海上に作られた施設で更正プログラムをこなしている戦闘機人達だが、いつまでもここにいるわけにはいかない。
いずれ、社会に出て生活を営んでいくことになる。
その時も今のように二重三重のリミッターをかけられることになるだろう。
その日が迫りつつある中、彼女たちの不安は大きくなっていった。
大多数の人間が戦いに関わることなく生活しているのは今までのプログラムで理解してきたつもりだ。
しかし、力を封じられたひ弱な体で何ができるのか。
自分たちの身は守れるのか。
戦闘のできない戦闘機人に存在意義はあるのか。
不安は日々増大していく。
そんなある日、突然彼女たちが更正施設を出る日が決まった。
予定よりずっと早い時期である。
いつものように講義をした後、彼女たち担当のギンガはいつもの笑顔でこう切り出した。
「と言うわけで、皆さんには全てのリミッターを外した上で学校に通ってもらうことになります」
予想もしていなかった言葉に即座に反応できる者はいなかった。
その中で、チンクだけが手を挙げる。
「質問がある。正直、私たちが即座に社会に適応できるとは思えない。そんなことをして大丈夫なのか?」
「そうそう、あたしら学校をシメちゃったり脱走したりするかも知れないッスよー」
余計な軽口を叩くな、とばかりの姉の強烈な視線を受けたウィンディが目をそらす。
「それはともかくそういうことだ。どうなんだ?」
ギンガは少し考える。
腕を込んで、あらぬ方向見る。
空間モニターを開いて情報を再確認。
そして、こう言った。
「いいですよ」
「は?」
再びの予想外の答えに裏返った声が出る。
「ただし、それやっちゃっても成功するかどうかはわかりませんし、どうなっても管理局は貴方たちを助けません」
「それ、どう言うこと?」
「受け入れ校の強い要望で、皆さん行動に関する責任は皆さん自身が取ることになります。また、入学から卒業まで管理局は皆さんに一切の関知できないようになっています」
「何をやってもいいけど、責任は自分でとれって事ね」
「はい。それから、さっきのシメるとかですけど……たぶん無理だと思いますよ。その学校、皆さんと戦えるような人がけっこういるみたいですから」
「どういう学校よ。それ」
ギンガはそれに答えるようにナンバーズにパンフレットを配っていく。
「各自、それの入学願書に記入しておいてください。学校についての詳細も書いてありますからよく読んでおいてくださいね」
「紙の書類ッスか?古いッスねー」
「そういう世界のですから」
パンフレットはミッドにはあまり使われない文字で書かれている。
「えーと……」
ノーヴェが眉根を寄せる。
知っていることは知っているが相当マイナーな文字だ。
ドクターが何故こんな言語まで覚えるようにしたのかわからないほどにマイナーな文字だ。
「私立輝明学園・秋葉原分校?」
彼女たちはそのウィザードと呼ばれる者達も通う学校で非常に充実した、というか充実を突破したような経験を重ねることになる。
いささか不安ではあるが。



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最終更新:2008年04月14日 10:29