第四話「The rest time」
………なんで今、自分はこうなっているのだろう。
「何でスコールさんはそんな強いんですか!?」
「スコールさんの武器はなんていうんですか?」
「どうやったら、そんなに速く動けるんですか!?」
「何を食べたらそんなに背が大きくなりますか?」
………怒涛の質問ラッシュである。
ちなみに質問した順番は、スバル、ティアナ、エリオ、キャロの順だ。
今手にしているこのパスタを食べさせないようにしているんじゃないかとも疑うことの出来るスピードだ。
「まあまあ、皆落ち着いて…」
フェイトが助け舟を出す。そもそも、この状況もおかしい。なざフェイトやなのはやはやてが一緒に昼食を食べているのだろうか。
それを説明するには30分ほど前にさかのぼる。―――――
「スコールさん、一緒にお昼食べませんか?」
そう言い出したのはスバルだった。普段どおり一人で食べたいと思っていたので、断ろうと思ったときであった。
「あ、じゃあ私もご一緒していいですか?」
とティアナがいった。それに続くように、エリオとキャロも
「僕もいいですか?」
「私もいいですか?」
とたずねた。しかも、そこになのはがやってきて、
「あ、なんか楽しそうだね♪ついていこーっと。」
「なのはが行くんだったら、私も。」
「あ、みんなずるいな~。こうなったら、私もついてったる!」
といった感じでみんながスコールと食事をしたいと言い出したのだ。
一人二人ならどうにでもできたが、ここまで広がってはどうしようもない。仕方なく、みんなと昼食をとることにした。
そして、「食事回」が「質問回」と変わるのはそう時間はかからなかった。
フェイトが助け舟を出した後、一人ずつ質問をしてきた。
「スコールさんって何でそんなに強いんですか?」
「元の世界でSEEDという傭兵部隊にはいっていたからだろう。訓練もしていたからな。」
「スコールさんの武器の名前はなんていうんですか?」
「これは、ガンブレードと呼ばれる武器のひとつでこいつの名前はリボルバーだ。」
「どうやったらそんなにはやく動けるんですか?」
「日々の鍛錬の中で速く動く、という意識を持つことだ。」
「何を食べたら、そんなに背が大きくなりますか?」
「………さあな。」
こうやってひとつずつ質問を消化していく。ここで、なのはとフェイトが質問をしてきた。
「さっき使ってた不思議な魔法は一体何なの?」
この説明は長くなりそうだ。
「この魔法は擬似魔法だ。本当の魔法は俺たちの世界で言う「魔女」だけが使える。魔女の魔法は俺たちの魔法の5から6倍はいくだろう。
この技術はある魔女を研究対象にして生まれた。これは基本はG.F.をジャンクションさせないと使えない。」
「G.F.って何?ジャンクションって?」
「G.F.というのは……そうだな。お前たちの世界で言う「召喚獣」に近い。召喚獣を体内に取り込んでいるといった表現がわかりやすいか。
ジャンクションと言うのは、そのG.F.と意識をリンクさせることだ。そうすることで、G.F.を召喚できたり、そいつの能力を使えるようになる。
ちなみに、俺のG.F.はエデン、と言う名前だ。」
「「「「「「「へぇ~~」」」」」」」
全員が納得の表情を浮かべる。ちなみに、エデンはスコールのガンブレードを強化することができ、そのガンブレードの名を「ライオンハート」という。
ライオンハートにすることで、スコールの最強の技、「エンドオブハート」が使えるようになるのだが、ここでは黙っておく。
「でも、擬似魔法にしてはずいぶん威力が高かったよねぇ~。」
「うん。それに、ラフディバイド…だっけ?かなり威力高かったし、クロスファイアーシュートとリボルバーシュートをかき消されたときは
さすがに、呆然としちゃったな~。」
などと会話しているうちにさっさとパスタを食べる。
………麺が少し冷たい。さっさと食べ終えて、質問を待った。
が、質問はどうやら終わりのようだ。
などと思っているとき、ふと時計を見た。休憩時間はもうそろそろ終わりのようだ。
………またあのハードな練習をやるのだろうか。なにはともあれ、とりあえずまた「ロングアーチ」に向かうのだった。
また訓練をやるのかと思いきや、どうやらスコールだけは違ったようだ。どうやら、任務があるらしい。
任務内容は、ある人物の護衛だそうだ。その人物を目的地まで無事に護衛できれば任務完了だとの事。
並みの魔道士には難しいかもしれないが、SEEDを甘く見てはいけない。どちらかと言うと、スコールはこういうのは得意なほうだ。
スコールは早速その護衛する人物に会いに行った。が、その人物はなんとフードをかぶりサングラスをしてマスクをしていた。
どう見ても変質者、あるいはそれに類するような人物の格好だ。
「俺があんたの護衛をするわけだが、そのまえにひとつ。顔を見せてくれ。」
と言ってみても何もする気配がない。それどころか、何もしゃべろうともしないのだ。話しかけても無視される。
嫌なやつである。まあ、そういう私的感情を任務に持ち込むわけには行かないので、深呼吸をして心を落ち着かせた。
「さて。時間だ。行くぞ。」
そういって彼らは目的地までの道のりを歩いていった。
通るルートは旧市街地。見晴らしがよくないので、奇襲にあうかもしれない。なので物陰には十分な注意を払っていた。
30分も歩いただろうか。このまま行けば大体15分くらいで目的地に着くくらいのときだった。
バシッ。
突然スコールの足元に何かが当たった。その正体を確認する前に依頼主を壁に押し付ける。
こうすれば背後から突然さらわれる、といった事態は回避されるからである。どうやら、あの廃墟の物陰からなにかが放たれたらしい。
確認しようと依頼主の手を握りながら物陰の確認をする。手を握るのはさっきも説明したとおり、さらわれないためだ。
物影を一気にのぞいた瞬間、その何かから突然攻撃を受けた。ガジェットである。しかも一機や二機ではない。見積もって十機。
とりあえず、一旦その場から離れる。依頼主を抱えて走る。とにかく走る。
そして目的地に近い見晴らしのいい土地に来る。ここから戦いの始まりだ。
相手は機械。なら、水にぬらしてやれば事足りる。スコールはエデンとジャンクションし、魔法を放った。
「ウォータ!」
唱えた瞬間、ガジェットの群れの中心部あたりから水が溢れ出し、多くのガジェットを飲み込んでいく。
そして水が消えたときにはもう、ガジェットは物言わぬ残骸と化していた。
残るは二、三匹。一気に片を付ける。刹那、依頼主の姿を見失った。探してみると、なんとまたもやどこからか現れたボム、というモンスターに捕まえられていた。
だがここでスコールは違和感を感じる。依頼主は暴れることもなく浮いている。
一瞬考えてその答えが出た。
――――なぜ、敵に連れ去られていると言うのにあんなにもおとなしいのか?――――
その答えがわかったので、さっさとガジェットを切り倒し、ボムにブリザドを当てた。
そしてお姫様抱っこで受け止める。
もう依頼主のペースにあわせて歩くのはめんどくさいのでそのまま抱えて目的地まで移動する。
目的地に到着し、依頼主をおろす。そろそろいいだろう。彼が感じた違和感に対する答えを確認するためにも。
スコールは一気にフードを引きはがす!そして現れたのは、…
「いや~。ばれてもうたか。やっぱりかなわへんなぁ。」
なんとはやてだった。と、同時に周囲に人の気配を感じる。ここでスコールは彼の推測を述べた。
「最初に違和感を感じたのは、ガジェットの奇襲を受けたときからだ。普通の人ならば、戦闘が起こると思ってどこかに逃げ出すなり怯えるなりする。
だが、アンタはずっと無反応だった。それにボムに連れて行かれそうになったときも無反応だった。
つまり、アンタは何らかの理由で無反応をし続けないといけなかった。それは恐らく、いや。俺の任務遂行能力を試したかったんじゃないのか?」
一点の曇りもない推測を述べる。
「さすが。正解や。」
笑顔で肯定するはやて。
「そして、もしもはやてに何かあった場合、または異常事態があった場合はアンタが出てきて直ちに任務を中断させるつもりだった。
さらに、俺の任務を恐らくどこかで見ているんだろう?エリオやスバルたちがな。」
そういってスコールは背後の廃墟になった建物の二階の窓を見る。そこには確かに人がいた。
「さすがスコール。全部見破られちゃってたか。」
といいながらフェイトが出てくる。つまりは、この任務自体が「お芝居」だったのだ。恐らくではあるが、スコールの実力を見て、
隊長たちはスコールを見習わせようとしたのだろう。
「でもちょっとはやてが羨ましいな…」
フェイトが小声でそうつぶやく。スコールたちには聞こえないように。なぜ羨ましいかというと、
スコールははやてと手をつなぎ、半ば抱きしめられ、お姫様抱っこまでされたのだ。フェイトはスコールが好きなので妬むのも仕方がない。
一方のはやてもほんのり頬が赤い。そりゃあ、お姫様抱っこされて恥ずかしくない乙女はいない。
はやてもこれを機にスコールのことを意識し始めるだろう。フェイトのライバルは増え続けるばかりである。
任務の話に戻るが、スコールはふと疑問を思いついた。
「さっきのボムだが、一体どこから出てきたんだ?」
そう尋ねた瞬間、任務を見ていた一同も静かになり、次の言葉を待った。答えたのはフェイトだった。
「それが、突然空中に異次元への穴が開いてそこから出てきたの。それと、声も聞こえた。」
スコールは何かをつかんだ気がした。スコールが知りたかったあること、それがわかるかもしれない。
「何ていってたんだ?」
「よくわからないんだけど、フィーオス、ルーセック、ウィーコス、ヴィノセックとかいってたような・・・」
言葉を失った。Fithos Lusec Wecos Vinosec.これはアナグラムだ。
並べ替えると、「Succession of Witches Love」。
スコールの世界である魔女をテーマにしたアナグラムだ。その魔女は未来からやってきた思念に体をのっとられ、未来にいる魔女に操られてしまう悲劇をたどった。
スコールは、その未来から来た魔女の正体を知っている。かつて倒した最強の魔女。
全ての時間を圧縮し、全ての存在をも消し去ろうとした魔女。
アルティミシア―――――
スコールが知りたいことを知った直後、真の敵が見えてきた。
そしてこれから時間と空間を利用した戦いに巻き込まれることをここにいる人たちはまだ誰も知らなかった。
最終更新:2010年06月28日 23:43