「ユーノ君! ユーノ君しっかりして!」
「なのは…無事か…い?」
「だっ大丈夫だよ! 首は凄く痛いけど…大丈夫だよ…。」
「そうか…よかった…。でも僕はもうダメだ…。」
「ユーノ君ごめんなさい! 私なんかの為に…ごめんなさい! ごめんなさい!」
目から涙を滝の様に流しながらなのはは何度もユーノに謝る。しかしユーノは
なのはを恨むどころかむしろ助ける事が出来た事を喜んでいた。
「謝る事は無いよ…僕はなのはを助ける事が出来て嬉しいんだ…だから…
絶対に生き残るんだ…なの……………………………。」
「ユーノ君…………………?」
ユーノはそれ以上話す事は無かった…それどころか…動く事さえも…。
「ユーノ君…こ…こんな時に…冗談だよね…。」
なのはは目から涙を流しながらユーノの身体を揺するが、ユーノは反応せずに
ただガクガクとするのみ…
「ユーノ君…空気読んでよ…今はそんなふざけてる場合じゃないよ…返事をしてよ…。」
なのはが幾ら言ってもユーノは反応しなかった。
「ユーノ君………………………………。」
信じたくなかった。しかし…これではもう信じざるを得ない事をなのはも知った…
なのはが悪魔将軍の地獄の断頭台を受けた際、ユーノが身を挺してクッションになった
せいで…ユーノが死んでしまった事を…。そしてこの瞬間…なのはがミッドチルダに
残された最後の人類となってしまった…。
「ゆぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅのくぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅん!!!!」
なのはは目から涙を滝の様に流しながら泣き叫んだ。泣き叫ぶ事しか出来なかった。
自分の人生におけるターンニングポイントとなった人が…自分に魔法を教えてくれた人が…
自分を最も理解してくれていた人が…自分の最高のパートナーが…最も大切な人が…
自分のミスの為に…殺されてしまった…。許せなかった…その原因を作った悪魔将軍もそうだが…
その技に安易にもかかってしまった自分自身も許せなかった…。なのははひたすらに泣き叫び…怒った…。
「うああああああああああああああああああああああ!!!」
なのはがここまでにも激しく泣き叫んだ事は何年ぶりだろうか…いや…初めてかもしれない。
それだけなのはにとって凄まじい悲しみと衝撃だった。そしてなのはの脳裏に
ユーノとの思い出が走馬灯の様に蘇ってくる。初めて出会った時の事…ユーノに
レイジングハートを渡されてジュエルシードを封印した事…ユーノに魔法を教わった事…
ピンチの時に助けてもらった時の事…無限書庫でのやりとり…そして…
先程二人で対悪魔将軍用の仕掛けを設置していた事…。色々な事があった…
しかし…もうこれ以上の事は無い…。ユーノは自分の身代わりになって死んでしまった。
不甲斐ない自分の為に…ユーノが…。
「ああああああああああああああああああああああああああ!!!」
『ん?』
その時、なのはの怒りに呼応したかの様に全身からピンク色のオーラがほとばしった。
普段能力制限によって押さえられているなのはの魔力が限定解除承認無しで
自動的にリミッター解除されるどころか…本来の何倍にも及ぶ魔力を発生させていたのである。
そして…なのはは怒りと悲しみの混じった悪魔の様な形相となって悪魔将軍を睨み付けていた。
「許さない…絶対に…絶対に許さない…。そっちが本当の悪魔だと言うのなら…こっちも悪魔となって…
悪魔らしいやり方で…貴方だけは…貴方だけは絶対に…倒させてもらうから!!」
『ほぉ? 大切な人を亡くした怒りで火事場のクソ力でも発動させたか? 面白い…。
それでどこまで強くなったのか見せてみろ。バゴアバゴア!』
「うああああああああああああああああ!!」
次の瞬間悪魔将軍の胸にレイジングハートが突き立てられていた。
そしてゼロ距離からアクセルシューターが連続で将軍の身体を撃ち抜いて行く。
忽ち穴だらけにされる悪魔将軍。しかし悪魔将軍の全身を覆う鎧の中は空洞だ。
その様な事をしても将軍は平然としている。
『そんな事をしても無駄だぞ…バゴアバゴア!』
「なら…無駄にならない事をするまで!」
一度距離を取ったなのはは再度将軍にレイジングハート先端を向ける。
「全力全開!! ディバイィィィン!! バスタァァァァァァ!!」
ディバインバスターが再び将軍の身体を飲み込んでいく…。しかし、それさえ平然としている。
『どうした? キン肉マンの火事場のメガトンパンチの方がまだ強力だったぞ。バゴアバゴア。』
「くっ! まだまだ!!」
なのははありったけの魔力を魔砲へ変換して将軍を撃ちまくった。しかし将軍は平然としている。
元々が頑丈な上にどんなに身体を破壊しようとも平然としているし、かつ元に戻ってしまうのだ。
そして…確かに今のなのはの力は凄まじい。だが怒りに任せた攻撃は冷静さと判断力を鈍らせる。
それが故に悪魔将軍に攻撃を見切られてしまうのは必然だった。
『確かに貴様の力は凄まじいが…動きが直線的過ぎる! 地獄のメリーゴーランド!!』
悪魔将軍の両腕からダイアモンド製の剣が現れ、将軍は高速前方回転しながら突撃。
その威力はなのはの魔砲を押しのけ、忽ちバリアジャケットを切り裂き、鮮血を飛び散らせた。
「うあ…………。」
『今まで良く頑張ったな。貴様の頑張りを賞してこの私が直々に地獄の九所封じを持って
地獄へ送る栄誉をやろう。光栄に思うが良い。』
「地獄の九所封じ!?」
『行くぞ! 地獄の九所封じその1!! 大雪山おとし!!』
「うああああああ!!」
次の瞬間悪魔将軍はなのはを掴んで背中を強く地面に叩き付け、
ゴーストタウンと化し、無音と化したミッドチルダになのはの絶叫が響き渡った。
その一撃でなのはの背中が変色し、感覚さえ無くなってしまったのである。
悪魔将軍の「地獄の九所封じ」それは各所に存在する九つの急所を一つ一つ潰していく恐ろしい技。
地獄の断頭台も本来はこの地獄の九所封じの中の技の一つに過ぎないのである。そして辛うじて
将軍に勝利する事が出来たキン肉マンもこの地獄の九所封じを攻略する事は出来なかった。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2007年08月22日 10:54