悪魔将軍に対する成す術が無いまま…二人はしばらく沈黙したままだった…。
が、突然なのはが全身の力が抜けてしまったかのようにユーノに寄りかかって来て
これにはユーノも思わず顔を赤くさせて硬直してしまった。
「ねぇユーノ君…。」
「な! 何だいなのは!?」
なのはの方からこんな事をしてくるとは夢にも思わないユーノは何故か緊張してしまう。
しかし、なのはは目を閉じてユーノに寄りかかったまま言った。
「本当に…私達二人しか残って無いんだよね…。」
「た…多分ね…。」
「もしこれで…仮に悪魔将軍を倒す事が出来ても皆が元に戻らなかったら…
本当の本当に私達がミッドチルダに残された最後の二人って事になっちゃうね…。」
「ミッドチルダ…ではね…。」
「あのね…ユーノ君…。私の世界の神話の中にアダムとイブって言うのがあるの…。」
「アダムとイブ?」
なのははゆっくりと頷いた。
「神様が創った最初の一組の男女…それがアダムとイブって言うの…。
で、そのアダムとイブの子孫が今生きてる人達って神話…。」
「も…もしかして今の僕となのはがアダムとイブとか言うんじゃ…。」
その時のユーノは思わず顔が真っ赤になってしまっていた…。しかし、なのはは黙って頷いた。
「だってそうでしょ? もし仮に将軍を倒せてもフェイトちゃん達が元に戻らなかったら…
結局ユーノ君と私がミッドチルダに残された最後の二人って事になるじゃない…。
もうアダムとイブに例えるしか無いよ…。ユーノ君…。」
「う…うん…。」
なのはに寄りかかられた状態でこの様な事を言われてしまうのだから、ユーノは気が気で
いられなかった。むしろこのまま二人きりでも良いんじゃ…とか…いっそ押し倒して
(ピー!!)とか(ズギャンドギャン!!)とかやっても良いんじゃ…とか考えそうになったが、
それも束の間、ユーノは凄く大切な事を思い出した。
「で…でもさなのは…。どっちかって言うと…僕達二人が悪魔将軍に殺されるか、
取り込まれる可能性の方が遥かに高かったりするんじゃないかな~なんて…。」
そう発言したユーノに対し、なのはは頬を膨らませていた。
「せっかくムード出てたのに雰囲気読んでよユーノ君…。」
「ごめんなのは…。」
「でも…ユーノ君が言った事は間違ってないと思うよ。悪魔将軍と戦う事はつまり…
私とユーノ君の二人でフェイトちゃんやはやてちゃん達全員を相手にするも同義だし…。」
「この無限書庫もいつかは悪魔将軍に見付かってしまうだろうし…。
他の世界に逃げ込んでも無駄だろうな…。悪魔将軍がミッドチルダ制圧だけで
満足するはずがない。きっと他の世界にも侵攻するはず…。」
「つまり…私達には逃げ場が無いのね…。」
ユーノは軽く頷くが…その時だった。突然なのはが抱き付いて来たでは無いか!
「嫌ぁぁぁぁぁぁ!! 死にたくないよぉぉぉぉぉ!!」
「なのは!?」
いきなり泣き付いて来たなのはにユーノは焦った。しかし、この絶望的な状況で
恐れおののき泣き出さない方がむしろ異常なのかもしれない…。エース・オブ・エースの
称号で呼ばれるなのはもやはり人の子なのだ…。とにかくユーノはなのはに泣きつかれるまま
何とか慰めようとするしか出来なかった。
「ユーノ君…私…分かった気がする…。」
「何が分かったんだい?」
「今まで私を悪魔と呼び恐れた人達の気持ちが…。」
「…。」
これが普段ならユーノも少々気まずくなっていただろうが…今はそんな気にならなかった。
なのはも本当に真面目であったし、ユーノも真面目に話を聞いていた。
「やっぱり人間って無力だよね…。私もエース・オブ・エースなんて呼ばれて
チヤホヤされてたけど…いざ相手が本物の悪魔だったらこのザマ…。格好悪いよね…。」
「なのは…本物の悪魔を相手に恐れない人の方が僕は異常だと思うよ…。
だから…元気出してよ…。怖いのはなのはだけじゃない。僕だって怖いんだ…。」
ユーノはなのはの頭に手を置き、優しく撫でた。その時…なのはがかすかに微笑んだ気がした。
「何故だろう…ユーノ君といるだけでこんなに安心してしまうなんて…。
悪魔将軍が迫ってるって言うのに…こんなにも気が安らいじゃう…。」
ユーノはもうこのままでも良いんじゃないかと本当に思うようになっていた。
どうせこの様な事は二度と無いのだろうから…と、それも束の間…
「あ! そういえばユーノ君! そもそも何故ミッドチルダに悪魔将軍が出て来たの!?」
「え…? ああ…実に言い難いんだけど…何でも管理局が悪魔将軍の封印されていた
ジェネラルストーンってロストロギアを回収した後、その封印作業に失敗して
悪魔将軍が解き放たれた…みたい…。」
「え…それってもしかして悪いのは管理局?」
なのはもユーノも思わず苦笑いしていた。
「それにね…実はほんのちょっと前に…なのは…君の世界で悪魔将軍が復活しかけた事が
あったらしくてね…でも現在活躍中の新世代正義超人の活躍で未然に阻止されたらしいんだ…。」
「…………。」
なのはもユーノもやはり苦笑いしてグウの音も出なくなってしまった。
つまり…今回の騒動は時空管理局の不手際による物なんだと…分かってしまったからだ。
「つまりあれですか!? 私達が休暇を楽しんでいた間に管理局が勝手にミスッて
悪魔将軍を復活させてしまいましたって事ですかアラエッサッサー!!」
「偉いこっちゃ偉いこっちゃヨイヨイヨイヨイ!!」
この様な極限状態に精神が耐えられなくなったのか、はたまた単純にヤケクソになってしまったのかは
分からないが、突然なのはとユーノの二人はフォークダンスと盆踊りを足して2で割った様な
珍妙な踊りを踊り始めてしまった。しかし、その珍妙な踊りが逆に落ちかけてしまっていた
二人のテンションを再び高める効果に繋がっていた。
「もうこうなったらどんな手を使ってでも生き残ってみせるの!!」
「でも正攻法じゃどうあがいても将軍には敵わない!! と言う事で僕は
もっと別の方法で挑んだ方が良いと思ってハイこの本!!」
二人ともさっきまで沈降気味のテンションからは考えられない程ハイテンションだったが、
ユーノはなのはに一冊の本を渡した。
「フェレットでも分かるゲリラ戦入門? 何かタイトルからして胡散臭い本ね~。って言うか、
著者も著者で環境利用闘法師範ガイアってこれまた胡散臭さ全力全開だし~。」
「でも…このガイアって人はなのは…君の世界におけるゲリラ戦の世界的権威なんだよ。
とにかく少ない戦力で大きな敵を打ち破るにはこの本に書いてあるゲリラ戦法で挑むしかない。
なのはだって言ったじゃないか! どんな手を使っても生き残るって!」
「うん! どんな手を使っても生き残ってみせる! フェイトちゃん達の犠牲を無駄にしない為にも…。」
「いや…まだ彼女等は死んだと決まったワケじゃないんだけどね…逆に助かる保障も無いけど…。」
それはともかくとして、悪魔将軍への対抗手段が決まり、早速二人は実行に移した。

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最終更新:2007年08月17日 09:59