『さあ! こちら聖王のゆりかご特設リング上にてキン肉万太郎対ジェイル=スカリエッティの
一戦が始まります! 今回の試合の実況は私、吉貝アナ! そして解説は…。』
『アデランスの中野さんで~す!』
『この一戦がミッドチルダの運命を握っているとの事ですが…。』
『そうですね~。女房を質に入れても見なくてはなりませんね~。』
「あ―――――!! あんたら何でこんな所にいるの――――!?」
『まあ…そこは細かい事は言いっこ無しって事で…。』
やっと吉貝アナと中野さんの存在に気付いて万太郎とミートは大騒ぎになっていたが、
とりあえず聖王のゆりかごの甲板上に設置された特設リング上にて万太郎とスカリエッティの試合で
管理局VSスカリエッティ軍団の戦いの決着を付けると言う事になった。
そしてリングの周囲に同じく設置された観戦席に機動六課を含めた管理局の面々や
戦闘機人達、挙句の果てにはガジェットまで座っていたりする。
「ど…どうしてこんな事になったのかな…?」
「さ…さあ…。」
さりげなくなのはの隣にはユーノが座っており、互いに苦笑いしていた。
だが、今のスカリエッティは元々の強力な肉体に加えて強力なAMFによって魔力攻撃は
無力と言っても良い。ならば最初から魔力資質がゼロであり、肉体を駆使して戦う万太郎こそが
スカリエッティに対して適任なのである。とりあえず万太郎がスカリエッティと戦う理由は
それとして、実は物凄い事になんとヴィヴィオまで観客席にいたりしていた。
「ぶたのおにいちゃんがんばれー!」
とか、さっきまで聖王のゆりかごの生体ユニット化されていたとは思えないくらい
無邪気に万太郎を応援していたりする。
『さあ! 両選手の入場です!』
吉貝アナのアナウンスと共に万太郎とスカリエッティの両者が花道を入場して来た。
『まず先に入場して来たのはスカリエッティ! おっと! ミッドチルダを大混乱に
陥れた張本人だと言うのに妙に人気があります! これはイケメンだからでしょうか?』
何故かスカリエッティに対して声援が響き渡っている。戦闘機人達は勿論の事、
ガジェットドローンからも声援の音声を発していたのであった。
『さて続いてキン肉万太郎の入場ですが…入場の際には面白い趣向を凝らしたコスプレで
入場して来るのがお決まりの万太郎! 一体どんな趣向を凝らした入場となるのかー!?』
『あ! 出て来ましたよー!』
ついに万太郎の入場…だが…その時の万太郎のコスチュームに皆唖然としていた。
「あ………………!!」
「フフフフ…郷に入っては郷に従え…。この世界の魔導師ファッションで入場して見たよ。」
皆が唖然とするのは無理も無い。何しろその時の万太郎の入場ファッションとは
なのはとフェイトとはやてのバリアジャケットをそれぞれ足して3で割った様な
珍妙としか言い様の無いヘンテコなファッションだったのである。
これには管理局の魔導師達…特に機動六課の面々が怒らないワケは無かった。
「ふざけるなこの豚野郎!!」
「と言うか何でこんなふざけた豚男に世界の運命託さにゃならんのだ!!」
「ウヒャー! 痛い痛い!」
観客席に座っていた名無し武装局員達が次々に万太郎に空き缶を投げ付け、
万太郎は逃げ回っていた。それにはスカリエッティも呆れる。
とまあ普通なら怒るか呆れるかブーイングを飛ばすか程度で済むのだが…
「うわぁぁぁぁぁん!! あんな奴に命を救われた自分がなさけねぇぇぇぇ!!」
殆ど偶然に近い出来事であったとは言え、万太郎のフェイスフラッシュで
あっという間に五体満足にまで全快していたヴィータは大声を張り上げて泣き叫んでいた。
まあ確かにヴィータが泣きたくなる気持ちも分かる。とりあえずはやては
ヴィータを抱き、頭を撫でて泣き止ませようとしていた。
「まあまあ…一応魔力資質無しでここまで戦えただけでも実力がある証拠や。
少しは万太郎君を信じてみても良いんとちゃうかな?」
「う…はやてがそう言うなら…ちょっとだけ信じてみるよ…。」
はやてに励まされた事もあってヴィータは何とか泣き止んでいたが、
なおもリング上では万太郎に対し空き缶とブーイングが飛ばされていた。
『いや~何時も通りと言うか…早速ブーイングの嵐ですね~中野さん!』
『そうですね~。でも万太郎が不人気なのは何時もの事ですから気にせず行きましょう。』
「少しは気にしてよ!!」
他人事の様に事を進める吉貝アナと中野さんに万太郎も泣きながら抗議するが、
そうこうしている間に試合開始のゴングが鳴った。
「こうなったらこの怒りをアイツにぶつけてやる!!」
「来い万太郎!」
入場ファッションを脱ぎ捨て、試合用のコスチュームへ姿を変えた万太郎は
スカリエッティへ向けて突撃した。
『あーっと試合開始早々両者ともリング中央で組み合ったー!』
まず最初に始まったのは両者の力比べ。両方とも力を込めて押し合う。
「くぬぬぬぬ…。」
「うおおおお!!」
『力比べは体格の大きなスカリエッティ優勢かー!?』
万太郎は確かに強靭な筋肉で身を固めているが、超人の中でも小柄な部類に入る。
それに対しスカリエッティは改造強化した自らの肉体をフルに解放して
万太郎より一回りもニ回りも大きな体格となっている。これでは
万太郎が力負けしてしまうのも仕方なかった。
「でも負けるものかぁぁぁ!」
「どうした? お前の力はそんな者か?」
『万太郎も必死で押し返そうとするがなおも押されていくー!』
やはりパワーに差があるのか、万太郎は押しに押されてブリッジの体勢にされてしまった。
そしてスカリエッティはそのまま万太郎をキャンバスに押し付けようとしていたが…
「なんの! マンタロー巴投げ!!」
『出た! 万太郎の相手の力を利用した巴投げー!』
なんとスカリエッティが自らを押していく強い力を逆に利用して巴投げを行ったでは無いか。
忽ち受身も取れずに頭からキャンバスに突っ込んで行くスカリエッティ。
「どうだ? ただ力さえあれば良いって物じゃない! 相手の力を利用するのもまた手なのさ!」
万太郎は自信満々にそう言うが、スカリエッティは何事も無かったかのように起き上がっていた。
「ならばそれ以上の力でねじ伏せるまでだ…。利用出来ない程にな…。」
『あーっとスカリエッティ! ダメージは殆どありません!』
『力だけでなくタフさも普通じゃありませんよこれは!』
「うそぉぉぉ!」
平然と立ち上がって来たスカリエッティに万太郎も焦った。
「こうなったら攻撃あるのみだ!」
万太郎はスカリエッティに接近し、ドロップキックを放った。が…スカリエッティは
なんと胸筋の力だけで弾き返していた。
「何!?」
「どうした? お前は人間を遥かに超越した超人なのだろう? その程度の力しか無いのか?」
スカリエッティは不敵な笑みを浮かべ、胸筋をピクッピクッと上下させていたが…それが何かキモかった。
「だが私はこの様な事が出来るぞ?」
『あーっとスカリエッティ! 万太郎の顔面にアイアンクローを仕掛けながら片手で振り回すー!』
「うあうあうあうあうあ!!」
スカリエッティは万太郎の顔面を握り潰さんばかりの力で握り締めながら振り回し、
リングの鉄柱に投げ付け叩き付けていた。
「ぐはぁ!」
『万太郎! 鉄柱に直撃したー! これは痛いぞー!』
「どうしたどうした? その程度で超人と名乗れるのか? え?」
スカリエッティは鉄柱の根元に倒れこんだ万太郎をその強靭な脚で蹴り付けた。
しかも一発だけじゃない。何度も…何度も…蹴り付けるのである。
『ダメージが大きく動けない万太郎にスカリエッティの連続ストンピングが炸裂だー!』
「ほらほら、どうしたどうした?」
不敵な笑みを浮かべながら万太郎を蹴り続けるスカリエッティ。だが…次の瞬間
万太郎はスカリエッティの軸足の方をガッチリと掴んでいた。
「油断大敵だよ!」
「何!?」
万太郎はスカリエッティの軸足を力一杯押し出した。そうすればスカリエッティも
バランスを崩して前のめりになる。そして倒れこんだスカリエッティの眼前には
鉄柱の先端部分があった…。
「んご!」
『あーっと万太郎! 機転を利かせてスカリエッティの顔面を鉄柱に打ち付けたぞー!』
「どんなもんだい!」
鉄柱に顔面を押し付けられたまま倒れるスカリエッティを尻目に
今度は万太郎が起き上がり、ガッツポーズを取っていた。
「よーし! ここで一気に勝負を仕掛けて格好良く勝利すれば女の子にモテモテだー!」
早くも万太郎の脳裏には機動六課の女性陣に囲まれてハーレム化している自分の姿が
浮かんでいたりしたが…そこでスカリエッティが立ち上がっていた。
最終更新:2007年08月30日 19:38