【171号線奪還】annex
『ベルカ戦争』には謎が多い。 終戦から10年経った現在やっと一部の情報が開示された
私はその資料をすぐに入手し。それでは足りず――
出所不明な裏情報にも手を出した。 私がそこまで掻き立てられたのには理由がある
この戦争は1988年のベルカ連邦法見直しに端を発する。当時 財政難に荒れたベルカは東側諸邦の独立を許した。
ウスティオ共和国はこのとき誕生する。しかし ベルカの財政難は収まる事はなかった。
一方で―その流れに乗じて肥大化していく巨大国家オーシア。
その経済恐慌の中― 極右政党が政権を獲得する。強く正当なベルカを取り戻すために
1995年3月25日ウスティオでの天然資源発見をきっかけについにベルカは隣国への侵攻を始めた
『ベルカ戦争』の開戦である。
準備不足の各国は伝統のベルカ空軍の前に敗走
数日の内に山岳地を除く全域を占領下におかれたウスティオ政府軍は外国人傭兵部隊を組織。オーシアとの連合作戦に望みをかける―
ここまでは 教科書にも載っている
だが 資料に奇妙な類似点を見つけた
1人の傭兵に関する記述そしてそこに残された『白い悪魔』という暗号
情報としては不十分なものが多い。だが 私はそこに惹かれた
私はこの傭兵を通してベルカ戦争を追いかけることにした
その先には何かがあるこの戦争の隠された姿かただのおとぎ話か
その傭兵に会うことは出来なかった。存在自体があやふやだ
ただ『悪魔』と関わりのあった人物数人を突き止めることは出来た
『片羽』はその中の1人だ
ヴァレー基地にある女子居住区。
ここにはメカニックや管制官が殆どで女性パイロットはごくわずか。
正規軍の戦闘機女性パイロットとなると5名しかいない。
いずれも奇襲をうけ全滅した基地から死地を脱することができた幸運な者だけである。
そんな中の一人 ナタリー=ヴィステス大尉はロビーの一角の喫茶スペースに入ってきた人物を見かけて好奇心を隠せなかった。
同性で同じ仕事をしているとはいえ、「正社員」と「フリーランス」の立場の違いは大きい。是非とも傭兵の考えを知りたかった。
視線で挨拶を交わし珈琲スタンドにいる目的の人物に挨拶をしながら近づく。
ナタリーは先の爆撃機迎撃 Crossbow作戦については機体整備の為、参加していなかったので、
マジシャン隊やガルム隊の戦闘は噂話でしか聞いていない。あれは・・・確かマジシャン隊の2番機か?
「隣、いいかしら?」
「どうぞ」
「聞いたわよ。先の戦闘ではあなたのお友達、いきなり大活躍だったそうね」
フェイトは話しかけてきた人物の名前と顔を思い出そうとしていた。
当然ながら女性、服装からしてパイロット、蒼地の徽章はウスティオ空軍大尉。
脳内検索の結果は・・・・該当なし。
「えっと・・・貴方は?」
「ルー・ガルー隊のナタリー=ヴィステス。ベストラで良いわ」
「マジシャン隊、フェイト=T=ハラオウン。ネメシスと」
互いに簡単に自己紹介を済ませ、ナタリーは開戦からヴァレー基地に至るまでの経験を説明した。
「私達は奇襲にもかかわらず善戦したわ。かなりのベルカ機を落とした。でも、・・・赤い燕の連中が」
ナタリーがマグカップを机に置いた時の音は普通よりも明らかに大きな音だった。
「大変だったわね」
黒いマグカップの中の液体が大きく揺れていたが、ナタリーの心とおなじように徐々に収まっていく。
ナタリーは首都近郊の基地で3番機を務めていたが、機首を赤く染めたタイフーン4機編隊に奇襲をうけ、
ルー・ガルー隊の同僚3機を失った。後輩でもある別の隊の機を連れてヴァレーまで撤退してしていた。
「ネメシス。一つ聞いていい?」
「何かしら?」
「貴方は何の為に戦いの空を飛ぶの?お金、名声、責任感?」
ナタリーは同性として戦場に出る傭兵の生の意見を聞きたがった。
さすがに責任感との答えは無いでしょうけどねと答えを予測する。
空軍士官学校からパイロット養成コースに進んだナタリーは純粋培養の若きエリート軍人であり、
戦うことでウスティオへの責任を果たさねばならなかった。
フェイトは一瞬だけ警戒の色をみせたが、表面はいたって穏やかなものだ。
「うん、まぁ、私がココの空で必要とされていると感じたからなんだけど」
理由になっていない嘘だとフェイトは心で苦笑した。
ナタリーに多次元世界の概念や時空管理局の事を話しても理解できないだろうし、それに話すには情報リスクが大きすぎる。
「あなたはどうなのかしら?ベストラ」
穏やかな知性を感じさせる魅力的なスマイルを浮かべて切り返す。
質問者に同じ質問を返すことは主導権を奪い返す技術だが、
フェイトの執務官訓練の監督官は、交渉の心得があり、頭の切れる相手には逆効果だとも教えていた。
さて、ベストラはどう返してくるだろう?
「私は・・・」
ナタリーは少し、答えをまよった。
自国を護る戦いの空を飛ぶことに何の違和感もない。ウスティオ軍人としては当然の事だ。
だが、ナタリー=ヴェステス個人は戦いの空を望むのだろうか?
パイロットを目指し、空軍という組織でそれを実現したが為に軍人としての自覚が生まれたのかも知れない。
戦うために飛ぶのか、飛ぶために戦うのか・・・そのあたりがどうにもあやふやだが、国を護る為に戦う自信と決意がゆらぐ事はない。
「私は、・・・ウスティオの為に飛ぶのよ。当たり前でしょう?」
ナタリーはフェイトから視線を外し、屋外エプロンで点検を受ける自身の愛機に目を向けた。
わざわざ好き好んで何の関係のないウスティオという国の為に命を張ってくれるフェイトに対して少し気恥ずかしくなったせいだ。
視線につられてフェイトも外のF-1に視線を送った。
繊細ともいえる細身の機体のテールには2本足で歩く狼男のエンブレムが描かれている。
フェイトがナタリーのフライトジャケットのパッチを見比べながら尋ねた。
「あれは、貴方の機?」
「うん、だいぶん古いし、対艦は別として、空戦は苦手な機体だし、
しかもあなた方達のような傭兵とは違って私有機で戦争、って訳にはいかないのよね。でも・・」
「でも?」
「でも・・今は私の大切な相棒」
「相棒か・・・」
古いとはいえ、曇り一つ無い研ぎ澄まされた剣。戦いの為にデザインされ、破壊の為に作られた道具。
フェイトは質量兵器に対して特別な想い入れを持ったことはない。だが、自分とバルディッシュとの関係に置き換えるとなんとなく理解できる。
明日の作戦にはフェイト達のマジシャン隊、ナタリーのルー・ガルー隊も参加する。
「明日はあの子の本来の力を見せつけてやるわ。月に届くまで吹っ飛ばしてやる!」
フェイトは勢い込むナタリーを煽ったりはしなかった。また落ち着かせようともしなかった。
地上にある質量兵器を月に届くまで吹き飛ばすという意気込みを文字通り、額面どおりの意味で受け取ってしまい、ショックを受けていた。
自身に置き換えて考えてみる。
リミッター無しの全力全開、一転集中の砲撃魔法でもミッドの虚空に浮かぶ双月まで何かを吹っ飛ばす。
そういうマネが果たして私、フェイト=T=ハラオウンに可能だろうか?
この第91世界の質量兵器戦争は半端なものではないということか・・・
幸いナタリーがマグカップを傾けていたのでフェイトの思案顔が誰にも見られることはなかった。
「地上兵力の輸送活路を確保するには アルロン地方をはしる ルート171を奪還せねばならない
この幹線道路には それぞれアーレ川 エムス川を跨ぐ 3つの橋が架かっており現在はベルカ機甲部隊による 厳重封鎖が行われている」
陸路確保は ウスティオからベルカ軍を一掃する 我が軍の重要な足がかりとなるであろう
幹線道路を封鎖する ベルカ地上部隊に打撃を与え 我が軍と オーシア軍を結ぶ兵站ルートを確保せよ」
豊かな大地、その大地を縫い付けるかのように川が流れる。
そのような情景には平和で穏やかな空が似合う筈だが、今は鋼の鳥達が空の主人公である。
《攻撃目標は幹線道路沿いに展開、作戦を開始せよ》
《ヴィゾフニル隊は上空援護、リカントロープ、ルー・ガルーの両隊は所定の行動をとれ》
《了解、AWACS。 ちゃんと見といてくれよ》
返事と同時にドラケン4機編隊が散開しつつ上空に駆け上がる。
ドラケンのヴィゾフニル隊が高空で対空監視をひきつけ、続いてマジシャンとガルムの支援攻撃部隊が国道から離れた目標を制圧。
地上部隊の混乱に乗じてF-1で構成されたリカントロープ、ルー・ガルーの攻撃隊本隊8機が
エムス川に沿って超低空進入し、主目標の地上部隊を攻撃する手筈だ。
《輸送ルートを封鎖するベルカ地上部隊を叩き潰せ》
まずはこれからガルム隊2機とマジシャン隊4機で穀倉地帯に点在するベルカ軍の監視ポイントに襲い掛かるのだ。
「レイジングハート、対地攻撃も設定は大丈夫だよね?」
「yes, My master. All weapons are under non-bloodshed setting.」
毎回この確認だけは怠るわけにはいかない。
レイジングハートの報告に満足すると、なのはは機種を僅かに東へ調整した。
犯罪者のアジトを急襲して身柄を確保するのと感覚的に似ているかなと
今の状況を自分の慣れた環境に置き換えてイメージしてみる。
チリッ! 対空警戒レーダーに機体が撫でられる。
《今ごろ気付いても、もう手遅れだよ》
《油断するなよサイファー》
経験豊富な傭兵らしくピクシーがなのはに警告するが、
せいぜい注意喚起というような意味らしい。
すぐにHUD越しに野戦防空レーダーの姿が確認できた。
ベルカ軍の無線が混じるようになってくる。
《こいつらウスティオからきやがったのか!対空戦闘用意!》
すぐさま対空砲が打ち上げてくるが、なのはのファントムを捕らえることはできなかった。
《攻撃対象に民家がある。あれも作戦内か?潰しておくか?判断は1番機に委ねる》
ピクシーの問いになのはが答える。
《撃ってきた訳でも無いし、民間施設への攻撃は無しにしよう》
《そうだな この戦争が終わればあの民家にも家人が戻るだろう》
なのはは地上攻撃に自由落下型爆弾を選択し、爆撃照準コンピューターの支援を
使うことにした。レイジングハートを信用していないというよりも地上攻撃の勘所を実体験させたいという、いかにも教導官らしい発想だった。
「レイジングハート、爆弾の威力制御に集中して。投下タイミングは見てるだけでいいよ」
「Yes, My master」
HUDに示されたサインに従って、目標と見定めたベルカ軍のトラックの集まりに爆弾を放つ。ピクシーが狙いを定めたのは物資集積所らしい
白地に青線のF-4Eと淡いグレーに右翼が赤いF-15Cの2機から綺麗な放物線を描いて落下する。
爆発がアルロンの土地を辺りに赤と黒に染める。
《イーグルアイ。ガルム隊、攻撃成功だ》
《対地もいい腕だな サイファー》
ピクシーの賞賛も受け流し、なのはが気にしていたのは攻撃ポイントにいた兵士に対する損害だった。
爆弾には信管が作動すると同時に幾つもの対人魔法防御を発動するよう魔力を込めている。
クラウディア艦内でのシミュレーションでは死者は出ないとの評価が出ているが、果たして実戦では効果があったものか?
この状況では確かめる術が無かった。
《こちらマジシャン隊、所定の目標は全て沈黙》
なのはは軽く安堵した。他の管理局組も無事のようだ。
《マジシャン隊は、引き続き周辺制圧。ガルム隊は攻撃隊本隊を援護せよ》
なのは達の攻撃と前後してリカントロープ隊とルー・ガルー隊のF-1、計8機がアムス川に沿って低空で進入していた。
攻撃隊の正面に突然行く筋もの白煙が迫り、リカントロープ隊2番機のF-1がSAMに捉えられた、
火の玉となって爆発する。
だが、編隊は微動だにしない。
《残り7機、針路変わらず》
《奴等も必死という訳か。だが、ここを明け渡すわけにはいかん 》
地上からの攻撃はSAMから対空砲火主体に切り替わった。
《リカントロープ 投下!投下!》
3機のF-1は、微妙にタイミングをずらして爆弾が投下。ベルカ軍の施設が吹き飛ばされる。
退避が間に合わなかったらしい装輪装甲車が吹き飛び、上空に向かって火を噴く自走対空砲に激突する。地獄の混乱がさらに拡大した。
《よし、さっさとずらかるぞ!》
全力で離脱する3機のリカントロープ隊に背後から対空砲火が浴びせられ、1番機が捕まった。
《糞っ!何発か喰らっちまった》
リカントロープ1の右エンジンが煙を吹くが、どうにか飛行を維持し懸命に安全圏へ離脱する。
《第1守備隊が撃破された!全軍 奴らを叩き落せ!》
ここまで友軍の損失は1機、被弾1機と作戦としては全く許容できるものだったが、戦場に出る当事者のパイロットの意見はまた違おう。
少なくとも編隊長に「許容損失」という考えを持つ者はいない。その意味ではベルカ軍の混乱はルー・ガルー隊にとって歓迎できるものだった。
だが、ルー・ガルー隊の担当目標が今回の作戦で最も重要地点のアーレ川に架かる橋を護るベルカ軍を排除することだった。
重要地点だけに護りも固い。
《ヴィゾフニル2より、イーグルアイへ。排除できなかった奴が3機潜り込んだ。攻撃隊に向かうぞ!》
《イーグルアイよりルー・ガルー隊、敵戦闘機隊が上空より接近 方位1-4-0》
《了解》
と、短く応えてからナタリーは軽く苦笑を漏らした。
で、AWACSはこちらにどうしろと言うつもりだろう?
攻撃目標まで接近しつつある状況で、後ろから敵に追いかけられるといって回避運動できないわ!
軽い舌打ちをしてから編隊に周知する。
《ルー・ガルー1より各機、針路そのまま、予定通り目標を叩く》
《了解》
僚機からの応答の声はどれも震えている。
後方から迫るベルカ軍機は上空から位置エネルギーを運動エネルギーに変換し、アフターバーナーを盛大に炊いて一気に距離を詰めてきた。
《ガルムリードよりルー・ガルーへ、援護する》
ミラージュ2000D、MiG21フィッシュベッド、F-15Eストライクイーグルの3機は
バラバラのコースでルー・ガルー隊の背後を取ろうとしていたが、
彼らもガルム隊の救援を察知したらしく2機が針路を翻してガルム隊に向かってきた。
《俺とグリュックで相手する。この補給ルートはウスティオの生命線だ 絶対に攻撃隊を阻止するんだ》
《ハルプーネ、了解》
ベルカ軍の無線が聞き取れた。
《サイファー、2機が向かってくるぞ。気を抜くなよ》
なのははミラージュ2000Dの姿を確認すると背後をとるべく、緩やかだが機速を殺さない高速ターンに入った。
強烈なGが全身にかかる。このとき無理に首を左右に回そうものなら捻挫では済まない。
眼を上下左右に忙しく動かして敵の位置を確認する。キャノピーの枠に少し重なった所で特徴的な無尾翼の姿を見つけた。
ミラージュもこちらの後ろを取ろうとしており、やがて姿が後方に消えていく。どうやら相対的な位置変化は僅かにミラージュ有利だった。
なのはは背後を取られる不利を悟り、左への旋回を僅かに緩め、機体を水平に戻そうと緩やかに右へ機体をロールさせる。
そんな単調な飛行の隙を見逃す筈はなく、ミラージュ2000Dが加速してF-4Eの背後に迫る。
軽量な機体に比較的ハイパワーなエンジンの組み合わせを活かし、見る間に距離が詰まってくる。
「Warnin Warnin bandit's approaches back.」
だが、なのははレイジングハートの警告に併せて、徐々に水平に戻りつつある状態から一気に右ロール。
急激な右ロールを再開させ、1回転、もう一度左旋回、今度はハイGヨーヨー旋回にはいる。
ミラージュもなのはのF-4Eの背後に食いつこうと旋回に入るが、加速状態にあった状態では速度が乗りすぎていた。
F-4Eは上昇で速度を殺し、同時に旋回効率を稼ぐ。一気に形成逆転。
間髪入れずにオーラルトーンがコクピットで鳴り響く
《サイファー FOX2 FOX2!》
本来の赤外線誘導に加え、魔法誘導のサポートを受けたAAMは、回避しようとミラージュが放つフレアに惑わされず、
M53型エンジンに吸い込まれてゆく・・・
落ちてゆくミラージュを後ろにして、ピクシーから無線が入る。
《こちらもフィッシュベッドを始末した。中々にいい腕だったがな》
だが、安心はできない。
《イーグルアイ、残り1機はどうした?》
《現在交戦中だ》
フェイトはガルムの2機だけでは攻撃隊を護りきれない可能性を考え、周囲の制圧を行いながらも、
ルー・ガルー隊をカバーできる位置を占めるよう注意を払っていた。
ベルカ軍F-15Eストライクイーグルはフェイトの接近を無視して2次攻撃隊に接近を試みようとしていた。
どうやら対空兵装は装備していなかったらしく、ガンアタックを仕掛けるつもりらしい。
フェイトがレーダーで捉えても回避行動を取るそぶりも見せない。
《何故、退かない?》
フェイトは思わず、無線で問いかけた。
《地上の仲間を死なせる訳にはいかないんでな》
《こちらも味方を死なせる訳にはいかない》
《私を殺す理由を聞かされたのはこれが初めてだよ》
ベルカパイロットの苦笑ともとれる声を聞いてフェイトはさすがに驚いた。このパイロット、怖くないのか?
その僅かな時間にもF-15Eがルー・ガルーの編隊に迫る。
F-15Eの機銃が瞬き、ルー・ガルーの3番機に風穴を開ける。3番機はどうにか編隊を維持したが、
同僚の機の破片をエンジンに吸い込んだ4番機がバランスを崩して編隊を離脱する
《ルー・ガルー4、エンジンが何か吸い込んだ。畜生!編隊維持不能、離脱します!》
フェイトは咄嗟に怒りに任せて操縦スティックにあるボタンを押し込む。
F-15Eは回避行動など無駄とばかりにフェイトを無視して更にルー・ガルー隊に機銃で攻撃を加えようとしていた。
3番機は何時墜落するか判らない・・・
大柄なストライクイーグルの機体がフェイトの魔法誘導のミサイルに引き裂かれ、
空に白いふわふわした花が咲く。ミサイルにかけた非殺傷設定は効果的に作動したようでパイロットは無事脱出したらしい。
《投下!投下!》
3機のF-1から爆弾が投下され、守備隊の上を爆発が覆う。
《よし、ルー・ガルー隊、引き揚げるぞ!》
第2目標への攻撃を成功させたナタリー達3機は全力で離脱しようとしていた。
《作戦は最終段階 敵迎撃部隊があれば排除しつつ、後退せよ》
あとは周辺空域の警戒をしつつ退路を確保するだけだ
既にリカントロープ隊はヴィソフニル隊と合流して後退している。
《作戦成功だ。これで連合軍の輸送ルートも確保できる よくやった諸君》
《マジシャン隊、ルー・ガルーの3番機、4番機が万全ではない。護衛をお願いできるかしら》
先ほどの戦闘の経緯もあり、ナタリーの依頼に対してフェイトが機体をぴったりと傍に寄せた。
《さっきは援護しきれなくて・・・その、御免なさい・・・》
《気にしなくていいよネメシス、悪運強くまだ生きてる。 つか、翼がもげそうなんですけど・・・ベイルアウトしてイイ?》
フェイトはルー・ガルー3番機からの返信で大いに救われた気になった。
F-1の主翼には着弾痕が走り、亀裂も見える。
《新しい機体のリース料、給料から差っ引かれるよ?》
《悪運はきょうも味方だったなルー・ガルー3》
《翼なしの帰還はお断りするわ、 ぞっとしない》
《なんだ。俺と同じように片羽の狼男を名乗ってくれると思っていたんだがな》
管理局の魔導師5人はピクシーのもう一つの異名、「片羽の妖精」の由来をこの時
初めて耳にしたのだった。
地上では男は報告を受けた時には既に異変には気づいていた
「隊長 橋の辺りに煙が!第2守備隊が撃破された模様」
「たったあれだけの戦闘機になにをやっている!」
毒づく前にするべきことがあった。即ち味方残存兵力の救援。
《こんなところで足止めくってられん 全力で突っ走るぞ!各員 荷物に被害を出すなよ ルクス輸送部隊 救援に向かうぞ!》
待機命令など糞喰らえだ。ウスティオ軍機は悠々と撤退しているではないか。
それにしても瀕死のウスティオにここまでやれる航空戦力があったとはな・・・・
だが、我等ベルカ軍には何人ものエースがいる。その剣の前ではウスティオの剣なぞ脆い。
最終更新:2007年09月15日 20:16