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ある日の翠屋での事。

「--じゃあコレ、君達に返すよ」
「ああ、感謝する。」
クロノは、小さめのアタッシェケースを草加に手渡す。
そのアタッシェケースには、銀色のプレートが取り付けられていた。そこに書かれた文字は、『SMART BRAIN』。

「君達管理局には本当に感謝してるよ。父さんが送ってくれた大切なベルトを取り替えしてくれて。」
「いいんだ。気にしないでくれ。それは君達が持っているべきだからね」
感謝の意を表する草加。
こんないい人に感謝されれば、クロノも何となく幸せな気分になる。

「じゃあ俺はこれで失礼させてもらうよ」
「(……これで、俺の持つベルトは2本……。さて、どうするか……)」
草加はクロノに背を向けた途端に、不敵な笑みを浮かべて歩き出した。


Extra ACT.04「デルタの力」


ビストロ ラ サル。

「なんだよ、真理の奴。あれくらいで怒りやがって……」
言いながらサルの扉を開ける巧。
どうやら巧は真理と喧嘩をしてしまったらしい。まぁいつもの事と言えばいつもの事だが。
こうなってしまってはいつも通りに家で食事するのは気まずい。巧は不機嫌な表情のままに、サルの椅子に腰掛けた。

「なんでもいい。冷たい料理を頼む」
「…………。」
「…………?」
しばらく流れる沈黙。店員は黙って巧の顔を見詰めている。
気色悪い奴だな。ただでさえイライラしていた巧は、そう思いながらもう一度店員に呼びかける。
「……おい、聞いてんのか?冷たい料理を頼む」
「聞こえている。そう何度も言うな……」
サルの店員--まぁ解るだろうが天道だ--は冷静に巧の目を見る。
「…………。」
「冷たい料理か……いいだろう。少し待っていろ」
天道はそう言い残し、厨房へと入っていった。


数分後。
「できたぞ。マグロの目玉が飛び出す程美味いマグロの野菜添えだ」
巧は、しかめっ面のままでテーブルに皿をおく天道の顔を見る。
これまた珍しい料理を出してくれたな。巧はこんな料理を見た事が無い。
「どうした?食べてみろ」
巧は愛想の無い声で「ああ」と返事を返すと、天道からゆっくりと視線を外し、マグロ料理を食べ始める。

巧はマグロを一口、口に運んだ。
その瞬間、巧の味覚に衝撃が走った。
「美味いか?」
「……あぁ」
巧はボソッと返事を返し、再び黙々と料理を食べ始めた。
いや、黙々とというよりもガツガツと……の方が適している。それくらいの勢いで、巧は天道の作った料理を平らげた。

「おい、アンタ。」
「アンタじゃない。俺様だ」
完食した巧は、自分にとっては至って普通な呼び方で天道を呼び止める。
天道もまた、自分にとっては至って普通な返事を返す。しかも窓の外にサンサンと輝く太陽を指差しながら。
「おばあちゃんが言っていた……」
そして、天道の口から発せられるおばあちゃん語録。以下、いつも通りの「天の道を往く」男の事故紹介である。
「あーもう、長いんだよ自己紹介が!名前だけ名乗りゃいいだろ」
独特のゆっくり口調で名乗る天道に、巧は尤もらしいツッコミを入れる。

「で、何だ。飯が美味過ぎたから礼でもしたいというのか?」
「そんなんじゃない。やっぱ何でもない。気にすんな」
「そうか。」
巧が他人を褒める事なんて滅多に無い。そんな巧が、珍しく味を褒めようと思ったのだが、やっぱり止めた。
天道は天道で、猫舌の客が喜びそうでかつ、そこらではあまり見ない料理を作ったつもりだ。
以前「料理で感情を操れる」と言っていた男がいたが、その男に料理対決で勝利した天道だ。
言うなれば、巧の感情を、「喜怒哀楽」で表す所の「怒」から「喜」の感情に変えたという事だろう。
まぁそんな天道も、巧からすればただの絡みにくい店員程度の認識しかないが。


同刻、バークローバー。

「本当にあの葦原とかいう人物に木場勇治の抹殺が勤まるんですか?」
カクテルを飲みながら、嫌味な口調で喋り出す琢磨。
「貴方は彼が信用できないの?」
「当たり前でしょう。あんな入ったばかりの新人に……ッ!」
バーテンダーの冴子に向かって冷静に喋っていた琢磨だが、突然言葉がつまる。
琢磨の目の前に立っているのは、琢磨が最も恐れる男……北崎だ。
「……き……北崎さん……」
「どうしたの、琢磨くん?話を続けてよ」
「い、いえ……あ、あんな新人に、私達でもてこずった木場勇治をた、倒せるんでしょうか?」
「ふぅん?」
ニヤニヤと琢磨を見詰める北崎。その笑みに、琢磨も何故か緊張し、声が震えてしまうのを感じた。
「でも琢磨くんさぁ……大口叩いた癖にベルトを取り返せなかったらしいね?」
「そ、それは……あ、あれはその……た、たたたまたま、邪魔が入っただけです……!」
「へぇ?そうなんだ?」
自分の頬を拳でグリグリする北崎に、琢磨は本格的に震え出した。
ただでさえ北崎に灰にされそうだというのに、デルタを思い出せば震えが止まらないのだ。
「琢磨くん……怯えてるの?」
「もしかして、デルタにやられて怖くなっちゃったんだ?」
冴子と北崎に言及された琢磨は、半ばキレ気味に「違いますッ!!」と答えた。
もう今にも泣き出しそうな顔だ。

「まぁいいや……ところでさ、そのデルタのベルトっていうの……僕も欲しいなぁ」
「そうね……なら奪えばいいのよ?あいつらから……」
無邪気に微笑む北崎に、冴子は「クスクス」と不敵な笑みを浮かべるのだった。


スマートブレイン本社。

「社長、デルタギアの現所有者の情報が入りました。」
「ほう……今は誰が?」
デスクに座りながら、社員に問い掛ける村上。
「はい、草加雅人です。」
「ふむ……草加雅人……また彼が……」
「また……ですか?」
「……貴様の知る事では無い。下がれ!」
村上がキツい口調で社員に退室を命じると、社員は「はっ!」と返事を返し、社長室を後にした。

「……草加雅人。管理局の連中とも繋がっていたか……」
パソコンのキーボードを叩きながら独り言を言う村上。
画面に映っているのは、白い服に茶髪のツインテール少女と、黒いマントに金髪ツインテール少女だ。
「時空管理局……こっちにも手を回しておいた方がいいかもしれませんね……」
パソコンに映った二人の少女の画像。その右端には、見慣れた「ZECT」のマークが表示されていた。


その日、草加はサイドバッシャーを駆り、海鳴市内を疾走していた。
「……ッ!?なんだコレは!?」
しかし、突然空から降ってきたネットのような物に阻まれ、サイドバッシャーはその場で停止する。
「草加雅人……デルタのベルトと、ついでにカイザのベルトを頂きますよ?」
「それと、貴様の命もな」
現れたのは二人の男。男達はすぐにオルフェノクへと姿を変えた。
北崎配下の、オクラオルフェノクとライオンオルフェノクだ。
「オルフェノクか……面白い。やってみろよ……?」
言いながら、サイドカー『ニーラーシャトル』に積んでいたアタッシェケースから、一本のベルトを取り出す。

『Standing by(スタンディングバイ)』
「変身!」
『Complete(コンプリート)』
草加の体を黄色く輝く閃光が包み、仮面ライダーカイザへと変身完了。

「フン!」
カイザはすぐにライオンオルフェノクに接近し、思いパンチを叩き込む。

何の事は無い。こいつもただのオルフェノクだ。パンチを打てば当たり、キックを放てば当たる。
ライオンオルフェノクはカイザの連続攻撃に押され、追い詰められてゆく。
その時だった。
「な……ッ!?」
突然飛んできたネットに、動きを封じられるカイザ。
オクラオルフェノクの存在を……しかもこいつがネットを使えるという事を完全に忘れていた。
二人のオルフェノクは待ってましたとばかりにカイザに一斉攻撃をしかける。

「くそ……ッ!こいつら!」
だがカイザも黙ってやられる訳には行かない。
すぐにネットを振り払い、オクラオルフェノクを殴りつける!
「フン!」
カイザに殴られたオクラオルフェノクは数メートル吹っ飛び、さらにそこに連続でパンチやキックを叩き込む。

カイザはベルトに装着されたカイザブレイガンを取り外し、ベルトからミッションメモリーを引き抜く。
「……クッ!?」
だがそう草加の思い通りには行かない。
ミッションメモリーをカイザブレイガンにスロットインしようとした瞬間、ライオンオルフェノクの攻撃を受けてしまったのだ。
「貴様ぁ……!」
攻撃の衝撃でミッションメモリーとカイザブレイガンを弾き飛ばされてしまう。
どうやらこいつらはわざと草加が一人の所を二人がかりで襲ったらしい。
いかに戦闘能力の高い草加でも、北崎配下のオルフェノク二人が相手ではどうしても苦戦してしまう。
「これでカイザはベルトの力を発揮できないはずだ……!」
ライオンオルフェノクとオクラオルフェノクは再びカイザへと攻撃を開始する。
だが例え武器が無くても、草加は草加だ。受ける攻撃の半分以上をさばいている。

やがてカイザは、敵にできた一瞬のスキをついて攻撃を再開。今度は二体のオルフェノクに同時に攻撃を仕掛ける。
キック、パンチと多彩な技を仕掛けるが……
「ん……?」
なんと、あろうことかオクラオルフェノクはカイザが落としたメモリーとブレイガンの近くに転がり、それらを回収。
『Ready』
そしてカイザブレイガンから伸びる黄色いフォトンの刃。

「やれやれ……ベルトの所有者以外でもブレイガンを使えるのか……」
本当に呆れたような声で言うカイザ。
だがベルトが無い以上、エクシードチャージは使えない。それがせめてもの救いか。
「はぁッ!」
「チッ!?」
オクラオルフェノクが振り下ろしたブレイガンを紙一重で回避するカイザ。
オクラオルフェノクはブレイガンをまるで玩具のように振り回す。どうやらブレイガンという武器の性質を理解していないらしい。
なんとか攻撃は回避するとして、問題はどうやってブレイガンを取り返すかだ。
「さて……どうしたものかな……」

刹那、オクラオルフェノクの手が爆発した。
「おい、どうした草加!随分と遊んでるみたいじゃねぇか!」
「……はぁ……本当にいいタイミングで現れるな?キミは。」
停車させたオートバジンの前に立ち、フォンブラスターを構える巧。いつかの仕返しとばかりに言う巧に、草加はため息をついた。

『Standing by(スタンディングバイ)』
巧はファイズフォンに変身コード『555』を入力。聞き慣れた変身待機音が鳴り響く。
「変身ッ!!」
そしてファイズフォンを変身ベルト『ファイズドライバー』に突き立て、押し倒す。
『Complete(コンプリート)』
巧の体は、人工衛星『イーグルサット』から受信したファイズスーツに包まれ、赤い閃光に包まれた。


「はぁッ!!」
ファイズはオートバジンの左ハンドルにミッションメモリーをスロットイン。
引き抜いたファイズエッジでオクラオルフェノクに切り掛かる。
「くそッ……!?」
「おらぁあああッ!!」
オクラオルフェノクは咄嗟にブレイガンで受けるが、ファイズはすぐに二撃目の体制に入り、そのまま相手の腕にエッジをたたき付けた。
「うわっ!?」
「こいつは返して貰うぜ」
ファイズエッジによる衝撃に、ブレイガンを手放してしまったオルフェノクを前蹴りで蹴り飛ばすファイズ。

「ほらよ」
「……ッ!?」
ファイズにブレイガンを投げられたカイザは、咄嗟にブレイガンの柄を掴む。
「ナイスキャッチだ」
刃を形成したままのブレイガンを投げるとは、巧もなかなか思い切った事をする。
まぁ草加ならキャッチできるだろうし、できなかったとしてもそれはそれでいいざまあ見ろだ。
オルフェノクから取り替えしてやっただけ感謝して欲しい。

二人のライダーは、光り輝く刃を振るい、オルフェノクへと反撃を開始した。
「フン!」
「ハァッ!!」
ブレイガンはライオンオルフェノク、ファイズエッジはオクラオルフェノクの体を傷付けていく。
オルフェノクもなんとか凌いではいるが、いつまで持つか。

そんな攻防戦が何分続いただろうか。ファイズは立ち止まり、Enterキーを押すためにベルトのファイズフォンを開く。
「うわっ……何だコレ!?」
だが、突然のネット攻撃にファイズの動きは止められ、そのままオクラオルフェノクの攻撃を受けてしまう。
「気をつけろ。そいつはネットで相手の動きを封じるようだ」
「おまっ……んなこと先に言えッ!」
嫌味な口調で、見れば解るレベルの不要な解説をする草加に、巧は少しばかり苛立ちを感じた。

「うわっ……!?」
そしてオクラオルフェノクの重い一撃を受けたファイズは吹っ飛び、サイドバッシャーに激突。
同時にファイズのベルトも外れてしまう。
「クソ……いってぇな……ッ!?」
頭を横に振るい、目を擦る巧。一瞬、手の平が数㎝だけ灰になっているように見えてしまったのだ。
「……まさかな」
ふと、巧は自分の横に落ちていたファイズギアボックスよりも少し小さめのアタッシェケースの存在に気付いた。
「こいつはまさか……」

「乾……!?」
ライオンオルフェノクと戦闘中だったカイザは、吹っ飛ばされた乾が何やら不審な行動をとっている事に気付いた。

巧はオクラオルフェノクを見据え、デルタドライバーを腰に装着する。
巧にはデルタドライバーを使いこなす自信があった。それは巧自信が1番分かっていることだ。

デルタフォンを顔に近づけ、音声コードを入力する。
「変身!」
『Standing by(スタンディングバイ)』
鳴り響く変身待機音。巧は、勢いよくデルタフォンをデルタドライバーに差し込んだ。
『Complete(コンプリート)!!』

『デルタ』
刹那、青白いフォトンストリームは巧の全身を包んだ。
黒地に白いトリニティストリーム、そして赤い瞳が特徴的なライダー、デルタだ。
「…………」
ゆっくりとオクラオルフェノクへと歩を進めるデルタ。
オクラオルフェノクは再びネットを発するが……
「ファイア!」
『Burst Mode(バーストモード)』
そのネットもデルタに届く事は無く、デルタムーバーから放たれた閃光に焼き尽くされる。
デルタはそのままオクラオルフェノクに接近、手首を「ぶらっ」とスナップさせる。
「……ぐっ!?」
次の瞬間、オクラオルフェノクの体は後方へと殴り飛ばされていた。
だがそれで終わる事は無く、デルタはオクラオルフェノクを何度も何度も殴り付ける。
そして、トドメと言わんばかりに0距離で残り弾数の全てをオクラオルフェノクに撃ち込んだ。

「これで終わらせてやる」
次にデルタは、赤い炎に包まれるオクラオルフェノクから視線を外し、ライオンオルフェノクを睨んだ。
「チェック!」
『Exceed Charge(エクシードチャージ)』
再び音声入力。ライオンオルフェノクはデルタムーバーから放たれた紫の光弾に拘束される。
カイザも、そのタイミングを見逃しはしない。
ベルトから取り外したデジタル双眼鏡型ポインティングマーカーデバイス『カイザポインター』を右足にセット。
『Exceed Charge(エクシードチャージ)』
ライオンオルフェノクは、二方向からの円錐と三角錐に身動きを失っていた。

巧はデルタに変身するのは初めてだが、あとはだいたいわかる。いつも通り、クリムゾンスマッシュと同じ要領でやればいいのだ。
デルタは一気に飛び上がり、三角錐に向かって急降下。カイザも同時に円錐にキックをかます。
「やぁああああああッ!!」

次の瞬間には、ライオンオルフェノクの体に突き立てられた円錐と三角錐は
ライオンオルフェノクの体に突き刺さるという形で消滅していた。
変わりにさっきとは逆の位地にクロスするように着地したデルタとカイザ。そして浮かび上がる「Χ」と「Δ」の紋章。
それからライオンオルフェノクが赤と青の炎に焼かれ、灰化・消滅するまでにそれほど時間を有しなかった。


「おい草加!返すぜ、コレ」
「……当たり前だ。これは俺達流星塾生の物だからな?」
言いながら放り投げられたデルタギアをキャッチする草加。
草加はデルタギアをすぐにケースにしまい、再びニーラーシャトルに詰め込んだ。
こうして、巧と草加の二人は自宅へと帰る事に。

ただ巧には一つだけ気掛かりな事があった。
バイクに乗りながら、自分の右手の平を見つめる巧。
「(俺は……)」
少し考えた後、巧は再び首を横にふった。

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最終更新:2007年09月24日 09:16