私の前に現れたのは異形の人達…私達と同郷である彼らは自らを『悪』と名乗りながらもそれとは真逆の雰囲気を纏い、丁寧で礼儀正しい真摯な態度で接してきた。 私はそんなあの人達への警戒や疑心などはあまり感じない。でも彼らが『悪』称し、行動を起こすと言うのなら相応の対処をしていかなければならない。それが法の守護者である私達、時空管理局の使命だから…
『天体戦士リリカルサンレッド』この物語は川崎から現れた怪人たちがミッドチルダにて繰り広げる善と悪の壮絶なる闘いの物語である―――
FIGHT.02『来迎、夜天の主!!』
「ん~だいたいこの辺の筈なんやけどなぁ」
私服に身を包んだはやては現在、メモを片手にミッドチルダ中央区画の市街地を歩いていた。彼女は六課制式運営までのまだ時間があるうちに、休日を利用してある目的地に向かっているのだ。
「なぁ、はやて~せっかくの休みなんだし何でそんな所行くんだよ?これから忙しくなるんだしさぁ…」
そんなはやてに同行している赤い長髪を三編みにした少女、ヴィータは気だるげにぼやきながら隣を歩いている。だが別にはやてと外に出ることを面倒に思っている訳では無い、只行き先が億劫なのだ。
なぜなら彼女達が目指している場所とはフロシャイムミッドチルダ支部(仮)なのである。
「まぁそう言わんとなヴィータ、この前会った時はあんまりお話出来んかったし…時間のある内に確かめておきたいんよ」
はやてはにこやかに言いながら鞄から何枚かの書類を出す。そこには現段階でのフロシャイムの調査報告が書かれていた。 グーグルを使い公式サイトを発見したところ、流石に本部の住所は載っていなかったが各支部の連絡先や特色、年間行事や職場の雰囲気まで事細やかに記載されていたのだ。
そしてフロシャイムが起こしたと思われる事件についても調べたが、唯一見つかったのが四年前アメリカのユタ州で起きた現地のヒーローとの数百人規模の乱闘だけである。他にはサメ型怪人が溺れている子どもを助けたと言う話があるがこれはどちらかと言うと善行だ。
「しっかし『人として当然の事をしたまでです。』って書いてあるけどさぁ…人じゃなくてサメじゃん。 だいたい自分から『悪の組織』って言ってんだしさぁ、さっさと乗り込んでブッ潰したって良いじゃんかぁ~」
資料をヒラヒラと持ちながら、半ば呆れ気味なヴィータは少々物騒な事を口にする。
「物騒な事言ったらアカンよぉ、フロシャイムの人達は滞在ビザの取得や転居届け、[[その他]]の手続きは全て正規の物やし…
入国チェックの時に質量兵器が見つかったらしいんやけど、本人が管理外世界出身なのとすぐ所有者に返却した事から特に問題にはなっていないんよ。 それになヴィータ、令状無しでそんな事は出来へんよ」
ちなみに入国チェックの話は執務官であるフェイトが調べた事である。だが 『管理外世界より移住してきた人が護身用として持ち込んだ質量兵器を管理局法により没収される』 と言った話はよくある事で最近ではその場で破棄するか出身世界へ置いていくのが主流となっている為、とくにこれと言ったペナルティも無い。
「あとシャーリーが調べてザフィーラが毒味したソーセージについても『オマケのフィギュア共々毒物、爆発物等の危険性は皆無。寧ろ無添加、無着色なので食品としては非常に良心的です』や『栄養価も高く安全性にも優れている…岩井のレーズンと並ぶ「お母様も是非お子さまに勧めてあげて下さい」と言いたくなる代物だな』と言ってたですよぉ~」
今まではやての鞄(通称リィンハウス)に入っていたリィンフォース2が会話に参加する。今回はやての護衛としてヴィータ、リィンがついていく事になっているのだ。
「そやねぇリィン、ほんまにこの人達が悪者か疑いたくなるわぁ~他の組織も同じ様な感じやし…」
そう、悪の組織はフロシャイムのみではない。更に調査を進めていくと地球には複数の組織がある事が判明したのだ。
デスヒグマ団、天罰殺気(てばさき)、ゲルド、ドロス、秘密結社デビルクロス、また組織名は不明だが不幸なる沼の王ルゴー、首領ベム、魔王ザムエル、地獄王ギウネス等が率いる勢力が確認された。
しかし彼らを調べても事件らしい事件は確認されていない。それどころかテスヒグマ団は寝込みを襲われ壊滅、天罰殺気は高齢化により受け弱体化、ゲルドは現地のヒーローと戦う事はあっても破壊行為を行う事は無く近隣の住民からの信頼と支持を得ている…
おまけに首領ベム率いる勢力は部下との方針の違いから解散し、地獄王ギウネスに至っては芸人として芸能活動を行っている。しかもこれはほんの一例であり他の勢力も似たりよったりである。
「ったく、せっかくジャン○ーソンみたく色んな組織が犇めいていて面白そうだと思ったのにさぁ…やり方も温ければ詰も甘いしヤル気あんのかよ?」
「まぁ、そこを見極める為にもじっくり見てみんとなぁ…あ、そろそろや」
ヴィータは自分の中に溜まりつつあったフラストレーションを吐露し、うんざり気味であったが目的地に近づくと表情を引き締める。例えやる気の萎える様な相手だとしても自分はベルカの騎士、己が務めを蔑ろにするような根性は持ち合わせていない。ましてそれが主であり大切な家族でもあるはやての護衛なら尚更だ。ヴィータは相棒であるデバイスをすぐに起動出来るよう身構え、件の建物を見やった…
目に入るは三階建ての住居、老朽化の為か所々汚れが目立ち、元は白であろう漆喰の壁は黄ばんでもいる。そして全体的にややくたびれた感じの建物の手前には洗濯物を干してある申し訳程度庭が広がっていた。
「…………なぁリィン、ここは何だっつったっけ?」
「え~っとですねぇ…フロシャイムアジトミッドチルダ支部(仮)ですよぉ~」
自身と同等の大きさの紙を目の前に抱えて広げ、リィンがふよふよと浮かびながら何の戸惑いも無く読み上げ惑いも無く読み上げる姿にヴィータはため息を漏らす。一方はやては「ん~思ったより普通やなぁ…」とあまり驚かず、そのままインターホンに手を伸ばすがそこに耳慣れない声が響いた。
「アァ~ダレ?ダレ?」
はやて達が振り向くとそこには紙袋を抱えた狼型怪人、タイザが歩道に立っていた。
「えっと、確かタイザ君やったね。お買い物なん?」
はやての問いにタイザは「スロットッ!!スロットッ!!」と片言で答え紙袋からチョコレートを差し出す。どうやらあげるつもりらしいが包みが半開きで少しかじった後がある。そんなやりとりがされる中、玄関の引戸が開き人影が顔を出す。
「タイザ君誰と話してるの?もしかしてお客さん…?」
兜を被った小柄な男性、ヴァンプ将軍が戸外の音に気付き出てきたのだ。はやてとリィンは「こんにちは~」と朗らかに挨拶をしたがヴィータはデバイスに手を構え警戒体制を取る。相手は曲がりなりにも悪の組織。そしてここはその本拠地、まさか責任者が最初に出てくるとは思っていなかったが…次にどの様な対応に出るかは大体予想がつくと身構えた。が…
「あぁはやてさん!!それにリィンちゃんも…そっちの子は妹さん?さぁどうぞ上がって、散らかっているけどゆっくりして行って下さい。」
ヴァンプの友好的な対応にヴィータはこけそうになった…
玄関をくぐり廊下を通り抜け案内された先は畳張りの居間…十畳程の広さの中心にはちゃぶ台があり角には大きめのテレビ、壁側にはタンスが置かれ奥には台所らしき入り口が見える。隅に段ボール箱が数個積まれているが、部屋が妙に暗かったり足下に怪しげな霧が広がっている等は全く無く、壁に貼ってある落書きのされたヒーローのポスターさえ無ければ至って普通の家庭であった。
「あ、どうぞ座ってください。でもすいません、まだ荷物が片付いてなくて…」
「気にせんでえぇよヴァンプさん、私らもアポなしで来たんやし。それに越して来てまだ3日も経ってないんやからしゃあないよ。」
ヴァンプはちゃぶ台の側の座布団にはやて達を促し部屋の整理がまだ不充分であることを心底申し訳なさそうに言い、はやてはそれにやんわりと応える。そしてヴィータやリィンを含めた四人が席に座り、自己紹介を済ませた所で戦闘員達が台所からお茶とお茶請けを持ってきた。
「なぁ、これ毒とか入ってねぇだろうな?」
ヴィータは差し出されたお茶に対して少々失礼な事を言う。本人としては少しパンチの効いたジョークのつもりだったがその反応は予想とは違った。
「め、滅相も無いですよ!!せっかく来てくださったお客様に対してそんな『ヒドイ事』をするわけないじゃないですか!」
「そうですよ、相手がレッドさんならまだしも『善良な』はやてさん達にそんな『残酷な事』なんて出来ませんよ!!」
ヴィータのジョークをヴァンプと1号は必死に弁明し、居間で昼寝を始めたタイザを担いでいた2号も首を激しく縦に振って同意している。ヴィータはそんな台詞の端々から聞こえる言葉に、頭を抱えて呆れ返るしか無かった…。
そしてはやての「そのレッドさんってどんな人なん?」と言った問いから始まった、天体戦士サンレッドとフロシャイム川崎支部の面々による善と悪の壮絶なる戦いの物語… もとい愚痴を交えた反省会が始まり、「でもそんな私達の相手や説教を今でもしてくれてるのはレッドさんなりの『優しさ』だと思う。
だからここ(ミッド)で一皮剥けて、次会った時にこそレッドさんに打ち勝つ事が恩返しだと思うの、私。」と言う台詞で締め括られた。
前回から面識があり、先ほどのやり取りから既にもう心を開いているはやてやリィンとは別に、ヴィータはそんな前向きな発言をする彼等に対して根は、と言うか普通に良い奴らなのかもな…と思えてきた。その後は何気ない世間話が続き、夕方には安くて品質もそれなりに良い、はやて曰く『底値買い』が出来るスーパーを案内してもらい、帰宅したカーメンマン、メダリオ、アニマルソルジャーの面々を交え現在はヴァンプとはやて共同製作の鍋を囲んでいる。
「あ、ヴァンプさんの糠漬け美味しい~私んとこは最近忙しくて浅漬けが殆どやったから懐かしいわぁ…」
「えぇ、そうですか!!じゃあ今度お裾分けで持ってきますね。でもはやてさんだって包丁捌きはかなりのモノでしたよ。お若いのに立派ですよ。」
「ねぇ~もう放してよぉ、僕は自分の席にすわるからぁ!!」
「別に良いじゃねぇか。もう少しここにいろって」
「むぅ、ヴィータちゃん!!ウサちゃんが嫌がってるじゃないですか、放してあげてください!」
「ねぇ、そう言うなら僕の事も放して貰える?心配してくれるのは嬉しいけど、インシュリン射ったから今日は大丈夫だよιと言うかリィンちゃん大きくなれるんだねぇ…」
「プクク、お前らマジでチビッ子に人気あるなぁ~(笑)」
「そうそう、お前らそうしてる方がお似合いだって(笑)」
「もう五月蝿いなぁぶっ殺すよっ!?」
「チビって言うんじゃねぇよ潰されてぇのかテメェ?」
「もぅ、だからリィンはチビじゃありません!只ミニチュアなだけですぅ!!」
「だからもう放して…」
はやてとヴァンプがお互いの料理の腕を誉め合う傍らで、ウサコッツとデビルねこがヴィータと巨大化した(と言ってもヴィータと同サイズの)リィンに抱えられながら(半ば強制的に)食事を取り、それをカーメンマン達に茶化されると言う団欒とした雰囲気が漂っていた。(Pちゃんはさっさとタイザや戦闘員の所に避難している)
「あ、そうそうどう二人とも、良い場所見つかった?」
食事も一通り済まし、食後のお茶を煎れていたヴァンプは日中に外出していた怪人達に頼んでいた事を尋ねる。
「あぁ~難しいですね。この辺り公園とかありますけど人とか多かったし…」
「うん、そんなに大きく無かったし子ども達も多かったから動きづらいと思うよ。」
「強いて言えば廃棄都市って所がありましたけど…結構遠いんで車(ヴィッツ)が無いとキツいッスね。」
「う~んそうかぁ困ったねぇ…今はまだ庭で何とかなりそうだけど、他の子(怪人)達も来るとそうも行かないし…」
そう、彼らが頼まれた事とはミッドでの訓練場所である。だがその結果は芳しくなく、ヴァンプは頬に手をあて考え込んでいた。だがそこに…
「なぁヴァンプさん、もしよければ私らの所を使わへん?」
ヴァンプ達が消沈している所に、食後のお茶を頂いていたはやてから提案が出る。隣にいたヴィータは何か言いたそうだったが、はやてに考えがあると感じ、膝にいるウサコッツを強く抱き締め思い止まっていた。
「いや、でも悪いですよ。お忙しいのにそこまでして貰うなんて…それにほら、『悪の組織に施設を貸す正義の組織』って世間的にどうかと思いますし。」
「別にえぇよ、公式的には『フロシャイムに対する戦力、及び素行審査』とでもすれば良いんやし、困った時はお互い様や。」
ヴァンプも最初は断ろうとしていたが、はやての説得により承諾し明日の午後に行う事となった。そしてはやて達は「もう暗くなって物騒だから」と言うことで付き添いを買って出た戦闘員の二人とミッドの流行ファッションについて談笑しながら帰路につき、今は戦闘員と別れ玄関の前にいる。
「なぁはやて…さっきは何も言わなかったけど、良かったのかよあんな事言って?確かに助けになりたいと思ったけどさ…正直やり過ぎな感じがするぞ?」
ヴィータは鞄から中で寝ているリィンを起こさない様に鍵を取り出そうとしていたはやてに尋ねた。するとはやてはそんなヴィータに向き直り同じ目線にしゃがんみ、真剣さを秘めた顔で語りだす。
「あんなぁヴィータ…実を言うとなぁ、幾つか理由はあるんよ…六課が追うはレリック、相対するはガジェットドローン…そしてガジェットの向こうには未だ姿を見せない黒幕がおる。それが違法科学者か次元犯罪組織なのかはまだ分からへん…その時重要になって来るのは情報や。
そんでフロシャイムは仮にも『悪の組織』を名乗っとる、蛇の道は蛇…とまでは言わんけど別次元への進出を目指している組織ならその情報網も馬鹿にならへん。まして六課は敵も多いんやし味方増やしてパイプを築く事も今は必要なんよ…」
「はやて…」
はやての言っている事は理解出来る。だが少々抜けているがどこか憎めず、人の良い彼らを結果的には利用することになるのだ。そう思うとヴィータは心苦しく感じ、表情も暗くなり自然とはやての名前を口にしていた。
「で、一番の理由なんやけどな…
あんな良い人達と仲良うしてたら、これから楽しそうやろ?」
先程の真剣な表情とは打って変わり悪戯っぽい笑みを浮かべるはやてに、ヴィータは少しの間呆けた表情でいた。
「なんやそんな驚いた顔してぇ~やっぱりヴァンプさん達が心配やった?」
「なっ!?そ、そんなんじゃねぇーよっ!あんな奴ら誰が心配なんかするか!!……まぁウサ達とはダチになりたいけどさぁ…」
ヴィータは声を荒らげ顔を真っ赤にし、後半はゴニョゴニョと口ごもりながら抗議する。だがはやてはニヤニヤしながら気にせずに立ち上がった。
「でも最初警戒心バリバリだったのになぁ…急にずっこけたり呆れたり、最後にはウサ君抱えて離さないでコロコロ変わるヴィータは可愛かったでぇ~
さ、もう遅いしずっと玄関にいるのもアレやから家に入ろか。シグナム達も待ってるし明日は忙しくなるんやしなぁ~」
「あ、ちょっと待てよはやてぇ~」
はやてはヴィータをからかいながら戸を開け、ヴィータもはやてに続いて家に入って行った。
~翌日・機動六課海上訓練所~
「今日はよろしくお願いします。でもわざわざすいません、こんな立派な施設を貸して頂いて…」
「別に構わんさ、主から話は聞いている。信頼に値する者達だとな…」
「まぁ、お前らがやっているいつもの対決だと思っておもいっきりヤろうぜ。」
「そや、昨日も言うたけど困った時はお互い様や。それは嘘やない…せやから気にせんでえぇよ。」
ヴァンプ達フロシャイムのメンバーは昨日の打ち合わせ通り訓練所に集まっていた。これから始まる訓練はヴァンプ達に合わせ対決形式となっており、訓練所の一角を溝ノ口にあるいつもの公園に設定してもらっている。
そして今回、フロシャイムと対決するのはヴィータと桜色の髪をポニーテールに結い上げ凛とした雰囲気の漂う女性、シグナムであった。
「それじゃあ皆さん、そろそろですから準備してくださ~い!!」
フヨフヨと浮かぶリィンの合図で訓練の準備が始まった。ヴィータとシグナムが並んで立ち、それと対峙する形でまずは戦闘員とヴァンプが配置につく。
「皆ぁ、殺っちゃいなよぉ~っ!!」
「怪我しないようにねぇ~!!」
「どっちもあんま無理せんとなぁ~!!」
「タァイケツ、タァーイケツッ!!」
ホログラム内にあるベンチからアニマルソルジャー(Pちゃんはいつの間にかどっか行った)やタイザ、はやてからの声援を浴びながら、ヴァンプは槍を強く握り締め…どこか緊張気味であった。
「何、そう固くなるな。場所は違えどこれは訓練だ…いつも通りにやればいい。」
「そ、そうですか?レッドさん以外の方との対決って久しぶりだったもので緊張しちゃって…」
「じゃあ、あたし達をそのレッドだと思って挑んで見ろよ。そうすりゃ出来るだろ?ま、手加減はしてやんねーけどな。」
シグナムは物静かに、ヴィータは挑発するような笑みを浮かべ声をかける。それを聞いたヴァンプは深呼吸をし背筋を正す、そして彼は確信する。この人達とのご近所付き合いはきっと良好なものになると…
「ありがとうございます。じゃあ…
フッフッフッ、時空管理局の魔導士達よ…我々はフロシャイム、世界征服のみならず次元征服へも乗り出した悪の組織である。挨拶代わりだ…今宵我らの力を見せ、お前たちを血祭りにしてくれよう…」
ヴァンプは対決時独特の饒舌さを発揮し、体の動きも加え手に持った槍を天へと突き出す。
「出でよっ!!フロシャイムが誇るタッグ怪人…メダリオッ!!そしてカーメn…」
「悪いが隙だらけだ!!」
「ぶっ潰せ、アイゼンッ!!」
だが彼女たちは、メダリオとカーメンマンを呼び出している最中のヴァンプ目掛け攻撃を仕掛ける。その突然の出来事に、構えていた戦闘員や現れる最中だったカーメンマンとメダリオは勿論、攻撃を受けた当のヴァンプも反応出来ず。ヴァンプは地面に叩きつけられていた。
「ちょっといきなり何するんですか!?」
「手前ぇーヴァンプ様に何てことを!!」
「ちょ、ヴァンプさん大丈夫!?」
はやてとリィン、アニマルソルジャーはヴァンプに駆け寄り、戦闘員を含めた怪人達は口々にシグナムとヴィータへ抗議する。
「貴様ら…全員そこに直れ!!」
だがシグナムとヴィータは各々のデバイスを地面に勢い良く突き刺し、聞く耳持たずでフロシャイムの面々を一喝する。二人の形相は『反論は許さず』と言った気迫を出しており、何とか立ち上がったヴァンプと怪人達はつい正座の姿勢をとってしまった。
「全く、いつも通りで良いと言ったがここまでとは…特にヴァンプ将軍、貴方が一番隙だらけとはどう言うことだ?」
「そ、それは…まさか私が先に狙われるとは思ってなくて…」
「はぁ?何言ってんだよ…戦いでまず指揮官を潰してから確個撃破すんのは常識だろーが?だいたいあたしらは『レッドのつもりで挑め』って言っただろ。なのに何だよこのザマはよぉ?」
「そんなヴィータちゃん、いくらなn「訓練中だ、今はヴィータ『さん』と呼べよな。」…すいませんヴィータさん…」
二人の有無を言わせぬ空気の中、他の怪人達も正座のまま俯いて何も言えずにいる。
「私は主達の話でしか聞いて無いが、そのレッドという奴がこの様な事をしないとも限らない…故に今回はあえてそれをやってみた。しかしここまでだとはな…」
「ったく『悪の組織』っつったら普通は上の奴ほど強ぇ筈なのによぉ…飾りか?お前の槍と楯は飾りなのか?」
「い、いえけして飾りと言う訳じゃ…それにこっちにも『悪の組織の演出』と言う物がありまして…」
「言い訳は聞いてない、そう言うことは貴方に隙が無くなってから言って欲しい。だいたい戦闘と言うのはな…」
この後、シグナムとヴィータによるヴォルケンリッターとしての長き戦闘経験に基づくシビアな話が延々と続き、リィンは間をオロオロと、そしてはやては「ハハハ…」渇いた笑いしか出なかった…
後にヴァンプはこう語る、「シグナムさんとヴィータちゃんの攻撃はレッドさん程痛くは無いけど、本気の殺気をぶつけて来て…レッドさんとは別の意味で『逆らえない何か』を感じたの、私。」と…
『天体戦士リリカルサンレッド』この物語はミッドチルダにて繰り広げる善と悪の壮絶なる闘いの物語である―――
最終更新:2009年12月22日 16:37