第2章「戦うが故に」
べグニオン帝国:帝都シエネ
「アイクよ、そなたは一体どこに言ったのじゃ・・・」
サナキがポツリと独り言をもらした。普通はそこまで動揺していてもおかしくはない。
自分の目の前から二人の男が消えたのである。それがどんな魔法であれ、そんなものが存在するとは聞いたことがない。
「・・・あの方に聞くのが一番じゃろか。」
サナキがはっとしたように顔を上げ、くるりと振り返る。
あの方ならば、何とかしてくれるのでは。
そう淡い期待を抱く。それが例え無謀で無茶な願いだとしても。
「きっと出来る。あの方ならば。」
サナキは館全体に通るような声でシグルーンとタニスを呼んだ。
起動六課:食堂
「アイクさんって不思議な剣を使いますよね、あれって何ですか?」
「あれはラグネル、という剣だ。昔から使っている剣で愛着もある。
「セネリオさん、魔法の上手い使い方を教えてくれませんか?」
「僕は上手い使い方などはしていません。タイミングを考えてから・・・」
訓練が終わった後の昼食。
これもチームワークを深める(?)ものには違いはない。
4人の表情も2人と始めてあったときよりかは、かなり穏やかな表情になっている。
なによりこの光景自体が面白いのだ。
アイクとその隣に座って飯をただひたすら食いまくってるスバル。
そして、少しづつパンを食しながらなんとも難しそうな話をしているセネリオとティアナ。
それを苦笑しながら見つめるエリオとキャロ。
そんな中、フェイトとなのはが遠くからこちらを見ていた。
「へえ、あの2人が立った数分で4人とも・・・」
「そ。少なくとも汗どころか息の乱れひとつなかったんだよ。」
「戦いなれてるのかな・・・?」
とこちらも談笑している。成人女性が大好きな噂話のようなものもある。
とにかく、その光景は全くといって言っていいほど平和であった。
だが、―――――
「つっ!!」
突然アイクが頭を抑える。
「どうしたんですか?」
スバルが覗き込む。だが、その痛みは一瞬で消え去り、何事もなかったかのように正常な思考をもたらした。
「いや、なんでもない。」
と答えた。だが、それではだまされない人たちがいるのをアイクは知らなかった。
なのはとフェイトである。
二人は怪訝な顔でアイクを見つめる。
だが、その表情、その仕草には乱れなどは感じられなかった。
なので、二人は見守ることしか出来なかったのだ。
「さて、これからどうするか・・・」
アイクは廊下を歩きながら考える。
少し考えて自分の部屋に戻ることを選んだ。特に何もないのなら部屋でおとなしくしているのが一番だろう。
「ふぅ・・・」
大きなため息をつく。訓練の後は体を休めるのも大切である。
それにしても、あれで本当に俺たちと同じような仕事をやっているとは思えない、とアイクは思った。
力を開放しすぎれば諜報活動は出来なくなる。かといって手加減しすぎればやられる。
本来なら、軽い攻撃を行い、対処の仕方次第で先頭スタイルを変えるのが一番いいというのに、それを知らなさそうだった。
それどころか、本気できているのだが、スバルやティアナの攻撃には迷いがあったのだ。
迷いがある状態でアイクに勝とうとはなんとも愚かな話である。
(何を・・・かんがえている?)
そんなことを心の中でつぶやく。
だが、その答えを教えてくれるものは少なくともこの部屋の中にはなかった。
それからどれくらい経っただろうか。
ラグネルの手入れをしているときだった。
バン!!!!
と壊滅的な音を立ててドアが開く。
「アイクさん!こんなところにいたんですか!」
「どうした?」
「任務です。急いで集合してください。」
どうやら任務が入ったらしい。こういうところで彼の傭兵家業の経験が生かされるのであった。
「わかった。すぐにいく。」
アイクはものの3分で最低限の用意を済ませた。
集合場所につき、みんなでヘリに乗る。
「アイク、だいじょうぶでしょうか・・・?」
「大丈夫・・・だろう。」
アイクとセネリオはヘリに乗ったことがない。
だから、この巨大な鉄の塊に少し恐れをなしていた。
「さ、速く乗って。」
となのはに急かされる。
ためらっている暇もなく、なのはに押されるようにヘリに押し込まれてしまった。
「本当に大丈夫なんだろうな・・・?」
念のため聞いてみたが、それに答えてくれる人は誰もいなかった。
「任務内容は列車に取り残されたレリックの回収。私たちが空中の部隊の排除に回るからその隙にレリックを回収してね。
何か質問は?」
だれも何も言わない。
「じゃあ、私たちはいくね。皆、がんばって!!」
そういい残し、なのはは空中へと飛んでいった。
「降下ポイント到着。準備しろよ。」
パイロットにそういわれて皆準備を始める。
そして、降下が始まった。
ここまでは問題はなかった。
だが、ここから先が問題である。
「っ!?」
スバルとティアナが何かを叫んだ後、突然服が消えて変身をはじめる。
仕方なくアイクとセネリオは空中で目をつぶったり視線をそらしたりした。
光が消え、変身が終了する。と、同時に列車の上に飛び乗ることに成功したようだ。
「うおりゃぁぁぁ!」
スバルが目の前に現れたガジェットを殴りつける。それだけで、ガジェットは粉砕され、爆発を起こす。
どうやら、最後尾にターゲットがあるらしいが、そこにエリオとキャロが向かったのだ。
「俺はあの二人を見てくる。セネリオはここの二人のバックアップを頼む。」
セネリオは軽くうなずいた。それだけで通じる二人のチームワークは伊達ではない。
嫌な予感がしつつも、アイクはエリオとキャロの様子を見にいったのだった。
「エリオ君!エリオ君!」
キャロが必死に呼びかけるがエリオの意識は戻らない。どうやら、新型のガジェットにやられて気絶してしまったようだ。
そんなエリオをないてみていることしか出来ないキャロ。
「エリオくーーーーん!!!」
そんな叫びもむなしく、エリオはがけに投げ出されようとしたその瞬間だった。
「はぁぁっ!」
気合のこもった声と共に青い衝撃波が通り抜けていく。そして、エリオをつかんでいた触手のようなものが切り離される。
キャロが振り向くと、そこにはアイクが立っていた。
その姿は、戦場にこそ相応しい英雄の姿だった。
「キャロ、エリオを傷つけたのはあいつか?」
低い声でたずねる。その声にキャロは静かにうなずいた。恐怖に駆られていたせいで上手く声が出ないのだ。
「わかった・・・」
アイクはラグネルを肩に担ぎなおし、新型のガジェットを見据える。そして、冷たくこう言い放った。
「俺の敵として立った以上、容赦はしない・・・潰させてもらう。」
それからアイクは目にも留まらぬスピードでラグネルを振り、他の赤い触手も切り裂く。
と、ここでガジェットがAMFを展開してきた。いわゆる、魔法を使えなくするものである。だが、
「ふんっ!」
アイクがガジェットを蹴り飛ばした。魔法を使わない彼にとってはそんなものはこれっぽっちも意味がないのだ。
このガジェットもアイクとであったのが運の尽きである。
そして、アイクはラグネルを正眼に構えた。
「終わりだ。」
後頭部に響くような低い声を出した後、なんと、
ラグネルを宙に放り投げた。
一体何事だろうかとキャロとガジェットが放り投げられたラグネルを見つめる。
そこに、アイクが飛びつく。
そのまま前宙を2,3回繰り返しながら、ガジェットに剣を振り下ろした。
一瞬の静寂。
アイクはラグネルを振り、肩に担ぎなおした。
アイクが歩き出したその瞬間、
ドガァァァァァン!!!!
轟音が鳴り響いた。キャロは驚いて言葉が出ないようである。
そして、アイクは歩きながらつぶやいた。
「天空・・・」
それからセネリオの元へ向かった。
全く問題はなかったようである。ただ、列車1両ほど爆破してしまったらしい。
セネリオいわく、
「敵を一箇所にひきつけて一気に攻撃したらこうなった。」
ということらしい。
後で聞いたのだが、セネリオはそれはもうたいそうな魔法を使って爆破したらしい。
そんなに広範囲の攻撃が必要だったのか、ただ単に壊したかっただけなのかはわからないが。
スバルとティアナいわく、
「セネリオさんは攻撃のキレとタイミングがよすぎる」
らしい。
それでも、列車を爆破していいものなのか、と聞いてみたら2人は気まずそうな顔をしていた。
何はともあれ、こうして彼ら6人の初任務は軽傷3人程度で済み、任務達成で終了したのだった。
ここはとある研究室。そこには戦うフェイトとなのは、そしてアイクとセネリオが映し出されていた。
「さあ、私の華麗な実験が始まる・・・」
男は笑いながらカプセルのようなものに入っている男の姿を見つめる。
「君の事をいろいろ調べさせてもらうよ。悪く思わないでくれたまえ。」
ニタリ、と笑いながら彼の名を口にする。
「ゼルギウス君・・・」
デイン王国:デイン王城
「姉上!!」
サナキがミカヤの名を呼ぶ。
「サナキ、どうしたの?」
ミカヤが穏やかに聞いてきた。
少なくとも遊びにきた、などではあるまい。
だが、ミカヤは多少相手の心を読める力を持っている。
だから、サナキは彼女に話す必要などなかった。
「わかったわ。それで、私は何をすればいいのかしら?」
「姉上、あなたにはあるひとつのことをしていただきたい。
それは、・・・女神、アスタテューヌを呼んでもらいたいのじゃ。」
to be continued...
最終更新:2010年08月25日 22:46