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 月下の庭園で、響き渡るは獰猛な野獣の咆哮。
 ライオンかトラか、はたまたチーターか。それが正確に何の声なのかは解らないが。
 だけれど、それが獰猛な肉食獣のそれに近い雄叫びである事だけは確かだった。
 月村すずかはそんな野獣の声と胸騒ぎに突き動かされて、一人走る。
 何故にこんなに胸騒ぎがするのかと問われても、答える事は出来ない。
 これまでの経緯と、直感的な何かがすずかを焦慮に駆り立てるのだ。

「はぁ……はぁ、はっ……何処に居るの、ミックー!」

 口元に当てた右手でメガホンを作って、叫ぶ。
 されど当然の様に、すずかの声に答える者はいない。
 何もミックの身に何かが起こったと決まった訳ではないのに。
 それなのに、心の何処かで、ミックに異変が起こったのではないかと考えてしまうのだ。
 とんでも無い石を持ち去ったミックが消えた直後に、肉食獣の咆哮が木霊した。
 以上の情報から考えれば、最悪の事態を想定してしまうのも無理はないのだが。

 しばらく走って居れば、やがてすずかも異変に気付いた。
 見渡す限りに拡がる新緑の木々は、夏の到来を予感させる爽やかな光景である筈だった。
 だけど、今日は何かが違う。木々のざわめきだとか、周囲の大気だとかが、感覚的にではあるが違うのだ。
 初夏の生温かい風は、汗が纏わりついたすずかの頬を嬲り、長い髪の毛はべったりと張り付いてくる。
 暑苦しくて、服を着ている事すら煩わしく感じる程なのに……どういう訳か、背筋は嫌に冷たい。
 所謂第六感という奴であろうか。得も言われぬ不快感が、悪寒となってすずかを戦慄させる。
 やがて、すずかとは真逆へ向かって、逃げ惑う様に走り去って行く猫達と擦れ違う。
 それはまるで、本能的に肉食獣から逃げようとする草食動物の様で。
 逃げ惑う猫達が、すずかの憂慮を殊更駆り立てる。
 やがて、すずかは見た。

「え……――」

 瞬間、意味を成す言葉なんてものは、何も思い浮かばなかった。
 ただ、目の前の現実が理解出来ず、受け入れられず、無意識に後じさる。
 やがてすずかの頭は、理解出来なかった現実を、否定すべき現実と判断した。
 軽くかぶりを振って、瞠目の眼差しを向ける。

「グルルルルルルルルル……」

 目の前の獣が、低く唸った。
 肉食獣のそれによく似た唸りは、周囲の大気を振るわせて、木々をざわめかせる。
 鋭い眼光は確かにすずかを捉え、赤の牙が剥き出しになった口元からは、獣の吐息が漏れる。
 こうしていざ対峙してみれば、それはニュースで見た未確認などよりもよっぽど恐ろしく感じてしまう。
 すずかが知る未確認生命体とは、まだ“人の形”をしていた。
 人らしい理性も感じたし、奴らは人語すらも解したらしい。
 だけど、目の前の獣から感じるのは、未確認にあった“人為的な恐怖”ではない。
 本能に従って獲物を仕留め、喰らうだけのただの獣(けだもの)。
 本能的に植え付けられたのは、そんな印象だった。

 黄金の獣が歩を進める。
 ずしりと、庭園の芝生が沈み込んだ。
 鋭い爪痕が新緑の大地を抉って、ゆっくりとすずかとの距離を縮める。
 逃げなければ、自分は殺されてしまう。そう考えるのは、生物としての本能だ。
 だけど、頭ではそれが解っていても、脚がまるで棒の様に動かなかった。
 蛇に睨まれた蛙とは、まさにこの事であろう。

「ミッ……ク――」

 そうだ。自分は今、こんな事をしている場合ではない。
 見るからに危険な化け物が今、庭園の中に紛れ込んで居るのだ。
 ここは危険だ。すぐにでもミックを見付けだして、保護しなければいけない。
 まるで肯んじ難い現実から目を背ける様に、すずかはそう考えた。
 だけど、現実はかくも非情で。

「え……?」

 ミックと呼ばれた黄金の獣が、すずかの目の前で脚を止めた。
 逞しい四肢で大地を踏み締めて、巨大な右腕で、黄金の毛皮に包まれた顔を擦る。
 その仕種は、ネコ科の動物のそれと等しい。すずかも良く見慣れた、猫の仕種だ。
 黄金の獣はやがてすずかの足元に傅いて、甘える様な瞳ですずかを見上げるのだ。
 獰猛な獣の双眸は、とても甘えている様には見えないのだろうが、少なくともすずかはそう感じたのだ。

「い、いや……そんな……うそっ――」

 かぶりを振って後じさる。
 目の前の獣は、狼狽した様子で再び歩を進める。
 すずかが一歩引けば、獣もまた、一歩を進める。
 それはまるで、主人に寄り添おうとする家畜の様で。
 ……本当は、一目見た時から頭の中では解っていたのかも知れない。
 ただ、認めるのが嫌で、受け入れられなくて、気付かないフリをしていただけなのかも知れない。
 しかし、この獣を見た瞬間の自分の考えなどは既に最早忘却の彼方であった。
 気付いた時には、認めたくない現実を否定するように。

「いやぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

 腹の底から、裂帛の絶叫を響かせていた。


 EPISODE.24 異形


 まるでジェット機が駆け抜ける様な音がびゅん、と鳴り響く。
 音速に近付き、金の閃光となったフェイトが、月村の庭園を縦横無尽に駆け回っているのだ。
 光の刃を携えたフェイトが駆け抜ければ、後に残された深緑の葉がはらりと散る。
 しかし、それでもフェイトは敵の動きを捉えられずに居た。

「ハァッ!!」

 月夜の晩に、黄金に光輝くデスサイズが振り下ろされる。
 だけどそこには既に誰も居らず、フェイトの刃は空を斬り、芝生を削るだけだった。
 バルディッシュから放出される魔力刃が掠めた事で、土色を露出させた大地を見て、フェイトは舌打ちする。
 これで何度目であろうか。数え切れない程刃を振り下ろしたが、その内実に半分は回避せしめられている。
 音速のフェイトの攻撃を回避するという事は、奴もまた音速に近い速度を叩き出せるという事だった。

「逃げてばかりで!」

 苛立ちを言葉にして吐き出す。
 あの獣は、攻撃を仕掛けても反撃を仕掛けて来ない。
 といっても、速度が同じである以上、フェイトに加速のアドバンテージはない。
 そんな状態で強靭な未確認の一撃を受けようものなら、それこそ即死も有り得る。
 故にフェイトとて一切の油断はせずに戦うつもりなのだが――それにしたって不自然だ。
 敵は全くといっていい程、フェイトには攻撃を仕掛けて来ないのだ。
 もしかしたら、自分は敵とすら見なされて居ないのかも知れない。

 フェイトが再び音速に突入し、獣に急迫する。
 獣は当然の様に、それを回避せんと飛び上がる。
 強靭な脚力は驚異的な速度を叩き出し、獣は一瞬で音速に近付いた。
 金の閃光となったフェイトは、空を駆ける獣を叩き落そうと加速するが、その攻撃は届かない。
 獣の機動力は異常だった。音速で近場の木の幹に触れたかと思えば、その瞬間に方向転換。
 ぎゅおん、と音を立てて、幹を足場に真逆の方向へと跳んだのだ。
 急制動するフェイトの身体。

「なのは! そっちに行ったよ!」

 すずかを庇う様に杖を構えるなのはに向き直る。
 解って居る、と言わんばかりにこくりと頷いたなのはは、杖を突き出した。
 なのはの眼前に飛び降りた金の獣に向けて、無数の魔力弾が急迫する。
 全方位から獣を取り囲むように迫るそれを回避する術は、無い。
 それを知らずに後方へと跳び退ろうとした獣は、後方から迫る魔力弾に撃ち落とされた。
 どさりと音を立てて落下した獣は、どうやらあまり戦闘には慣れていないらしい。
 相当な実力を持っているにも関わらず、逃げる事しかしなかったのはそういう事だろう。
 ならば、こいつが誰かを傷つける前にここで動きを封じて、すぐに五代さんに連絡する。

 桜色と金色、二色の魔法帯が輪となって獣を拘束する。
 胴体に四肢、獣の首まで、体中の至るところに、何重にも拘束魔法が掛けられる。
 これくらいしなければ、未確認を封じる事は出来ない。
 否、これだけしても、何時までもつかは甚だ疑問だ。

「早く、はやてと五代さんに連絡を――」
「待って!!」

 しかし、フェイトの言葉はすずかによって遮られた。
 気が動転したのであろうか、取り乱した様子で眼前のなのはを押し退けた。
 なのははすぐにすずかの腕を掴もうとするが、それは容易に振り払われる。
 すずかは拘束されたままの獣へと駆け出し、

「いけない、バインドが!」

 同時に、獣の拘束にヒビが入った。
 バインドに走った亀裂は瞬く間に広がり、数瞬の後には、獣は自由を取り戻していた。
 獣に向かって真っ直ぐに駆け出すすずかに応える様に、獣もまた一歩を踏み出す。
 ずしりと音が響いて、美しい芝生が醜い足跡で蹂躙されてゆく。
 獣の吐息が、低い唸りと共にぐるるるる、と吐き出される。
 すずかが危ない。そう思ったのはなのはだけではなく、周囲に居た全員だ。
 なれば、友に危機が迫る前に、この手で救わねばならない。

「ミッ――」

 すずかが手を伸ばした。
 まだ幼く、小さな白い手を、醜い獣に向けて。
 それに応える様に、獣もまた、黄金の毛皮に包まれた巨大な爪を伸ばす。
 美女と野獣。例えるならば、そんな光景であった。
 そして、二人の手が触れ合おうとした。
 ……その瞬間。




「――バスタァァァッ!!」

 凝縮された桜色の魔力の奔流が、獣の身体を直撃した。
 血の様に赤い牙を剥き出しにして、呻きとも取れる唸りを発する。
 獣は、胴体からなのはの砲撃に抉られて、遥か後方へと吹っ飛ばされた。
 今のは、牽制の為になのはが発射した一撃。チャージ時間を短縮したショートバスターだ。
 この攻撃で倒そうなどとは露程も思っては居なかったが、どうやら存外効いているらしい。
 見るからに凶悪そうな瞳を剥き出しにし、痛みに呻くその姿に、なのはは確かなダメージを確信したのだ。
 その身体を強かに地面に打ち付けて、転がった獣に、なのはは追撃の魔法を打ち込む。
 魔力の弾丸が、再び雨霰となって獣の身体を打ち付け、小さな爆発を巻き起こした。
 更に追撃の力を強めようと、杖を握り締める腕に力を込めた、その刹那。

「やめて! お願い、やめて! なのはちゃん!」
「えっ――!?」

 なのはの動きを掣肘したのは、すずかの声。
 なのはの動きを掣肘したのは、すずかの腕。
 身体全体でなのはに飛びついたすずかが、なのはの腕を無理矢理に降ろさせたのだ。
 レイジングハートの切先は大きく逸れ、集中力が途切れた数発の魔力弾が急降下する。
 それらは全て、目の前で呻く獣に命中する前に、その脚元に被弾し、爆ぜた。

「ウ、グ……ァァ――」

 それを尻目に、金の獣は何とか身体を起こす。
 巨大な腕と脚で大地を踏み締め、まるで虎の様な動作でなのはを眇めた。
 ここへ来て眼前の未確認と初めて視線を合わせたなのはは、ぞくりと戦慄した。
 外見のおぞましさもあるが、奴の双眸を見るや、言い知れぬ不快感を感じたのだ。
 まるで、悲しみとか、怒りとか……そういう負の感情をぶつけられたような。
 そのまま獣は踵を返し、最後に一目振りかえると、そのまま空へと跳び上がった。
 一瞬で驚異的な速度を叩き出した獣は、逃げる様に夜の闇へと消えて行った。

「今の未確認、まさか……」

 一瞬の出来事であったが、なのはは確かに見逃さなかった。
 というよりも、一瞬の出来事であったが故に、それは尚更なのはの目に焼き付いていた。
 今し方逃げ出した未確認が、最後に一度だけ振り返った……その瞬間を。
 この地上に生きるどの肉食獣よりも凶悪そうな顔は、しかし悲しみに歪んでいた事を。
 そして、その醜くも凶悪な瞳から、一滴の涙が零れ落ちる瞬間を――。




 海鳴市、月村邸、すずかの自室―――08:26 p.m.
 胸中で芽生えた罪悪感は、月村すずかの心を苛み、その呼吸を荒げさせる。
 なのはが背中を摩ってくれて、フェイトは心配そうにすずかの顔色を窺ってくる。
 アリサは仁王立ちをしたままではあるが、心配そうに横目ですずかを見詰めていた。

 「私、あれがミックだって、解ってたのに……酷い事、しちゃった……」

 途切れ途切れの言葉は、きっと、誰が聞いても苦しそうに聞こえると思う。
 必要以上に皆に心配を掛けてしまうのは望ましくない事だが、今この瞬間ばかりは仕方が無かった。
 どうせ頭は何にも回らないし、他の事を考えようとしても、思い浮かぶのはミックの事ばかりだ。
 あの時ミックは、姿は変わっても、今までと何ら変わらずに自分に寄り添ってくれようとした。
 なのに自分は、外見が変わったからと言ってそれを受け入れられず、絶叫で以て拒絶してしまったのだ。
 きっとミックは、傷ついたと思う。信頼していた主人に拒絶されて、その上攻撃まで仕掛けられて。
 もしもミックの立場に居るのが自分であったなら、きっと耐えられない筈だ。

「私っ……私、どうしよう……あの子、あんなに、苦しそうにしてたのにっ……!」
「落ち着いて、すずかちゃん……攻撃しちゃった私が言うのもどうかと思うけど、
 私達も責任を持ってミックを探すから……必ず見付けだして見せるから」

 なのはの言葉が、何故か言い訳のように聞こえてしまう。
 気付いた時には、すずかは絶叫していた。

「見付けだして、どうするの!? あの子はもう未確認になっちゃったんだよ!?」
「それは……」

 返す言葉が見当たらないのか、なのはは気まずそうに俯いた。
 彼女自身も、自分が攻撃を仕掛けてしまった所為で……という負い目を感じているのだろう。
 なのはの瞳には今のすずかと同じ種の、罪悪感とも取れる陰りが見え隠れしていた。
 すずかの親友は、本当に優しいから……こんな時、自分と一緒に苦しんでくれる。

 だけど、それは余計に今のすずかの激情を駆り立てるだけでしかなかった。
 優しさと同情は紙一重だ。だとすれば、当事者でないなのはのそれは同情でしかない。
 そう思うと、すずかの気持ちはどうしようもなく辛くなって、涙が止まらなくなってしまう。
 嗚呼、本当に一番酷いのは、誰でも無く“自分”なのだ。それくらいは解って居る。
 友達を救う為に攻撃の手段を取ったなのはよりも、ミックの気持ちを裏切った自分の方が、よっぽど酷いのだ。
 しかし、それが解ってはいても、混濁した感情の整理がつく訳はないし、余計にこんがらがるだけだ。
 この感情の行き場は何処にもなくて、行き場を失った憤りは、眼前のなのはへ吐き出されてしまう。
 すずかがこんな状況に陥る事など、普段なら絶対に有り得ないのに。
 この時だけは、自分でも解るくらいに、どうかしていたと思う。
 すずかは声を荒げて、尚も叫んだ。

「それでなくても、もしも警察に見つかったら、きっと殺される……!
 誰もあの子が小さな猫だったなんて思わないし、きっと世間はあの子を化け物扱いする……!
 そしたら、もうあの子に居場所なんて無いじゃない……! 安心出来る場所なんて、何処にも!」

 興奮しているようで、すずかの言い分は的を射ていた。
 事実として、未確認生命体は無差別大量虐殺に続いて、小学生の連続殺人と、悪質な事件を起こし過ぎた。
 仮に「ミックは本当は未確認じゃないので、安心です」なんて言ったところで、誰が信用するものか。
 きっと誰にも理解されず、取り合ってもくれず、ミックは化け物扱いされたまま、処分されるだけだ。
 考えただけでぞっとして、止めようの無い涙が溢れ出て来る。

 そんなすずかを、優しく抱きとめてくれたのは、他ならぬ高町なのはだった。

「大丈夫だよ、すずかちゃん……元に戻る方法はきっとある筈だから……
 私達が絶対に助け出すから、信じて待っていてくれないかな……」
「……どうやって、助けるっていうの……?」

 この腕はなのはを抱き返す事はないまま、質問だけが口をついて出る。
 今度はフェイトが、なのはに補足するように言った。

「金の欠片を取り込んで変身したのなら、私達がその欠片を破壊すれば、きっと。
 多分、まだ欠片は完全には融合してないと思うから、早い内に対処をすれば、間に合うと思う」
「本当に……?」
「うん、本当」

 すずかはそっと、なのはのから身体を離した。
 両手で真っ赤になった目を擦って、視界を歪める涙をぬぐう。
 クリアになった視界に真っ先に飛び込んで来たのは、なのはとフェイトの強い瞳であった。
 絶対に助け出して見せるから、と。彼女らの瞳が、そうすずかに訴えかけているようで。
 彼女らももう、心の中で折り合いをつけたのだろう。
 いつまでも悲しんで居てもどうしようもない。悲しみを打ち破る為には、やらねばならない事があるのだと。

 不安で堪らないのは変わらないし、今だって大声を上げて泣き出したい気持ちは同じだ。
 だけど、彼女ら二人の強い瞳を見ていたら、何故か本当に助けてくれそうな気すらしてくる。

「本当に……ミックを助けてくれるって、信用していいの……?」
「約束する。絶対に助け出すって……私と、フェイトちゃんと、皆の力で」
「うん、私達が証明するよ。どんな状況でも、諦めさえしなければ、希望はあるって事を」

 二人の言い分は、呆れるほどの綺麗事だった。
 返す言葉を失って、茫然と立ち竦むすずかの肩に、もう一人の親友が手を置いた。
 振り返れば、そこに居るのは、二人と同じ様に強い瞳を持った少女――アリサだ。

「ま、まぁ、私には何も出来ないけど……その代わり、ずっと一緒に居てあげるくらいは出来るから。
 なのはとフェイトがミックを助けて帰って来るまで、寂しいなら、私がアンタの傍に居てあげるから……
 だからもう、泣くのは止めなさいよ。まだミックは死んでないし、助かる可能性だってあるんだから」
「アリサちゃん……」

 嗚呼、自分はなんと素晴らしい友達を持ったのだろう。
 先程まで、悲劇のヒロインぶって当たり散らすしか出来なかった自分が恥ずかしくすら思えてしまう。
 友達が悲しんでいる時は、自分の事の様に必死になってくれる……それが彼女達ではなかったか。
 目をぎゅっと食いしばって、僅かに残った涙を手の甲で払拭する。
 それからすずかは、大きく頭を下げて、懇願した。

「ごめん……ごめんね、皆。本当にありがとう……ミックの事、お願い……」


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最終更新:2011年05月13日 06:09