で、ヴィータはまたジュンの部屋まで来ていた。
「また来たのか…。」
ジュンはヴィータを睨み付けていたが、ヴィータはベッドに腰掛けながら言った。
「やっぱ…別にそこまで似てるワケじゃねーよな…。」
「何だよ。何が言いたいんだよ。」
「翠星石と雛苺に私とお前の声が似てるって言われた。」
「はぁ? 何処がだよ。人形の言った事なんか真に受けるなよ。」
「だよな…。」
ヴィータはそのままベッドの上に寝転ぶが、まだ解せない部分もあった。
では何故雛苺も翠星石も声が似ていると言うのか…。と、そんな重苦しい空気が部屋に流れる中、
その空気は突如として乱入した翠星石の手によって破壊される事となる。
「お前等また一緒にいやがるですか! いくらチビ同士気が合うからって限度って物があるですよ!」
「だからチビじゃないって言ってるだろ!」
「ヒィィィ!! チビコンビが怒ったですぅ!」
あんなに静かだった部屋が翠星石一人のせいでまた騒がしくなってしまった。
「とっとにかく! 翠星石はこれから相変わらず部屋の中に引きこもったままのチビ人間に
罰を与えるです! だからチビ人間Ⅱ号は下でチビ苺と遊んでれば良いです!」
「はぁ? いきなり何を言うんだよ…。」
「早く行きやがれですぅ!」
「わかった! わかったから! でも何でそんなに必死なんだ…?」
確かにその時の翠星石は何処か違った。まるで最初からヴィータを部屋から追い出す事に
必死になっている様な…そんな雰囲気を感じたのである。
「あんな眼鏡の引きこもりなんかを苛める事にそんなに必死になるものかねぇ…。」
「うるせぇです! チビ人間Ⅱ号はチビ苺と仲良くしてやがれです!」
ヴィータはまるで翠星石から追い出される様に部屋から出て行き、ドアを閉じた後で
翠星石は先程ヴィータが座っていたジュンのベッドに腰掛けていた。
「ジュ…ジュン…。」
「何だよそんな改まって…。」
先程の強気な所は何処に行ったのか、突然翠星石は顔を赤くさせながらジュンに
話しかけており、それにはジュンも少し呆れていた。
「チ…チビ人間Ⅱ号とはべ…別に何も無いですよね…?」
「はぁ? 何言ってるんだ?」
「わ…分かったです…少し安心したです…。だから…これでも食いやがれです…。」
そう言って翠星石は恥かしそうにジュンにお菓子を渡そうとしたその時、突然ドアが開いた。
「ほ~! それがこの世界流の罰って奴なのか! 面白いな。」
「チッチビ人間Ⅱ号!」
ドアの開いた先にはヴィータが不敵な笑みを浮かべながら立っていた。
「ぬっ盗み聞きなんて卑怯です! やっぱりチビ人間Ⅱ号は心もチビです!」
「うるせぇよ。」
ヴィータは部屋に再度入り、翠星石の前まで歩み寄った。
「あの引きこもりをチビ呼ばわりしたり、他にも色々ボロクソに暴言吐いて
相当毛嫌いしているのかと思えば…二人っきりになった途端に態度を一変させて…
どっちが本当のお前なんだ? と言うかお前本当はこの引きこもりが好きだろ?」
ヴィータにそう突っ込まれて翠星石の顔は真っ赤に染まってしまった。
「チッチビ人間Ⅱ号ごときがなっなっ何を言いやがるですか! ローゼンメイデン一の淑女たる
翠星石がこんな卑しい引きこもりをすっすっすっすっすっ…。」
「じゃあこのお菓子はどう説明するんだ?」
「こっこのお菓子は失敗作ですぅ! 失敗作をチビ人間に処分させようとしたです!
卑しいチビ人間なんか不味い失敗作で十分ですぅ!」
「ほ~、そうかそうか。」
「あっ! 何するです!?」
ヴィータは翠星石が持っていたお菓子を摘みあげて一口食べた。これがまた実に美味だ。
「嘘はもっと上手に付け。これが失敗作だったら店に並んでるお菓子の大半が失敗作と言う事になるぞ。」
「キッキィィィィ!! チビ人間Ⅱ号ごときがつけあがるなですぅ!」
翠星石は拳を振り上げてヴィータになぐりかかろうとしていたが、
ヴィータはそれを軽く後に下がるだけの動作でかわしていた。
「要するにあれか。ツンデレとか言う奴だろ? だがまあ安心しろ。
私は別にそこの引きこもりなんかに興味は無いし、お前等の間をどうこうする
つもりは無い。だから思う存分乳繰り合ってりゃ良いだろ。」
「チビ人間Ⅱ号のくせに偉そうな口を叩くなですぅ!」
「そもそも何で僕が人形なんかと!」
とまあ翠星石もジュンも顔を真っ赤にさせながらヴィータに突っかかっていたが、
そこで騒ぎをを聞き付けた真紅と雛苺もやって来た。
「一体どうしたの? うるさいわ。」
「ああ…こいつが引きこもりなのに妙に人形に好かれるなって話してたんだよ。」
「だからチビ人間Ⅱ号が偉そうな口を叩くなって言ったです!」
「人形に好かれたって嬉しくない!」
「雛はジュン大好きなのー!」
翠星石もジュンも顔を真っ赤にさせて否定していたが、雛苺は笑いながらジュンの頭に登っていた。
「ジュン登りー!」
「わっ! こら! 登るな!」
「そんな事よりジュン、喉が渇いたわ。紅茶を淹れて頂戴。」
「もう何がなんだか…。」
また何かグダグダになってしまい、ヴィータも呆れてしまっていたが、そんな時だった。
「そんなに皆集まって何してるのぉ~?」
「こっこの声は!」
「水銀燈!」
するとジュンの机に置かれていたパソコンのディスプレイが光を放ち、
そこから何と水銀燈が現れたでは無いか。勿論ジュンのパソコンは
至って普通のパソコンであり、そこから水銀燈が出てくるなどと言う事は
ヴィータがnのフィールドからこちらの世界に来る時に出てきた大鏡と
同じ理論による物だと考える他は無いと言う以前に、ただでさえグダグダの
騒ぎになっていた所で水銀燈まで乱入してきたのだからもう滅茶苦茶だ。
「ったくただでさえグダグダな所に出てくるなよ馬鹿!」
「誰が馬鹿よぉ! それはそうと…貴女あの時nのフィールドにいた人間じゃなぁい…
そう…貴女も真紅の言う絆とか言う言葉にぼやかされたのねぇ…。」
「はぁ? 確かに見ず知らずの土地を一人で行動するのは不味いから
地元の人にある程度頼った方が良いとは分かるけど…何故いきなり絆って言葉が出る?」
唐突にヴィータにとってワケの分からない言葉を放つ水銀燈に
ヴィータは首を傾げていたが、水銀燈は言った。
「まあいいわぁ。私の目的は真紅達のローザミスティカを頂く事だけどぉ…
あの時も言ったわねぇ…あんたもまとめてジャンクにしてあげるってぇ!!」
「やめなさい水銀燈! 私達ならいざ知らず、何故ヴィータを狙うの!?」
「そうです! コイツはチビ人間Ⅱ号ですけどアリスゲームとは無関係です!」
「ヴィータ苛めちゃだめなのー!」
真紅・翠星石・雛苺はヴィータを庇う様に前に出るが、水銀燈は不敵な笑みを浮かべていた。
「それはねぇ…その人間が真紅…貴女と同じ赤いからに決まってるでしょぉ?
私はねぇ…赤い物が大嫌いなのぉ…。赤い物を見ると…真紅…貴女を思い出して腹が立つのよぉ!
だから私はそこの人間を壊してあげるの…ジャンクにしてあげるのぉぉ!!」
「水銀燈…人間を糧としか思わない貴女らしい言葉ね…。でもそうはさせないわ…。」
真紅と水銀燈は睨み合い、一触即発の事態となっていたが、ヴィータは
それを押しのけて前に出てきていた。
「まったく…そんな理由で恨まれたんじゃたまったもんじゃない…。
けど…自分の身は自分で守るのが私だ…。そっちがやる気なら相手になるまで。」
「ヴィータだめです! お前じゃ敵わないです! 子供の喧嘩とはワケが違うです!」
「雛達の後にいないとダメなのー!」
翠星石と雛苺はそう言ってヴィータを後ろに下げようと引っ張る。
まあこれは無理も無い話だ。ヴィータは元々時空管理局の事を話していないし、
皆もヴィータをただ髪が赤くて目付きの悪い人間の女の子としか認識していなかった。
「ちょっと待てよ! どうでも良いけどここは僕の部屋だぞ!」
そこで皆の会話を遮ったのはジュンだった。確かに今皆がいる場所はジュンの部屋の中。
元々そこまで広くない上に6人も集まってかなり人口密度が高い状態にある。
そんな部屋で戦えるはずが無い。
「そおねぇ…確かにこんな狭い所じゃ思い切り戦う事なんて出来ないわねぇ。」
「だからもう帰れよ!」
ジュンは水銀燈を睨み付けていたが、水銀燈は不敵な笑みを浮かべて何か思い付いた様子だった。
「ならぁ…皆で広い場所に行けば良いのよぉ…。」
「え!?」
と、その時だ。水銀燈がここに来る際に利用したジュンのパソコンのディスプレイに
作られたnのフィールドへの扉が開かれ、皆をそこに引き込み始めたでは無いか。
「ウフフフフ…nのフィールドで一人一人ジャンクにしてあげる…。」
「わあああああ!!」
「キャァァァァァ!!」
最終更新:2007年08月14日 17:28