「さて、今回は奮発しなければな」
怪人達の前に立つディエンドは、呟きながらライダーカードホルダーの蓋を開いた。
彼はそこから六枚のライダーカードを右手で取り出す。
一枚目の『MASKED RIDER AGITO』と記されたライダーカードを、ディエンドライバーの脇に装填させた。
『KAMEN RIDE AGITO』
銃身の脇に書かれた黄金の文字が音声で読み取られ、アギトの世界を象徴するマークが浮かび上がる。
続いて、二枚目の『MASKED RIDER RYUKI』の名が書かれたライダーカードを、彼は同じ場所に入れた。
『KAMEN RIDE RYUKI』
銃から甲高い声が発せられるのと同時に、龍騎の世界を象徴するマークが浮かび上がる。
ディエンドは三枚目の『MASKED RIDER FAIZ』と書かれているライダーカードを挿入した。
『KAMEN RIDE FAIZ』
ディエンドライバーがコードを読み取ると、ファイズの世界を象徴するマークが浮かび上がる。
そのまま四枚目の『MASKED RIDER BLADE』のライダーカードが、銃の脇に入れられた。
『KAMEN RIDE BLADE』
トーンの高い人工音が鳴った瞬間、ブレイドの世界を象徴するマークが浮かび上がる。
そこから五枚目の『MASKED RIDER HIBIKI』と記されたライダーカードを、ディエンドライバーに差し込んだ。
『KAMEN RIDE HIBIKI』
ディエンドライバーからの音声が周りに響いた瞬間、響鬼の世界を象徴するマークが浮かび上がる。
最後に残った『MASKED RIDER KIVA』の名が書かれた六枚目のライダーカードが、ディエンドによって入れられていった。
『KAMEN RIDE KIVA』
金色で書かれた字が音声となって読まれると、キバの世界を象徴するマークが浮かび上がる。
全てのライダーカードを挿した彼は、ディエンドライバーの銃口を異形の群れに向けた。
トリガーを人差し指で引くと、六発の光が弾丸のように発射されていく。
それらは一瞬で崩れ、人型の虚像へと形を変えた。
七色の残像は瞬く間に重なり合い、異世界に存在する仮面ライダーの形を取る。
現れた六人の仮面ライダー達は、戦うために構えた。
一人目は赤い両眼と、龍を彷彿とさせるような黄金色の角が額で輝き、金と銀を基調とした鎧で全身を守っている。
大地の力をその身に宿し、超越肉体の金と呼ばれるグランドフォームの姿を取る仮面ライダー。
闇の力に従える超越生命体、アンノウンの暴虐から人々を守り抜いた戦士、仮面ライダーアギト。
二人目はその顔面が騎士の仮面を連想させ、龍を思わせる紋章が額に刻まれ、炎のような赤い複眼が光を放っていた。
銀と黒の二色で輝く鎧は、その下の真紅のスーツを守る役割を持つ。
ミラーワールドより人々を襲う、ミラーモンスターの脅威を防ぐために戦った龍を使役する戦士、仮面ライダー龍騎。
三人目の仮面ライダーは、ギリシア語アルファベットの『φ』を思わせる金のバイザーと、白銀の装甲が闇の中で輝いていた。
鎧に守られた漆黒のスーツには、腰のベルトから流れるフォトンブラッドによって、所々に赤いラインが走っている。
その仮面ライダーは本来、オルフェノクによって構成されている巨大企業、スマートブレインがオルフェノクの王を守護するために生み出した戦士の一人。
しかし後に、人間を守るためにオルフェノクと戦った仮面ライダーとなった。
その名を仮面ライダーファイズ。
四人目は、アギトや龍騎と同じ色の瞳が輝き、マスクはヘラクレスオオカブトを思わせる形状だった。
銀色の装甲と群青のスーツを身に纏い、ベルトにはトランプで使われるスペードのマークが刻まれている。
人類基盤史研究所の名を持つBOARDと呼ばれる組織は、封印の解かれたアンデットに立ち向かうために、ライダーシステムを作り上げた。
現れた戦士は、カテゴリーAのアンデットを利用して生み出されたライダーシステム第二号、仮面ライダーブレイド。
五人目は、他の仮面ライダーと比べると異質な姿をしていた。
鬼を彷彿とさせる印が存在する額からは二本の角が伸び、鍛え抜かれた筋肉は紫色に見える。
響鬼の世界には、古くより人間を襲う物の怪、魔化魍を退治するために己の肉体を鍛え、音撃の力を得た音撃戦士と呼ばれる仮面ライダー達がいる。
清めの音を用いて魔化魍から人々を守る鬼、仮面ライダー響鬼。
六人目は、黄金の両眼が闇を照らすかのように輝き、黒と赤と銀の三色で構成される鎧で身を守っていた。
右足は封印の鎖に縛られた、鋼鉄の拘束具が巻かれている。
それはキバの世界で、ファンガイアが仮面ライダーダークキバに続いて作り上げた二つ目のキバの鎧。
人間とファンガイアという二つの種族の血を受け継いだ者が纏い、共存のために戦ったその戦士は、仮面ライダーキバ。
多くの怪人達と戦い続けた戦士達が、ディエンドによってアルハザードに現れた。
その力強い目を前に向ける彼らは、地面を走り出す。
現れたライダー達の援護をするように、ディエンドは拳銃を怪人達に向けて、引き金を引いた。
ディエンドライバーから勢いよく弾丸が放たれていき、その巨躯に被弾する。
衝撃によって怯んだ隙を狙って、ライダー達は攻撃を放った。
『Silver Hammer』
無機質な電子音が響き渡る。
それは、トーマの持つECディバイダーから発せられた物だった。
怪人の群れに銃口を向けて、引き金を引く。
その直後、銃剣の中に蓄積されたエネルギーが、轟音と共に放たれた。
戦艦に備えられた大砲に匹敵する勢いで、シルバーハンマーの輝きは標的を飲み込んでいく。
アルハザードに潜む怪人達の身体は、瞬く間に細胞一つ残すことなく消滅していった。
その様子を見届けると、トーマは別の怪人に振り向く。
視界の先からは、背中の羽根を大きく広げたアルビローチが、凄まじい速度で接近していた。
(やばい、間に合わない――!?)
「おりゃああああっ!」
しかし、鋭く尖った爪が振り下ろされることがなかった。
トーマの背後からは、かけ声と共にキュアピーチが姿を現す。
彼女は勢いよく駆け抜けながら跳躍すると、回し蹴りをアルビローチの脇腹に叩き込んだ。
突然の衝撃に耐えることが出来ずに、その巨体が地面に落ちて転がっていく。
キュアピーチは両足を地面に付けると、トーマの方に顔を向けた。
「大丈夫!?」
「うん、ありがとう!」
互いに声をかけ合う。
その瞬間、二人の目前からは吹き飛ばされたアルビローチが、仲間と共に飛行を再開していた。
羽根が動く音が鼓膜を刺激しながら、徐々に進撃してくる。
だが、それは長く続かなかった。
「超変身!」
アルビローチの群れが鳴らす音を、かき消すような叫び声が響く。
直後に、キュアピーチとトーマの後ろから、青い影が高速の勢いで飛んできた。
その手には、中央に古代リント文字が刻まれた龍撃棍、ドラゴンロッドが握られている。
棍の両脇に埋め込まれているのは、蒼の輝きを持つ宝玉。
青と金という二色の輝きを持つ武器を握るのは、クウガだった。
しかしその身体と瞳は、清流のような青に染まっている。
今のクウガは、跳躍力や俊敏性といった運動能力に優れた、水を司る戦士。
『邪悪なる者あらば、その技を無に帰し、流水の如く邪悪を薙ぎ払う戦士あり』の伝説が示す、青のクウガ。
ドラゴンフォームの形態へと、クウガは姿を変えていた。
「でりゃあっ!」
アルビローチの顔面に向かって、ドラゴンロッドを突き出す。
清らかな鈴の音色が響くのと同時に、棍の中に込められた封印エネルギーが怪人の体内に流れていった。
白い巨体は宙に吹き飛び、地面に叩きつけられる。
そのままクウガは、全身を回転させながらドラゴンロッドを振るった。
襲いかかるアルビローチの爪を弾いて、棍の先端を腹部に叩き込む。
そんなクウガに続くように、キュアピーチとトーマも攻撃に加わった。
三人はそれぞれ、己の武器を存分に振るう。
クウガはドラゴンロッドを、キュアピーチは二つの拳を、トーマはECディバイダーを。
彼らの攻撃によって、群れている怪人達は次々と倒されていった。
そうしている内に数が減っていき、三人は別の方向に目を移す。
その直後だった。
「モ・エ・ル・ン・バアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァッッッッッッッッッッッッッ!」
突然、何処からか甲高い声が響く。
その瞬間、爆音と共に地面から巨大な火柱が昇った。
生まれた熱風は大地を焦がし、皮膚に突き刺さる。
あまりにも唐突すぎる現象によって、三人の意識はそちらへ向かった。
目の前では、炎が音を立てながら激しく燃え上がっている。
そして、紅蓮の海から一つのシルエットが浮かび上がってきた。
「あ、あなたはっ……!」
火柱の中より現れた存在を見て、キュアピーチは驚愕で目を丸くする。
それは、自分とはまた別のプリキュアが戦っていた、滅びの国・ダークフォールの刺客だったからだ。
激しく縮れた頭髪、火炎のように赤く彩られた全身、四肢に付けられた炎を思わせる飾り。
そして、二メートルを超すその巨体には、オーラのように炎が纏われていた。
多くの精霊が住む自然豊かな世界、泉の里には全ての命を司る世界樹が存在している。
それを支えると言われる七つの泉は、かつてダークフォールの手により枯れ果ててしまったことがあった。
目の前に現れたのは、その中の一つである火の泉を支配した男、モエルンバ。
モエルンバは余裕綽々と言った表情で、腕を組んでいた。
「ほう? 『仮面ライダー』に『スーパー戦隊』……それに『プリキュア』までいるとはな」
「モエルンバ!」
「フッ……お前達、ここから先へは一歩も通さないぜ? セニョール、そしてセニョリータ!」
陽気な言葉が発せられると同時に、身体を包む炎がより強く燃え上がっていく。
そんなモエルンバと、キュアピーチは静かに睨み合った。
徐々に地面が焼かれていく一方で、暗闇からは新たなる異形が現れる。
それはアギトの世界で、超能力者及びその可能性のある人間を襲った、アンノウンと呼ばれる闇の力に従う超越生命体の一種。
その中でも高位の実力を持つ、エルロードの称号を与えられた怪人だった。
芸術的美しさを感じさせる純白の身体、優雅さを醸す全身の装飾品、鷹を思わせる形状の頭部、背中から小さく生えた天使のような羽根。
顎だけは唯一、人の形に近かった。
かつて瞑想に耽った闇の力、オーヴァーロードを守る使命を持ったアンノウン、風のエルは静かに口を開く。
「この世界は聖地……人間ごときが踏み入ってはならない」
年老いた女性のものに聞こえる冷たい声で、呟いた。
殺意の視線を向ける風のエルは、両手の爪を輝かせている。
左手の甲を翳して、そこに反対の指先で印を描く。
横一文字、左斜め下、横一文字。
Zの形を作るような動きが示す意味は、アンノウンが殺戮を行うというサインだった。
その直後、風のエルの頭上に光を放つ輪が現れる。
するとその中から一本の棒がゆっくりと現れ、左手でそれを掴んだ。
風のエルが引き抜くと、憐憫のカマサと呼ばれる長弓が現れる。
両手で構えて、力強く弦を引いた。すると、一本の矢が精製される。
それを横目で見たモエルンバは、風のエルと合わせるように両腕を前に向けた。
「そういうことだ……チャッ、チャッ、チャアッ!」
身体を包む膨大な炎が、大きく開いた手の平に収束していく。
そのまま、轟音を鳴らしながらモエルンバの両手から放たれていった。
同時に風のエルも、弦を掴む手を離す。
淡い光を持つ矢は勢いよく放たれていき、すぐにモエルンバの炎と混ざり合った。
大気を燃やしながら、一直線に三人の元へ迫っていく。
この勢いでは、避けられない。
本能でそう察したクウガは、すぐに後ろへ振り向く。
すぐさま、キュアピーチとトーマの胴体を両腕で掴んだ。
「危ないっ!」
最終更新:2010年08月26日 21:02