なのはとユーノの二人は管理局の近くにまで来ていた。
「ユーノ君ありがとう…。後一秒でも遅れてたら私…。」
「礼には及ばないよ…。とりあえずこれから無限書庫に行こう…。あそこなら
そう簡単には見付からないと思うし…それに…あの悪魔将軍に関する事柄が
書かれた文献を探そうと思うんだ。ああ言う相手は力押しで勝てる程甘くは無い。
だから悪魔将軍が何者であるのか…何か弱点は無いのか調べる事が必要だと思う。」
「私も手伝うよ。」
管理局の内部も人っ子一人いない無人の状態になっており、エネルギーの供給も
完全にストップさせられていた。それ故にそれまでは自動ドアだった場所も
手動で開けなければならず、部屋から部屋の移動には苦労させられた。
なのははミッドチルダの中でも特に優秀な部類に入る戦闘魔導師だが、
元来運動オンチな方だった為に力仕事は不向きであるし、ユーノも学者タイプでそこまで
力のあるタイプじゃない。それだけにエネルギー供給が止まってロックされた
自動ドアを手動で開けるのは相当にキツイ物だった。

管理局の食料庫に残っていた食料を掻き集めた後、二人はようやく無限書庫へ到着した。
ありとあらゆる世界の書物が集まるこの無限書庫で悪魔将軍に関しての記述の書かれた文献を探す。
今二人に出来る事はこれしか無かった。ちなみに事前に食料庫から食料を掻き集めて来たのは
それがかなりの長期戦になるかもしれないと考えた為である。
「とにかくこの中から悪魔将軍について記述された文献を探すんだ。
あれだけの力を持った者が今の今まで評判にならなかったはずが無い。
きっと何処かにあれについて記録された文献があるはずなんだ…。」
「うん。でも…ここには何度も来た事あったけど…本当に広いねここ…。」
無限書庫は無限と付くだけあって相当に広い。何しろ無限書庫で長い事働いているユーノさえ
たまに遭難し掛ける程である。しかし、今はそんな遭難の事など恐れていられる様な状況では無かった。
とにかく無限書庫の中から悪魔将軍について記述された文献を探す。これしか無かった。

二人はそれぞれ二手に分かれて悪魔将軍について記述された文献の探索を開始した。
ユーノは無限書庫で長い事司書長を勤めるだけあって、超人的なスピードで
各書を把握していく。こういう状況ではユーノの独壇場だった。
なのはもユーノの様に素早く読んで行く事は出来ないが、それでも一冊一冊調べて行った。
しかしそれでもやはり広大な無限書庫の中から悪魔将軍について記述された文献だけを
探し出すと言うのは相当な労力が必要とされた。ユーノはその手の仕事に慣れているから
良いとしても…理数系は得意でも文系はそこまで得意でないなのはには相当な重労働だった。
もう目が痛くて痛くてたまらない…そして気が付くとなのははすやすや眠りに付いてしまっていた。

それから…無限書庫での探索が開始されてからもう数日が経過していた。
そんだけ時間が経てば誰だって腹が減るワケで、やはり食料を用意しておいて良かったと
言わんばかりになのはは缶詰を開けて食事中だった。
「はぁ…やっぱりこんな時でもお腹は空くものなんだね…おちおち食事をしてる場合じゃないのに…。」
なのはは自己矛盾を抱えながら食事をしていたのだが、そこでユーノからの思念通話が来ていた。
「なのは! 見付かった! 多分悪魔将軍について記述されてると思える文献を見付けた!」
「え!? 本当!? 直ぐ行く!」
なのはは缶詰を持ったままユーノのいる場所へ直行した。

「宇宙超人名鑑?」
ユーノに渡された余りにも胡散臭そうなタイトルの本になのはは呆れてしまいそうになったが、
ユーノは真剣だった事に気付き、すぐに自分も真面目な顔に戻った。
「これは超人と呼ばれる特殊な種族に関して記された本なんだ。ちなみにこの本は
何巻にも及ぶ物なんだけど…その中の悪魔超人編と書かれた物に悪魔将軍に関する記述があった。」
「ユーノ君、そもそも超人って何なの?」
「超人だよ。」
「ユーノ君…少し頭冷やそっか…なんて言ってる場合じゃないよね。」
真顔で答えになってるのか怪しい即答してくるユーノに対し、なのはは一瞬殺意が沸いたが、
とにかく今はそんな事をやっている状況では無いわけで、真面目にユーノの話を聞く事にした。
「この本における超人の定義とは人を遥かに凌駕した人型生命体全般を指しているらしい。
それに一口に超人と言っても色々なタイプがあって、外見上は人間となんら変わらない者も
いれば、いわゆる獣人タイプの超人、無機物が人型を取った無機物型超人、etcetc…
本当にこんな生物が生物学上にあり得るのか疑問に思えてくるくらい不思議な連中なんだよ。」
「と…とりあえず変な人達って事は分かったよ…。で…悪魔超人って言うのは…?」
「この本によると悪魔超人は悪魔に魂を売った超人及び魔界出身の超人の事を指している。」
「悪魔で超人…って事は…やっぱり普通の悪魔を超えてたりするのかな?」
「そこまでは分からないけど…超人と付くくらいだからそうだろうね…。」
とりあえず超人に関する事柄はある程度理解した所で二人は本題へ入った。
「悪魔将軍。この宇宙超人名鑑悪魔超人編によると、魔界を統べる大魔王サタンが
物質世界…つまりこの世で活動する為に姿を変えた者で、かつ全悪魔超人を束ねる
存在でもあったらしい。また、別名【恐怖の将】とも呼ばれ、過去に様々な
次元世界を配下の悪魔超人達と共に荒らし回り、神話にも語られている世界もあると言うんだ。」
「そ…そんなに恐ろしい存在なの?」
「まがりなりにも魔界を支配しているんだしね…。それと、悪魔将軍は本来身体を持たず、
自分の配下となる超人と融合する事で自分の身体としていたらしい。」
「だからフェイトちゃんやはやてちゃん達が…将軍の新しい身体に…?」
「…。」
悪魔将軍に取り込まれてしまったフェイト達の事を思い出した途端に二人は
気まずくなり、黙り込んでしまった。それから10秒くらいの沈黙の後、
ユーノが恐る恐る口を開いた。
「なのは…絶望してしまうかもしれないけど…聞いてくれるかな?」
「何? ユーノ君…。」
「もし仮になのはと僕で悪魔将軍を倒す事が出来たとする…。
でも…将軍に取り込まれた人達が元に戻るかどうかはまだ保障が出来ないんだ。
いや…もしかしたら将軍に取り込まれてしまった時点でもう…。」
「!!」
なのはは真っ青になった。
「と…言う事は…ミッドチルダはゴーストタウンのまま…?」
もし本当にユーノの推測通り、悪魔将軍に取り込まれた者達がもう助からないと言うのなら…
なのはとユーノの二人がミッドチルダに残された最後の男女と言う事になる。

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最終更新:2007年08月16日 09:36