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 …………
 俺は、父と母と、一緒にいた。
 父と母は仲が良く、俺もそんな二人を見るのがうれしかった。妹のミストも家族全員のことが好きだった。
 俺達の家族は、いつも平和だった。
 いつも、笑いが絶えなかった。…あの事件が起きるまでは。

 ある日、妹のミストが寝ていたので一人で外に遊びに行こうとしていた時だった。
(え……?)
 信じられない光景だった。俺は目を疑った。

 父が母を、剣で刺しているなんて――――――。

 悲鳴を上げるわけにはいかなかった。ミストが心配してきてしまうから。
 それだけは絶対に避けなければ。幼心にそう思った。
 二人が立っている時間が永遠の様に感じられた。
 あたりに充満する血の匂いと、呆然としたまま立ち尽くす父。
 そして、ぐったりしている母。
 これが夢であると何度も暗示をかけた。だが、それは夢ではなかった。

 しばらくして、父は気を失い、母とともに倒れた。
 もはや、俺はなんて声をあげていいのか、わからなかった。

 またしばらくすると、二人組の男が立っていた。
 一人は剣を持っていて、父のことを師匠と呼んでいた。
 もう一人は髪が長く、杖を持っていた。二人とも、俺には気がつかなかったようだ。
 二人がいろいろしている内にミストが出てきた。
 ミストは、蒼く光る「何か」を家の中にしまい、二人をベッドで寝かせるよう二人に言っていた。

 しばらく、呆然と立ち尽くした。
 ふと、視線を上げると、髪の長い人が俺を見ていた。
「君は…見てしまったんだね。かわいそうに…」
 そう言って、彼は杖を掲げた。杖から神秘的な光が灯る。
 そして、不思議な感覚が体を走り抜けた。
 まるで、過去をさかのぼるような―――――――

 刹那、あの記憶がよみがえる。父が母を殺した―――――――――――
「うわああああぁぁあああああああああぁあああああ!!!」





第9章「仲直り、そして」






「っ!!!」
 アイクは目を覚ました。
(………ちっ)
 内心で舌打ちする。
 なんたってこんな夢を見せられなければならないのか、と苛立つ。
 確かに、この記憶はアイク時自身が背負うべきかこだ、と自分ではっきり言ったがやはり、実際に見ると辛い。
 ただでさえ、今日はなのはに謝りに行かねばならぬのだ。
(さっさと済ませよう…)
 寝起きが悪いアイクが真っ先に考えたのは、さっさと要件を終わらせたい、とのことだった。


 そして、なのはの自室。
 今こそ、謝らなければならぬときだった。
 ドアノブに手をかけようとして、セネリオの言葉がよみがえる。

(アイク、人の部屋には居る時くらいはノックをしてください。)

 ドアノブから手を離し、コンコン、と叩く。
「どうぞ…。」
 これで入っていいのだろうか、と逡巡する。
 昔から女性には縁があるが、その女性は大抵が面倒な性格だったのでそんな事を思ったりする。
 とりあえず、なのはの部屋に入ってみた。

 そこには、なのはが寝ていた。シャーリーが言うに、体調は回復しているらしい。
「なのは、言いたいことがある。」
「…ん?」
「すまなかった。」
「……?」
 ポカンとした表情を浮かべるなのは。
 そして、クスクスと笑い始める。
「何がおかしい?」
「フフ……だって、突然そんなこと言うから…。」
「…?」
「私はね、もう、あのこと、怒ってないんだ。これはただの風邪。しかも、ちょ~っとたちの悪い、ね。
 だから寝込んでたんだけど、突然、何を言い出すんだろうって…フフ…」
 クスクス笑いをまた始めるなのは。
 …ということは、俺は無駄なことをしていたのか?
 アイクは軽くため息をつく。
「でも、直接話してなかった私も悪いかも。ごめんね。…さて、暗い話は終わり!!
 私も明日から復帰できるから、みんなに伝えておいてね。ティアナにも、心配しないようにって。」
「……分かった。」
 軽くため息をつきながら、部屋を後にする。

(やはり、女性はめんどくさい…)



 ロングアーチにて。
「今日の訓練は午前中だけにする。」
 唐突にアイクが告げる。多少のざわめきが起きた。
 といっても、ここには例の4人とセネリオしかいないのだが。
「あ、あの…どうしてですか?」
 おずおず、といった感じでエリオが尋ねる。
「昨日は結構練習しただろ?今回はそれの復習だけだ。むやみに覚えても何も始まらないからな。
 学んだことを忘れないことと、覚えたことを応用すること。それが今日の課題だ。
 今日は模擬戦からスタートする。俺とセネリオ、二人に1発ずつ当てればOKだ。」
 そう言ってラグネルを正眼に構える。
 その姿を見て、戦いが始まると理解したのか、4人ともそれぞれの武器を装備する。
「行くぞ…模擬戦、スタート!!!」






「ティアナ、少しいいか。」
「?はい。」
 訓練が終了し、疲れきって座り込んでいたティアナを呼ぶ。
「どうしたんですか?」
「頼みがある。」
「頼み?」
「これから、商店街を案内してくれるか?」
 …………
 周りで呻いていた声が一瞬で消える。
 エリオとか結構メタメタにされたくせに。
「ど、どどどうしてですか?」
「?いや、多少生活用品がほしいんだが、あいにく場所が分からなくてな。
 おまけにこの世界の通貨もない。というわけだが…って聞いてるか?」

 ティアナがポ~っとしている。しかも、少し頬を赤らめて。
「ティアナ?聞いてるか?」
「ぅえっ!?あ、はい、OKです!!」
「…?そうか。それじゃあ、…今日の2時にエントランスで待っていてくれ。」
 そう告げてアイクは踵を返した。


 アイク達が去った後、
「ティア、もしかして…デート?」
 などと言ってティアナをいじっていたのだが、アイクには関係のないことだった。




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最終更新:2010年11月28日 22:05