悪魔将軍はゴーストタウンと化したミッドチルダの街の中を徘徊していた。
勿論なのはとユーノを探す為である。
『一体あの二人は何処へ行ったのだ? せっかくこの私が貴様らの遊びに付き合ってやろうと言うのに…。』
と、そんな時だった。突然真正面からピンク色の光を輝く極太の魔砲が悪魔将軍の巨体を飲み込んだ。
それはなのはのディバインバスター。しかし、悪魔将軍は何事も無かったかの様に平然としていた。
『やっとやる気になったか…。だが…全然効いてはいないぞ。私はこの宇宙に存在する
ありとあらゆる技に耐えうる身体を持っているのだ…。』
悪魔将軍は自身の正面に立っていたなのはの目を見た。するとどうだろう。
ディバインバスターが全く効かなかったと言うのになのはは少しも戸惑う事は無く、
むしろ悪魔将軍を挑発し始めたでは無いか。
「やーいやーい! この全身ダイアモンドお化け! 悔しかったらここまで来なさい!」
『何か誘っていると見えるな…。面白い。その誘いに乗ってやろう…。』
悪魔将軍は両脚をスバルが持っていたマッハキャリバーへ変化させ、ローラー超高速回転で
なのはへ向けて迫った…が…
「それっ!」
なのはは悪魔将軍の進路上に何かを大量にばら撒いた。それはパチンコ玉。
ミッドチルダ中のパチンコ屋から拝借した大量のパチンコ玉だった。
忽ちマッハキャリバーのローラーがパチンコ玉に引っかかってしまい、
さしもの悪魔将軍もすっ転んでしまった。
「やったぁ! 作戦成功!」
『なるほど…正攻法では勝てんと見て作戦を変えて来たか…。面白い…。』
これが人間ならアスファルトの地面上に転んだだけでも相当痛い物だが、
人間とは比較にならない耐久力を持つ将軍は平然と起き上がっていたが…
次の瞬間悪魔将軍の頭上からタライが落ちて来てカ~ンと言う音と共に将軍の頭を叩いていた。
つまり、なのはが悪魔将軍を挑発し、パチンコ玉で転ばせた後でユーノが将軍の頭に
タライを落とすと言う作戦だったのである。
「やった! ユーノ君ナイスタイミング!」
「タイミングが難しかったけど成功して良かったよ。」
『一昔前のコントみたいな事するな…。』
確かにダメージこそ無いに等しかったが、頭にタライをぶつけられると言う予想外
すぎる展開は流石の悪魔将軍も気まずくなっていた。が、それも束の間、
突然なのはが悪魔将軍に急接近しており、しかもその手には何か握られていた。
「スバルには悪いけど…それもう使い物には出来なくさせてもらうから。」
『何をする!?』
なのはが持っていたのは何故かミッドチルダでも流通している瞬間接着剤アロンアルファであった、
それをマッハキャリバーのローラーの回転部に一滴ずつ注入するのである。
そうすれば忽ちローラーが固められるのは当然の事だった。
「よし! これでもう高速移動は出来ないね!」
『さて…お遊びはここまでか?』
「わぁ! 構わず追い駆けて来た!」
「逃げろ!」
マッハキャリバーを収め、自分の脚で直接追い駆けて来た悪魔将軍になのはとユーノは逃げ出した。
そして二人はビルの陰に逃げ込み、将軍もその後を追うのだが…なんとそこにはバナナの皮が
彼方此方に落ちているでは無いか。
『何!?』
バナナの皮を踏んでまたもすっ転んでしまう悪魔将軍。しかも将軍が転んだ場所の地面には
なんとトリモチが敷き詰められていた。
『だから昔のコントみたいな事するなと…。』
無論トリモチによって悪魔将軍は身動きが取れなくなってしまった。
「よし今だ!」
「うん!」
なのはとユーノは一斉に飛び出し、身動きの取れない将軍の顔面を殴り付けた。
悪魔将軍にとって唯一弱点と呼べる場所。それは悪魔将軍そのものでもある頭部である。
キン肉マンがかつて悪魔将軍を打倒した際に使用したキン肉ドライバーも将軍の本体である頭部に
強いダメージを与える技だった。とは言ってもやはり将軍そのものが頑強である為、元々そこまで
力の無い二人では頭部に攻撃しても中々通用し無い。
とにかく通用出来るダメージになるまで徹底的に頭部を集中攻撃するしか無かった。
「えい! えい!」
「この! この!」
なのははレイジングハートで、ユーノは遺跡発掘作業等に使う作業道具を武器にして
何度も悪魔将軍の頭部を殴り付けた。しかし…将軍は平然としていた。
『頭を狙う事に気付いた所は褒めてやろう…バゴアバゴア! だが…。』
「わっ!」
悪魔将軍はトリモチを簡単に引き千切り起き上がった。これにはなのはとユーノも再び逃げ出す。
「わー! わー!」
追う悪魔将軍と逃げるなのはとユーノ。広大なミッドチルダを舞台にし、全次元世界の
存亡を賭けた壮大な鬼ごっこが始まった。しかし、悪魔将軍は自身が巨体である事や
マッハキャリバーが封じられた状態であるにも関わらず、これが中々脚が速い。
この辺はフェイトを取り込んだ際に得た能力が作用していると思われる。
しかし、なのはとユーノもその辺の事は頭に入っていた。
「それ! これでもう一度転んで!」
なのはとユーノはまたも悪魔将軍の進路上にパチンコ玉やらバナナの皮やらをばら撒いた。
だが既に一度見られた戦術が通用する程将軍は甘くない。簡単に一っ跳びで跳び越えられて
しまうが…そこはなのはとユーノも既に想定済みだった。
『何!?』
悪魔将軍が着地したポイントには何とフタの外されたマンホールの穴が…
そのまま将軍はマンホールに落っこちてしまった。
『なるほどなるほど…力を持たぬ代わりに悪知恵だけは働くと言う事か…。』
すぐさま悪魔将軍は登ろうとしていたが、そこに何かが仕掛けられていた事に気付いた。
『ん…これは…。』
そのマンホールの中にはなんと…大量のTNT火薬が仕掛けられていましたとさ。
で、それに気付いた時には既に将軍は大爆発に巻き込まれていた。
「質量兵器が禁止されてるミッドチルダにTNT火薬を持ち込むなんて悪い人もいた物よね~。」
「うんうん。本当に悪い人だよね~。」
爆煙に包まれている先程までマンホールがあった地点を見つめながらなのはもユーノもニヤニヤ
笑みを浮かべていた。そもそも質量兵器が禁止されているミッドチルダで何故二人が
大量のTNT火薬などを調達する事が出来たのだろうか…
「さっきも言ったけど本当に悪い人って沢山いるものね~。だってヤクザさん所の
家でも探せばああいうのって簡単に見付かるんだもん。」
二人がTNT火薬を調達した場所。それはミッドチルダに散在している極道やマフィア関係の
場所だった。いくらミッドチルダが質量兵器を禁止していると言っても、暗黒街では話は別。
地球やその他、質量兵器が主流の世界の武器などの闇取引が日常的に行われていたのである。
銃刀法の存在する日本でも暴力団などが銃を所有しているのと同じ様に…
『流石に私を相手に火薬を使うとは盲点だったな…。』
「ゲッ! ゲェ――――――!! 全然効いてない!!」
爆煙の中から平然とした顔で出て来た将軍に二人も流石にびっくらこいていたが、
その時ユーノは何やら水の満載されたバケツを取り出していた。
「ならば教会から調達して来た聖水攻撃!!」
「じゃあ私は塩を撒かせてもらうから!」
悪魔祓いなどで神父が悪魔に取り付かれた人に聖水をかけたりする事は皆もご存知だろう。
そしてなのはの出身地、日本では塩が魔除けに使われていたりもする。
二人はこの二つが将軍に対しても効果があるのでは…と考えていたが
やっぱ将軍くらい高位の悪魔になると話は別になってしまう様子だった。つまり効いてないって事ね。
『水も塩も熱中症防止の為に必要だから無駄使いするなよ。』
何か将軍も将軍で悪魔らしからぬセリフを吐いていたが、次の瞬間…
「ならこれでどうだ!!」
「全力全開!! 墨汁攻撃!!」
次に二人が持って来たのはバケツに満載された墨汁であり、
それをモロにぶっ掛けられた将軍は真っ黒に染まってしまった。
「よし今の内にまた何処かに隠れて作戦の練り直しだ!」
「うん!」
将軍が墨汁まみれになっている間に二人は再び逃げ出した。

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最終更新:2007年08月18日 10:31