対決! 桜花VSしっとレディ 編
桜花が落ち込んで空を見上げるようになって数日の時が流れた。
ちなみに、今の大人しい状態がチャンスとばかりに管理局の上の人間が
桜花解体部隊を組織して向かわせたのだが、落ち込んでいても自己防衛本能(?)と言うのは
働いているのか、あえなく全滅してしまうと言う微笑ましい事件もあった。
だからこそ今は「触らぬ神に祟りなし」の理論で桜花をそのままにしておく事が最善と判断され、
桜花は落ち込ませたまま放置されていた。
それからさらに数日、久し振りの休日を取る事が出来たなのはは同じく休日の取れたユーノと共に
街へ遊びに行くと言う事になっていた。
「それじゃあ私がいない間もよろしくね。」
「うん。あんま気にせんでええよ。一杯遊んでき?」
「ああ、若い連中はあたしが代わりにビシビシ鍛えといてやるから精一杯遊んで来い!」
はやてやヴィータに笑顔で見送られ、なのははユーノと共に街へ出かけて行った。
その時のなのはとユーノの二人も実に幸せそうであったが、そんな二人を快く思わぬ者がいた…
「クソッ! あのフェレット男…何時までなのはに付きまとえば気が済むんだ…。」
なのはにとっての一番は自分だと信じるフェイトはユーノがなのはと街に行くなど
持っての他だと考えていた。故にフェイトはユーノに対し物凄い嫉妬の炎を燃やすのだが、
それが異次元から恐ろしい奴を呼び寄せてしまうのである。
「誰かがしっとに狂う時! しっとマスクを呼ぶ合図!」
「わぁ! 誰があんた!」
突然フェイトの目の前に現れた覆面レスラーみたいなゴツイ男にフェイトは思わず飛び退く。
「私の名はしっとマスク! しっとの星からやって来たしっとの戦士だ!」
「しっと…マスク?」
彼は「滅ばずに世界が普通に存続している」と言う並行世界からフェイトの物凄い
しっとエネルギーを感知して時空を超えてミッドチルダにやって来たのであった。
「君のしっとエネルギーは物凄い物を持っている! 今日から君はしっとレディと名乗るが良い!」
そう言ってしっとマスクはフェイトに自分のそれと同じ様なマスクを手渡す。
「いるかこんなもん!」
ただでさえユーノに嫉妬して怒りに怒っていた時にワケの分からない男からしょうもない物を
渡されてフェイトがさらに怒らないはずがない。故にそのまま投げ捨てようとしていたのだが…
「ん? いや待てよ…これは面白いかもしれない…。」
フェイトの手は止まった。もしフェイト=T=ハラオウンとしてなのはとユーノを妨害すれば
フェイトがなのはに恨まれてしまうと言う本末転倒な結果に終わるだろう。だが…
しっとレディとして妨害すればどうだろう。そうすれば犯人はしっとレディと言う事になり、
フェイトがやったと言う事にはならない。これは良いアイディアかもしれない。と、フェイトは思った。
「よし! このマスク…ありがたく受け取ろう! 今日から私はしっとレディだ!」
フェイトはマスクを被った。この瞬間しっとレディと言う新たなしっとの戦士が誕生したのである!
「おおマスクを被ってくれたか! 感動したぞ!」
しっとマスクは思わず感動の涙を流していたが、そこでさらに言う。
「君が晴れてしっとレディとなったと言う事で、まず君に見せたい物がある。」
「見せたい物?」
しっとレディがしっとマスクに連れて行かれたのは街外れにある地下室だった。
そしてその地下室は妙に賑やかだった。
「アベックを殺せー!」
「アベックには死をー!」
「アベックを地獄に送れー!」
そこではなんと色眼鏡で顔を隠し、褌一丁の男達が大勢このように叫んでいたのである。
「こっこれは!?」
「彼等は私がこの世界の持てない男達を集めて組織した『しっと団ミッドチルダ支部』だ!」
「何時の間にこんな組織を!?」
しっとレディは驚嘆した。まさか管理局の目の及ばぬ場所でこのような組織が作られようとは…
って良く見たら、しっとレディ=フェイトにとって見覚えのある武装局員もまじっているでは無いか。
しかも誰もが管理局の中でも持てないと評判の連中ばかり…と、彼女がそう唖然としていたが、
しっとマスクはしっと団員達にしっとレディを紹介していた。
「しっとの戦士達よ! 紹介しよう! 彼女が新たなしっとの戦士! しっとレディだ!」
「おおー! 貴女が仲間に加わってくだされば百人力ですよ!」
「これからよろしくお願いしますフェ…じゃなかったしっとレディ様!」
既に管理局から大勢引き抜いていた事もあるし、フェイト自身が結構有名人な事もあって
しっと団員達はしっとレディの正体がフェイトである事は直ぐに見抜いていた様子だった。
だからこそ、新入りでありながら隊長クラスの待遇で迎えてくれたのかもしれない。
「よーし! これから街へ繰り出してアベックどもを殺して殺して殺しまくるぞー!」
「オオ――――――――!!」
しっとマスクの号令に誰もがそう叫んで手を上げる。そしてしっとレディもまた闘志を燃やしていた。
「フッフッフ…この機に乗じてフェレット男を抹殺してやる…。」
なのはとユーノは街で買い物をしたり食事をしたりと楽しんでいた。
二人は何時も忙しく、こういう時間は殆ど取れないので二人ともこのささやかな休日を
悔いが残らないように満喫しようとしていた。
「ユーノ君、次は何処に行こっか?」
「そうだね~。」
「アベックを殺せー!」
「え?」
突然周囲に響き渡った声になのはとユーノの二人が首をかしげながら声の方を向いた時、
そこには既に大勢のしっと団員が展開されており、手当たり次第にアベックに襲い掛かっていた。
「殺せー! アベックを殺せー!」
「アベックに死をー!」
「わー!」
「きゃー!」
既にしっと団員達は街の彼方此方に出現し、とにかくひたすらに男女一組のアベックに
狙いを定めた虐殺を繰り広げていた。次々に真っ赤な血に染まって行くアベック達。
「アベックの立て篭もるラブホテルや高級レストラン等もぶっこわせー!」
「オオ―――――――――――!!」
しっとマスクの号令によって、武装局員出身のしっと団員がミッド式デバイスを構えて
アベックのいそうな施設へ非殺傷設定をOFFにした攻撃魔法で次々に吹っ飛ばした。
忽ち街は火の海と化し、次々にアベック達が犠牲になっている。
まさに地獄…この世の地獄が展開されて行くのである。
さて、なのはとユーノがどうなったのかと言うと…
「私の馬鹿―――!! どうしてこういう状況に限ってレイジングハート忘れちゃうのー!?」
「今はとにかく逃げよう!?」
なのははレイジングハートを忘れてしまい、戦うに戦えないのでひたすらにユーノと逃げていた。
街の方でしっと団がもうテロってレベルじゃねーぞって位に暴れれば当然
機動六課にだって出動命令は下ってくるわけで、機動六課では大騒ぎとなっていた。
「一体何が起こったんや!?」
「街で怪しげな集団がテロをしています! あと、何故かフェイト執務官が見当たりません!」
「あーもー! どうしてこんな時に限って! とにかく出動や!」
もう機動六課の面々はバタバタと走り回っていたのだが、それでもなお
桜花は空しく空を見上げていた。しかし…その時に街で起こった一際大きな爆発が
桜花の目に入った時…彼女の中で何かが変わった…
しっと団の大暴れによって街は既に火の海となり、消防隊も中々火災地点に到着出来ずに
火の手はどんどんと広がりつつあった。そしてしっと団活動も一区切り付いた事もあって
しっとレディはしっとマスクに言うのである。
「私は個人的に葬りたいアベックがいるんだけど…そっちを潰して来ても良いかな?」
「ああ、構わんよ。」
「恩に着る…。」
しっとレディは飛び立った。無論…彼女の目標はなのは&ユーノである。
最終更新:2008年08月03日 02:00