第二話「move」

爆音がした。しかも、意外と近い。
「なにっ!?」
すぐそこで火事が起きているのが確認できた。
とりあえず何が起こったのか、確認しに行くためにスコールはフェイトの素へ走った




「なんや、このアンノウン。きもちわるいなぁ。」
モニターには、芋虫やハエのような変なモンスターが現れていた。
大至急、これらを排除しにいかなければならないのだが、少々問題があった。
今待機しているのは、ティアナ、スバル、エリオ、キャロ、フェイトの四人だった。
何が問題かというと、モニターに映っているモンスターたちは、結構グロテスクだ。
そんなものを女の子や年端も行かぬ少年少女にみせるわけにはいかないのであった。
実際、はやてもちょっと鳥肌が立っている。
(…仕方ない。フェイトちゃんに行ってもらうか。)
ちょっと気が進まないながらも、フェイトに排除を指令したそのとき、スコールが部屋に入ってきた。
そして、モニターを見て絶句する。
「!?」
スコールは一瞬我を忘れた。
何故、俺の世界のモンスターがこんなところにいるのか?
しかも、見積もって80体はいるだろう。その全てがスコールの戦ったことのあるモンスターだった。
ケダチクやバイトバグ、さらにはアルケオダイノスまでいる。
こいつらのことを何も知らずに他の人が戦うのは危険だ、そう判断したスコールは
「こいつらの排除を俺に行かせてくれ。」
と頼んだ。
だが、スコールの実力を知らないはやては彼を最前線に出すのを渋った。彼は次元漂流者で、その漂流者を無事に帰すのは自分の役目なのだから。
「でもなぁ…」
スコールは少しいらだっていた。彼は昔から弱い者のように扱われるのは嫌いなのだ。
そんなはやての心情を察したのか察してないのか、スコールはあまり語ろうとしない。
そうこうしている間にも、少しづつ被害は広がっていく。
スコールはもう待たなかった。
「わかった。俺一人で行こう。」
そういって部屋を飛び出し、モンスターのいるところに走って駆けつけた。
「あっ!!ちょっと!」
フェイトがあわてて追いかける。しかし、スコールは意外に早い。
幸か不幸か、現場はすぐ近くだった。
そして、スコールの戦いの日々が始まった。




現場にいち早く到着したスコール。
これだけ敵が多いと、単体を狙った攻撃は不利だ。なら、範囲攻撃か、魔法か。スコールは後者を選んだ。
(魔法で一気に片付ける!)
心の中でそうつぶやいた後、ストックしていた魔法をつかった。
「トルネド!」
唱えた瞬間、大きな竜巻が多くの敵を飲み込む。中では雷も起こっており、強い魔法の一種だった。
不意に竜巻が消え、飲み込んでいた敵を地面へとたたきつける。これで大抵の敵は片がつく。
問題は、アルケオダイノスだ。こいつはなかなか体力が多い。なので、スコールの十八番、連続剣でしとめることにした。
「ハァッ!」
気合の一声とともに駆け出し、アルケオダイノスに近づく。そして、目にも留まらぬ速さで8回ほどの連続攻撃を叩き込んだ。
十中八九、生きてはいまい。
そして、残る敵の殲滅に向かった。




フェイトが着いたときは、ほとんどの敵がいなくなっていた。ほとんど戦う余地もなかった。
ここまで強いとは…と感嘆するフェイトであった。
なので、後ろから襲ってきた敵に気づかない。気づいた瞬間、

何かが、 走り抜けた。

よく見ると、スコールがフェイトの背後の敵を斬っていた。スコールの得意技のひとつ、ラフディバイドを使ったのだ。
このスピードにはフェイトも、彼の戦いをモニターで見ていたはやても驚いた。しかも、息切れひとつない。
まさか、これほどとは…と二人は驚く。
呆然とするフェイトを傍目にスコールはぼそりと呟いた。
「……任務完了(Mission Complete)……」




それから程なくして二人ははやての事務室に呼ばれた。
そこには、文字通り‘小さな少女’がいた。
「あら、三人ともおかえりです~!」
とにっこり笑ってはやての肩に降りた。
スコールが意味不明そうな顔をすると、フェイトが説明が説明を入れた。
「この子はリインフォース。はやてちゃんの融合機で彼女の、大切なパートナー。」
ちょっとわからない単語が入ったが概ね理解できた。
「ん?誰ですか、あなた。」


……………………


「なるほど。というわけで、ここにいると。そういうことですね。」
フェイトとはやてがリインフォースに説明した。
「では、これからよろしくです~」
リインフォースがハイタッチを求めてきた。それに黙って答えてやる。
その微笑ましい行為を見届けた後、はやてが話を切り出した。
「スコール。アンタの戦力は並大抵の物やない。その力、うちに貸してくれへんか?」
遠まわしに機動六課に入隊しないか、という勧誘である。
本来なら、スコールはSEEDに属しているのでさすがにダメだが、この世界にはSEEDはない。
それにスコールには知りたいことがあった。
「……わかった。本入隊は無理だが、仮入隊ならしよう。」
そう告げた瞬間、三人の顔がとてもうれしそうなものに変わった。
「オッケーや!じゃ、個室に案内するから、ついてきてーな!」
満面の笑みで個室に案内するはやて。スコールをじっと見つめて、視線を合わせると頬を染めて視線をそらすフェイト。
そして、少しポーっとしながらスコールを見つめるリインフォース。
この三人に友情と恋の試練が襲い掛かると言うことをまだ誰も知らなかった。








玉座。それは王のみが座ることを許された椅子。
そこに、一人の女性が座っている。
妖艶、ともいえる容姿を持ちながら、冷たい笑みを宿して。
ある意味では、彼女は女王に見える。
「伝説のSEED……スコール。アナタは私の手のひらの上で踊っているに過ぎない。」
彼女が見ているのは、スコールが戦っている様子だった。
感情のない瞳でその姿を見据える。
―――私が用意した余興に付き合ってもらう。 だからこそ……―――
その先を彼女ははっきりと口にした。



「言ったでしょう?全ての存在を否定すると……」




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最終更新:2010年06月26日 19:41