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薄暗い部屋で、二人の男の話し声が聞こえる。
「例の学校に潜むワームの駆逐が終了しました。」
「……そう……か。」
身長の高い、サングラスをかけた男が、座ったままほとんど動かない男に報告する。
「ですが、まだ残ったワーム残党が数匹いるようです。」
「…………」
「残ったワームは……ガタックに殲滅させます。」
「……ほぅ……」
座ったままの男は、サングラスをかけた男……三島の言葉に少し反応した。
やがて、ゆっくりと椅子を回転させ、男は言った。
「君は鏡の中の怪物を……どう思うかね……?」
「……ミラーモンスターですか?」
質問する三島。男はゆっくりと立ち上がり、ブラインドの隙間から窓の外を見ている。怪しげな笑みだ。
「君は……『鋼の猛牛』を知っているかね……?」
「……は?」
「鋼の猛牛は……全てを焦土と化す、弾丸の嵐を放つ……。
三島は、片手の指でサングラスをくいっと押し上げる。
「……猛牛は全ての敵を仕留めるまで……弾丸を撃ち続ける。」
「……あの男を使うつもりですか……?」
「……不服かね……?」
「……いえ……」
三島はどことなく不服そうな顔で返事を返した。やがて、三島はゆっくりと退室した。
その部屋の鏡には、ベージュ色のロングコートを着た男が映り込んでいた……。


Extra ACT.05「その男ゾルダ」


ここは北岡法律事務所。
黒を白にするスーパー弁護士『北岡秀一』の職場であり、家でもある。
この事務所の北岡のデスク前では、今日もいつも通りの平和なコントが繰り広げられていた。
「吾郎ちゃん、また餃子?」
「はい……美味く無いですか……?」
椅子に座りながら、非常に美味しそうな餃子を食べている北岡。
「いや、美味いんだけどさ……こう毎日餃子だと飽きてくるんだよね……」
「……すいません。」
この北岡に謝罪する男。名を『由良吾郎』という。北岡の秘書を勤めているのだ。
そうこうしていると、事務所の電話がけたたましい音をたてて鳴り始めた。
「誰だよこんな飯時に……吾郎ちゃん!」
「はい。」
プルルルルッと鳴る電話から、受話機を持ち上げる吾郎。
「はい。北岡弁護士事務所です」
『仕事だ。』
「………!!」
電話の相手の声に、吾郎の表情が変わる。声でわかる。相手はZECTの幹部である三島だ。
「三島さん……またワームですか……?」
『そうだ。早急に現場へ行け。』
言うだけ言うと、「ブツッ」という音をたてて、電話は切られた。

「先生……」
「何?また仕事?」
「はい。またワームの殲滅任務です」
「あぁ、そう。」
立ち上がり、外出の準備を始める北岡。
「行くんですか……先生?」
「もちろん。だってワーム一匹倒せば120万でしょ?行かない訳無いじゃない」
吾郎は、静かにため息をついた。北岡とは、こういう男なのだ。


数時間後。聖祥大学附属中学前。
北岡は、吾郎が運転する車から降りた。そこで待っていたのは、スーツ姿の男。
「へぇ?今日はお前が一緒に戦ってくれるんだ?」
「はい。今回は俺が北岡さんのフォローを任せられてますから」
「あぁ、そう。ま、何でもいいけど、あんまり俺の邪魔はするなよ?」
「邪魔?」
男-仮面ライダーガタックこと加賀美新-は「何の事だ?」という表情をする。一緒にワームを倒すのに邪魔って何だよ?という心境だろう。
……と言うのも、北岡は報酬が目当てで戦っている。余り加賀美にワームを倒され過ぎて報酬が減ってしまうのも困るのだ。
「いや、こっちの話。……じゃあさっさと済まそうか」
ポケットから緑の長方形型のケースのような物-カードデッキ-を取り出す北岡。
加賀美も、「はい」と返事を返しながら、どこからかガタックゼクターを取り出す。
北岡は車の窓ガラスにカードデッキをかざし、加賀美はガタックゼクターを構える。
「「変身!!」」
北岡と加賀美の腰にいつの間にか装着されていたベルト。二人は同じような動きで、ベルトにデッキ・ゼクターをそれぞれ装填した。
車の窓ガラスは光を反射しながら北岡の姿を緑のライダーへと変えた。
その名はゾルダ。機械的な外観が特徴的なライダーだ。
『Cast off(キャストオフ)』
同時に加賀美も、アーマーをパージ。その姿は青いクワガタムシを彷彿とさせるフォルム。ガタックへと変身完了。
ゾルダはガタックから突然飛んできたアーマーに少しびっくりした。だがそんなことはもちろん秘密だ!


同刻、聖祥大学附属中学付近。
コンクリートでできた階段に座り込む影山。その後ろから歩いてくる矢車。そして浅倉。
「…………」
「どうした、相棒?」
影山が見つめているのは、例の少女が捨てたお守り。粉々だ。
ここ最近、ずっと影山の様子がおかしいのだ。それも、あの少女と出会ってから。
「お前……まだそんなもん持ってたのか……」
「……うん。なんか、気になるんだ……あの娘が……」
「……はぁ……」
影山の目を見た矢車は、大きなため息をついた。そして。
次の瞬間。矢車は影山を蹴り飛ばした。重いキックが入った影山は、「うわッ!!」と大声を上げて、地面に転がる。
「……いいよなぁ……お前は。そんなモンがまだあってよ……」
「兄貴……」
「俺なんてそんなもん、とっくの昔に失っちまった……」
矢車を見上げる影山。当の矢車は、「フッ」と笑うと、そのままゆっくりと歩き始める。影山は、そんな矢車の後ろ姿を見送る事しかできない……。
矢車がいなくなり、浅倉と二人きりになった影山は。ふと、浅倉の様子がおかしい事に気付く。
「どうした、浅倉……?」
「…………」
笑ってるのかそうでないのか解らないような、微妙な顔でキョロキョロと周囲を見回す浅倉。

「(……モンスターか……?)」
浅倉は尚も影山を無視し、何かを探している。それもそのはずだろう。
浅倉には『あの音』が聞こえていたのだ。
それはモンスターが現れた時にのみ聞こえる音。カードデッキの所有者なら、モンスターの出現を金属音により察知できるのだ。
「おい、兄弟……」
「……何だよ?」
「俺は行かせて貰う」
突然話し掛けられた影山は、怪訝そうに返す。しかし言うが早いか、既に浅倉はニヤニヤと笑いながら歩き出していた。


「喰らえ!」
ワーム-サリス-に向けてギガランチャーを放つゾルダ。ギガランチャーが火を吹く度に、サリスの数は減っていく。
元々ここには残党ワームしかいないために、数も十数匹程度しかいない。
「(これじゃあ全部倒しても2000万くらいかな……)」
そんな事を考えながら、ギガランチャーの引き金を引いてゆく。
ガタックも、ダブルカリバーでワームと戦ってはいるが、ほとんどトドメだけゾルダに持って行かれてしまう。
と、いうよりも全てゾルダが倒している。ガタックがある程度ダメージを与えれば、後はゾルダがギガランチャーで吹っ飛ばすからだ。
ワームの数も減ってきた所で、ガタックは戦いながらゾルダに言った。
「気をつけて下さい北岡さん!こいつらはいざとなれば脱皮します!」
もしも脱皮されれば、クロックアップが使えないゾルダは圧倒的に不利だ。だが、ゾルダからは意外な返事が帰ってくる。
「知ってるよ、そんなこと」
「へ?」
「だってその時の為にお前がいるんだろ?」
「は……はぁ。」
ガタックは、「確かにそうだな」みたいな声色で返事を返す。ってちょっと待て。それはつまり成虫ワームは全てガタックに任せるって事か。
一瞬そんなことを考えたが、すぐに頭を振ってその考えを吹き飛ばす。ゾルダだってライダーだ。そんな無責任な筈は無い筈だ。
「あ、それから加賀美ー!」
「はい、何ですか!?」
「俺は成虫ワームとまで戦うつもりは無いから。脱皮した奴は全部お前に任せる」
「は……はぁッ!?」
やはり予想を裏切らなかったゾルダの答え。ガタックはダブルカリバーをワームに振り下ろしながら「何だと!?」的な返事を返す。
ちなみに今ガタックに斬られたワームは爆発した。これで、北岡の報酬は1匹分減る事になる。
「だって割に合わないんだよね。サナギ倒しても成虫倒しても報酬は一緒なんだから、わざわざ危険な奴と戦う必要無いじゃない?」
「そ、そんな……!アンタそれでもライダーかよ!?」
「そうだけど?」
飄々とした態度でギガランチャーを放ち続けるゾルダ。
「あぁもうっ……何でこんな奴を雇ったんだよ!」
「知らないよそんなことは。こっちが聞きたいくらいだね」
愚痴るガタックと、サリスを倒す事に専念するゾルダ。この程度の残党ワームならばガタック一人でも事足りたはずだ。
それなのにゾルダが選ばれた理由が、加賀美には解らなかった。


一人になった影山は、中学校の敷地内で黄昏れていた。あの少女はどうしているのか。それがどうしても気になるのだ。
しばらくトボトボと歩き続けた影山は、力が抜けたように崩れ落ち、しゃがみ込む。
お守りを見詰めながら、俯いて座る影山。すると、後ろから何者かが接近してくる。
「粉々に砕けてしまったお兄さん……」
「…………?」
ゆっくりと後ろを振り返る影山。そこにいるのは、二人の学生。片方は以前自分が助けた少女……そして、ずっと気になっていたあの少女だ。
そしてそれと一緒にいるのは野球部の青田君-影山とは面識が無い為、こちらは敢えて言及しないが-だ。
「お兄さんも、私たちの仲間になりなよ。そしてまた明日から頑張ろうよ」
「…………」
そう言い、影山に微笑みかける少女。少し前までは考えられなかったような、楽しそうな笑顔だ。
それを見てると、影山からも笑いが込み上げてくる。全く以て馬鹿馬鹿しい話だ。
折角自分が救った命も、既に人間では無くなっていのだから。やはり闇の住人では光は掴め無い……ということか。
兄貴や浅倉の言う通りだ。俺達のようなろくでなしが光を掴もうとしても、痛いしっぺ返しを喰らうだけ……。
影山は、ようやくそれに気付いたのか、「フッ」と笑う。自分が馬鹿だった。そう思い、立ち上がろうとした、その刹那。
大きな声が、この空間に響き渡る。それは影山にとって最も安心できる声。
「羨ましいぜ相棒ぉぉぉッ!!!」
物陰から軽快なステップで現れたのは、影山の兄……矢車だ。影山も「兄貴!」と嬉しそうに立ち上がる。
ようやく二人揃った地獄兄弟。さっき蹴り飛ばされた事も忘れたかのように喜ぶ影山。
矢車は、少女達を横目で睨み付けながら言った。
「俺も是非……励ましてもらいたい」
そして、二人の元へと跳んで来る二つのゼクター-ホッパーゼクター-。
二人はそれを掴み、ベルトのバックルへと装填。
「……変身!」
「……変身……」
『Change Punch hopper(チェンジパンチホッパー)!!』
『Change Kick hopper(チェンジキックホッパー)!!』
次の瞬間。二人の姿は、緑と黒のダブルホッパーへと変わっていた。


「ちょっと加賀美、邪魔するんなら帰れよ」
「それはこっちのセリフだ!!」
同じ敵と戦いながらも、価値観の違いに憤りを感じるガタック・ゾルダコンビ。
そうこうしているうちに、一匹のワームが脱皮を始めた。赤く変色したワームの体は、ドロドロと変態してゆく。
やがて、脱皮が終わる。その姿は、白いクモのような形をしたワーム……『アラクネアワーム ニグリティア』だ。
まだサリスは数匹残っているにも関わらず、成虫ワームが現れた。さて……こんな時、ゾルダが取る行動とは……?

「悪い、加賀美。後はお前に任せた!」
もちろん北岡秀一という男の辞書に、本気で謝罪するという項目は無い。口だけの言葉だ。
「ちょ……!?まだサナギは残ってますよ!?」
「ホラ、欲の張りすぎは元も子も無くすって言うだろ?」
またしても心にも無いことを言うゾルダ。とにかく早くこの場所から離れたい。というより離れたい理由があるのだが。
「……もういい!俺一人で戦います!!」
フンフンと鼻息を荒立てながら残ったサリスを斬り裂き、爆発させるガタック。

そんなガタックを見届けたゾルダ……いや、北岡は、歩きながら人間の姿に戻る。そして、ガタックやワーム達から離れながら、考えていた。
「(とりあえず14匹は倒したから1680万は貰えるか……)」
この期に及んでまだ金の話か。単純な掛け算を計算しながら、角を曲がる。そうして、ガタックからは死角になる位置入った北岡。
「さて……さっきからうるさいんだよ。」
ガラスを睨む北岡。その中にいるのは、レイヨウのような姿をした、二足歩行の怪人……いや、モンスター。
「俺がここに呼ばれた理由はこれか。」
一人で納得する。
そして北岡は、「これだからあの三島とか言う奴嫌いなんだよな……」などと愚痴を零しながら、左手でガラスにカードデッキをかざす。
そうすることで、再び現れるVバックル。次に北岡は、前に突き出した左手を戻しながら、右手をガッツポーズの様に構えた。
13RIDERS特有の変身ポーズだ。これをやらなければ変身できないのかと聞かれると、別にそういう訳でもない。
しかもわざわざ変身を解除して、もう一度ガラスの前で変身させる必要は無いんじゃないかと聞かれると、全く以てその通りだが、それは作者の趣味だ。
一人で変身させたかったのだ。
次の瞬間、再び北岡の姿はゾルダへと変わり、ガラスの中へと飛び込んでいた。

「おらぁッ!!」
「フン……!」
クモのような姿をした二体のワームと、格闘を繰り広げるパンチホッパーとキックホッパー。
パンチホッパーの相手は、赤と青の体色をした『アラクネアワーム ルボア』。さっきの少女に擬態したワームだ。
そして、キックホッパーと戦っているのは、黄色い体の『アラクネアワーム フラバス』だ。こちらは青田君に擬態していたワームだ。
パンチホッパーは相変わらずパンチのみ。キックホッパーはキックのみでワームに打撃を入れていく。
「(……こいつら、色が違うだけなのに……)」
パンチホッパー……というより影山は、「何が違うんだ」と心の中でぼやきながら、ワームを殴り付けた。

「どぉりゃああああッ!!!」
残ったサリスは3体。ガタックは、まず手近な1匹を斬りつける。それにより1匹は爆発。
残った2匹に向かって、ダブルカリバーを放り投げる。放り投げられたダブルカリバーは、ブーメランの様に美しい放物線を描き、ワームに直撃。
胸辺りを貫通する形で貫かれた2匹のワームは、見事に爆発。そしてガタックは帰ってきたダブルカリバーをキャッチ。
あとはニグリティアだけだ。

一方のミラーワールド。
ここは鏡の中の、もう一つの世界。校舎やグラウンド等、全てが現実世界と同じ物だ。ただ一つ違うのは、左右反転となっている事のみ。
ゾルダは、俊敏に走り回るモンスター-メガゼール-に翻弄されていた。
「(クソ、ちょこまかと!)」
メガゼールに向けて、何発もマグナバイザーからの弾丸を発射するも、的はちょこまかと逃げ回る為になかなか当たらない。
ちなみにミラーワールド内では、仮面ライダーは9分55秒間しか活動できない。
故にこの程度のモンスターに敗れる事はまず無いが、このままでは時間が切れてしまう。できればそれは避けたい所だ。
ゾルダはマグナバイザーのマガジン部を引き出し、ベルトから取り出した1枚のカードをベントイン。
『SHOOT VENT』
どこからか飛んで来た二門の大砲。それらはゾルダの両肩に装着され、メガゼールへと向けられた。
これもゾルダのシュートベントの一つ……『ギガキャノン』だ。マグナバイザーよりは破壊力と攻撃範囲が遥かに増えている。
「……フンッ!」
そして足を踏ん張り、ギガキャノンを発射するゾルダ。
一撃、二撃と発射する度に、校舎が崩壊されてゆく。凄まじい音を響かせながら、だんだんとメガゼールの逃げ場が減っていく。
状況は間違いなくゾルダの思惑通りに進んでいた。これだけ瓦礫だらけになってしまえば、あの欝陶しい動きも封じられると踏んだのだ。
ここはライダーも誰もいない空間。ゾルダは好き勝手に撃ちまくる。それによりメガゼールは自由な動きを封じられる。
そして。
『SHOOT VENT』
マグナバイザーに再び装填されるシュートベント。今度は、巨大な一門の大砲が飛来する。さっきの戦いでワーム相手に使っていたギガランチャーだ。
これでギガキャノン・ギガランチャー、計三門の大砲を装備したことになる。
「ハァッ!」
次の瞬間、三門の大砲は同時に火を吹いた。響く轟音。その衝撃はゾルダにも伝わる。
それらが全てが命中し、-命中してないのかもしれないが、三発まとめて爆発した為に確かめようが無い-メガゼールの姿は、跡形も無く消滅していた。

いつの間にかシュートベントにより出された大砲は消えていた。これでようやく帰れる。そう思い、来た道を戻ろうとした。
その時だった。

シャアアアアアアアッ!!!

「うわっ!?」
背後から聞こえるのは大蛇の鳴き声。そして背後から飛んで来るのは、大蛇の吐いた毒液だ。
咄嗟に回避したゾルダは、すぐに大蛇-ベノスネーカー-と、その近くにいるライダーを睨む。
「……浅倉ッ!?」
「……会いたかったぜ北岡ぁぁぁ!!!」
そこにいたライダー……王蛇は、嬉しそうに、大きな声でその名を呼んだ。
それはゾルダ……いや、北岡とは浅からぬ因縁を持った。言わば宿命の対決とでも言うべきか。
「ホント、どこにでも現れるよな……!」
「ハハハハハハァッ!!」
すぐにマグナバイザーを構え、王蛇へと連射するゾルダ。王蛇はそれをベノサーベルで弾き、急接近する。
そしてゾルダの眼前まで迫った王蛇は、力強くベノサーベルを振り下ろした!
「ッらぁ!!」
「ク……!」
咄嗟にマグナバイザーでベノサーベルを受け止めたゾルダ。両手でマグナバイザーを支えている。
「全く、しつこいんだよ……お前は!」
言いながらマグナバイザーでベノサーベルを弾き、今度は王蛇の胸あたりにマグナバイザーを密着。そのまま零距離で弾丸を連射する。


「クロックアップ!」
「クロックアップ……」
『『Clock Up(クロックアップ)』』
ルボアとフラバスが高速移動を開始。それに対応するために、ダブルホッパーはベルトのスラップスイッチを叩いた。
同時に周囲の時間は止まっているに等しい速度まで減速する。
パンチホッパーはクロックアップ空間の中、逃げようとするルボアを追撃する。殴って殴って殴りまくる。
キックホッパーも同じように、フラバスの体を蹴って蹴って蹴りまくる。ロー・ミドル・ハイと美しいコンビネーションキックを決めまくる。


「おりゃああああッ!!」
ガタックはニグリティアに飛び掛かり、そのままニグリティアの腰あたりに両足で組み付く。
そして組み付いた足を一気にひねる事で、ニグリティアは地面にたたき付けられる。
苦しそうにもがくニグリティア。だがまだ終わりでは無い。次にガタックは両足をニグリティアの左足に絡ませたのだ。
「ふんッ!!」
そして捩ったニグリティアの左足に両足を絡ませたまま、腕でも左足をロック。そのまま一気に力を入れる。
それによりニグリティアの左足は「ミシッ」と音をたてたような気がするが、ガタックにはお構いなしだ。
苦しむニグリティア。流石のワームでも関節をキメられれば痛みを感じるらしい。
しかし、ガタックになってからの加賀美が、何故プロレス技を多様するようになったかは定かでは無い……


「ハハッ……やっぱり戦いはいいよなぁ!」
ゾルダのマグナバイザーから連射される弾丸を走って避けながら笑う王蛇。
唯一のライバルと呼べる北岡と戦えているのだ。これほど浅倉を満たしてくれる物は他には無い。
「こっちはいい加減ウンザリなんだよ、お前にはさ……!」
もう本当に色んな意味でウンザリだ。ワーム→メガゼール→浅倉戦と立て続けは辛い。
何よりも時間が無い。このままではタイムアウトで体の粒子化が始まってしまう。
しかしそれは浅倉にとっても同じ事。そんな下らない理由で北岡に逃げられるのにも、もうウンザリだ。
そんなお互いの気持ちを知ってか知らずか、二人は同時にカードをベントインした。
それに反応し、二人のバイザーはそのカードの名称を告げる。
『UNITEVENT』
『FINALVENT』

気付けばゾルダの眼前には、北岡の契約モンスター『鋼の猛牛マグナギガ』が現れていた。
ゾルダよりも身長が高く、何よりもごてごてしている。それも全身に装着された火器のせいだ。
ゾルダは、マグナバイザーをマグナギガの背中に差し込んだ。

一方、王蛇の周囲にも3体のモンスターが集結する。『ベノスネーカー』『エビルダイバー』『メタルゲラス』の3体だ。
ユナイトベントの効果により、メタルゲラスを中心に、ベノスネーカーが、エビルダイバーが重なってゆく。
胴体はサイの体を持つメタルゲラスが形作り。首と尾は紫の大蛇が形作る。そしてエイの体を持つエビルダイバーは、翼のように背部に合体。
最後に、メタルゲラスの頭の装甲はベノスネーカーに装着される。
巨大な体。巨大な翼。そして蛇とサイを合わせたような不気味な頭部。その姿は、まさに怪獣とでも言うべきか。
その名は、『獣帝ジェノサイダー』。元々このミラーワールドに存在しないモンスターだけに、全モンスター中でもトップクラスのAPを持つ。

ゾルダの持つファイナルベント-エンドオブワールド-とジェノサイダーは同じ7000AP。これならばAPは対等という事になるが……?
そしてゾルダは、マグナギガに差し込んだ機召銃の引き金を引いた。
同時にマグナギガの全砲門が開く。両腕の重火器や、全身に装備されたレーザー・ミサイル・ガトリング、その他諸々がジェノサイダーを狙い撃つ。
凄まじい砲撃。それはまるでどこぞのフルオープンアタックガンダムのように、全身の火器を一斉発射するマグナギガ。
対するジェノサイダーは、エンドオブワールドから逃れようともせず、堂々と構え……
次の瞬間、ジェノサイダーは口から謎の光線を発射した。

『『Clock Over(クロックオーバー)』』
ダブルホッパーは、クロックアップ空間で戦う内にいつの間にかグラウンドへと移動していた。
そこにいるのは、さっきのクモワームに加えて、白いクモワームとガタックだ。
「……やるぞ……相棒」
矢車の言葉に、「うん……」と返す影山。二人は同時に、ベルトのゼクターレバーを立ち上げ、ライダージャンプの電子音と共に空中に跳び上がった。
「これで終わりだぁッ!!」
同時に、ガタックもダブルカリバーを重ね、ハサミ型に変形させる。そしてニグリティアの腹をダブルカリバーで挟み込み。
『Rider Cutting(ライダーカッティング)!!』
それに合わせるように、ダブルホッパーも空から。ゼクターレバーを押し倒しながら。ルボア・フラバスへと急降下した。
『Rider Punch(ライダーパンチ)!!』
『Rider Kick(ライダーキック)』

ジェノサイダーが放った怪光線と、マグナギガが放った射撃武器の嵐は、激しくぶつかり合う。
それにより眩ゆい光が周囲を。この空間を包む。凄まじい閃光に、校舎も、グラウンドも。全てが纏めて焼き尽くされる。

「「「…………!!」」」
ライダーパンチを受けたアラクネアワーム ルボア。ライダーキックを受けたアラクネアワーム フラバス。
そして、ライダーカッティングを受けたアラクネアワーム ニグリティアは、全身に稲妻の様な電撃を纏いながら、一カ所に集まる。
そして、電撃を帯びた3体の体は互いにぶつかり合い、まとめて爆発。四散した。

「あぁ……?」
閃光が晴れ、周囲を見渡す王蛇。
だが、そこには誰もいない。マグナギガはおろか、ゾルダも、北岡も。
こんな焦土と化した場所に隠れる場所があるとも思えない。しかし、北岡があの程度で死ぬとはとても思えない。つまり……
「……逃げたか……?」
呟く王蛇。気付けば王蛇の体も粒子化が始まっていた。そろそろ時間切れだ。王蛇は、舌を打ちながらミラーワールドを後にした。

こうして、この学校を巻き込んだ長い戦いにも全ての決着がついた。
ここにはもう、ワームもモンスターも存在しない。やっと平和な、普通の学校へと戻ったのだ。
加賀美は、学校から出てすぐ、一台の車を発見した。中に乗っているのは北岡と、吾郎。さっき北岡が乗って来た車だ。
「お前……帰ったんじゃなかったのか!?」
「今から帰るんだよ。」
加賀美の問いに冷静に返す北岡。どこか疲れている様子だ。
といっても、ライダーバトルを知らない加賀美には何故北岡が疲れているのかなど、見当もつかないだろうが……。
ため息をつく加賀美を残し、北岡を乗せた車はこの学校から立ち去ってゆく。もうこの学校には何も無い。
「さて……帰るかな……」
加賀美も、グッと背伸びをしながら、駐輪していたガタックエクステンダーの元へと歩き始めた。

「兄貴……!」
左腕を押さえながら、矢車に駆け寄る影山。ちらっと影山を見た矢車は、フッと笑う。いつも通り、元の地獄兄弟だ。
「行くぞ……相棒……」
「うん……って浅倉は?」
歩き始めた所で、一人足りない事に気付く影山。すると、矢車は立ち止まり、またしても後ろをちら見する。
そこにいるのは、紛れも無い浅倉だ。
「……浅倉!」
「あ゛……?」
近寄って来た影山に、いつも通りの不気味な笑みで笑う浅倉。その笑いを見た影山と矢車は、何故か安心した。
そして三人はまた、歩き始めた。

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最終更新:2007年11月02日 08:23