイは受け流しつつ迫っていく、
そしてグレイは刀身を振り下ろすが、クアットロは左手を向けてディフェンサーを張り攻撃を受け止め、
右手に持つ杖を振り払い衝撃波を撃ち出し、グレイ吹き飛ばされて壁に激突した。
グレイが激突した場所は土煙に覆われていたが隠れる事無く姿を現す、
…がグレイの左腰には切れ目があり、本来あるハズの肉体が無い事を知られる事となった。
「肉体を失い、魂のみの存在とはねぇ」
益々興味に尽きない対象であるが、これ以上被害を被る訳にも行かないし付き合っている訳にも行かない、
何故ならクアットロはガジェットや不死者の制御の全権を任されている為だ。
そこでクアットロは杖を床に突き刺し巨大な幾重にも描かれている多角形の魔法陣を張ると詠唱を始める。
「我、久遠の絆断たんと欲すれば、言の葉は降魔の剣と化し汝を討つだろう」
するとクアットロの頭上から巨大な槍が現れ、その矛先はグレイへと向けられいた、
その中でグレイはクアットロは早期に決着をつける気である事を悟り、
残りのカートリッジを全弾消費、この一撃に全てを賭けた。
「ファイナルチェリオ!!」
「奥義!アイシクルディザスター!!」
クアットロはかざした手を振り下ろすとグレイ目掛けてファイナルチェリオが襲い掛かる、
…がグレイは臆する事無く突撃、ファイナルチェリオはグレイの左半身に深く突き刺さり、左腕と左上半身を失う、
だがグレイの突撃は止まらず、その気迫に圧されたのかクアットロは一歩も動けないでいた。
そしてグレイの刀身がすり抜けるようにしてクアットロを貫くと、後方から氷の弾丸が次々とクアットロの体を突き刺し、
更に弾丸を中心に凍り付き始め、クアットロは必死な形相で抜け出そうとしていた。
「そっそんな!?こんな所で私が―――」
だがクアットロは全ての台詞を吐く前に全身を凍り付かせ氷のオブジェを化す、
それを見たグレイはオブジェに近付き刀身を構えると、
勢い良く振り上げ、その一撃により氷のオブジェはクアットロと共に砕け散った。
…しかしグレイもまたファイナルチェリオの影響により鎧に亀裂が走っており、いつ砕けてもおかしくない状態であった。
――そして徐に天を仰ぐ…自分のすべき事、成すべき事は全てやった、
――後の事は他の生きている人達に任せよう…それが自分に出来る最後の仕事である――と…
そう悟り一つ小さく息を吐くと、ふと自分の周囲が明るい事に気が付き辺りを見渡す、
すると丁度グレイの立っている位置の三歩先に、親友であるカシェルとエイミの姿を目撃する。
「あぁ…迎えに来たのか……」
グレイは小さく呟くように言葉を口にすると、二人は満面の笑みを浮かべ出迎える、
その表情に安心したのかグレイは歩き出すと、その姿は鎧だけの姿では無く人の姿のグレイであった。
そしてグレイはエイミとハイタッチを交わし、カシェルに腕で首根っこを掴まれ、
肩を寄せ合い、笑い合いながら三人は光の中へと消えていく……
そして…その場は静寂に包まれ、グレイの鎧が別れを告げるように音を立てて崩れていった…
最終更新:2009年11月14日 22:50