「殺せ殺せー! アベックを殺せー!」
しっと団は未だ大暴れ中であり、なおも次々にアベックを血の海に沈めていたのだが…
「ウギャ――――――――――――!!」
街の外れでアベック狩りに勤しんでいたしっと団の小隊の一つが断末魔の叫びと共に音信を断った。
「何だ!? 何が起こった!?」
他のしっと団小隊も異変を察知して現場に向かうが…そこでメラメラと燃え上がる炎の中から
一人の少女の姿が現れるのである。
「せ…セーラー服の女の子?」
「お前達…ただでさえ人が落ち込んでいる時に変な事するな―――――!!」
「ウギャ――――――――――――!!」
突如街に乱入し、しっと団小隊を壊滅させたのは桜花った。その目は憎悪に狂い、
超小型高性能原子炉が唸りを上げる。そして頭部の桜三型光学熱線砲が火を噴くのである。
「消えろ! 消えろ! 消えろ――――――――――!!」
「ウギャ―――――――――――!!」
今度はしっと団が地獄を見る番だった。
その頃、しっとレディがなのは&ユーノの前に立ちはだかっていた。
「貴女は一体何者!? そして一体何が目的なの!?」
「私の名はしっとの戦士…しっとレディ! 目的は全てのアベックの抹殺!」
なのはもしっとレディもかなり真剣な眼差しをしていたが、ユーノだけは違った。
「あのさ…君…キャラ随分変わったね。そんなマスク被るなんて…どうしたんだい? フェイト…。」
「!!」
ユーノは一目見て直ぐにしっとレディの正体がフェイトである事に気付いていた。が…
「違う! 私はしっとレディ! 決してフェイト=T=ハラオウンと言う美貌と実力と人気を
兼ね備えた次元世界最強執務官などでは無い!!」
「そうだよユーノ君! フェイトちゃんはあんな変態まがいな事はしないよ!」
「思い切り自分でばらしてるのにどうして気付かないかな…。」
なのはは真剣にしっとレディの正体がフェイトである事に気付いていなかった。
その上フェイトはさりげなく酷い事を言われてショックを受けていた。
「と…とにかく! 私の目的はアベックの抹殺! だからこそここで死んでもらう!」
しっとレディはバルディッシュを構えてユーノへ突撃した。
このままユーノの首をかっ斬ってやろうと言う思惑であったが…
その時、突如しっとレディの眼前に真っ赤な閃光が走り、思わず急停止していた。
「こ…これは…は!?」
「ここにもいたか変態…貴様も消えろ!!」
突如乱入して来たのは桜花であり、超小型高性能原子炉を唸らせながらしっとレディを
憎悪の眼差しで見ていた。
「桜花!?」
「あんなに落ち込んでいたのに…。」
これにはなのは達三人は驚いた。もう殆ど再起不能レベルにまで落ち込んでいた桜花が
あそこまで元気に動いている姿は信じられなかったのである。
「消えろ! 変態覆面!」
「くっ! やっぱりあんたとは戦う運命にあるのか!?」
超高速で殴りかかった桜花に対し、咄嗟にしっとレディは防御魔法を展開するが…
「何!?」
「え!?」
しっとレディの防御魔法は桜花の拳を完全に防御していた。これはしっとレディとしても予想外だった。
そしてさらにバルディッシュを振るう。するとこれで桜花が吹っ飛んでしまった。
「うあああ!!」
「ああ! 桜花!?」
「あれ…どうして…。」
以前戦った時は桜花の方が自分より遥かに強かったと言うのにどうした事だろうか。
そこで彼女の前にしっとマスクが現れ教えてくれた。
「しっとマスクのマスクはただ正体を隠す為にあるのではない! 被った者の力を
何倍にも引き出す力も持っているのだ!」
「え!? って言う事は…今の私は通常の何倍もの力があるって事!?」
しっとマスクの言った事は本当だ。しっとマスクの正体はただ体格が良いだけの人間だが、
しっとマスクのマスクを被る事によってしっとマスクと言う超人へと変化するのである。
ならば元々強いフェイトがしっとマスク化すれば…どれだけ強くなったか想像も付かない。
そうと分かれば桜花など怖くは無い。しっとレディは自信を持って桜花の原子炉が爆発しない程度に
破壊して行動不能にさせ、その後でユーノを抹殺するべく飛んだ。
「まず腕と脚…どっちを斬られたい?」
「黙れ! このー!」
桜花は起き上がりながら熱線を発射した。しかし機動性はしっとレディの方が遥かに上、
忽ち錐揉み飛行でかわされてしまい、バルディッシュの刃が桜花の眼前まで迫っていた。
「まずは…脚だぁ!」
「させるか!」
桜花はとっさにバルディッシュを真剣白刃取りで受け止めた。
「くっ!」
「くぬぬぬぬ…。」
しっとレディは押し切らんとし、逆に桜花は押し返そうとする。
しっと対原子力。この戦いは史上かつてない壮絶な物になると予想されたが、
なのはとユーノはこの状況を黙って見ているしか出来なかった。しかし…
「なのは! 忘れ物だ!」
やっと機動六課のメンバー達が街に到着し、ヴィータがなのはにレイジングハートを渡していた。
「ヴィータちゃんありがとう!」
なのははヴィータに礼を言うと、瞬時にバリアジャケットを装着!
シューティングモードでしっとレディに狙いを定めた。
「桜花! そこから下がって!」
「何!?」
「アベック狩りだか何だか知らないけど…そんな事の為に街を破壊するなんて許せない…
全力全開!! ディバイィィン!! バスタァァァァァァァァ!!」
なのはの叫びに呼応するがごとく、レイジングハートから極太の魔力砲が放たれた。
「わぁぁ!」
これには桜花も驚いて咄嗟にバルディッシュの刃から手を離して飛び退く。
そして…ディバインバスターの射線上にはしっとレディの姿があった。
「え…うそ…おひょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
しっとレディはたまたま近くにいたしっとマスクと共にディバインバスターに飲み込まれ、
そのままどっか飛んでいってしまった。確かにしっとレディになればなのはにも
正体がバレる事無く活動出来るが…逆に言えばこのように攻撃もされる危険性も持っていたのである。
「うわぁぁ! 総統達が!」
「逃げろぉ!」
しっとマスクとしっとレディと言う指揮官を失ったしっと団は散り散りになって逃げ出し、
戦いは自然に収束して行った。
「あ~あ~…昨日は散々な目にあっちゃったな~。」
翌日、なのはは愚痴をこぼしながら機動六課へ出勤して来ていた。
「おはようございます! なのはお姉様!」
「おはよう。ってええ!?」
なのはは驚きの声を上げた。無理も無い。何しろ機動六課の入り口前で桜花が
笑顔でホウキを掃いていたのだから…
「はやてちゃん! これどういう事なの!?」
なのはは大急ぎで隊長室にいるはやての所に走り、状況説明を要求した。
そしてはやては笑顔でこう答えるのである。
「ああ、桜花は今日からここで働く事になったから。」
「ええ!?」
「先日のしっと団とか言うテロリストと戦ってた時に何か思う所あったらしくてな、
上の方にも『破壊した機動六課施設の弁償代を働いて返させる』と言う名目で
解体の方は免ってもらっとるし、ま、よろしゅう頼むわ。」
「頼むわって…。」
なのはは少々呆れていたが…そこで桜花も隊長室に入って来た。
「スットン帝国陸軍の最終兵器としての桜花はもう死にました!!
これからはこの世界で新たな生き方を模索したいと思います!
よろしくお願いします! なのはお姉様! はやてお姉様!」
桜花は笑顔でなのはとはやてにそうお辞儀をするが…なのはは苦笑いしか出来なかった。
「よ…よろしくね…。」
こうして、桜花は機動六課預かりの身となった。実際上の方でもしっと団退治に
一役買った事が評価されて「まあ良いんじゃね?」と言う事になっていた。
そして、桜花の参入により機動六課は「管理局で唯一の核保有課」と密かに呼ばれる事になる。
一方フェイトの方はと言うと…
「あれ? フェイトさんどうしたんですかその傷…。」
「あ…ちょっと階段で転んじゃってね…。」
「気を付けてくださいよ。」
先日しっとレディとして活動中になのはに吹っ飛ばされた際に付いた傷を
エリオに指摘されて無理矢理な回答をするフェイトだったが…そこでなのはがやって来た。
「あ、フェイトちゃん昨日何処に行ってたの? しっと団って言うのが出て来て凄く大変だったんだよ。」
「ごめんなのは…こっちはこっちで色々あったから…。」
フェイトは苦笑いしながら何とかごまかそうとしていたが、なのははさらに言う。
「特にあのしっとレディって言うのは桜花ちゃんでも苦戦するくらい強くて
とりあえず私が全力全開で吹っ飛ばしたけどまた来るかもしれないから要注意だよ!」
「う…うん…そうだね…。」
フェイトは苦笑いしながらなのはの言葉に答えるが、彼女はまだ諦めてはいなかった。
「(今度こそ…今度こそ…あのフェレット男を殺してやるから…。)」
フェイトのポケットの中にはしっとマスクのマスクが収められていた。
対決! 桜花対しっとレディ 編 完
最終更新:2007年09月10日 22:26