陸で桜花が、空で機動六課のヘリがそれぞれヴィヴィオ探索を行っていたが、
そこで桜花がある光景を発見した。
「おじちゃんこんなにおかしかってくれてありがとう。」
「あ~あ~金のかかるガキだな~おい…。」
「まあまあ、スカリエッティ博士の所に付くまでの我慢ですぜボス。」
ミッドチルダの一角にある明らかに周囲とは雰囲気の異なる駄菓子屋から
ヴィヴィオを誘拐したは良いけど大量のお菓子を買わされてほとほと困り果てる
貧乏マフィアの二人が出て来ていた。
「ああああああ!! 見付けたぁぁぁぁぁ!!」
「あ~! ろぼっとのおねえたんだ~。わ~い。」
ヴィヴィオは事の重大さが分からずにのん気に手を振っていたが、
そこで貧乏マフィアの二人はヴィヴィオを大急ぎで抱き上げて車に押し込んでいた。
「奴は機動六課に配備されたって言うロボットですよ! テレビで見ました!」
「ああ俺も知ってる。可愛い顔して恐ろしい化物だって話じゃないか! とにかく逃げろ!」
「はい!」
貧乏マフィアは車を発進させ、法定速度を明らかに無視した速度で逃げ出した。
「わ~い! はやいやはい!」
ヴィヴィオは相変わらず事の重大さが分からずにのん気に喜んでいたが、
桜花は必死になって車を追撃していた。確かになのは達を超音速戦闘機に例えるなら
桜花は重戦車。だが、それでも普通の乗用車を追い駆ける位の事は出来る。
「待てぇぇぇ!! そこの車ぁぁぁぁぁ!!」
これが普通に敵が相手なら桜花は熱線を構わず発射していただろう。
しかし相手の車にはヴィヴィオが乗っている。もしヴィヴィオに熱線を当ててしまえば…
なのはがどれだけ怒るか…とても想像も出来ない。だからこそ熱線を使わずに直接
救出しなければならない。これは敵との戦いと同時に金髪を敵と認識して攻撃すると言う
桜花自身の本能との戦いとも言えた。
「待てぇぇぇぇ!! そこの車ぁぁぁぁ!!」
「この野郎! これでも食らえ!」
なおも追い駆けて来る桜花に向けて貧乏マフィアは拳銃型デバイスを取り出し、
窓から身を乗り出して拳銃型デバイスから攻撃魔法を発射した。
しかし、貧乏マフィアの魔力は大して強くなく、桜花の特殊鉄鋼製ボディーには
傷一つ付かずに桜花自身もまた何事も無かったかのように追い駆けていた。
「くそ! なんて頑丈なんだ!?」
「ボス! 運転を代わって下さい!」
「何!?」
「俺が奴を食い止めます!」
貧乏マフィアの子分の方が親分に対して言った言葉に親分は動揺した。
「無茶をするな! お前がアイツに敵うわけ無いだろ!?」
「ですが時間を稼ぐ事は出来ます! 俺が奴を食い止めている間に
この子をスカリエッティ博士の所へ!!」
車を運転していた貧乏マフィアの子分の方はある場所に車を急停止させると共に
車から出てある場所へと走った。
「元々ATM強奪用に作った奴だが…やってやる!!」
貧乏マフィアの子分が乗り込んだのは97管理外世界で言う所のショベルカーに
酷似しているが、ショベルの部分が人間の手の様になっており、明らかに
物を掴む事を前提にした作られ方になっている作業機械だった。
「うおおおお!! これでひき潰したるぅぅぅ!!」
先程貧乏マフィアが言った通り、元々ATM強奪の為に作った事で
ATM強奪ロボ(仮名)と命名するとして、そのキャタピラが唸りをあげて桜花へ突撃した。
「くそ! お前の死は無駄にはしねぇ! 行くぞ!」
貧乏マフィアの親分の方は目から大量の涙を流しながら敬礼をし、運転席に付いて車を再び発進させた。
「うおおおお!!」
親分の運転する車方が走り去った事を確認するなり子分の操縦する
ATM強奪ロボは桜花へ体当たりを仕掛けた。
「これでぶっ壊れろぉ!!」
「邪魔だ!」
「アヒィィ!!」
が…残念な事に桜花の右拳の前にあえなく散った。
「ボスゥゥゥ! 俺の屍を…越えて行ってくだせぇぇぇ!!」
ATM強奪ロボを破壊されてもなお貧乏マフィア子分は拳銃型デバイスを構えて
桜花へ撃ちまくっていたが、それもやはり効き目は全く無いワケで…
「邪魔だと言っている!」
「ギャ!」
彼の勇気も空しく…桜花の熱線の前にあえなく消えた。
「くそ! 変な奴のせいで時間を余計に食ってしまった! 待てぇぇぇ!!」
逆に貧乏マフィア子分は桜花に屍を乗り越えられてしまい、桜花は
再びヴィヴィオへと走っるのでありました。
「くそっ! もう追い付いて来やがった! やっぱり奴は化物だ!」
貧乏マフィア親分の運転する車は必死に桜花の追撃から逃げ回っていた。
「わ~いはやいはやい! ろぼっとのおねえたんとのおいかけっこだ~!」
と、相変わらずヴィヴィオは事の重大さが分からずに笑っている。
「こうなったら最後の手段だ! ポチっとな!」
貧乏マフィアのボスは車内にあった一つのボタンを押した。
するとどうだろう。突然車から翼やジェットエンジンが現れて空を飛んだでは無いか。
「ああ!! 飛んだぁぁ!!」
いきなり空を飛んだ車に桜花は焦った。が…
「わ~いそらとぶくるまだ~! わ~い!」
と…やはりヴィヴィオは事の重大さが分からずに笑っていた。
「ハッハッハッハッ! 俺ぁ実は97管理外世界の007ってぇスパイ映画が好きでよ!
それに出てくるボンドカーって改造車にガキの頃から憧れてたんだよ!!
で、実際に作っちまったのがこの飛行機能付き自動車だぜ!!」
「くそぉ!! ワケがワケが分からないが待てぇぇぇ!!」
桜花は自身は何とか飛行する車を追い駆けるが、自身の跳躍力では既に高く飛びあがっている
車まで追い付く事が出来ない。やはり陸戦型の限界がここにあったのか…
「ハッハッハッ! 後はスカリエッティ博士の研究所までひとっ飛びだぜ!」
貧乏マフィアのボスは大笑いしていたが…
「ならばこっちだって! まだ飛行試験はしてないけど…こい!! 桜三型飛行翼!!」
桜花がそう叫んだ時だった。突如何処からとも無く謎の飛行物体が現れるのである。
しかも何故か『空飛ぶマジンガーZ』のBGMを流しながら…
そう、これこそ桜花がマジンガーZのジェットスククランダーにヒントを得て、
ガジェットの残骸から作り出した「桜三型飛行翼」なる飛行装備だった。
「これで一気にあの子を奪還だ!!」
桜花は桜三型飛行翼を装備し、さらに自身の動力炉と直結させる事で桜三型飛行翼は
桜花に高度な空戦能力を与えるのである。
「行くぞぉぉぉ!!」
「何ぃ!? 奴は空も飛べるのかぁ!?」
「でやぁぁぁぁぁぁ!!」
桜花は最大出力で飛んだ。が…急いでヴィヴィオを救出したいあまり出力を上げすぎて
そのまま貧乏マフィアの飛行車を追い越し、虚空の彼方へと消え去ってしまった。
「あ…。」
余りにも意外すぎる展開に貧乏マフィアも一瞬気まずい顔になったが、
とりあえずこれで彼にとっての邪魔者である桜花が消えた事で直ぐに安心した。
「と…とりあえず…このガキをスカリエッティ博士の所に連れて行くとして…。」
「おっとそこまでだよ!」
「え!?」
貧乏マフィアの顔は今度こそ気まずくなった。何故なら…その時には彼の飛行車は
機動六課のメンバー達によって包囲されていたのだから…
「誘拐の現行犯で…逮捕します!」
「トホホ…。」
「ハァ…ハァ…やっと帰ってきました…。」
桜花は桜三型飛行翼+超小型高性能原子炉のパワーが余りにも凄すぎて月まで
ぶっ飛んでおり、なんとか機動六課に帰って来た頃にはもう夜になってしまっていた。
そしてなのはの場所へ行くなり土下座をするのである。
「申し訳ございませんなのはお姉様!! 私はびびおを助け出す事が出来ませんでした!!
かくなる上は死んでお詫びを!!」
とか言って、いつの間にか死に装束に身を包み、切腹みたいな事やらかそうとしていたのだが、
むしろ小刀の方が折れるだろと突っ込むよりも早く、なのはの隣にヴィヴィオがいた事に
気付いていた。
「あ…れ…?」
「ヴィヴィオなら私達が助けたよ。でも…桜花だって一生懸命追い駆けてくれたんでしょ?
むしろ桜花が誘拐犯の目を引き付けてくれたおかげで私達はヴィヴィオを助ける事が出来たよ。」
「きょうはいろんなことがあってとってもたのしかった~。」
「でもヴィヴィオ、もう知らない人に付いて行っちゃダメだよ。」
「うんわかったよまま~。」
そう言ってヴィヴィオとなのはは去って行ったが、とりあえずなのはに落胆される所か
フォローしてもらった事が桜花にとっては嬉しかった…。
「な…何はともあれ…よかった…。」
桜花は力尽きて倒れるが…
「あんたそこで寝てたら風邪引くよって言う以前にあんた風邪引かないか?」
「うるさい黙れ敵国人!」
「ギャヒィ!!」
フェイトが珍しく桜花に親切心で声を掛けたのに熱線をぶち当てられてしまったとさ。
めでたしめでたし…
本能に抗え! そして飛べ! 編 完
最終更新:2007年09月19日 19:13