NANOHA COMBAT ZERO
第八話

《ヴァレーコントロールよりブレイズ、貴機の着陸を許可する》
既にシャマルを先頭に、フェイト、はやての順に着陸しており、シグナムが殿で上空警戒を努めていた。
円卓の掃除が終わったとはいえ、ベルカ軍の送り狼がいつ襲ってくるかわからない。
それを警戒してのことだった。
滑るように高度を下げたファルクラムは機種を軽く持ち上げ、柔らかくも鋭く大地を捉える。
《いい腕だブレイズ 誘導路3Gから17番エプロンへ、十分に注意しろよ》
《何をだ?》
《おまえさんの出した結果に、だ。》
《は?》
管制官はシグナムのどうにも鈍い反応にニヤニヤと笑いながら、答えた。
《何、 すぐに判るさ》
エプロンでは先に降りた同僚達が待っていた。
「おつかれさんや シグナム」
「はい、今日はさすがに疲れました」
そういいながらも疲労した様子を感じさせないあたりが、シグナムが周囲からとっつきにくいと思わせる。
はやて達は早々に装具を外して、パイロット用ミーティングルームに向かうが、基地内は普段と変わらない慌しさと忙しさに包まれていた。
一体パイロットが何を策謀しているというのだ? 秘密作戦か?
鋭い視線で周囲を詮索するシグナムに誰も気が付かないのか、マジシャン隊のデブリーフィングが行われた。
互いの戦いと飛び方についての討議が行われ、はやてが司令部に簡単な報告文書をさらりと書き上げた。
フォルダーに入れた報告書をうけとった事務員が部屋を出て行くと、はやてが抱える箱「りぃんはうす」の扉が開く。
「ふぅ、この世界は私には疲れるですね」
「ほな、ヴィータと一緒にクラウディアで仕事してよか? りぃんの大っ好きな書類仕事が沢山あるで~」
「うぅぅぅ、それはいやですぅ~」
はやてがかるくリィンをたしなめる。
「さて、食堂でも行こか・・・りぃんのご飯もとってくるからな」
「はやてちゃんと一緒にいられるのはいいけど不便ですねぇ~」


基地の食堂では大したものがあるわけではないが、それなりに量もメニューも揃っていた。
幸か不幸か、ヴァレー以外にまともに機能しているウスティオ軍の基地が無いので、補給網が単純化されすぎた。
結果、集中豪雨的にヴァレーに武器弾薬から食料・日用品までありとあらゆる物が続々と運び込まれている。
食事の質が良いと士気が上がるというのは確かのようである。

その賑やかな食堂へ向かう4人組が居住棟のピロティにさしかかったのを視界にとらえた男がカウントダウンを始めた。
「目標視認、距離40、射程内まであと5・・4・・3・・」
全員が男のカウントダウンに装備を再確認し、標的が迫るのを待った。
「今だ。かかれ!」

シグナムは周囲を囲まれて咄嗟に息をのんだ。
不意打ちを卑怯だとかいう前に脅威の性質が良く判らなかったのだ。
悪意の波動はまるで感じない。だが、自分を取り囲んでいるのはヴァレー基地の傭兵ども、
いや、正規軍の連中も、整備員も混じっている!?
「今日のヒーロー、いやヒロインは誰だ?」
「ブレイズに決まってる!」
「それっ!」
「!?  うはwwwちょっwwwwwおまwwwww」

文字通りバケツをひっくり返した水がシグナムを襲う。
シールドを展開しかけようとして、咄嗟にさすがにそれはまずいことに気が付いた。
状況判断としては、成すがままにされるのが最良・・・・

ざっば~~~~~ん~!

頭の先からつま先まで、ずぶ濡れになって呆然とするシグナムに更なる波状攻撃が加わった。
「グリューンは俺の獲物だって名前かいてあっただろうが!」
ざっば~~~~~ん~!

「オメーのファルクラムと俺のミラージュ交換しね?」
ざっば~~~~~ん~!

「コレは、奴らに落とされた仲間からの祝福だ!」
「無茶な空戦機動しやがって、整備する身にもなれ!」
ざっば~~~~~ん~! x2

ベルカ国外にもその名を響かせるグリューン隊のベルンハルド=シュミッドを仕留めたシグナムに対するなんとも手洗い祝福だった。
傭兵と正規軍、男と女、新人とベテラン、地上スタッフとパイロット。
立場を超えて同じ敵と戦う者同士の連帯感があった。
1対1の戦いしか自身に持ちべきものが無いと思っているシグナムは集団での戦友意識というものを深く考えたことはなかった。
都合、バケツで20杯近い量の水を頭から被せられても、
パイロットスーツがへばりつく気持ち悪さも、
この場で感じ取れる戦友意識の高揚感には代え難い。

顔にへばりつくピンクの髪を無造作に掻き揚げ、苦笑交じりの溜息を漏らす。
「貴様らの祝福には感謝する。こんどは夏にでも水浴びをしたいものだな」
「是非是非」
むへへへへ・・・・
男達の視線が一箇所に集まる。それはシグナムの特に立体的な造形部に集中していた。
滴れ落ちる雫を拭わずに襲撃者共を見回すシグナムの格好は無防備なエロティックさを漂わせていた。
4月の中旬とはいえ、山岳地帯にあるヴァレー基地の水は雪解け水を使っており普通ならかなり冷たい筈。
だが、シグナムは全身からしたたり落ちる水が温かいことに気が付いていた。
本物の悪意があるなら雪解け水をそのままぶっ掛けられたことだろう。
シグナムを取り囲んでいた者は良い物が見れたらしく、満足げな表情を浮かべて、ぞろぞろと去っていった。

この格好のままで食堂に行くわけにもいかないと思案していたところに、
はやてが予定変更を切り出した。
「さてさて、こないなったら、ご飯より先に風呂にしよか?」
「そうですね ・・・と、その前に。宜しいですか?主」
軽く済ませようとしたのに、シグナムの声の調子が急変したのを聞いてはやては首をすくめた。
「・・・それと、シャマルにテスタロッサもだ」
ずぶ濡れになっていないマジシャン隊の3人は少し小さくなりながら視線を交し合った。
<あちゃー、調子に乗りすぎた・・>

「いや、その・・・ね。シグナム。昔からこの世界ではパイロットを祝福する際には・・・」
「言い訳は聞きませんよ」
何のことはない。
3人ともバケツを抱えていたので、ドサクサ紛れに何をやっていたか、ごまかしようがなかったのである。



「クラウディア」はベルカの港アンファングに近い海底にその姿を隠した。
潜水艦などではないため、動き回らず海底に鎮座している。
停泊中につき大半の乗組員は比較的暇を持て余していた。
そんな暇な時でも相変わらず忙しいのは偉い人たちであり、今の「クラウディア」でいえばクロノ艦長と補佐役のヴィータである。
特にヴィータは忙しそうだった。
だが、
より多くの仕事を抱えるはずのクロノが涼しい顔で
今回の捜査に関する資料の分析や報告書を作成しているのを見ては、
さすがに愚痴ることも出来ずにいた。


「ったく、このデータは信用できるのかよ?」
「複数の情報源から同じ内容の連絡があります。 ヴィータ補佐官」
「で、オメーはこれをどう見る?」
口は悪いが的確にクラウディアのスタッフを指導する。
ヴィータの今の仕事はエイセスデバイスが見つかっていない状況では
情報統制下におかれたベルカの内情を探り、デバイスを保持していると思われる
軍人を調べ、その所在を突き止めるということだった。
また、ヴァレー基地で民間コンサルタントとして偽装している駐在所長が収集するウスティオ軍のもつ情報と、
「クラウディア」が収集する諸々の情報をつき合わせてはなのは達、前線メンバーに情勢分析も提供していた。
「はい、オーシア軍の介入は確実かと考えます。」
「いつぐらいにでてくるかな? 勘でもいいから言ってみろ」
「おそらくは1週間以内に・・・」
「まぁ、さすがにここまでの機動艦隊が出港準備していたら隠せねぇよな」
「おし、クロノ艦長にはオメーから報告するんだ。よくやったぞ。重要情報だぜ これは」
なかなかどうして、厳しいが部下を育てるのが上手い上司だ。
ヴィータは捜査スタッフの名無しさんを下がらせ、茶色い制服の上着を椅子に引っ掛けた。
売店までアイスを買いに行くのだが、さすがに味のバリエーションにも飽きてきた。
「アタシって、デスクワークより現場のほうが向いてんだよなぁ・・・」
ヴィータが愚痴るのは珍しいことではないが、地位が上がり職責が広がるにつれて、
あまりおおっぴらに発散できなくなった。
偉い人が不機嫌だったり愚痴っていたりするとそれだけで組織内のやる気が低下したり、人間関係がギクシャクする。

だが幸い、ヴィータにも待ち望んでいた現場仕事があった。
B7Rにてエイセスデバイス持ちと思われるベルカ空軍パイロットの機を撃墜したことで
これを捜索し、エイセスデバイスの破壊を確認するか回収する。
また、パイロットが負傷いればこれを救護し、可能であればロストロギア「V2」に関する情報を聞き出す。

捜査の総指揮をとるクロノから直々に捜索救難任務の権限をもぎ取ったのは我ながら上出来だヴィータは思っていた。


ヴィータの探し人でもあるベルンハルト=シュミッドは荒涼とした大地に座っていた。
その赤い大地をも圧倒する夜の蒼が全身に降り注ぐ。

上半身を預けた大岩から200メートル先には
黒く焼け焦げた愛機が無残な姿で横たわっていた。
機首から胴体にかけては意外なほど綺麗にのこったが、左右の翼はぐちゃぐちゃにつぶれて黒い塊としか表現がしようのない有様だ。
風に乗って運ばれてくる焼け焦げた臭いも徐々に収まった。


パワー不足だし、速度も出ないが、運動性は良くて気にいってたんだがな・・・・
適当に小石を払って寝転がり、これまでの出来事を振り返る。
そういえば開戦以来、こんな暇な時間をもつことは無かった。
シュミッドはそもそもパイロットどころか軍人にさえなる気もなかった。
故郷ズーデントールのハイスクール時代は名の通った不良で、恐喝や引ったくり、喧嘩と一通りの悪事には手を染めていた。
しかもたちの悪いことに咄嗟の判断だけは一流で、
一度も警察に引っ張られたことはなかったのが自慢だった。

だが、その日にシュミッドが喧嘩をしかけた相手が悪かった。
ただのサラリーマンにしか見えない三十絡みの男に手も足も出なかった。
ビルの薄汚れた壁に半身を預けながら男を睨つける。
「・・・あんた。強いな。」
「何、お前も周囲を巧みに使って、しかもいい動きだった。だが、所詮は喧嘩だな 戦いに甘さがあったよ」
「おっさん 何者だ?」
「ただのパイロットさ」
「地上でも強いパイロットなんてアリかよ・・」
「空も一緒だ。周囲の状況を冷静に見て、素早く判断する。それで大方勝負は決まるものだ」
「ふん。 ご丁寧な解説ありがとよ」
「その冷静に周囲を見る目・・案外お前は軍人に向いてるかもしれんな 小僧」
その後、警察に突き出され、なんとも後味の悪い喧嘩ではあったが、
シュミッドにとって得たものは大きかった。
このままではまともな将来を望めないとは判っていた。

会社勤めの両親のように規則正しい毎日を人生とするのは
彼の人生設計の中で最悪のものとして位置づけられていた。
だが、現実はこのままのロクでもない成績では工場での単純作業工員にでもなるしかない。
曰く世間で言うところのワーキングプアはもっと御免だ。
成績は良くないが咄嗟の判断が求められる仕事・・・・

こうして軍人を志望したのも愛国心からはかけ離れたごく個人的な打算によるものだった。
たまたま選抜試験で適性を見出され、軍人を志望したことを呪いたくなるほどキツい訓練を経て、何時の間にやらベルカのパイロット。
家を飛び出して軍に入り、ウィングマークをぶら下げて帰省した時の親父とオフクロの顔といったら・・・
ポケットに手を入れて中をまさぐろうとしたが、
シュミッドの指先が裂け目から「コンニチワ」をしていた。今まで気がつかなかったがパイロットスーツに大きな破れが走っていた。
「おいっ、畜生!マジかよ?」
いきなり俺をぶん殴りやがったクソ親父だが、それとこれとは別だ。
親父からもらった銀の指輪だった。
両目にエメラルドを配した梟の指輪・・・
戦闘機パイロットとして、編隊長として、TOPエースとしてここまで無事に生き残れたのは俺自身の才覚と技量だが、
1%ぐらいは、指輪が俺を助けてくれていたのかもしれない
あの指輪を身に付けるようにしてから、平時の訓練じゃ、常にTOPだったし、実際開戦後は今まで出会った敵を全て倒してきた。

その指輪、それが・・ない!
まさか、不時着した時の衝撃で無くした?

星空の下で蒼くみえるホーネットの残骸に視線を向ける。あちこちに飛び散った部品の中から指輪を探しだせるかどうか
決断が早いシュミッドは探し物を諦めるのも早かった。
きっと指輪が御守が身代わりになってくれたんだ。だから俺は五体満足でこうして生きている
「ったく・・・今日はどうなってんだ!?一体!」

シュミッドは罵り声をあげ、
サバイバルキットにあった高カロリーの塊のようなエネルギーバーを飲み込むと、アルミ蒸着された薄いフィルム状のブラケットにくるまった。
夜明け前に日が高くなるまで歩き続けなければならないが、そのためにも体力は御守りがわりの指輪よりも大切なものだった。


ヴィータは久しぶりの空にも関わらず、憤慨していた。
クロノから捜索救難任務の権限をもぎ取った時、
「この世界の青い空を楽しんでくるんだな」と皮肉交じりの厭味を言われたのも癪にさわる。
「きしょー、提督め。知ってたんだな」

青空でないのはまぁ、我慢する。しゃーない。
ところがどうだ?
星空を満喫するどころか、薄らぼんやりとみえる樹木や山肌に注意しないといけない状況だ。
爽快感どころか、ギリギリの緊張だらけじゃねーか!

この世界の戦闘機で夜間に超低空で舐めるように飛ぶというのは、いささか以上にヴィータに緊張を強いるものだった。
「ein magisches signal nimmt allmahlich zu (魔力反応、徐々に強くなってきています)」
グラーフアイゼンの助けを借りながら、超低空を掠めるように飛ぶヴィータは
コクピットでぶつくさ言いながら捜索救難任務にあたっていた。
シュミッドが墜落したと思われるB7Rの区域を巡回しては魔力反応が大きくなる場所を特定しようとしていた。
そこにエイセスデバイス、恐らくベルカ英雄譚でいうところの「森霧の梟」がある筈だ。
そいつを回収するためにこの世界でも最新鋭機をわざわざ用意したんだからな・・・・
「Die Quelle einer Reaktion ist das Spatesteste.(反応源は至近です)」
「おし、下に降りるぞ」

ヴィータは平らなところの目星をつけるとF-35BライトニングⅡのリフトファンを作動させた。
このF-35Bはヴィータの任務にうってつけだった。
垂直離着陸が可能で、対空、対地ともに水準以上のマルチロール戦闘力を有する。
それになにより、十分なステルス性能を有しているのはありがたい。
国籍マークも所属を表す部隊章も無い真っ黒なF-35Bが円卓に着陸する。
魔法効力が制限されている環境でもとはいえ、ここまで近くだと十分に反応がある。
「おし、デバイスかパイロットを見つけんぞ」
「Jawohl(了解)」

20分ほど周囲を探りながら歩いた先にホーネットの残骸があった。
すぐに近づくような真似はせず、茂みの後ろに隠れて、現場に近づいても大丈夫かを確認してから近づく。
ホーネットの残骸のあたりから、古代ベルカ軍用デバイス特有の魔力認識信号が出てていた。

ホーネットの残骸のあたりから、古代ベルカ式軍用デバイス特有の魔力認識信号がでていた。

間違いない。

シュミッドの指輪はホーネットが不時着した時に地面を抉って巻き上げた土を被ってうずもれていた。
ヴィータはそれを拾い上げて魔法の発動を試してみる。デ
バイスの動作確認に適当と思われる簡単な魔法を使おうとするが、特に反応がなかった。
エイセスデバイスは古代ベルカ軍で採用されていたデバイスだから、術者を特に制限するような癖は無いはず。
この指輪から魔法シグナルがでているのは間違いのだが・・・?
そのあたりはクラウディアに戻ってから考えてみるか・・・・
「アイゼン。わりぃけど今度このデバイスを試してみたいんだ」
「Ich bin tolerant. Meister(それほど狭量じゃありませんよ。マスター)」
「あんがとよ」
一応の目的を果たし、ヴィータは周囲を再び歩き始めた。
もしホーネットのパイロットが傷ついて倒れてでもしていたら救助しなくちゃ後味わるいもんな。などと思案しつつ、
半時間ほど周囲を歩いていた時、後頭部というよりも頭の上のほうから気配を感じた。
咄嗟に振り向き、気配をしたほうへ目をやると一人の男が銃を構えていた。
「誰だ貴様?」
ヴィータは銃を構える姿を見て、付け込む隙が無いことを悟った。

「グリューン隊隊長の消息を確かめてこいとの命令を受けた者だよ。 シュミッド大尉?」
「ああ」
探していたパイロットから銃をむけられるとはヴィータの不覚だったが、咄嗟の機転でごまかす。
命令の出所についてはまぁ、アレだが、嘘は言ってねーよな・・・・
シュミッドはヴィータの言葉の真意を考えた。
ウスティオ軍が俺の撃墜確認する為に夜中に円卓へ救難チームを出すだろうか?
動きがあるとすればベルカ軍からしかない。

「アンタ、第13夜戦のパイロットだな?空軍でもはみ出し者の俺に用かい?」
「なぜそう思う?」
「ベルカの訛り方じゃない。で、所属を示すバッジのない服を着る連中なんて13夜戦の特殊部隊ぐらいじゃないか」
適当に曖昧な回答でヴィータは誤魔化した。
シュミッドは曖昧さイコール不都合な回答をしたくないとのサインと受け止め、
銃の安全装置を戻しながらヴィータのパイロットスーツを顎で示した。
「しかし、特殊部隊は女子供もいるごちゃまぜ編成との噂は聞いていたが、お前のようなちびっ子が隊員だとはな。世も末だな。」
「私は何も言ってないぞ?それはアンタの勝手な解釈だ」
ちびっ子という部分にだけ反応し、いささか憤慨しながら、シュミッドに話を合わせる。
「まぁ、いいさ。ところで俺をここから連れ出してくれるんだろうな?」
ヴィータはかぶりを振ってシュミッドの希望をあっさりとうち砕いた。
「悪ぃ、アタシの機は単座のVTOLなんだ。すぐに救難チームに現在地を報告してやるからさ」
ヴィータはシュミッドについてくるようジェスチャーで示し、F-35Bが着陸したところまで戻った。
「ほう、ハリアーじゃないのか。特殊部隊だけに機材もいい物をつかってるんだな」
シュミッドは新型のステルス戦闘機を興味深そうな目で眺めた。
「悪いがもう3日ばかりコイツでして我慢してくれ」
シュミッドはヴィータから投げ渡された非常食と栄養剤のキットをうけとった。
「そうだな、開戦以来忙しかったからな。遭難にかこつけて休養するか」
「景色が殺風景なのは我慢しろよ」
「違いない」
ヴィータとシュミッドは笑いあった。
「現在地からあんまり離れるなよ。救難チームと接触できなくなっちまうからな」
「ああ、判ってる。差し入れと捜索ありがとよ」


再び空に戻ったヴィータは帰りも超低空で飛んでいた。
あのシュミッド大尉とかいうパイロット。もし、こっちの世界に渡ってこれたなら、優秀な魔導師になれるんだがな・・・・・
それにしても仕事がふえた。
ベルカ軍にどうやってシュミッドの居場所を不自然なく教えたものか?
エイセスデバイスの力というものを試してみる必要もあるし、
あと、ベルカの13夜戦という組織について探りを入れる必要もあるな。

思わず、久しぶりの
現場仕事にでてみたらデスクワークが一気に増えたことに気が付いてしまい。
ヴィータは誰にも聞かれることのないコクピットの中で盛大に毒づき始めた。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2007年10月07日 09:46