悪魔将軍のテーマが終了した頃にはもうなのはもユーノもボロボロにされてしまっていた…
二人だって防御魔法を力一杯展開してダメージを最小限にしていたが、それでさえ
物凄いダメージを受けていたのである。
「む…無理だよ…私達二人だけでフェイトちゃんやはやてちゃん達全員を相手にする様な物だよ…。」
「で…でも一つだけ分かった事があるよ…。」
「な…何? ユーノ君…。」
「確かに将軍と戦う事はなのはの言う通りフェイトやはやて達全員を相手にするも同義…。
だけど…その力を管理する命令機能は一つだけだよ…。」
「命令機能…。」
「そうさ! 悪魔将軍の頭部がそれさ!」
ユーノは力一杯叫んだ。状況的に我ながら格好良いと思える物だったのだが…
「ユーノ君気付くの遅すぎ…。」
なのはのその一言で格好良さも全てぶち壊されてしまった。
「そう言うなのはは気付いてたのかい?」
「え…。」
「何だ…それならなのはだって僕の事馬鹿に出来ないじゃないか。」
「そ…そんな事ない! 私は気付いてたよ!」
なにやらこの状況で二人は言い争いを始めてしまった。これには悪魔将軍も呆れてしまう。
『とりあえず二人は正義超人の友情パワーに匹敵するくらい仲が良いのは分かった。
だが…こう言う状況で痴話喧嘩は無いんじゃないか?』
「あ…ごめんなさい…。」
「そ…そうだよね…こんな時に喧嘩してる場合じゃないよね…。」
「それに…こう言う状況で喧嘩出来るのなら逆にまだまだやれるって事だよ。」
悪魔将軍によって逆に二人の喧嘩が止まり、改めて結束されると言う皮肉な展開と
なっていたが、早速二人は再度悪魔将軍へ攻撃に移った。
「行くよ!! レイジングハートエクセリオンモード!!」
なのはの叫びによってレイジングハートが突撃槍型にチェンジ。
「チェーンバインド!!」
続けてユーノがチェーンバインドで悪魔将軍を雁字搦めにし、なのはが一気に突撃した。
無論目標は悪魔将軍の命令機能である頭部を砕く。これだった。
『確かにこの頭だけは自前だ…だが!』
悪魔将軍は力で強引にユーノのチェーンバインドをねじ切り、それによって
なのはの突撃の狙いも外れてしまい、頭部に命中する事は出来なかった。
だが、辛うじて悪魔将軍の右腕を付け根から砕く事には成功していた。
「やった! 頭はダメだったけどこれで腕は使えなくなったはず!」
「ダイアモンドは堅い分逆に砕けやすいからね!」
『さて…それはどうかな…。』
「え!?」
右腕が破壊されたと言うのに悪魔将軍のこの余裕は一体何だ?
と思ったのも束の間、悪魔将軍の砕けた右腕の欠片の一つ一つが襲い掛かって来たでは無いか!
「え!? キャアアア!!」
「なのは!!」
咄嗟に防御魔法で防御するなのはだが、超高速で襲い来るダイアモンド製の弾丸の
威力は強力だ。完全に防御するには至る事が出来ず、防御魔法を貫通したダイアモンド欠片が
なのはのバリアジャケットを容易く切り裂いていた。それだけでは無い。
その砕け散ったダイアモンド欠片の一つ一つが集合して再度悪魔将軍の右腕となり、
悪魔将軍本体と再融合していたのである。
『私は本来身体を持たない…だからこそこの様な事が可能なのだ…バゴアバゴア!』
「くっまだまだ!」
ユーノは再度悪魔将軍をバインドでグルグル巻きにするが、それでも悪魔将軍は余裕の表情だった。
『私がただ堅いだけの超人だと思ったか? 超人硬度ゼロ! スネークボディー!』
「ええ!?」
その時、硬いダイアモンドの身体だったはずの悪魔将軍がまるでゴムの様に柔らかくなり、
まるで軟体動物の様な動作でバインドさえもあっさり抜け出ていた。
『私は身体の硬度を超人硬度ゼロのスネークボディーから超人硬度10のダイアモンドまで
自在に調節する事が出来るのだ。』
「そんな…。」
なのはは愕然とした。いくら本物の高位悪魔とは言え、こんな余りにも常識を超越し過ぎた
相手をどうやって倒せと言うのか…。しかし、だからと言って攻撃の手を休めてくれる程
悪魔将軍は優しくなかった。
『身体もほぐれて来た頃だし…そろそろトドメを刺してやるか。』
「え!?」
急接近した悪魔将軍はなのはをプロレスのダブルアームの体勢で捉えた。
そしてダブルアームスピン。その場で高速回転を開始したのである。
「なのは!!」
ユーノがなのはを助けに入ろうとするも、既に竜巻が発生する程にまで増した回転力に
よって弾かれてしまい、さらにその竜巻は悪魔将軍となのはの身体も天高く飛ばし、
空中で悪魔将軍の膝がなのはの首下に当てられた。
『行くぞ!! 地獄の断頭台!!』
「あっあれは宇宙超人名鑑に載っていた悪魔将軍のフェイバリットホールド地獄の断頭台!!」
地獄の断頭台。悪魔将軍の代名詞であり得意技。別名「魔性の一撃」
相手の首に自身の膝を当てた状態で高速落下する事で相手の首下に大ダメージを与える恐ろしい技である。
過去、キン肉マンが悪魔将軍からこの技を受けた時、技が決まるギリギリの所で
リングロープを掴んで技の威力を半減させる事に成功したが、それでさえも
目の前にモヤがかかり、全身が痺れ、両脚がふらつき、戦闘能力が著しく低下した。
辛うじて将軍に勝つ事こそ出来たものの、試合後キン肉マンは一ヶ月間40度近い高熱を出して
昏睡していたと言う。超人の中でも一際強靭な筋肉の鎧で身を固め、首も太いキン肉マンでさえ
そうなってしまったのである。脆弱な人間であり首の細いなのはがこんな物をまともに食らっては
首が千切れる所か…全身が破裂して哀れな肉欠片を晒してしまうに違いない。
「やばい! なんとかしないと!!」
ユーノはとっさにありったけのチェーンバインドで悪魔将軍の身体を雁字搦めにするなど、
少しでも落下速度と技の威力を和らげようとしていた。しかし、それさえ将軍には効き目が薄い。
「なのは!! 君は殺させない!! 僕が何としても殺させない!!」
バインドが効果無いと分かったユーノは…捨て身の突撃を慣行し…
『この一撃で地獄へ行けぇぇぇぇぇ!!』
悪魔将軍の地獄の断頭台が大地に高速で叩き付けられた。しかし…なのはの身体は砕け散っていなかったし、
確かに激痛間はあるが…それでも首も繋がったままだった…。ユーノの魔法によって落下速度が
若干和らげられたと言う事を考えてもこれは有り得ない…。が、そこでなのははある事に気付いたのである。
「ゆ…ユーノ君!?」
なのはの下にはユーノの姿があった。つまり…ユーノが身を挺してなのはのクッションになったのである。
最終更新:2007年08月22日 10:30