ナンバーズが桜花に嫉妬しました 編
桜花が機動六課預かりの身となって早くも一月が流れた…
「大変だー! 次元航行船が座礁したー!」
「でもこれ動かそうにもクレーン何台必要なんだ?」
「私に任せてください! よっと!」
「ゲェ―――――!! セーラー服の女の子が次元航行船を持ち上げた――――!!」
と、こんな感じの微笑ましい日常(?)が展開されていたりいなかったりする。
桜花は戦闘用ロボットのワリには家事全般が妙に上手く出来る様に
作られているらしく、そっち方面でも重宝されていた。
「桜花ちゃん! おかわり!」
「俺もおかわり!」
「そんなに慌てなくてもまだまだ沢山ありますよ。」
特に料理など、プログラムの関係で和食しか作れないが実に美味であり、
他の課からも態々機動六課の食堂に飯を食いに来る人が沢山いるくらいの人気を博していた。
挙句の果てにはどさくさに紛れてレジアス中将まで桜花の作った料理を喰いにくる始末。
「でも本当こういう事も出来るんだから凄いよ。立派に家庭用ロボットとしても通用する。」
「ほんまやな。」
桜花の作った料理食べたさに他の課から押しかけた人々で大賑わいの機動六課食堂に
苦笑いしながらもなのはとはやての二人はこれはこれで良いかと言った風な会話をしていた。
しかし、その場にフェイトはいない。なのはとはやての二人に関しては純粋日本人である事も
あって、桜花は二人をそれぞれ「お姉様」と呼んで慕っているが、フェイトは金髪である事も
あって未だに桜花に敵として認識されてしまっている様子であった。
「いや~私がうっかりくしゃみしてしまったせいで一人ぼっちにされてしまっても
新しい生き方を見付けてくれたようですね? 感無量です。」
で、またどこからかとびかげが現れてそう言うのだが、また直ぐに何処かへ消えて行った。
桜花はミッドチルダでも何とか暮らして行けそうかな? と思えていたが…
カメラからの映像を通して桜花の姿を監視する者の姿がいた。
「人間の改造では無く…ゼロから作った100%メカによる人型ロボット…
まさかこんな物がロストロギアとして発掘されるとは…素晴らしい!」
彼…ジェイル=スカリエッティ博士は桜花の存在に感激していた。
無理も無い。ミッドチルダにおける人型機動兵器に対しての認識や常識が
桜花たった一人の為に完膚無きまでに破壊されてしまったのである。
その為に桜花の存在に触発されて自分でもっと凄いロボットを作ってやろうと個人から企業まで
様々な者達がロボット開発に躍起になり、世間ではロボット開発ブームが巻き起ころうとして
いるらしい。そして…スカリエッティもまた桜花の存在に興味を持つのは当然だった。
「彼女を何とかして手に入れたい物だ! そして私にも美味しいご飯を…じゃなかった!
彼女の構造構造を解明してロボット兵士軍団を作り上げるのだぁぁぁぁ!!」
次元世界最高の科学者を自負していたスカリエッティであるが、彼の力を持ってしても
人間並みの自我と強力な戦闘力を兼ね備えた人型ロボットを作る事は出来なかった。
だからこそ人間改造型のナンバーズと呼ばれる戦闘機人を作り、己の尖兵としていたのだが、
彼は桜花を何とかして手に入れ、技術を解明して量産し、自身の戦力にしようと考えていた。
しかし…それを快く思わぬ者達もいたのである。
「ドクターはあの桜花とか言う奴にご執心な様だが…私達としては困る話だと思わないか?」
「確かに…もし仮に奴を基にした量産型ロボット軍団が誕生しようものなら…
私達はお払い箱にされかねない!」
「それは困る!」
桜花の存在を快く思わない者達…それはスカリエッティの尖兵たるナンバーズ達だった。
だがそれも仕方の無い事である。もし本当に人型戦闘用ロボットが実用化されれば、
人間から遺伝子レベルで機械と親和性を持ったサイボーグ戦士として作られた
ナンバーズはもう不要になってしまう。それは彼女達としても嫌だろう。
そして…彼女等は桜花に嫉妬していたのだが…そこでまたとんでも無い奴を呼び寄せてしまう。
「誰かがしっとに狂う時! しっとマスクを呼ぶ合図!」
「誰だ――――――――――!?」
「私の名はしっとマスク! さあ物凄いしっとパワーを持つ君達にもこのマスクを授けよう。」
と、しっとマスクはナンバーズにもマスクを授けようとしていたが、ナンバーズの返答は拳だった。
「死ねぇ!」
「ぎょわ――――――――――!!」
こうしてしっとマスクは何処かに殴り飛ばされて行ってしまい、ナンバーズの今後の作戦が決まった。
「とりあえず…今の内に潰しとくか?」
「そうだな。捕獲しようとしたけど、予想以上に抵抗してくるから仕方なく
破壊しましたとでも言えば言い訳が立つし。」
「いや、しかしいきなり破壊は難しいのでは無いかな? 機動六課で大暴れしたり、
しっと団とか言うワケの分からん連中と戦ったデータから見て戦闘力もかなりの物だぞ。」
「じゃあ…今日はガジェットを使った威力偵察と言う事にしとこうか?」
「うん。ガジェットを使って奴の能力を分析して、その後で破壊すると言う事で。」
その頃、ナンバーズ達に狙われている事も知らずに桜花はスバルと共に街に出ていた。
「道案内ありがとうございます中嶋昴さん!」
「あの~…私はスバル=ナカジマなんだけど…。」
桜花は家事全般は良く出来るし、性格面もそれなりにしっかりはしているのだが、
世間知らずな所があるし、まだまだミッドチルダのルールなどは理解出来ていない部分も多い。
だからこそスバルが桜花に付いて行ってあげていたのだが、桜花はプログラムの関係上
カタカナ言葉が上手く使えず、スバルの事を【中嶋昴】と呼んでしまうのでスバルは困っていた。
さて、桜花がスバルと共に街に出かけた理由はと言うと…
「かつて…僕はフェレットとしてなのはの実家でお世話になっていた時期が
あったんだけどね…その時なのは達は僕の事を本当にフェレットだと思ってて、
ペットフードとか食べさせてたんだよね。だからさ、そのせいで未だにペットフードに
しか美味しさを感じなくなってしまったんだよ―――――――!!
誰でも良い! お願いだから僕に美味しい人間の料理を食べさせて人間の味を思い出させて!」
と言う無限書庫司書長ユーノのわがままから始まるのだが、そのユーノに対し
美味しい料理を作ると言う事に関して既に管理局にその名を轟かせていた桜花に
白刃の矢が立ったのであると言ういきさつである。そして今日、桜花はその為の
食材を探しに街に出て、スバルが街を案内(監視役とも言う)すると言う事で今に至る。
「でも本当桜花には面倒かけちゃってごめんね?」
「昴さんが謝る必要はありませんよ。それになのはお姉様の大切な人の為ですし。」
「昴じゃなくてスバルね。」
ユーノも金髪なはずなのだが、何故か桜花は彼を敵と認識してはいなかった。
それだけミッドチルダでの生活に慣れてきていると言う事もあるのだろうが…
やはり…これがユーノの持つ人徳と言う奴なのかもしれない。
実際フェイトは未だに桜花に敵と認識されたままだし。
それから桜花はスバルに街を案内されながら、これは! と思える様な
魚やら野菜やらを購入し、帰路に付いていた。
「何故だか良く分かりませんが、昴さんには親近感が沸いてしまいます。」
「ハハハ…そりゃどうも…。ちなみに私は昴じゃなくてスバルね?」
相変わらず「昴」と呼ばれるスバルは苦笑いしていたのであるが、
それからふと人通りの少ない場所に入った時にそれは起こった。
「!?」
突然周囲の雰囲気が変わった。人の気配は一切無くなり、空気そのものが
別の物へと変化したようにも感じられた。嫌な予感を感じたスバルは
すぐさまバリアジャケット&マッハキャリバー&リボルバーナックルを装着、
そしてその予感は的中した。前方後方側面彼方此方から大量のガジェットがうようよと現れるのである。
「ガジェット! どうしてここに!?」
「がぜっと?」
「がぜっとじゃなくてガジェット! あの無人機械の総称だよ!」
「あ…ありがとうございます。」
桜花は相変わらず外来語関係がどうも発音出来ない様子でったが、ガジェットの
目的はともかくとして、敵意を持っている事は明らかであった。
ガジェットをコントロールしていた者…それはナンバーズであった。
「とりあえず手はず通りにガジェットで小手調べだね。」
「何か機動六課の下っ端陸戦魔導師が混じってるけど…無視しても良いんじゃないかな?」
スバルはどうも眼中に入れてもらえていない様子であったが、今回は
桜花に対する威力偵察が目的なので仕方が無いと言えた。
桜花とスバルは四方八方からガジェットに取り囲まれていた。
「昴さんどうしましょう?」
「どうしましょうって言われても…ちなみに私は昴じゃなくてスバルね。」
こう言う状況になってもまだこの様な事を言っているのだが、次の瞬間
二人の拳が一体のガジェットを同時に殴り潰していた。
「とりあえず包囲網の薄い場所を突破して逃げると言う事でどうでしょう?」
「それしか無いでしょ? 第一今日は荷物とかあるんだし。」
これが普段なら徹底的に戦っていた所であろうが、今の桜花の左手には
今日街へ出かけた目的の品である各種食材の入った袋が握られている。
この状態で戦うワケにはいかない。下手に戦って袋に入った食材がダメになったら
本末転倒も甚だしい。だからこそ戦闘行為は最低限に留め、後は逃げる。これしか無かった。
「アイツ逃げますよ!?」
「逃がすな! 次元の果ての果てまで追い駆けてでも…桜花を…叩け!」
「威力偵察するんじゃなかったのかよ…。」
後方からガジェットをコントロールしているナンバーズ達もその様なやり取りを
行いながら逃げる桜花とスバルを追い駆けていた。
最終更新:2007年09月10日 22:37