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雲を突き抜けて聳え立つ管理局地上本部。
魔法の力によるものかその背後に小さく見える本部より低い標高の山々に雪化粧が施されていたが、地上本部の上へは雪がかかることはない。
その屋上に、夜になってから三人の男が集まっていた。新月の日を選んでいたが、星明りが男達の顔が浮かび上がらせる。

飛蝗の顔をし持つRX。白いスーツを着たヴェロッサ・アコースは風に靡く髪を手で押えていた。
レジアス・ゲイズは陸の制服を着込んで一人だけ寒そうにしている。

雲の上にあるそこは何の装備もなしに外で待つには寒々しい場所だった。
だが地上本部以上に高いビルは存在しないので、雲の上になるため盗み見る者の姿を発見しやすいという利点があった。
額の第三の目とも言うべきレーダーと二つの複眼を使って周囲を探るRXに二人の視線は向けられていた。

「ゲル怪人のことは聞いておるが、新しい情報はない」
「本当ですか?」
「既にスカリエッティに関する情報は全て提供してある。あんなことはもう起きないだろうとぬけぬけと言いおったがな」

疑うような目をして尋ねるヴェロッサに、レジアスが白い息を吐きながら言う。
だがそれもスカリエッティ自身の言葉を信じるならばという条件付きで、信じるつもりはこの場に集まった3名にはなかった。
加えてレジアスの言う情報も、レジアス自身の保身の為に都合のよい情報しか明かされていないのだということは明白だった。
冷えていく体を自前の筋肉が生み出す熱で暖めている中年を見ないようにしながら、疲れが溜まっているのか、ヴェロッサは張りが無い声で更に尋ねた。

「僕の方もまだ成果はありません。レジアス中将、彼の資金を断つ事は出来ないんですか?」
「無理を言うな! 私とお前達との繋がりが疑われたらどうする。貴様らこそいつまで時間と金を浪費するつもりだ!?」
「気長に待っていただくしかありませんね。スカリエッティの居所を掴めるような情報はありませんから…」

ヴェロッサとレジアスは互いに神経を逆なでするような声を出す。
索敵を終了したRXも含めて、3名ともに焦りがあった。
殆ど地上にはいないクロノの紹介で知り合ったヴェロッサは、先日のゲル化した戦闘機人の件で犯罪に手を染めていたレジアスに対し否定的な感情を持っていた。
RXの紹介でヴェロッサと密談を交わすこととなったレジアスは、成果を出す事が出来ない上にレアスキル持ちのヴェロッサに端から否定的だった。
レジアスがRXに対して好意的になったのも、犯罪者を何十人か届けた末のことだったようにもっと回数を重ねれば信頼も生まれるのかもしれないが、二人は共に忙しく仕事の面でも全く接点がない。
二人の間には深い溝があった。

「それよりも」

RXは彼にしては神経質に周囲をもう一度見回った。

「俺の感覚では大丈夫なようだが、ここは安全なのか?」
「…無論だ」
「事前に調べておいたけど、盗聴等の危険はなかったよ」

だけど、とヴェロッサはレジアスを見咎める。

「レジアス中将。貴方の所にいる内通者を即刻排除してもらいたいですね」
「内通者はわかっていれば使い道もある…私の動きには気付いないか危険視していないはずだ」

不機嫌そうに眉を寄せるレジアスの手をヴェロッサは指した。
そこには真新しい指輪が光っている。レジアスの顔に赤みが差した。

「正直に言って、スパイと再婚した貴方の事を信用していいのか僕は迷っています」
「アレか」
「彼女の本名はドゥーエ。スカリエッティの作り出した戦闘機人です」

レジアスの目がヴェロッサから外れ、微かに緩む。
ヴェロッサの不安を煽る反応をレジアスはすぐに仕舞い込んだ。
ニュースで見ることの出来る表向きの顔。強く、重みを感じさせる硬い表情を作り出していた。

「フン、泳がせておるだけだ。貴様のことは知らん」
「失礼ですが魔法を使われたのでは?」

レジアスは魔法が使えない。
その上地上本部の対策についてヴェロッサは信用していなかった。
通常であれば問題がないが、スカリエッティを相手にするには不安過ぎる。そういう評価をしていた。

「問題ない。地上本部の対策は万全だ」
「僕等は命がけなんですよ。他にも何名も…」
「貴様こそもう少し声をかける人間を選ぶのだな。不穏な動きがあると最高評議会が感づきつつある」
「それについてはご心配なく。順調そのものです」

声を荒げつつある二人を一歩離れた位置で見ていたRXが言う。

「…何が必要だ?」
「せめて奴がいる世界を特定出来る情報が欲しい。以前使っていた形跡のある場所位しか見つかっていなくてね」

偽ライドロン、通信の発信源、ゲル化した戦闘機人の処理報酬として支払われたデバイス。
どれもバラバラの位置から送られていてスカリエッティの現在位置を特定する助けにはなっていない。

管理世界だけでも100を超えている上に他にも仕事を抱えるヴェロッサが、管理局にはばれずにその中から一人の科学者を発見するのは容易なことではなかった。
だが既にRXも彼自身が知る情報はほぼ伝えて終わっていた。

「…他の情報は、奴が服を注文した店位しか知らないな」
「教えてもらっていいのかい?」
「構わないさ。メモは…」

ヴェロッサが問題ないと身振りで示したのに、僅かに間を置いてRXは幾つかの管理世界の名前とそこにある店を挙げていく。

「他には何か? この際だ。些細な事でも知っていることがあれば教えてもらいたいね」

RXは記憶を探り、できるだけ詳しい情報を思い出そうとしていた。
もう数年前になるが、スカリエッティが使っていたブランドなども今では分かる。
2人、あるいは3人で暮らしていた時のことが浮かび、熱いコーヒーの香りや洗剤の柑橘系の匂いを思い出す。
その中で彼女が言った言葉でひっかかりを覚えるものもRXは挙げていった。

「ありがとう。何かわかったら連絡するよ」

全て聞き終えたヴェロッサはRXに礼を言う。
三人はそれから暫く寒空の下屋上から見下ろせるミッドチルダの治安について暫く意見を交わしていた。
と言ってもヴェロッサは特定の世界を守る為に動く役職に就いた経験さえないので耳を傾けるに留まっている。
何らかの調査ならまだしも、市民を襲う犯罪にどう対処するかなどの問題についてはRXと大差ない素人考えしか浮かばないのだった。
その話が現場で働いている者達のことへと変り、RXがレジアスの他に犯人を引き渡していたゲンヤ・ナカジマに及んだ時に…レジアスの表情が曇った。
RXにはまだ告げていない事を告げるべきか否か。
ゲンヤ・ナカジマの妻等優秀な者達を率いていたかつての友、ゼスト・グランガイツがどうなってしまったか…
暫し考えた後、レジアスはやはり話さないことを選択した。

もう彼らは何年も前に死んでしまい、今更レジアスにはどうすることもできない。
彼らの遺体や、ゼストの部下だったメガーヌ・アルビーノのまだ幼い娘がレジアスには通達の無いまま管理局によって引き渡され、その後どうなったのかなど考えるまでも無いことだった。
もっと早く気付き配置換えを行っておけば殉死することはなかったし、子供も引き渡さずに済んだという負い目が残っていたが、そんなことは今スカリエッティを捕らえることにすら全く関係が無い。
RXの管理局に対する嫌悪感を強くするだけでしかないとレジアスは頭を振って、感傷を頭の中から追い出そうとした。

その為に強引に自分の管轄で情報漏洩が疑われた不快感を蒸し返し、いけ好かない本局から来たヴェロッサへ怒りを燃やす。それが最も手っ取り早かった。
ぼんやりしていたかと思えば、頭を振り、不快そうに眉間に皺を寄せるレジアスをRXとヴェロッサは不思議に思ったが、二人はマスクド・ライダーに対抗する手だてを練り行動する犯罪者への対策に熱を上げていた。

「ところで六課はホテル・アグスタの警備に回されるそうだな」
「ああ」

突然話を変えたレジアスの態度は不可解だったが、RXは簡潔に答えた。
男の表情から、RXは何があったのかはわからないが、レジアスが深く傷ついた出来事をまだ忘れられずにいることだけは察していた。
 ・・
「あの犯罪者がどうなろうと知ったことではないが、偶然、その前後数日の間にロストロギアがミッドチルダに持ち込まれるという情報がウチに舞い込んでおる」

それを聞いて、表情を変えられないため余人には読み取る事は出来ないにしろ、RXが身に纏っている雰囲気が剣呑なものに変る。
空港でのことや、先日のライドロンのことが頭に浮かぶ。
だがそれよりもRXは、レジアス自身は六課のことを嫌っているのは知っていても、レジアスの棘のある言葉にも反発を覚えた。
ヴェロッサもそれは同じだった。

「ちょっと待ってください。はやて達のどこが犯罪者だと言うんですか!?」
「何を言っておる!! 貴様闇の書事件を知らんとでも言うのか!?」
「貴方が言う事か!!」

はやて達への侮辱に険しい目をするヴェロッサの方へRXが顔を向ける。

「落ち着くんだ。レジアスもはやてちゃん達を侮辱するようなことは言わないでくれ」

咎められたヴェロッサは、レジアスに詰め寄ろうとするのを止めた。
ミッドチルダに集まる情報に全て目を通しているわけではないヴェロッサは、出所を調べてみようとだけ述べた。

「僕はこれで失礼する。こちらも真偽が分かり次第連絡させてもらうよ」

気分を害したヴェロッサがこの場を後にしようとするのを止める手はRXにはなかった。
恐らくはこのまま海へと戻り、仲間達と打ち合わせて別の管理世界に向かうのだろう。
RXは去っていくヴェロッサを見送った。去って言った後、RXは念を押して強い、怒りを含んだ声を出す。

「レジアス。あんな事を言うのは止めてくれ」
「…わかっておる」

ふてくされた子供のような不満げな顔で答えるレジアスにRXは苛立ったが、レジアスの態度にまで口を挟まなかった。
管理局の陸と海の確執もあり、今これ以上の事を求めてもこじれてしまうだろう。
水際で情報を入手する事が出来たのか、戦力を分散させる事を目的とした何者かが手を打ったのか。

「さっきの件だが、こちらでも目下調査中だ。何か分かり次第連絡がつくようにはしておくが…当日までに真偽が判明するかは望み薄だ」

やけに自信たっぷりなRXにしかめっ面のレジアスが言う。
それから二人は、近頃のミッドチルダの状況について暫く話しを続けた。
ミッドチルダの治安は良くなり、陸士を希望する者や協力的な者も年々増加していたが、スカリエッティ以外の犯罪者のことでも二人の間には話す事柄は多数存在していた。
途中で事件が発生する事もなく、どんな犯罪が増加しているのかや灯りに群がる蛾のように集まってくる強力な力を持つ犯罪者について、二人は意見を交わした。
不機嫌そうなレジアスの表情も話す間に険が取れていく。

「おっと、もうこんな時間か。悪いがワシもそろそろ失礼する」

寒空の中話しこみ過ぎたせいだろう、レジアスが体を震わせて時計を見た。

「妻を待たせているのだ」

それを合図に話を打ち切ろうとするレジアスへRXは遠慮がちに尋ねる。

「…レジアス。確かめておきたいんだが、本当に大丈夫なのか?」
「ドゥーエのことなら問題ない…今はまだ奴等はワシを殺したりはせん。ワシを殺す方がデメリットが大きいからな」

ヴェロッサと同じ懸念を示すRXに不愉快そうにレジアスは言った。

「何より奴等はお前を意識しておる。ワシはそれを逆手に都合のいい話を吹き込んである。ワシを排除した場合お前が奴等を探しに行くのではないかとな」
「そうか…」

冗談交じりの言葉に歯切れの悪い返事を返されたレジアスは訝しむような目でRXを見る。
RXはもう一つレジアスに尋ねたい事があったが、口に出せずにいる。

それについては、情に流されない合理的な考えだと言う事も出来る。
だが本当は、それは臆病さを隠しているだけだとRXは気付いていた。

「BLACK。管理世界ではどんな相手でも対象から外れることはない。例え相手がワシを裏切るのかもしれなくても…うっかりワシを握りつぶしてしまうかもしれない相手でもだ」
「!? いきなりなんだ?」
「…だが、その相手によってはお前のことをお義兄さんと呼ばなくてはならないかと考えると、年甲斐のない気持ちにさせられる」
「馬鹿なことを言うなっ」

反射的に返すRXの態度は犯罪者を連行してきたり、スカリエッティのことを考えている時とは違い、若いを通り越して幼さが感じられた。

「ここはミッドチルダだ。予断は許さん状況だが、以前に比べればこの地上本部の人間もBLACKがいるせいで緊張感がなくなっておる有様だ。もう少し……その、気楽に考えてはどうだ?」

そういったレジアスの声は彼の顔に似合わず優しげな響きをしていた。本人もらしくないと感じたのか、言うなりレジアスはそっぽを向く。

「どうしてそんなことを? ロストロギアの事を聞かされたらそうも言ってられないじゃないか」
「ロストロギアによって危機に瀕している世界は他にもある。管理局では割と日常的な話だ。お前の仕事が来るまでに疲れてもらうわけにはいかん」
「わかった。だがウーノ達は俺達の敵だろう」
「勿論だ。奴等ではなく…」

レジアスはその返答を妙に思ったが、口をつむぐ事にした。
よく考えて見れば、六課にスカリエッティが生み出した技術によって生み出された隊員が複数いることなど話すわけも無い。
そのまま二人は逃げるようにその場を去っていった。
レジアスは残作業を予定していた時間まで進めて家に戻り、ヴェロッサから改めてスパイだと念を押された新妻と遅い夕飯を取った。
分かっていたことだったがいざ他人から指摘を受けたせいで、下手をすれば娘より年下だったのかもしれないとサーモンソテーを食べながら冷や汗をかく羽目になった。

RXの方はゲル化して、地上本部の構造材の中を滑り落ちていった。
ゲル化したRXの速さを持ってすれば今住んでいる六課宿舎の部屋までは、一瞬で移動が可能だった。
数秒とかからずに部屋に戻るとすぐにゲル化をやめ、RXへと姿を変える。
移動中に感じ取っていた気配の方へと彼は変身を解かずに顔を向けた。
どういうわけかキッチンで調理中のフェイトに向けて話しかける。

「ただいま。今日は何をしてるんだ?」
「…あ、光太郎さん。お帰りなさい。お仕事お疲れ様でした」

何か考えごとをしていたらしく、一瞬遅れてフェイトは笑顔を見せた。
暖めていた鍋の中身を小皿に移して渡そうとする彼女の考え事が何か気になりはしたが、RXはそれを尋ねはしなかった。
引越しを手伝ってもらった時に鍵を渡してそのままになっていたのだが、近頃彼女は誰かにそそのかされたのかよく出入りするようになっていた。
始めは仕事のことを話すだけだった。だが今は不意に他愛ない相談を持ちかけられたり、戻ると部屋が片付けられていたりする。

「偶にはご馳走しようかなって思って…お食事まだですよね?」

料理を作っていたことはわかっていたが、RXは戸惑いながら皿を受け取った。
鳥肉をトマトスープで煮ているらしい。味見用に渡された小皿の赤いスープからはおいしそうな香りが漂っていた。

「い、いや、俺は太陽の光を浴びるだけでいいんだ。変身を解くわけにはいかないだろ?」
「そんなことありません。ここは光太郎さんの部屋ですし、誰か来たらすぐに変身すればいいじゃないですか」
さあ、と勧められたRXは変身を解くかどうか迷い体を硬直させたが、感想を聞きたそうにするフェイトにジッと見つめられるとRXは観念して変身を解いた。
人の姿に戻った光太郎は促されるままに席に座り、スープに口をつける。

久しぶりに取る食事を、光太郎はお世辞抜きにおいしく感じた。
風呂に入ったりするのと同じように、食事を取る必要はないのかもしれない。
ただ人間のふりをするのは単純に愉しいのだ。

「美味い…」
「よかった…!! 光太郎さんの好みに合うか心配だったんです」

嬉しそうな顔を見せて、フェイトはテキパキと自分の部屋から持ってきた皿を用意していく。
ウーノと暮らすようになってからの習慣で、光太郎もフェイトに尋ねて用意を手伝おうと後に続いた。
料理を盛った皿を渡された光太郎は、殺風景だった部屋にいつの間にか置かれているテーブルへ並べていく。

「…これも君が持ち込んだのかい?」

その途中で、他にも部屋の物が増えているのに気付いた光太郎はフェイトに尋ねた。

「え? は、はい。部屋が寂しかったから…なのはに相談して。ご、ご迷惑だったら持って帰ります」
「いやっ、実は昔同じようなのを枯らしたことがあってね」

声を窄ませるフェイトに光太郎はばつが悪そうに、だが懐かしそうに言う。
昼夜を問わず出動していくから手間のかからないものを選んだのか、サボテンの入った小さな鉢植えが窓際に置かれていた。

「だったら、私が時々見に来ますから大丈夫ですよ」
「それは助かるけど、フェイトちゃんも忙しいだろう」
「サボテンの世話位大した手間じゃありませんから」

サボテンの世話位で遠慮する光太郎が可笑しくてフェイトが少し笑った。
それを契機に食べだした光太郎へフェイトはお茶を飲みつつ幾つか話を振った。

自分の仕事の近況や、なのはが毎晩遅くまで新人達の訓練のことを考えていて、無理をしないか少し心配だということ。
光太郎は料理の出来を気にしながら話し続けるフェイトの言葉に耳を貸し、時折相槌を打っていた。
話は近日ホテル・アグスタで開かれるオークションのことに及び、フェイトは空中に開いたウィンドウに当日着ていくドレスを表示させる。

「母さんがあれもいい、これもいいって、何着も勧めてきて選ぶのが大変だったんですよ」
「ははっそりゃあ、大変だったね」

会った回数は余り多くないが、リンディがフェイトに色々なドレスを進めている様子は簡単に想像がついた。
その時のことを思い出して、困ったように眉を寄せるフェイトを見ながら光太郎は笑う。

「そうだ。その事で話がある」

箸を止める光太郎に談笑して緩んでいたフェイトの表情が引き締められる。
その場で座りなおして、話を聞く体勢を作る彼女の真面目さを好ましく思いながら光太郎は言おうとして、周囲に目をやる。
魔法による盗聴も今の光太郎は感じ取ることが出来るようになっていたが、RXの姿を取っている時よりも精度は下がってしまう。
勿論部屋に戻る度に確認していたが、これまでのスカリエッティの行動から警戒してしまうようになっていた。

「そんなに気にしなくても、ここは安全です。私達を信じてください」
「すまない。今日レジアスから話を聞いたんだが、警備する日の前後にミッドチルダにロストロギアが持ち込まれるって情報が入ったらしい」
「レジアスって、レジアス・ゲイズ中将ですか!?」
「前に話さなかったかい?」
「だって、光太郎さんを追跡するって公言してた人じゃないですか…」

口にこそしなかったが、フェイトの表情には不信感がありありと浮かんでいた。

海や聖王教会などとは組織運営に対する姿勢に根本的な違いを持ち、レアスキルを嫌うレジアスは黒い噂も絶えない。
それにスカリエッティを追い続けているフェイトには、スカリエッティを援助してもいる男は信用するに値しないのだろう。
レジアスには何度も犯罪者を引き渡し、軽く話をするようになっていなければ光太郎もレジアスを信用することは出来なかっただろう。
光太郎はフェイトを説得する言葉を持っていなかった。

「あれは、俺が管理局に所属してなかったからさ。彼らに犯人を引き渡していたのも知ってるだろう? 俺は彼を信用している」
「私達は信用できないと言っても、ですか?」
「ああ」

フェイトは納得がいっていない様子だったが、光太郎は構わず話を続けた。
両方とも悪い人間ではないが、レジアスの方でもはやての事を犯罪者呼ばわりしていることを考えれば、今話を続けてもこじれるだけだ。

「当日。俺はアグスタに行きたいんだが、フェイトちゃんはどう思う?」

当日開かれるのは骨董美術品オークションには取引許可の出ているロストロギアが幾つも出品されている。
密輸取引の隠れ蓑になっているという話もあり、こんな話が今耳に入ってきたのはホテルの方に何かあるのではないかと光太郎は考えていた。

フェイトの方も、話を続けても拗れてしまうだけだと思ったのか、光太郎を追及せずに手を口元に当て考え込む。
光太郎は残っている料理を食べながら彼女の答えを待った。

「…いいんじゃないでしょうか? このタイミングで、というのが私も気になります。ホテルの方から光太郎さんを引き離す為かもしれません…
それに、光太郎さんのスピードなら大抵の場合どちらでも間に合うと思います。本局の方から誰か派遣してもらえないか、明日なのは達と相談してみましょう」
「そうだな…そう言えば、ヴィヴィオは元気にしてる?」
「はい! また光太郎さんに会いたがってますよ」

彼女の意見に頷いて、光太郎は再び彼女との時間を楽しもうと、フェイトの家族のことへ話を戻す。
それから暫く、フェイトはヴィヴィオの学習能力が高いことが分かってからというもの、リンディ達がいかに大喜びで英才教育を施しているかを話して聞かせた。

光太郎も喜んで話しを聞いていたが、時間が過ぎていくに連れて時計を気にし始める。
普段は余り遅くない内に切り上げるようにしているのだが…時間を気にする光太郎に気付き、フェイトもバルディッシュに時刻を尋ねた。
若干機械的な音声で返事が返されると、彼女は不意に俯いた。

「それと…あの、」
「なんだい?」
「実は……ライドロンのことで新しいことがわかったんです」
「え?」
「スカリエッティがどういった手口でライドロンを持ち去ったのか、母から連絡がありました」
「本当かいっ!?」
「は、はい。それが、どうやらスカリエッティと以前教えていただいた戦闘機人が翠屋に客として何度か出入りしていたことがわかりました」
「翠屋?」

驚く光太郎に説明を聞いた際の自分の姿でも見たのか乾いた笑みを少し見せ、フェイトは続ける。

「えっと、なのはのご両親が経営されてる店です」
「確かな話なのか? なんでそんなことを…」
「軽く変装していたようですけど、背格好や言動から見て間違いありません。理由は恐らくライドロンを手に入れる為…当日、その二人がトランクを店に置き忘れて後で取りに来るという連絡があったそうです」

その中身に思い至り、拳を握り締める光太郎の手を取り、フェイトは頷いた。
言葉にはしなかったが、照明に照らされた二人の表情には良く似た色が現れていた。

「取りに来たのはライドロンに乗ったスカリエッティだったそうです」

 *

数日後、機動六課が警備を命じられたホテル・アグスタはミッドチルダ近郊の森の中に建設されていた。
ホテルを中心に、はやての守護騎士と新人4名、RXが外を、はやて達隊長3名が会場の中で警備に当たる。
詳しい情報を本部から受け取った後、人質と同化して助け出したことがあるのを知っていたはやての判断で、六課は現場の人員を本部に残さなかった。

一帯にある森は、人の手で育てられたもので、不自然に感じないよう程よくランダムに配置された若いまっすぐに伸びた木々が枝葉を茂らせていた。
舗装された道はないが、人が通りやすいように用意された道や広場が点在していて、事件が起こった際には六課に配備されたヘリが離着陸出来そうな広さを持つものもあった。

ホテルの屋上に到着すると、はやて達隊長3人は会場内の警備を行う準備をする為に一旦別れる。
その間に、他の面々は移動中に説明のあった位置の警備につく為、分かれていった。

RXは、はやての守護騎士の一人シャマルと共に屋上に残っていた。

「シャーリー。こちらは準備完了したわ」
『こちらも完了しました。反応があり次第ご連絡します』

魔法によってホテルを中心にした警戒網を張り巡らせ、後方支援部隊と通信を切ったシャマルは自分に向けられる視線に気付いてRXへ顔を向けた。
六課の皆が配置についていく様子や、シャマルの魔法を物珍しげに見ていたRXは、シャマルに訝しげな視線を向けられてようやく自分の仕事を始める。

RXの体には様々な能力がある。
複眼には、ただ超人的な視力だけでなく、透視の機能も付与されていた。
元々の視力が常人とは比べ物にならないため、これを使いRXはシャマル達のセンサーよりも遠方をよりクリアな状態で把握する事が可能になるのだ。

だがその時、普段より口数が少なくなっていたRXの前にモニターが開いた。
場内の警備に着く準備をすっかり整えたはやて達が、RXや移動中の隊員の前に顔を見せる。
緊急の際も一瞬で着替えることができるバリアジャケットの便利さのお陰で、会場内に入るはやて達は普段見慣れないドレスに着替え、いつもより厚く化粧を施していた。
どや?と軽い調子で着飾った自分達の感想を尋ねられたRXは、当たり障りのないほめ言葉を言う。

オークションに招待されている、考古学者でもあったユーノ・スクライアや、その護衛につくヴェロッサの所に顔を見せに行く為一旦モニターが切られると、RXは息をついた。

「災難でしたね」
「ああ。直ぐに周囲を見ておかないと…こんなことで接近に気付かなかったら後で怒られる」
「センサーにはまだ何もかかってませんから、そんなに気にする事はありませんよ」

シグナムや、エリオとキャロについていったザフィーラを少し恨めしく思いながら、RXは周囲に目を走らせて行く。
六課の現場にいる人間では数少ない男性なのに、ザフィーラは犬の姿を取っている時は、必要なこと以外喋らない。
お陰でエリオ達等は、ザフィーラは犬の姿を取っている時は喋れないと勘違いしていそうな程だ。

RXが透視の機能を使い、邪魔なものを透かして周囲を見渡すのに頼りにするのはやはりというか、動物的な勘だった。
だがそうやって視界を変えると、今までに無かったものが見えるようになっているのにRXは気付いた。

生物から揺らめく生体のオーラが、生命エネルギーの美しい炎が見える。
他の光に混ざって今までは見えづらくなっていたせいで気付かなかった。
だが、気付いてしまえば、RXが透視を止めても、隣に立つシャマルやシグナム、はやての守護騎士達とティアナ、フェイト達の炎が違うことにさえはっきりわかる。

「RXさん。何か見つかりましたか?」
「い、いや…もう少し待ってくれ」

シャマルの声で我に返ったRXは、再度透視して周囲を見つめる。
すると…今度こそ直ぐに森の中を接近してくる複数の機動兵器と怪しい二人組みを発見することが出来た。

ゆっくりと接近してくるスカリエッティのガジェット・ドローンは、まだまだ事前に教えられていた警戒範囲の外だ。
それに比べ、二人組みはもう既に索敵範囲内に入っている。
フードを被って顔を隠していたが、これも透視すれば問題はない。
一人は女の子。もう一人は大柄な男性…探索用の小型の虫が手に止まり、デバイスらしきグローブも見えた。

「RX。何か見つかりましたか?」
「ガジェットが陸戦1、35。陸戦2が4機…それに怪しい二人組みがいる」
「二人組み…スカリエッティの戦闘機人ですか?」

懸念を口にしたシャマルにRXは首を振った。

「そうじゃない。(俺にも細かい所はよくわからないが、)女の子は人間だ。男は、普通の人間じゃあない」
「? はやてちゃんに連絡しておきます。シャーリー!!」

空中にモニターが開く。
スカリエッティの使っているものとほぼ同じタイプの画面に、周辺の図と隅に小さく会場内にいるはやての顔も映されていた。
シャマルがはやてに怪しい二人組みの事を報告する間、RXは彼らの動きを見張り続ける。
説明を聞いたはやては、すぐに視線を森へと向けるRXへと口を開いた。

『RX、その二人に接触して危険やからアグスタの中に避難するように説得してくれる?』
「了解した。拒んだらどうすればいい?」
『そうやなぁ……気絶させて連れてきて。もし敵やったら、RXの判断に任せる。シャーリー、センサーに反応あったら直ぐに教えてな』

頷き、RXは瞬時にバイオライダーへと姿を変えた。
RXの足でもそう時間はかからないが、向かう途中で敵兵器が警戒網の中へ入り込むことは明白だった。
だがバイオライダーとなり、ゲル化して向かえば少しだが時間の余裕が得られる。

ゲル化したRXが、屋上から消えた。
木々をすり抜け瞬く間に二人の前に移動したバイオライダーはゲル化を止めて、目の前に突如現れたゲルから変身した怪人に驚く彼らへとゆっくり近づいていった。
説得するのにもしかしたら良い影響を与えると思ってか、二人に近づいていく間にまたRXへと姿が変る。

彼らまで後2歩という所まで近づいた所で、RXは足を止めた。
それを見計らったように、スカリエッティが軽薄な笑みを浮かべて彼らの前にモニターを開いた。

『ごきげんよう騎士ゼスト、ルーテシア。それにRX』
「スカリエッティ!!」
「ごきげんよう」
「何のようだ」

瞬時に殺気立つRXを気にも留めず、スカリエッティは二人に笑顔を向ける。

『あのホテルにレリックはなさそうなんだが、実験材料として興味深い骨董が一つあるんだ。一つ協力してはくれないだろうか? 君達なら実に造作も無い事のはずなんだが』
「ここは危険だ。悪いが俺と来てくれないか?」
「…断る。レリックが絡まぬ限り互いに不可侵を決めたはずだ」

騎士ゼストと呼ばれた男はスカリエッティに返事を返して、槍型のデバイスを起動させる。
それを見たRXもいつでも襲いかかれるように体勢を変えた。
今にも戦い始めようとする二人にわざとらしいため息をついて、スカリエッティは残る一人の少女にお願いする。

『ルーテシアはどうだい。頼まれてくれないかな』

ルーテシアは、幼い頃に光太郎と同じように管理局の手引きでスカリエッティに引き渡され、改造を施された。
目をつけられた理由は、人造魔導師素体としての適合度が高かったメガーヌ・アルピーノの娘だったから。
その母親は、スカリエッティの基地に侵入し、撃退されて以来ずっと…今もスカリエッティに囚われ、眠り続けており、『母が復活した時、自分の中に「心」が生まれる』とルーテシアは硬く信じていた。

そんなルーテシアに、スカリエッティは自分なら眠り続ける母親を目覚めさせる事が出来ると彼女に囁いて…利用していた。

「いいよ」

まだ幼いルーテシアは、特に不満も抱かずにスカリエッティの言葉を信じている。

「!? こんな奴の言う事を聞いちゃ駄目だ!!」

迷う様子も無く了承したルーテシアに詰め寄ろうとするRXを、ゼストの槍型のデバイスが間に入り込んで阻む。

「すまんが、今はまだ捕まるわけにはいかん」

ルーテシアの盾になるようにゼストはRXと対峙する。
ゼストは、かつて時空管理局・首都防衛隊に所属するストライカー級の魔導師だった。
レジアスとは互いに理想について語り合った親友の間柄であり、スバル、ギンガの母クイントと、ルーテシアの母メガーヌを含む精鋭達を率いていた。

8年前、戦闘機人事件を追っていた彼は、親友であるレジアスによって捜査から外されることとなった。
上から指示されていたのだろうが、レジアスが正式に辞令を下す前にゼストにそのことを告げていた事から、同時にゼストを危険から遠ざけるという意志もあったのだろうと思われる…
だがレジアス自身に黒い噂が付きまとうようになっていた事もあり、(実際犯人とレジアスの間には癒着があるのだが)ゼストは逆に捜査を急ぎ、部隊を率いて機人プラントと目される『施設』の調査に向かった。

その結果、そこで戦闘機人と、後に『ガジェット』と呼ばれる機械兵器の大群による襲撃を受け、部隊は全滅した。
ゼスト自身もそこで死亡したのだが、人造魔導師素体としての適性が認められたことでスカリエッティの手によって、彼は人造魔導師として『復活』した。

部隊を全滅させ、死亡扱いとなったゼストの目的は、『今一度レジアスに本心を問いただし、もし誤った道に進んでいるなら、可能であればその道を正す』。
そして、捜査を強行したことは記憶にないのか『8年前自分と自分の部下達を殺させたのはレジアスなのか』確かめ、『ルーテシアの目的を果たす手伝いをする』ことを心に決めている。

どれもまだ果たせていない。
特に、ルーテシアの目的を果たすには、まだスカリエッティとは協力関係を続けなければならないのだ。
RXを相手取るのはリスクが高いが、スカリエッティの前であっさりと捕まるわけにはいかない。

『シャマル先生、センサーに感…ガジェット・ドローン陸戦1型3、4、5…陸戦2型も確認できました!!』

RXの耳に、シャーリーの通信が届く。
制限時間が迫っている事を知り、RXは少しずつ彼らとの距離と詰めていった。

『優しいなあ。ありがとう。今度是非、お茶とお菓子でも奢らせてくれ。君のデバイス『アスクレビオス』に私が欲しいもののデータを送ったよ』
「うん。じゃあごきげんようドクター」
『ごきげんよう。吉報を待ってるよ』

そして一人愉しそうに笑うスカリエッティは、そう言ってモニターを閉じた。
だが、それでスカリエッティがこの場の様子を探るのを止めるはずもない。
迎撃に向かう守護騎士達が光の帯を空へと描くのが、RXの複眼に映り、RXとゼストの間で緊張が高まっていく。
不測の事態を防ぐ為にRXの四肢に力が籠もり、ゼストは、ルーテシアがスカリエッティの欲しいものを手に入れる間RXを相手取り、その後この場から離脱しなければならないようだ。

「ルーテシア。ここは俺に任せて目的を果たせ」

ルーテシアはRXをちらりと見てから、グローブ型のデバイスを起動し、最も信頼する『ガリュー』や他の虫を召喚する。
黒い楕円形の繭のようなものが、グローブに埋め込まれたデバイスの上に出現するのを見て、RXが警告する。

「奴の悪事に加担するのは止めろ!!」
「マスクド・ライダー。ここは退いてくれ。俺達にも引き下がれない理由がある」
「それは出来んッ、何故奴に協力するんだ!?」
「言葉で語れるものではない…」

ゼストはあえて話し合わずに、相手の隙を窺った。
二人のやり取りを無視して、ルーテシアは繭を優しげな手つきで撫でながら、スカリエッティのお願いを説明する。

「ガリュー、インゼクト達にドクターの探し物を探させるから、その間相手をして」

繭が巨大化しながら、一瞬だけ強く光りを放つ。
そのまま繭は消えて中から現れたガリューは、RXに少し似ていた。
鋭い棘のある甲冑のような外皮を持ち、目は四つ。額にはRXの第三の目らしきものがあり、マフラーを身につけていた。
上腕から、鉤爪が伸びてRXに向けられる。

ガリューのことを余程信頼しているのか、ルーテシアはそのまま恐らく『インゼクト』を召喚する為の魔法を行使し始めた。

「くッ…止め『フルドライブ・スタート』

穂に埋め込まれた宝玉が感情の無い音声で告げた『フルドライブ・スタート』と共に、ゼストの魔力が爆発的に増大する。
それは金色のオーラとなって彼の肉体とデバイスを輝かせ、周囲を照らしだす。
光りが納まり始める前に、尚も説得を試みようとするRXへとゼストは最初から全力で槍を突き出した。

ほんの一歩分の距離をゼストが通り過ぎる余波が、台風のような風を作り出して木々から葉を吹き飛ばし、枝を折って舞い上がらせる。
激突する音に気付いた者達がもし目を向けていれば、雲が吹き飛ばされそこだけ一面青空となった空に土と共に舞っているのが見えただろう。

RXはその最中に、自分の拳が握り締められ、磨り潰すような音を聞いていた。
相当に負担がかかるのか、真っ赤な複眼には、一瞬だけ苦痛に耐えるゼストの表情が映って消える。

瞬く間に彼らの距離が縮まり先を取って襲い掛かる槍の穂先を握り締めたのとは逆の手が受け止めた。
勢いに背後へと押しやられながら、掌に食い込んでいく穂先を包む指が鮮やかなオレンジ色に染め上がる。強度を増した皮膚が突き抜けようとする刃を押し返していく。
受け止めた腕が槍を横へ逸らしながら引き、ゼストの体勢を強引に崩す…全力の一撃を受けるRXの体は、甲冑のような装甲へと変貌していた。

ロボライダーへの変身を瞬時に遂げた光太郎に、ゼストは驚きながら口から大量の血を吐いた。
握り締められた拳は、強引に体勢を崩された体へと打ち込まれていた。

「ゼスト…!?」

それを見て声を挙げるルーテシアとガリューにロボライダーがRXであった頃よりも硬く冷えた複眼を向ける。

「ガリュー、ゼストを…え?」

ガリューは、主人の命に反して彼女を抱え込んだ。
半ば倒れたゼストの腕が、示し合わせたようにロボライダーの体を掴む。
ルーテシアを抱えたガリューは、脇目も振らずにその場から離脱していった。
自分の動きを阻害するゼストを払いのけ、高速で離脱していくガリューの姿をロボライダーは目で追った。
かなりの速度で離れていくガリューの姿は見る間に小さくなっていく。

払いのけたゼストに拳を振り下ろしたロボライダーの右手が銃を握る形で太ももへ添えられ、光がボルテック・シューターを生み出す。
ガリューはかなりのスピードで離脱しようとしているが、ボルテック・シューターならまだ容易く打ち落とせる距離に過ぎない。
だが引き金を引けばガリューと少女を同時に貫いてしまう事になるだろう。
今男を倒したように…魔法と違ってRXの肉体は、とても不便な事に、容易に肉体へ回復不能のダメージを与えてしまうのだ。

『RXさん大変です!! クラナガンで事件が発生し、貴方に救援要請が来ています!!』
「わかった。直ぐに向かう…」

ロボライダーは力が抜けてしまったのか、だらりとボルテック・シューターを下ろした。
仮面からは、今の感情を読み取る事はできない。
取り出した時と同じく腿に添えられたボルテック・シューターは光となって消えていく。

「すまない。男の方は倒したが、少女の方は逃がしてしまった」
『わかりました。こちらで出来るだけフォローをしておきます。今は事件の方をお願いします』

RXはゲルと化して、首都へと戻っていった。
元々スカリエッティの処置に問題があったのか、多大な負担を体に強いた直後にカウンターを加えられたゼストは収容された後治療の甲斐なく再び命を落とした。
既に死亡したことになっていた彼の遺体は内々に処理された。

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最終更新:2010年03月06日 08:23