するとまた誰かやって来た。
「で~じこ!」
「あっうさだにょ!」
「うさだって呼ぶな!」
それは頭にウサギの耳を付け、ウェイトレス風の格好をしたピンク色の髪の少女。
「何かまた変な奴が来たな…。」
「あら、貴女だ~れ?」
「人の名前を聞く前にまず自分が名乗るべきだろ。」
「コイツの名はうさだにょ!」
「うさだって言うな! 私はラ・ビ・アン・ローズよ!」
「うさだにょ!」
「だからうさだじゃなくてラ・ビ・アン・ローズ!」
「もう何がなんだか…。」
とにかく、ヴィータはでじことうさだは仲が悪い事は分かった。
まあとりあえず相手が自己紹介してくれたのだから、ヴィータも礼儀として
自己紹介しようとしたがそれより先にでじこが余計な事を言ってしまうのである。
「こいつはヴィー太って言う変な迷子にょ。道に迷って泣いてる所を
でじこが保護したんだにょ~。でじこ優しいにょ~。」
「迷子じゃねぇ! 泣いてもいない! って言うか私の名前はヴィータだ!」
「あら…可哀想…迷子なの? お父さんとお母さんとはぐれちゃったのね?」
「だから違うんだって!」
何かうさだはでじこのホラを信じてヴィータに同情していたが、ヴィータにとっては
迷惑この上無かった。が、ここヴィータは初めてうさだの頭にウサギの耳が
付いている事に気付くワケである。しかもこのウサギ耳がヴィータのツボに直撃し、
思わず両手で掴んでしまっていた。
「あ…何してるの…?」
「うわぁ…フカフカだ…。」
ヴィータはウサギが好きだ。現代に目覚めて初めてはやてに連れられて行った玩具屋で
一目見て気に入って買ってもらったウサギのぬいぐるみを今でも大切にしているし、
騎士服の帽子にもウサギを模したアクセサリーが付いている。そんな彼女が
うさだのウサギ耳に興味を持つのは至極当然の事であり、また先程あまえん坊が
自分の髪を引っ張った気持ちも何となく理解できてしまうヴィータであった。
「これ…何処で売ってるんだ…?」
「うっ売り物じゃないわよ!」
「何処で売ってるんだよ~! 私も欲しいよ~!」
「だから売り物じゃないってば!」
ウサギ欲しいスイッチの入ったヴィータはまるで子供の様にウサギ耳を引っ張っており、
うさだもほとほと困り果てていたが、そんな時また誰がきやがった。
「やあでじこちゃんにラビアン、どうしたんだい?」
「あ、ジョンとポールにょ。」
三人の前に現れたのは何かオタっぽい雰囲気をかもし出しているノッポとデブの二人組。
そしてその二人はでじこからジョンとポールと呼ばれていた。
「また何か変な奴が来やがった…。」
「あれあれ? こっちの子は見ない顔だね~?」
「こいつはヴィータって言うにょ。」
「へ~、ヴィータちゃんか~。僕はジョンだよ。」
「僕はポール。よろしくね、ヴィータちゃん。」
「な…何なんだコイツは…。」
ジョンとポールはニコニコと微笑みながらヴィータを見つめていたが、
ここでヴィータは以前はやてに言われたある事を思い出した。

「ええかヴィータ? ロリコンって呼ばれる人には気を付けるんや。」
「はやて、ロリコンって何?」
「とにかく危ない人なんよ。ヴィータみたいな小さくて可愛い子は
あっと言う間にさらわれて、とても口では言えへんあんな事やこんな事をされて
しまうかもしれへんのよ…。実際アリサちゃんなんか幸いこっちの世界では無事やけど
限りなく近く限りなく遠い並行世界の中には、さらわれて口では言えない事沢山されて、
挙句の果てに殺されてしまってる道を辿った世界もあるんや。だから気を付けぇや。」
「わ…わかったよはやて…。何か良く分からないけど…気を付けるよ。」
言っている意味はまだヴィータには上手く理解出来ない事であったが、
その時のはやての迫力は凄まじく、ヴィータにとっても強く印象に残っていた。

「お…お前等! まさか私をさらう気だな!? それで口では言えない事をやるんだろ!?」
ヴィータは思わずグラーフアイゼンを構えた。ジョンとポールがはやてに教えられた
危ない人であると本能で察したのである。これには皆が驚いた。
「いきなりどうしたにょ!?」
「そうよ! いきなりそんな金槌みたいな物持ってどうしたの!?」
「二人とも下がれ! この二人は私達をさらって口では言えない事をするつもりだ!」
「そんな事しないよ~。」
「何故いきなりそんな事言うんだい? ヴィータちゃん…。」
グラーフアイゼンを向けられてジョンとポールも焦っていた。
「と…とにかく落ち着くにょ!」
「うるさい問答無用!」
「落ち着くって言ってるにょ! 目からビーム!!」
「ギャァァァァ!!」
ジョンとポールに飛びかかろうとしていたのも束の間、でじこの目からビームが
再び放たれ、攻撃に集中していたヴィータはその直撃をモロに受けてしまった。
そして真っ黒焦げになって倒れ込むヴィータの隣にでじこが近寄っていた。
「まったく…少し落ち着くにょ~。ジョンとポールは確かにちょっと危ないけどにょ~、
気持ち悪いけどにょ~、お前の言うような事はしないにょ。だから安心するにょ~。」
「危ないなんて酷いよでじこちゃ~ん。」
「僕達気持ち悪くなんかないよ~。」
ジョンとポールは思わず目に涙を浮かばせていたが、そこでヴィータがやっと起き上がった。
「ほ…本当か…? 本当に何もしないのか?」
「本当にょ。ちょっとアレだけど無害だにょ~。」
「そうだよヴィータちゃん! 怖がらなくても良いよ~。」
するとまたジョンとポールは怪しい笑みを浮かべてしまい、これにはヴィータも
腹が立って仕方が無かった。
「やっぱ…殺って良いか?」
「気持ちは分かるけど…やめた方が良いにょ…。」

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最終更新:2007年08月14日 17:24