『スカリエッティ立ち上がったー! しかし顔面が血まみれだー!』
「こ…これは…血…?」
先程鉄柱に打ち付けられたせいもあってスカリエッティの顔面からは大量の血が
流れ出ていたのだが…スカリエッティはそれに対し信じられないと言った顔をしていた。
「な…何故血が…何故血が流れるのだ…。」
「そりゃ~攻撃を受ければ傷付いて血が出るのは当然じゃないか!」
万太郎も呆れていた。万太郎の過去の戦績は確かに超人オリンピック・ザ・レザレクション決勝の
ケビンマスク戦を除いて全て勝ち星を上げている。だがどれも苦しい戦いだった。血を一滴も
流さずに勝利出来た試合など一つも無い。むしろ全身傷だらけ、血だらけになる試合もあった。
だからこそ今更血が出たくらいで驚かなくなっていたのだが…元々研究者であり、
改造によって自身の肉体を強化したスカリエッティは自らの流血に対する耐性が無かったのだろう。
「何故だ…何故だ…私は究極の肉体を手に入れたはずだ…。どんな攻撃にも耐えうる
強靭な肉体を作り上げたはずだ…なのに何故血が出る…? 何故だ…何故だ…
何故だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
『あーっとスカリエッティが物凄い形相となったー!』
スカリエッティは激怒した。自らの肉体に自身を持っていただけに…
その肉体を流血させた万太郎が許せなかったのである。
「きぃぃぃさまぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「んぐぁ!!」
次の瞬間スカリエッティの鉄拳が万太郎の腹部に直撃し、万太郎が勢い良く吹っ飛んだ。
だが、それもロープに引っかかってその反動で勢い良く戻って来るのだが…
「死ぬぇぇぇぇぇ!!」
その戻って来た万太郎にスカリエッティの蹴りが炸裂する。そしてまた吹っ飛んだ後で
ロープに引っかかって反動で戻って来た後でまた殴り飛ばされたり蹴り飛ばされたり…
その繰り返しが始まってしまった。
『あーっとスカリエッティの猛攻が始まったー! 万太郎手も脚も出ないー!』
「やばい! やばいんじゃないのこれー!」
「うん! パターンが入ってしまった!」
格闘技にはいまいち詳しくないなのはとユーノでも万太郎がピンチだと言う事は理解出来た。
如何に人間を遥かに超越した耐久力を持つ超人でもアレだけの猛攻を受けて無事でいられるワケが無い。
だが…やはり万太郎は並の超人では無かった。
「あ…あんまり調子に乗っちゃダメだよ!」
ロープの反動で戻って来た所をまたもスカリエッティの追い討ちを受ける万太郎だが…
次の瞬間万太郎が肉のカーテンの体勢を取る事によってスカリエッティの拳を弾き返していた。
『あーっと万太郎! 今度は肉のカーテンで逆にスカリエッティの攻撃を弾き返したー!』
「うおおおお!」
「今度は僕の番だ! マンタロー飛び付き腕ひしぎ十字固め!!」
万太郎はバランスを崩したスカリエッティの腕に飛び付いて腕ひしぎ十字固めを仕掛けた。
『出た! 万太郎の腕ひしぎ十字固めー!』
『パワーで劣る分はテクニックでカバーしようと言う事ですね?』
「う…うおあああああ!!」
「このままお前の腕を圧し折ってやる!!」
スカリエッティは流血に対してのみならず、関節技に対する耐性も低かった。
無理も無い。敵との戦いや自ら鍛えると言う方法では無く、改造によって自らを強くしたのだ。
敵から関節技を直接受けた事が無いからこそ意外にも関節技に対する耐性が低かったのである。
「確かにお前のパワーは凄いよ! 超人強度に換算すれば1000万パワーにも達してる。
でも…テクニックに関してはてんでド素人だ!!」
「うおああああああ!!」
万太郎の超人強度は93万パワー。しかしそれでも万太郎は700万パワーの
ザ・コンステレーションや1200万のボルトマン、1000万のリボーンアシュラマンなど
自身の何倍もの超人強度の相手と戦い、辛くも勝利を収めて来た。
その万太郎が冷静にスカリエッティの実力を考えた場合、上記の三人に比べて
見劣りする物を感じていた。何故なら上記の三人はただ超人強度の高さから来る
強大なパワーだけでは無く、それぞれのテクニックと言う物を持っていた。
特にリボーンアシュラマンなど、ジェネラルストーンによって身体は20代に若返っていたが、
実際は50歳以上の高齢であり、血気盛んな若々しい肉体と数々の戦いを経験したベテラン超人の
頭脳と精神を併せ持つと言う実質的な実力は1000万さえ遥かに超越した超人だった。
しかし万太郎は激闘の末、死の一歩手前まで追い込まれながらも何とかそのリボーンアシュラマンにも
勝利して来たのである。その時の苦しみに比べれば…もはやパワーだけのスカリエッティなど
怖くなくなっていた。
「ふざけるなぁぁぁ!! 貴様の様な生まれ付いての超人に私の考えが分かってたまるかぁ!!」
『あーっとスカリエッティ! 腕に組み付かれたまま万太郎をキャンバスに叩き付けようとするー!』
スカリエッティはパワーに任せて強引に万太郎をキャンバスに打ち付けようとするが…
「なんの! マッスルアーマー!!」
次の瞬間万太郎の背筋が盛り上がり、その弾力によって受身を取る事でキャンバスに
打ち付けられた衝撃を吸収し、さらにバウンドの勢いで逆にスカリエッティを後頭部から
キャンバスに落としていたのである。
「うおぁぁぁ!!」
『万太郎の返し技を受けて後頭部を打ったスカリエッティ! かなり痛そうだー!』
「ほらね! やっぱりあんたはド素人だ! 受身もまるで出来てないじゃないか!」
「ふざけるなぁぁぁぁぁ!!」
頭をフラフラさせながらも怒りに任せて起き上がったスカリエッティは
万太郎に対し連続でパンチを放つ。しかし力任せな大振りのパンチは万太郎に一発も当たらない。
『スカリエッティのパンチの連射砲だー! しかし万太郎には当たらないー!』
「何故だ! 何故当たらん!?」
「そんな力任せなパンチなんか連発しちゃったら余計に体力消耗しちゃうだけだよー!
少しは力抜いてあげれば~?」
「うるさいだまれぇぇぇ!!」
万太郎もかつて力任せな攻撃が脱力した相手に破られて苦戦した事があったからこそ
その様な事が言えた。スカリエッティが全身に無駄に力を込めて殴りかかって来るのに対し、
万太郎は全身の力を抜いて柔らかく柔軟性に富ませてスカリエッティのパンチをかわしていく。
かの鉄人「ルー・テーズ」も力を込めれば鋼の様に堅く、逆に力を抜けばゴムの様に
しなやかな筋肉をしていたと言う。今の万太郎はそれを体言していたのである。
『なおもスカリエッティのラッシュが続くが万太郎には当たらないー!』
「何で何でだー!? 何であの豚男があんなに強いんだー!?」
「私達が何度袋叩きにしたか分からん奴なのに…。」
スカリエッティを観客席から応戦する戦闘機人達にはこういう状況でこそ真の
強さ…渋さを発揮する万太郎の強さが理解出来なかった。
「それじゃあ今度は僕の番だ!」
『今度は万太郎のパンチがスカリエッティの顔面に炸裂したー!』
万太郎のパンチがスカリエッティの顔面に連続で炸裂しスカリエッティは怯んだ。
ただでさえ万太郎に一発も当たらないと言うのに逆に万太郎に一発食らわされたのでは
身体的なダメージ以上に精神的なダメージが大きかった。
ラフファイターは攻撃を受けた事が無い為に逆にラフファイトに弱い。
これは万太郎が火事場のクソ力チャレンジの最終戦で戦ったノーリスペクトの一人、
ボーン・コールド戦で学んだ事であった。
「ブ…豚男が偉そうな口を叩くなぁぁぁぁ!!」
スカリエッティは万太郎の顔面を再び掴み上げた。そして何度も何度も振り回し…
「これで時空の彼方まで吹っ飛びやがれぇぇぇぇ!!」
『あっとスカリエッティ! 万太郎を凄い勢いで投げ飛ばしたー!』
『これは場外は必至ですよー!』
軽量な万太郎はまるで豪腕投手に投げられた野球ボールの様に吹っ飛んで行くが、そこでロープを掴む。
しかしそのロープでも勢いは殺せずに伸びる伸びる。もう観客席を飛び越えて聖王のゆりかごの
外にさえ出てしまっている。そこでやっとロープの伸びが止まっていたのだが、
万太郎はなおもロープを掴んだままだった。
「ならば…お前に本当の僕の力を見せてやる!! 火事場の…クソ力ぁぁぁぁぁ!!」
次の瞬間万太郎の額に赤く燃え上がる「肉」の文字が現れ、万太郎の全身が眩い
オーラに包まれた。これこそ万太郎が内包するオーバーブースト「火事場のクソ力」なのである。
普段93万パワーしか無い万太郎もこの火事場のクソ力発動時にはパワーが何倍にもなる。
万太郎の父スグルも瞬間的に7000万ものパワーを発揮するクソ力を持ち、
神にさえ恐れられて潰されそうになった程の恐ろしい力なのだ。
『出たぁぁ! 万太郎の火事場のクソ力がついに発動したー!』
『今まで様々な奇跡の逆転ファイトを生み出して来た火事場のクソ力が今度は
どんな奇跡を見せてくれるのでしょうかー! これは女房を質に入れても見逃せませんね!』
そして万太郎は何百メートルにも渡って伸びきったロープの反動を利用して
まるで弓から強引に放たれた矢の様にスカリエッティ目掛けて突っ込んでいた。

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最終更新:2007年08月30日 19:57