―――アースラ
「ん?」
リンディは結界の外で奇妙な光景を見ていた、丸で結界内部を見ているように二人の女性が居ることを・・・
だがそれはすぐに消えた、そしてエイミィの絶叫が響く
「や、闇の書の防衛プログラム!」
モニターに移った光景・・・かつて闇の書事件において倒したはずのプログラム・・・だがそれは復活しただが、
前よりかは縮んでおり体は欠損していた。
「ど、どうして?コアはアルカンシェルで消滅したはずなのに・・・エイミィすぐに解析して!」
リンディの指示にエイミィはすぐに解析をする。
「コアに高魔力反応これは・・・ジュエルシードです!」
「ジュエルシードですって!」
まだジュエルシードが海鳴に存在していたとは・・・恐らく回収し損ねたプログラムの肉片が偶然取り込んだ上に再生、
そして魔力反応に呼応して現れた・・・悩む暇もなくリンディは回線を使って本部に連絡する。
「防衛プログラムの残骸がジュエルシードを取り込んだことによって復活、
至急フェイト・ハラオウンならびにヴォルケンリッターを現地に派遣してもらいたい。」
答えは一時間かかるというのだ・・・リンディは決断した。
「至急デュランダルをクロノの下へ、私も出ます。」
その答えにギョっとする一同、しかし時間を稼ぐに為にはある意味理に叶った選択だ。
「万が一の場合はエイミィ、指揮をお願い。」
指示を出しながらリンディは転倒ポートへ走る。
―――結界外
「あらあら、とんだイレギュラーのご登場ね、ま、アルクェイドが何とかするわ。」
扇子で口元を隠しながら女性は言う。
「いいのですか本当に?」
「あら、大丈夫よ・・・折角の見世物だもの、これぐらいのアクシデントは付き物よ。」
―――結界内
「なのはちゃん、大丈夫。」
「え、え・・・。」
光線の直撃を喰らったがバリアジャケットとかいう防護服のお陰か、たいした傷は負っていないようだ、
それに一安心するアルクェイド、そして突然の乱入者を見据える、至る所が掛けているものの禍々しい形をした
何かは虫類と蜘蛛を合わせたような怪物が咆哮をあげながらこちらを見据える。
「あれはなんなの?まさか管理局のとか?」
「いや、違うあれは・・・。」
クロノはあれがなんなのか簡単に説明する、闇の書事件の経緯を・・・
「ああ、そう・・・いいわ私が何とかするから。」
アルクェイドはクロノに負傷したなのはを託すと防衛プログラムに向かって歩いていった、
それに呼応するが如く怪物によって生み出された異形の傀儡がアルクェイドに飛び掛る。
だがそれはアルクェイドの爪によっていとも簡単に切り裂かれ消えていく。
「アルクさん?」
「なのはちゃん、さっき言わなかったけど私はある理由で管理局に連れていかれそうになった・・・その理由見せてあげる。」
なのはとクロノは感じた、彼女に物凄い魔力が集まっていた。
さっきまでルビーのような瞳は傷一つない黄金の瞳となっていた。そしてアルクェイドが手をかざす。
「星の息吹よ・・・。」
突如無数の巨大な鎖が防衛プログラムに絡みつき其の身を押し上げていく。
「肉片も・・・。」
右手に魔力を集中させる。
「残さないから!!!!!」
『マーブルファンタズム・メルティブラッド』真祖の慈悲なき一撃が防衛プログラムという存在をかき消してゆく・・・。
―――結界外
「ほら、私の言った通りでしょ、あの程度なら彼女を倒すことすら出来やしないわ。」
自分のように言う紫の女
「あれが・・・例の・・・。」
「そう、私に怪我を負わせた技。」
―――結界内
「お仕舞いねこれで・・・。」
アルクェイドの手にはプログラムの中枢を担っていたジュエルシードが握られていたが、
「アルクェイド・ブリュンスタッド!やはり我々の下へ着てもらう。」
クロノはデュランダルをアルクェイドに向ける、彼は彼なりの意識でアルクェイドの能力の危険性を察知したのだろう、だが・・・
「クロノ、デュランダルを下げなさい。」
女の声が響きクロノはデュランダルを下げる、その声の主にアルクェイドは顔を向ける。
「時空管理局提督『アースラ』艦長のリンディ・ハラオウンと申します。」
緑髪の女性はアルクェイドに軽く会釈する。
「アルクェイドさん、貴女の行動は先ほどからモニターさせてもらっています・・・
貴女も知っていると思いますがそのジュエルシードは大変危険なものですこちらに渡していただけないでしょうか?」
柔らかに言うリンディに警戒心を緩めないながらもアルクェイドは答えた。
「分かったわ、こんなもの持っていても私にはいらないし・・・そうだ取引といかない?ジュエルシードとか言うのは渡すわ、
その代わり私を時空管理局へと連れて行くことをやめてもらいたいんだけど。」
「そんなこと出来ない!」
クロノは叫ぶ・・・アルクェイドの能力はあまりにも危険すぎると判断した、それはそうだ規模は小さいとはいえ防衛プログラムを一瞬にして葬り去るほどの能力者、
挙句にAAAランク魔道士と互角以上に渡り合う存在を野放しに出来るなんて到底出来ない。だがそれをリンディは遮る。
「クロノ、その判断は私がします・・・受け入れましょうアルクェイドさん。」
「かあさ・・・いや提督!」
抗議の声を上げるクロノだが、リンディは首を横に振る。
「クロノ、確かに真祖の捕獲という任務があるけど・・・あれはかなり上層部の一派の私人的な命令でもある、
それにジュエルシード2個を手に入れられるだけ十分でしょ。」
「はい・・・。」
不承不承だがクロノは応じ、負傷者を抱えてアースラに転送される。
「御免なさいねアルクェイドさん、あの子はちょっと融通が利かないのよ。」
申し訳なさそうにリンディは言う。
「ううん、気にすることはないよ・・・ああいう手合いは沢山見てきたから。」
「まぁ本音を言うと貴女が管理局に入局してくれればうれしいんだけどどう?」
「遠慮しておくわ、私はここにある世界が好きだから。」
「そう、あまりムリは言わないわ、高望みすると墓穴掘るといいますからね。」
「まぁね、ところでなのはちゃんは大丈夫?」
「大丈夫、バリアジャケットのお陰で多少の打ち身ですんだようね。」
「分かった、ありがとう・・・もう会うことはないかもしれないけど。」
「ええ、こちらからも礼を言わせてもらいますわ真祖・・・。」
―――道中
「怪我は大丈夫なのはちゃん?」
アルクェイドはなのはをおんぶしながらビルとビルを渡りながら翠屋へと向かった。
「うん、大丈夫です。」
「そう、ならいい。」
そしてなのはは問う。
「アルクェイドさん、貴女は一体何ですか?会った時から何か不思議な力を感じていましたが。」
そしてアルクェイドは自分が真祖と呼ばれる吸血鬼ということなのは達とは全く異質な存在であることを・・・
そこでなのはは驚いた。
「え!アルクさんって吸血鬼なの!」
「そうよ(具体的に言うと精霊に近い存在だけど。)」
「ええ、だって吸血鬼って日光浴びると灰になるし、十字架や大蒜が大嫌いって。」
・・・まぁ一般的な価値観とすれば吸血鬼とはそういった者だろう、その答えにアルクェイドは少し失望感があった。
「あのさぁ・・・貴女も魔法使いなら、祖ぐらい知っていると思ったけどそれに日光を浴びると灰になるって・・・。」
そこで彼女は言うのをやめた、そういえば日光浴びても平気な吸血鬼・・・そういえば以前幻想郷に行ったときに博霊の巫女ですら
「日光浴びても平気な吸血鬼って一体なんなのよ!あんた滅茶苦茶すぎ。」
と言われた、それに自分が知っている限り知り合いであるリァノーンもスカーレット姉妹なども日光はダメだったし、
精々爺や、そしてあの忌々しき姉とその従者ぐらいしか思いつかなかった。
「・・・ま、まぁ私は普通の吸血鬼とは違う・・・貴女はいいのなのはちゃん?」
そう真顔に問うアルクェイドに対しても
「ううん、アルクさんが何であっても友達なの。」
とあっさり受け入れ、そんなこんなで翠屋に到着した。
「じゃあおやすみ、アルクさん・・・明日また。」
「うん分かった、じゃあまた明日なのはちゃん。」
―――ホテル
「よっと!到着。」
アルクェイドはなのはを家まで届け、結界が解けたのか、人が存在するホテルのロビーに向かった、そして見知った顔を見つける、
外に出る分特徴的なナーススタイルではないものの、長い銀髪の女性の事をアルクェイドは知っている。
「永琳?」
「あら、真祖?」
―――スイートルーム
「久方ぶりね永琳、外の世界に来るとは思わなかったけど。」
「外の世界にちょっとした知り合いが出来たの、ジャム店の女主人なんだけどそこに用事があって新しい謎ジャ・・・じゃなくてちょっとした知識交換を・・・。」
「・・・一応聞かなかったことにしとく、大丈夫なの?イナバはともかく輝夜(あのニート)は?」
「姫様の世話はイナバ達がやっているわ、それに貴女のお陰で使者がやって来る事はほぼないし当分は大丈夫よ。」
アルクェイドは八意永琳の事を知っていた、かつて自分を生み出した朱い月が月に存在していた頃に、永琳は朱い月と互角以上に渡り合い
(最終的にはゼルレッチがぶちのめしたが)その記憶が彼女に残っている、そして志貴の直死の魔眼が酷くなり、魔眼殺しでさえ押さえきれなかった時、
ゼルレッチのつてで幻想郷に渡り、魔眼を抑制する薬を作ってもらったのだ、
その対価として真祖の血としょうも懲りなくやってきた月からの使者皆殺しだった、まぁそんなこんなで志貴の魔眼は抑えられることとなったのだが・・・。
「ところで真祖、また幻想郷に来て頂けないかしら?」
永琳の顔が真剣になる。
「突然ね・・・輝夜がまた相手して欲しいとでも言い出したの?」
「それもあるけど・・・。」
次を言おうとした永琳を遮るように空間が裂け二人の女性が現れた。
「久しぶりね真祖。」
「昨日あったばっかじゃない、スキマ妖怪、挙句にさっきタダ見していたくせに。」
「あらそうでしたっけ?」
「はぁーで用件は、紫?」
紫という女性は薄笑いを浮かべた顔のまま話す。
「時空管理局がどうやら幻想郷を嗅ぎつけたらしいわ、恐らく目的は私の能力。」
「そして私が過去に作り上げた『蓬莱の薬』と私自身の確保。」
それにアルクェイドは他人事のように答える。
「それで?私にどうしろと?」
今度は藍という九尾の女性が答える。
「まぁつまりは本部に殴り込みだ、出来ればアルクェイドも参加してもらいたい。」
それをアルクェイドはすっぱりと断った。
「遠慮しておくわ・・・大体紫と藍それに永琳もいれば十分じゃないの?」
扇子で口元を隠したまま紫は答えた。
「少人数では駄目なのね・・・大人数でやった方が面白いでしょ?」
ああ、やっぱりこいつはいつもこうだ・・・アルクェイドは思った。
「で、どれぐらい参加するの、本部への殴りこみ。」
「とりあえず、霊夢はあくまで里に置いとくけど・・・私を含めて、萃香、幽々子と妖夢に魅魔に幽香に妹紅、レミリアと咲夜にパチュリー、
それに永琳・・・後ゼルレッチと貴女の姉も参加するわ・・・」
「それだけいれば十分じゃないの!
「あら、残念ね・・・どうしてかしら真祖?」
「あのねぇ・・・紫のせいで危うく冥界の住人になりかけるわ、閻魔に裁かれかけるわ、魔界(弱かったけど)と神社の神と
ガチバトルする羽目になるわ、向日葵畑で酷い目にあいかけるわ、大学教授に拉致られかけたり・・・それに私不在をいいことに
志貴と・・・(ピー)で(ピー)な事して・・・貴女に関わるとろくな目に合わないし。」
「あら残念だわ、折角幻想郷に居る分色々お膳立てして楽しませたけど・・・。」
あくまで不気味な微笑を浮かべたまま紫は残念そうに言う。
「まぁ今となってはいい思い出だったけど・・・あまり体を動かしたくないね、六権王復活の儀式が近いからあんまり力を使いたくないんだけど。」
「まぁ、また機会があれば来なさい、幻想郷はすべてを受け入れる・・・それはとても残酷な話ですわ。」
「はいはい、では幸運を、紫、藍、永琳」
「ええ、貴女もね真祖。」
「そちらも。」
「また暇があれば幻想郷にきなさい、リターンマッチを挑みたい連中も多いし、リァノーンも貴女に会いたがっているわ。」
「ん、またの機会ね。」
こうして3人は部屋から消え去った。
「ふぅ、疲れた・・・今日は色々あったなぁ、明日の約束の為お休み!」
アルクェイドはベッドにもぐりこむと目を閉じた。
―――はやては何していたって?
「うへへへへへ、リンディ提督もレティ提督もええ胸しとるな~。」
「・・・・。」
レンのお陰で夢の中色々と悶絶していた。
翌日―――翠屋
「アルクェイドさん、此の子は私の友達フェイトちゃん。」
「フェイト・ハラオウンです、よろしくお願いします。」
「うん、よろしく。」
アルクェイドはもう一人友達が出来ることになる・・・
―――そして
「あ、はやてちゃん。」
親友を見つけたのか、なのはが車椅子の少女に駆け寄る、そしてアルクェイドはその少女の膝上に乗っかっている猫を見つける。
「あ、レン!!」
初日から行方不明だった使い魔を発見した、はやてが言うにはケーキを焼いていたらやってきてケーキをあげたらなついたと言う事だ、アルクェイドは驚いた。
「珍しいじゃん、レンが人に懐くなんて・・・こうみても結構誇り高いからね、あ、そうだ。」
アルクェイドははやてにある頼み事をする、あともう少しだけレンを預かって欲しいと無論お礼はすると言った、だがはやてはそれを断り素直に「ええよ」と言った
・・・その時だ妙な寒気がして後ろに下がった、そしてそこにはさっきアルクェイドが存在してちょうど胸がある所にはやてという少女の両手があった、
そしてはやてはいたずらそうな笑みを浮かべ
「ええ胸しとるな~ちぃ~と揉ませてくれへんかなぁ?」
と言ってくる、当然断るがはやてはじりじりとこっちによってくる・・・
まぁ、そんなこんなで真祖が海鳴に滞在する時間はあっという間に過ぎた。
「アルクさん、やっぱり行くのですか?」
「うん、私にも家があるから・・・。」
「もう会えないのですか?」
「分からない、でも難しいと思う。」
アルクェイドは分かっていた、いずれまた自分は千年城で長きに渡る眠りに付かなければいけないことを・・・。
「私達友達だよアルクさん。」
微笑むなのはにアルクェイドは微笑み返す。
「うん、友達だよなのはちゃん・・・。」
「「またね。」」
―――数日後の本部
「酷いね・・・。」
リンディは目の前に起きた惨状にただ呟く・・・
「突如10数名の武装勢力が現れ本部で暴れまわり、任務に付くはずの次元航行艦6隻と任務に付く武装局員の大多数が死亡もしくは負傷、
其の中にはレアスキル持ちのSSランク魔導士が含まれていると。」
レティは淡々と状況を分析する。
「犯人たちは何が目的なの?」
「それがね・・・。」
レティはあの時の光景を思い浮かべる、攻撃を受け爆発する施設、魔法に撃たれ絶叫し倒れる局員達、其の中で一人の日傘をさして
不気味な笑みを浮かべる女性がレティに手紙を渡した・・・それにはこう書いてあった。
「過去の幻想に手を出すな。」
「恐らく、上層部は何か触れてはいけないなにかを知ってしまい、それを無理やり取り込もうとした結果こうなったと。」
「はぁ・・・。」
「管理局も触れてはいけないパンドラの箱に触れたというべきか・・・まずは本部の修復ね、当分忙しくはなるわ、リンディ。」
―――三咲
「ま、色々あったけど、志貴今からデートに行こう。」
「行こうっていうけどなぁ・・・学校が・・・。」
「学校と私、どっちが大事なの?それに私に黙っていて修学旅行に行っていたじゃないの!」
「う・・・分かったよ、こうときのお前に何言っても無駄だからな、分かった今日一日中どこでも行こう。」
「うん!」
アルクェイドは笑みを浮かべながら志貴に抱きつく、いずれ別れなければならない・・・だけど今は今で楽しもう、そう思った彼女だった。
真祖海鳴りに行くの巻 (一応完)
最終更新:2010年04月09日 21:12