機動六課とスカリエッティの軍団との戦いが熾烈を極めていた頃、
万太郎はミッドチルダ内の廃ビルの屋上で体育座りのままいじけてしまっていた。
「Ⅱ世! 元気出してくださいよ!」
ミートが何とか万太郎を説得しようとしていたが、万太郎はいじけたままだった。
「Ⅱ世! 良いんですか? このままではこの世界の何億と言う人の命が失われるかも
しれないんですよ!? 我々正義超人は人間達の命を守る為に神から比類無き力を
与えられて生まれてきたんですよ! こういう状況でこそ使わなくてどうしますか!?」
「良いんだよミート…。僕一人がいたってどうにかなる様な状況じゃない。
それにここの人達が自力で何とかしてくれるよ…。」
「Ⅱ世!」
「少し考えれば分かる事じゃないか! 僕はここの人達みたいに魔法は使えないんだよ!
ちょっと普通より体格と力があるだけなんだよ! こんな僕なんて役に立たないよ…。」
万太郎はやはりいじけたまま何もしようとはしなかった。だがミートも強情に
説得を続けるつもりであり、万太郎の前にテレビを置いたのである。
「これを見てもまだそんな事が言えるんですかⅡ世!?」
「これは…。」
ミートがテレビを付けると、そこに映し出されたのは現場の中継だった。
聖王のゆりかごと呼ばれる巨大戦艦の周囲に多数の管理局魔導師達や
スカリエッティの軍団が使用する無人機動兵器ガジェットドローンが
展開し、壮絶な空中戦が展開されていたのである。
「脆弱な人間だってここまで必死になって戦っているんですよ!? 超人であるⅡ世が戦わなくて
どうするんですか!? このままでは何億と言う人の命が失われてしまうかもしれないんですよ!!」
「で…でも…。」
万太郎の心は揺れ動きつつあったが…まだ完全とは行かない。
だがこれはミートにとっても後一押しと言う状況でもあった。
「あれあれ? 良いんですかⅡ世…。ここで大活躍すればⅡ世はこの世界でもスーパーヒーローですよ?
機動六課の女の子達からもモテモテになっちゃいますよ? モテモテにならなくても良いんですか~?」
「ハッ!!」
その時、万太郎の脳内にある光景が浮かんでいた。皆がピンチの時に
自分が颯爽と駆けつけて聖王のゆりかごを48の殺人技で次元の彼方まで投げ飛ばして
ミッドチルダの危機を救い、その後でさらに機動六課の美少女軍団に囲まれて
ハーレム状態になっている自分の姿である。これには思わず万太郎の鼻の下も伸びると言う物。
次の瞬間万太郎はビシッと勢い良く立ち上がった。確かに万太郎は普段から根性無しだが
この様に一度やる気を出せばやる男なのだ。だからこそ普段はドジでダメだと言われていても
何だかんだで様々な実績を残してきたのである。
「行くぞミート!! 僕達も加勢しに行くぞ!!」
「ハイⅡ世!!」
「聖王のゆりかごだか何だか知らないけどあんなデカイ船なんて僕にかかれば
木っ端微塵のミジンコちゃんよ~! 待っててよ~! なのはちゃん!
フェイトちゃん! はやてちゃん! スバルちゃん! ティアナちゃん!」
万太郎とミートは走り出した。無論目的は戦闘が行われている現場である!
「ハァ…ハァ…付いたぞー!」
機動六課を含める管理局魔導師達とスカリエッティ軍団との壮絶な死闘が
繰り広げられていた最前線に万太郎とミートは到着した。しかも徒歩で。
この人間ではとても考えられない長距離を短時間で移動出来る(しかも徒歩で)は
超人だから出来る芸当なのであり、万太郎とミートも過去にそうやって徒歩で長距離を
移動する事は度々あった。
「さ~て! 可愛い子ちゃん達は何処にいるのかなー!? なのはちゃ~ん!
フェイトちゃ~ん! 何処にいるんだ~い? 僕ちゃん頑張っちゃうよ~!」
「Ⅱ世…。」
やっとやる気を出してくれたのは良いが…女の事しか頭に無い万太郎にミートも呆れていたが、
そこでスカリエッティ軍団の誇るガジェットドローンが多数現れたでは無いか。
「おわー! 何か来たー!」
「これは敵が使っている機械兵器の一種ですよ! でもこれはただのザコに過ぎません。
これに苦戦していては皆を救ってモテモテにはなれませんよー!」
とにかくミートは万太郎がやる気を出す様に煽り立てるが、その思惑の通り
万太郎は堂々とガジェットドローン軍団を迎え撃つつもりの様子であった。
「任せろミート! こんな連中など僕にかかれば木っ端微塵のミジンコちゃんよー!」
万太郎は両腕を組んで堂々と構えていたが…下半身はすっかりチビッちゃってたりする。
「Ⅱ世! 格好付けながらチビらないで下さい!」
「だって怖いんだもーん!」
やっぱり何時もの万太郎だ…。だがガジェットドローンは情け容赦無く襲って来た。
「おわー! 襲って来た! 仕方が無い! やるぞ!」
とにかく万太郎は迫り来るガジェット達を殴り飛ばし、蹴り飛ばした。
リングの上で悪行超人と戦う時と違い、あまり長期戦にするわけにはいかないので
結構あっさりしている。さらに万太郎は一体のガジェットを掴み上げた。
「ええい48の殺人技No.1!!」
何故か万太郎は父であるキン肉スグルが得意としていた48の殺人技を
いつの間にか会得していたりするのだが、その中の一つである技を放った。
これは48の殺人技の中でも一番簡単な技であるが、それでもかつてキン肉スグルは
この技で相手をハワイから月まで投げ飛ばした事があると言う荒技である。
「それそれそれ! どんどん投げちゃうよ~!」
万太郎はその技によって次々にガジェットを山の向こうの空遠くまで投げ飛ばして行った。
一方その頃、聖王のゆりかご周辺で管理局とスカリエッティの軍団との激しい戦闘が
行われていたのだが…そこで突然多数のガジェット達が次々に吹っ飛んで来たでは無いか。
「うわー! 何だー!? ガジェットがいきなり物凄いスピードで突っ込んで来たー!」
「ギャー! 怖ぇぇ!」
実はこれ…万太郎が48の殺人技でぶん投げたガジェット達だったりするのだが、
これらが次々に聖王のゆりかごに激突して爆発四散していた。
当然これだけ激しいと管理局魔導師達にもとばっちりが来たりするわけで、
もう最前線はグダグダのゴタゴタになっていた。
「皆落ち着いて対処するんやー!」
前線で指揮を取っていたはやても内心慌てながら何とか指揮を取り続けるが、
まさかこのガジェット達を投げ飛ばした犯人が万太郎だとは夢にも思わなかった。
何故ならちょっと人より力のある豚男としか認識していなかったのだから…
さて、万太郎の方に視点を戻すのだが…ガジェットを48の殺人技で次々にぶん投げて
調子に乗ってるのも束の間。万太郎とミートは何やら巨大な怪物に追い駆け回されていた。
「うひゃー! 怪獣だ怪獣だー! 怖いよー!」
さて、今万太郎とミートを追い駆け回している怪物の正体はと言うと…
それはスカリエッティの軍団の構成員の一人であるルーテシアと言う名の
召喚魔導師の少女が何気無くガジェットを次々投げ飛ばしていた万太郎を発見し、
巨大怪物を召喚して万太郎とミートを襲わせたと言うイキサツである。
「怖い怖いよー! 怪獣怖いよー!」
「Ⅱ世! 今こそこれを食べる時です!」
ミートは万太郎の手にある物を手渡した。それはニンニクである。
「ニンニク?」
「そうです! Ⅱ世のお父上…キン肉スグル大王様もかつてニンニクを食べて
巨大化し、地球を襲う怪獣と戦って来たのです! 今こそⅡ世もニンニクを
食べて巨大化し、あの怪獣と戦うのです!」
「ええいこうなっちゃったらニンニク食べちゃうよー!」
万太郎はミートから渡されたニンニクを食べた。するとどうだろうか
身長176センチの万太郎が一気に数十メートルにまで巨大化したでは無いか。
これこそ正義超人が対怪獣戦の際に使用する巨大化モードなのである。
そしてこの巨大化モードならばルーテシアの巨大召喚獣とも体格負けはしなかった。
「ようし! これで条件は同じだ! 行くよ!!」
万太郎はルーテシアの巨大召喚獣と組み合った。
さて、万太郎がニンニク食って巨大化した事実は周囲で戦っていた管理局及び
スカリエッティの軍団の者達を驚かせていた。
「大変だー! 何かいきなり巨大な豚男が現れたぞー!」
「しかもニンニク臭ぇぇぇぇぇ!!」
万太郎が巨大化した分、そこから発せられるニンニク臭もかなりの物らしく
局員はおろか(何故か)ガジェットでさえ苦しむ始末であった。
「あ! あれ良く見たら万太郎君やないか! 何であんなに巨大化してん!?」
勿論はやてもさりげなく驚いている。
最終更新:2007年08月26日 10:01