第六話「cool face,heat soul」

ティアマトの襲撃から2時間後。スコールはティアマトの言った意味を考えていた。
「自分で知ろうとしない。それが愚かなのだ。」「お前はあの方の手のひらの上で踊らされているに過ぎない。」
そして、散り際に言った一言。アルティミシアの存在。全てはアルティミシアが背後に潜んでいる。
「一体何をするつもりなんだ…」
一度は倒したあの敵。俺たちには到底理解できない悲しみを抱えた魔女。悲しみゆえか狂気ゆえか時間圧縮で全ての世界を圧縮し、自分が王になろうとした女。
一体、何故…。何故、この世界にまでやってきて俺を殺そうと言うのか。しかも、自分では手を下さずしもべたちの手で。
だが、たった一つだけわかることがあった。
――――コイツとの闘争は避けられない。――――


無線がかかってきた。
「こちらスコール。何のようだ?」
「スコール?こちらなのは。ちょっと用があるから、モニタールームに来てくれる?」
「わかった。そっちへ行く。」
言い終えて即座に無線を切りながら、モニタールームへと足を運んだ。
そして、モニタールームに到着。扉を開ける。
「それで?用、というのは?」
「今、はやてちゃんが時空管理局本部に出かけちゃってるから、ここの指揮をお願いしたいの。」
「なぜ?」
「あなたは、私たち以上にモンスターに詳しいわ。だから、いつ、何が出現しても対応できるようにしておきたいの。」
「……わかった。そうしよう。」
確かに、スコールが指揮をとればここら辺の敵は大抵は排除できる。これほどの適任はいない。
そうして、モニタールームでしばらく過ごすことにした。



少し時間は飛ぶ。なぜなら、スコールはモニター班からも質問攻めを受けてしまい、モニターを見る暇がなかったうえに、ティアマトを倒した直後だ。
疲労がたまっている。なので少し眠らせてもらうことにした。
そして、その眠りは警報によって覚まされる。
「スコールさん!モンスターを確認!今からモニターに移します!」
そういってモニターに現れたのは、スフィンクス。コイツは自分でケリを付けなければいけない、と思い、スコールはメモを残してスフィンクスを倒しに言った。


そこには、一歩も動かないスフィンクスが一体。こちらをじっと見ている。
「スコール。伝説のSEED。わが主のために、ここで死んでもらう……。」
「フッ。俺がお前に負けたことがあったか?」
クールな顔で相手に辛辣な言葉を浴びせる。話は終わりだ、と言わんばかりにリボルバーを掲げて突進し、スフィンクスに叩きつける。
仮面が割れて、アンドロが現れる。前戦ったときと同じで、コイツ自体は弱い。
「じゃあな。」
スコールはそういい残して、アンドロの首を切った。血もなくその場で消えつつあるアンドロ。それを見届けるスコール。
だが、スコールは誤算をしていた。それは、「敵はこの一体だけではない」と言うこと。
振り返って帰ろうとした瞬間、左肩に何かが当たった。そして左肩から血が噴出し、その場にうずくまる。すると、光線が2本3本と地面に当たって
地面をえぐっては消える。一体なんだ、とスコールは物陰に身を潜める。そこに現れたのは、
ドルメンとウルフラマイター、そしてカトブレパス。3体同時に現れたのだった。ちなみに、スコールの肩を撃ったのは、アリニュメンのプチ波動砲である。
「チッ。」
スコールは舌打ちをする。傷自体は浅いものの、これではケアルも使えない。突然、カトブレパスがサンダガを使ってくる。スコールはギリギリでこれを避けた。
このままでは埒があかない。一旦距離をとってケアルをかけ、リボルバーを構える。
すると、なんとドルメンとカトブレパスが同時に攻撃を仕掛けてきた。使ってくるのは恐らく、召雷とメガ波動砲。防ぎきるのは難しいだろう。
仕方がなく、スコールはエデンをジャンクションする準備をした。
(エデン。ジャンクションするぞ。あと、召喚する準備もしておけ。)
(わかった。)
心の中でエデンと会話を交わし、スコールは攻撃が来るのを待った。ギリギリまでひきつけてから、避ける選択をした。
そろそろ、来る。そう思って、避ける準備をしたが、スコールの目の前に突然人が現れた。逆光で見えなかったが、その人物が誰なのか一瞬でわかった。
そして、攻撃が来る。

スドォォォォォォン!!!!!!


ここまで大きな音がするとは思っていなかった。だが、地面には攻撃の跡が見当たらない。なぜなら――――
「間に合ったね。スコール。」
「大丈夫?もしかして、動けなかった?」
二人の空に浮いている女性がシールドをはって助けてくれた。なのはとフェイトである。
「さて。あの光線撃って来たやつ、私が相手するね。ちょっと興味あるし。」
「私は、さっき雷を撃って来たあのモンスターにするね。」
「なら、俺はウルフラマイター、あの巨体を相手する。」
なのは対ドルメン、フェイト対カトブレパス、スコール対ウルフラマイターという3対3のバトルが始まった。

「あの攻撃、なかなかよかったけど威力がお粗末だね。まだまだだよ。」
そういって突然ドルメンにアドバイスをするなのは。ドルメンはいささか気分を害したようである。
「私のメガ波動砲を止めたのはほめてやる。だが、それだけでは私は倒せない。」
そう言い、メガ波動砲のチャージを行う。なのははその隙を見逃さなかった。レイジングハートを変形させ、構えを取った。
「ディバイン…バスターーーーーッ!!!!!」
レイジングハートから高密度の魔力を照射する。それがギリギリで放たれたメガ波動砲とぶつかり、相殺する。
だが、ドルメンの攻撃は終わってはいなかった。アリニュメンを背後からプチ波動砲を照射した。
普通なら、ここでプチ波動砲に当たるのだがドルメンが戦っているのはエース・オブ・エース。なめてはいけない。ラウンドシールドで防ぎきってしまった。
「そんな攻撃、効かないよ。」
そういって高く飛び、アリニュメンとドルメンが一直線上になるように位置を調整する。そしてレイジングハートにカードリッジを読み込ませた。
「全力全開!!スターライト………」
なのははアレを使うつもりである。ドルメンはメガ波動砲とプチ波動砲を一気に使って威力をあげた波動砲を放つつもりだ。
そして、
「ブレイカーーーーーーーーーッッッ!!!」
二つの攻撃が同時に発射された。少しの間ぶつかり合い、波動砲が押されていく。ドルメンは必死に波動砲の威力を強める。だが、止まらない。止められない。
そのまま、ドルメンとアリニュメンはスターライトブレイカーに飲み込まれ、消え去った。


ところ変わって、フェイトの戦いである。カトブレパスは一瞬でデッドリーホーンをフェイトに突き出した。フェイトは軽々それを避け、
「プラズマスマッシャー!!」
光の弾を確実に当てていく。そこでカトブレパスは動きを止めた。攻撃を誘っているのだ。
(なるほど。なら、本気で行かなくちゃ!!)
フェイトはバルディッシュにカードリッジを読み込ませる。
「ジェットザンバー!!!」
ザンバーフォームに切り替え、相手の突進攻撃を待つ。
……………………
(今だ!!!)
心の中で叫び、デッドリーホーンとジェットザンバーがぶつかる。勝負を決したのは…スピードだった。デッドリーホーンがフェイトに当たらなかったのである。
そして、カトブレパスはその場に倒れる。終わった、と思ったフェイトだが、終わってはいなかった。突然空間がゆがみ、まるで地球の上に立っているような
幻覚を見せられる。そして、上から無数の隕石(メテオ)が。カトブレパスは死に際にメテオを放ったのだ。
(ばかなっ!?)
驚くフェイト。そしてメテオは次々と降り注ぐ。文字通りのメテオシャワーが終わった。何とフェイトはメテオを切り裂いていた。
一個一個には莫大な質量があったと言うのに。さすがは隊長、といったところか。カトブレパスの悪あがき(?)は無駄に終わったのだった。



そして、スコール。彼はウルフラマイターを手玉にとっていた。たしかに、こいつは硬くて強い。が、その攻撃も当たらなければ意味がない。
そして、スコールは新たな準備をしていた。
「コノ、チョコマカトメザワリナヤツダ!!」
ギガントソードをかわしながら、準備を整える。そして、
「そろそろか…」
立ち止まる。ウルフラマイターがこちらを見てギガントソードを振り下ろす。その瞬間だった。
「出て来い!!ディアボロス!!」
突然、あたりが暗くなる。そして、上から大きな黒い球体が降りてきた。その中からは、彼のG.F.のうちの一体。ディアボロスが現れた。
そう。スコールはG.F.を召喚したのだ。ディアボロスは黒い球体をウルフラマイターに投げつける。これは巨大な重力球であり、どんなに装甲が硬かろうが
必ず決まった大きさのダメージを相手に与える。ウルフラマイターは驚き、たじろいだ。
「ディアボロス!!コレデハマケテシマウ!!」
「残念だが、もうお前の負けだ。」
スコールはディアボロスの攻撃でウルフラマイターがひるんでる間に連続剣を叩き込んだ。
「グオオオオオオオオッッ!!」
そうしてそのままウルフラマイターは消え去ろうとしていた。だが、ウルフラマイターも悪あがきをした。
「コレデモクラエ!!」
そういってギガントソードを投げようとしたそのときだった。…後ろから、何かのチャージ音が聞こえる。嫌な予感がして、横にすばやくとんだ。
それが正解だった。突然ウルフラマイターもろとも黄色い光が突き抜けてきたのだ。スコールが避けていなければ、確実に当たっていた。
光に当たったウルフラマイターは完全に消え去った。そして、そこにいたのは――――――――

「アルテマウェポン……!!」

そう。そこにいたのはアルテマウェポン。上半身はかろうじて人の形、下半身は獣。そして、手には大きな大剣。こいつはリヒト・ゾイレを放ったのだ。
「何故、お前まで!!」
「私は力を求める…だからこそ、あいつに協力し、私を倒したお前に挑みに来たのだ。」
そしてアルテマウェポンは剣を振り下ろす。コイツは完全に勝負に取り付かれている。倒すしかないようだ。そこにフェイトが助けに来た。続いてなのはも。
「コイツは…何?…半端じゃない力…なんでこんなのが…」
二人とも、アルテマウェポンの気迫にのまれていた。フェイトがジェットザンバーを叩きつける。
「でやぁぁぁぁぁぁっ!!」
だが、アルテマウェポンの剣はジェットザンバーもろともフェイトを吹き飛ばした。コイツの強さは半端じゃない!!
「クッ…ディバイン…」
そういったとき、アルテマウェポンはなのはを剣で吹き飛ばしたのだ。こいつはスピードも半端ではない。
そして、スコール一人になった。スコールは決めた。「あの技」を使うことを。
簡易転送装置を使い、ライオンハートを装備する。持ち前の反射神経と、すばやさでアルテマウェポンの攻撃を確実に避けていく。そして、連続剣を叩き込んだ。
上半身に強い衝撃を受けて、アルテマウェポンは倒れこむ。その隙にスコールは、ライオンハートにエネルギーをチャージした。
フェイトもなのはもわけがわからずスコールを見ている。アルテマウェポンが起き上がり、リヒト・ゾイレを放った。
しかし、スコールには当たらない。エネルギーをチャージし終えたライオンハートを握り、ありえないスピードでアルテマウェポンの懐につく。
そして、アルテマウェポンを打ち上げた。
「うおおおおおおおおっ!!!」
スコールは空中でアルテマウェポンに攻撃を当て続ける。ほとんど、剣の動きどころか体のこなしすら見えない。
スコールが相手を何度も叩ききった後、また空中でエネルギーをチャージする。そして動き出した瞬間、

キィィィィィィィィン

目にも映らない速さでアルテマウェポンを斬っていた。一瞬の静寂、そして美しく広がり、轟音を放つ爆発がとどろいた。
アルテマウェポンはなすすべもなく、地面に叩きつけられる。そして、何も言わずに塵のように消え去った。
これが、スコールの最強の技。「エンドオブハート」。
スコールの本当の力を見せ付けられた二人はあまりの強さに、ただ、呆然としてスコールを見つめていた。



なのはとフェイトは一応、軽傷ですんだ。バリアジャケットが守ってくれたのだろう。なのはとフェイトは六課に帰るまで一言も発することができなかった。
スコールははやてにこのことを報告し、自分の部屋に帰った。もう、夜になっていた。
(アルティミシアめ、こんなやつまで手なずけているなんて…)
スコールはこのとき確信した。自分は今以上に強くなる必要があると。明日から、本格的に修行をしようと心に刻んで、彼は眠りに落ちた。

はやてはスコールの戦いをアルテマウェポンあたりのところから見始めており、スコールが帰ってくるまでリインが
「そろそろ寝たほうがいいですよ~」
といっても、スコールが帰ってくるまで寝ない、と言い張ったのだ。
その後、報告を終えたスコールが部屋から出ると緊張が解け、一気に眠りに落ちたのは言うまでもない。





「フン。さすがは伝説のSEED。こいつをも倒すとは。」
玉座の上で魔女が笑う。
「あともう少し。私の手下を倒したら、お前のほしい真実とやらを教えてやろう。…もっとも、それまで生きていたらの話だがな。」
そう独り言を呟いた彼女は高らかな笑い声を上げ、全てのしもべ達を集めてこういった。
「私の名はアルティミシア。永遠の存在である私を崇めなさい!」
全てのしもべ達はその言葉にひれ伏した。そして、彼女の笑い声が玉座に響いたのだった。


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最終更新:2010年07月03日 13:30