トンネル内部。フェイトと加賀美は並んで歩き始める。前方から歩いて来るのは、レプトーフィスワームとサリスの大群だ。
「あのワーム……もう一体いたんだ……」
「行くぞ、フェイトちゃん!」
「うん!」
黄色いバルディッシュと、青いガタックゼクター。二人はお互いが持つ変身コアを構える。
「「俺(私)達が相手だ!!」」
「フン!ハァ!」
鳴り響く斬撃音。ガタックダブルカリバーが、サリスを切り裂いてゆく音だ。
「バルディッシュ……!」
フェイトも、バルディッシュ・ハーケンフォームでサリスを切り裂いていく。
バルディッシュの魔力刃も初期と比べるとかなり威力を増しているらしい。どこぞの死神ガンダムばりにサリスを斬り倒している。
そこへ、さらに二人の男が現れる。
「俺はキャンプにおいても頂点に立つ男だ!!」
『Standby(スタンバイ)!!』
「来い、ザビーゼクター!!」
紫の刀-サソードヤイバー-を持った男と、左腕に黄色いブレス-ザビーブレス-を装着した男。剣とクロノだ。
「「変身!!」」
鳴り響く『Henshin』という電子音。そして、変身後すぐにマスクドアーマーが体から浮かび始める。
「「キャストオフ!!」」
次に聞こえた『Cast off』の電子音と共に、二人はライダーフォームへと変身した。
一方、カブトも赤いバイク-カブトエクステンダー-を駆り、戦場へとやってくる。
「よっしゃ、間に合った!!」
カブトの斜め上を一緒に飛行して来たのは、久々に変身したはやてだ。
ガタックは、5匹程のワームの中を一気に突っ切り、その全てをダブルカリバーで斬りつけた!
斬られたワームの体を電撃が走り……やがて爆発。緑の炎に消える。
「バルディッシュ、ザンバー!」
『Jet Zamber.』
フェイトもガタックと同じ様に、5匹程のサリスと対峙。カートリッジを消費し、ザンバーフォームへとフォームチェンジ。
そのまま、カブトのハイパーブレイドと同じ要領で、ワーム全てを横一線。
稲妻を纏った大剣に切り裂かれたワームはやはり、纏めて爆発した。
「ハァ!」
サソードはレプトーフィスワームへとサソードヤイバーを振り下ろす。
「フン!」
それを防いだレプトーフィスワームに、今度はザビーが重いパンチを叩き込む。
だがレプトーフィスワームはどの攻撃も上手く防ぎ、逆に手甲状の武器でザビーとサソードを切り裂く。
「刃以て、血に染めよ。穿て、ブラッディダガー!!」
上空で呪文の詠唱するはやて。久々の見せ場に、少しテンションがハイだ。
はやての周囲に赤い短剣が現れる。そして、それは一気に急降下。群がるサリス達の体を貫いた!
ブラッディダガーの直撃を受けたワームの体は、ガタックやフェイトが倒したワームと同じように電撃が走り。やがて同時に爆発した。
「ハァ!フン!……ハァッ!!」
カブトはサリスが密集する箇所へと突入。巧みなクナイ捌きで、サリスを斬り捨てていく。
くるくると回りながら上から、下からクナイに斬り裂かれたワームは全て爆発。
そして全てのサリスを斬り倒したカブトの目の前に現れるのは、ハイパーゼクターだ。
『Hyper Cast off(ハイパーキャストオフ)!!』
カブトのハイパー化に伴い、彼方から、お馴染みのパーフェクトゼクターが飛来。そして、大剣の刃が光り輝く。
「ん……?」
「何……!?」
次に、サソードとザビーから二人のゼクターが分離。剣とクロノは、ワームとの戦闘中にその変身を強制解除されてしまう。
パーフェクトゼクターへと合体し、色まで変わってしまうサソード・ザビー、そしてドレイクゼクター。
「どういうことだ!?」
「チッ……他のライダーの変身より優先されるのかよ……!」
悪態をつく剣とクロノ。
戦闘中に変身を強制解除されるとはたまった物では無い。
「おばあちゃんが言っていた……絆とは決して断ち切る事のできない深い繋がり。例え離れていても、心と心が繋がっている……!」
『Kabuto Power,Thebee Power(カブトパワー、ザビーパワー)!!』
順番に赤と黄色のフルスロットルを押すカブト。
「……あれは!?」
ハイパーカブトの動きに気付いたフェイトも、すぐにレプトーフィスワームから離れる。
そしてフェイトのバルディッシュザンバーから解放されたレプトーフィスワームは、真っ直ぐにカブトへと突進していく。
『Drake Power,Sasword Power(ドレイクパワー、サソードパワー)!!』
『All Zecter Combine(オールゼクターコンバイン)!!』
腕を光り輝かせ、突進するレプトーフィスワーム。大剣を構えるカブト。二人の間の距離がだんだんと狭まってゆく。
そして。
『Maximum Hyper Typhoon(マキシマムハイパータイフーン)!!』
「うおぉおおおっ!!!」
引き金を引いたパーフェクトゼクターを、レプトーフィスワームへと降り放った。
その凄まじい威力の攻撃に、レプトーフィスワームは成す術も無く爆発した!
これで全てが終わった。後は樹花の元へと帰るだけだ。そう思い、変身を解除しようとした、その瞬間。
「……何ッ!?」
カブトの腰に装着されたハイパーゼクターが突然緑に光り出したのだ。
『Hyper Clock Up(ハイパークロックアップ)!!』
「な……!?」
カブトはハイパークロックアップを作動させたつもりは無い。それなのに、光り輝くハイパーゼクター。
そしてフェイトやはやて達の目の前で、カブトは緑の光に包まれた。
「カブトは……?」
「消えた……?」
こうして、カブトは姿を消した。
この場所から……というよりも、この世界から。
「うおっ!?」
落下するカブト。同時にハイパーゼクターも分離。通常フォームへと戻ってしまう。
「ここは……?」
立ち上がりながら周囲を見渡すカブト。見渡す限りの草原だ。そして、そこにいたのは意外な人物だった。
「……ひより……?」
なんと、目の前にいるのはずっと探していた人物。そして、天道にとってたった一人の肉親。たった一人の妹だ。
「お前……!」
「ひよりっ!?」
感動の再開。本当ならそうなる筈だった。だが、それはひよりと一緒にいた人物によって阻止されてしまう。
「……ッ!!」
「……お前はッ!?」
なんと、ひよりをかばうように現れたのは。
「(俺……だと……!?)」
天道自身だったのだ。
もう一人の天道は、ゆっくりとカブトに近付いてくる。
そして天道の手に、カブトと同じ……いや、黒いカブトムシ型ゼクターが掴まれた。
「……ヘン……シン……!」
『Henshin(ヘンシン)!!』
そして、これまたカブトと全く同じ-いや、少しだけ違う-カブトに変身したのだ。
「……キャストオフ……」
『Cast off(キャストオフ)!!』
さらに、かなり姿勢の悪い歩き方をしながら接近するカブトは、キャストオフでアーマーをパージ。
その姿は。カブトそのものだった。
いや……正確には、『黒いカブト』だ。
敵意剥き出しの黒いカブトは、天道が変身する赤いカブトに襲い掛かる。
赤いカブトのレンジに入った黒いカブトは、パンチやキックを何発も繰り出す。
「ウオォ!ヤァッ!ハアァッ!!」
「フン!ハッ!クッ……!」
黒いカブトと赤いカブトの戦闘能力は全くの互角。二人の攻撃はどちらも受けられ、ヒットすることは無い。
パンチも、キックも、カウンターも。まるで相手の攻撃が読めるかのように同じ動きをしているのだ。このままでは埒が明かない。
『『One!』』
『『Two!』』
カブトとカブトは、同時にベルトのフルスロットルを押し始める。
『『Three!』』
全く同じ動き。全く同じシステム。全く同じ流れで、ベルトから頭を通って脚へと、タキオン粒子がチャージアップされる。
『『Rider Kick(ライダーキック)!!』』
刹那、赤いカブトと黒いカブトが同時に放った回し蹴り-ライダーキック-は激突。ほとばしる稲妻。凄まじい衝撃だ。
しかし、全く同じ戦闘力に見えたこのライダーキック。蹴りを振り抜いたのは、『黒い』カブトの方だった。
「ウオォォオッ!!!」
「うわぁあああああっ!!?」
黒いライダーキックをモロに受けた『赤い』カブトは、凄まじい衝撃に吹き飛ばされる。
そしてそのまま、『赤い』カブトは彼方へと吹き飛ばされた。
その先にある物は……『緑の光』だ。
「クッ……!うわっ!?」
地面へと落下するカブト。苦しんでいるのか、しばらく地面をのたうつ。
カブトの周囲に広がる光景は、さっきと同じ、雑木林だ。クロノや剣、フェイトにはやて達もいる。どうやら戻ってきたらしい。
そして、再び飛来するザビーゼクター。今度はカブトの元へではなく。クロノの手の中へ。
「これで終わりにするぞ……カブト。」
『Henshin(ヘンシン)!!』
「……いいだろう。そろそろ決着をつけてやる」
カブトもゆっくりと立ち上がる。
「加賀美、剣!お前達は樹花の元へ行け!」
「な……なんでだよ!?俺も一緒に……」
「ダメだ!」
カブトに言われ、自分も一緒に戦おうとする加賀美。だが、今回はカブトにキツく拒否される。
「頼む……!樹花の元へ行ってくれ……!」
「な……!?」
天道に頼むとまで言われたのは初めてだ。今日の天道は、何かがおかしい。
「……わかった。行くぞ、カ・ガーミン。」
「剣……」
バスの元へと歩き出す剣。
「わかった。お前がそこまで言うなら……。」
「感謝する……」
加賀美も、剣と一緒に歩き始める。立ち去り際に、一瞬カブトを見る加賀美。その目には、「絶対帰ってこいよ」という意思が込められていた。
一見いつも通りに見える天道だが、今回は少し違っていた。カブトはさっき、『黒いカブト』のライダーキックの直撃を受けた。
普段自分がワームに放っている技がこんなにも重いとは、想像もつかなかっただろう。カブトの体にはダメージが蓄積されていた。
だが、負ける訳にはいかない。負けたくも無い。そして、負けるつもりも無い。
樹花の元へ戻る為にも、絶対に負けてはならない。
天道と加賀美のやり取りとほぼ同じタイミング。こちらでも似たようなやり取りが行われていた。
「お願い。はやてはなのはの所に戻ってあげて」
「え……なんでなん!?私も一緒に……」
「ダメ。加賀美が戻ったのに、私が戻らなきゃなのはに心配かけちゃうから」
「それは……そうやけど……」
「だからお願い!はやては先に戻って、私は無事だって、なのはに伝えて……!」
神妙な面持ちで頼み込むフェイト。そうまで言われれば仕方が無いか……
「わかった。じゃあ……」
「大丈夫だよ。私は絶対に戻るから!」
心強いフェイトの表情に安心したはやては、変身を解除。すぐに加賀美の後を追い掛けていった。
「それと兄さん……カブトとの決着は私につけさせて……!」
はやてが立ち去るのを見届けたフェイトは、バルディッシュザンバーを構えて言った。
「けど……」
「なのはがやられたのに、私が黙って見てる訳には行かないから!」
「フェイト……」
「お願い。一対一でやらせて……!」
「はぁ……わかったよ。ただし、絶対負けるなよ?」
「もちろん!」
フェイトはまた、心強い表情で頷いた。もちろん二人は、カブトが手負いだということに気付いていない。
だが今回はハイパーカブトでは無い。勝機ならある、と。そう思った。
こうしてなのはに続いて、フェイトvsカブトの戦いが、幕を開けた。
「ハァーッ!!」
「クッ……!これは……!?」
フェイトはソニックフォームにフォームチェンジ。一気にカブトとの距離を詰め、ザンバーを振り下ろした。
カブトは逆手持ちのクナイガンでなんとかザンバーを受け止める-といっても結構ギリギリだが……-。
「(カブトはソニックフォームにはついてこれない……?それなら!)」
再び姿を消すフェイト。なのはと違い、フェイトはクロックアップ無しでの高速移動ができ、尚且つ近接戦に特化している。
明らかに通常フォームの……ましてや、ダメージの蓄積したカブトでは不利だ。
「そこかッ!」
だがそれでも負ける訳にはいかない。カブトは勘でフェイトがいるであろう位置にクナイガンを振り下ろす。
「(そんなもの)……!」
しかしそれもフェイトのザンバーに弾き返されてしまう。
「これなら……勝てるかもしれない!」
ザビーも、勝てるかもしれないとフェイト見守っている。だが、何かがおかしい。何か……妙な気配だ。
ザビーは、後ろを振り向いた。そこにいるのは数十匹のワーム。
「お前達……」
フェイトの気持ちは、クロノにも伝わっている。だからこそ、この勝負を邪魔させる訳にはいかなかった。
「お前達の相手は、僕がする。」
『Cast off(キャストオフ)!!』
ザビーはアーマーでサリス数匹を弾き飛ばし、ボクシングスタイルで構えた。
「(どこだ……どこにいる!?)」
カブトは防戦一方と化していた。攻撃は全て受け止めているために、決定打は与えられていないが、このままではいずれ敗れてしまう。
そんなカブトが手にしたのは、ゼクトマイザーだ。これならば広範囲に攻撃することができる。
フェイトも、カブトが何処からか取り出したゼクトマイザーには見覚えがあった。
「(あれは……あの時の!)」
以前、カブトが大量に爆弾を射出した道具だ。もしもこれを使われれば、ソニックフォームは完全に封じられてしまう。
高速で移動する分、無数に飛び回る爆弾に当たる可能性は高い。しかも、ソニックフォームは防御力を捨てている。あんな爆弾を何発も食らえば一たまりも無い。
フェイトは咄嗟に元のライトニングフォームに戻り、左手をカブトにかざす。
「いけッ……!プラズマスマッシャー!!」
『Plasma Smasher.』
フェイトから放たれた閃光は、真っ直ぐにカブト目掛けて飛んでゆく。
「……遅い!」
だが、フェイトがライトニングフォームに戻ってからプラズマスマッシャーを放つまでの時間は、カブトにとっては遅過ぎだ。
地面を転がって回避したカブトは起き上がり様にすかさず大量のマイザーボマーを射出した。
射出されたマイザーボマーは、フェイトの周囲を飛び回る。
「ハッ!フン!セヤッ!」
サリス達に連続でパンチを撃ち込んでいくザビー。一撃で爆発させる程の威力は無いが、それでも殴り続けているうちにサリスの数は減っている。
ザビーは途中、ちらっとフェイトを見た。ソニックフォームは封じられたようだが、それでも互角くらいには見える。
しかしフェイトにばかり気を配る訳にもいかない。
ザビーがよそ見をした、その瞬間。不意をついたサリスが爪で攻撃してきたのだ。
「チッ……」
一度ガードし、すぐに反撃する。この状況ではそれが得策と判断したザビーは、そのサリスに向き直る。
だが、サリスの爪が飛んでくる事は無かった。サリスは桃色に輝くバインドに拘束されていたのだ。
そしてそのバインドの先にいるのは。
「……アルフ!?」
「フェイトに何かあってからじゃ遅いからね。私も参戦させて貰うよ!」
ザビーはアルフに拘束されたサリスに、ゼクターニードルを突き刺しながら「わかった!」と返事を返す。
一方のフェイトは、大量に射出されたマイザーボマーに翻弄されていた。
できる限りのマイザーボマーをバルディッシュで破壊し、接近され過ぎたマイザーボマーはディフェンサーで防ぐ。
空を飛び回りながらふと下を見ると、カブトのゼクトマイザーからはマイザーボマーが射出され続けている。
「アレだ……あの爆弾を発射してる機械。アレを潰さなきゃ……!」
次にフェイトはバルディッシュのマガジン部を見る。残りカートリッジは0。
『Blitz action.』
フェイトはスピードローダーでカートリッジを装填。そのまま、ブリッツアクションで動きを軽くし、マイザーボマーを全て回避しながらバルディッシュザンバーを振りかぶる。
「撃ち抜け、雷刃!」
『Jet Zamber.』
フェイトの掛け声と共に、バルディッシュの魔力刃は巨大化。そのまま周囲のマイザーボマーを巻き込んで、横一線に振り抜く!
大半のマイザーボマーはバルディッシュに破壊された。次にフェイトは、巨大化したままのバルディッシュをカブトへと振り下ろす。
「ク……ッ!」
咄嗟にゼクトマイザーを手放したカブトは、ガードの姿勢に入る。プットオンする暇も無かったのだ。
「く……うわぁああああああッ!!」
そして衝撃で吹き飛ばされるカブト。幸い、思っていた程の威力は無かったらしい。まだ戦える。
流石のジェットザンバーでも、非殺傷設定のついた攻撃でヒヒイロノカネを貫くにはまだ足りなかったらしい。
カブトはなんとか起き上がり、クナイガンをガンモードに変形。持ち直しながら、フェイトに言った。
「お前……なかなかやるな。」
「……私は貴方を倒す!今日、ここで!」
「そうか……。だが、昇る太陽の輝きに……敵う物などいない!」
言いながらクナイガンから光弾を連射するカブト。
「まだこんな武器が……!」
フェイトは少し驚きながらも、なんとかカブトの放った弾丸を回避する。
カブトももはや形振り構っていられる状況では無いのだ。とにかく、空を飛ぶフェイトに弾丸を発射し続ける。
「(フェイト……負けるんじゃないよ……!)」
フェイトを見守りながら、サリスを殴り飛ばしていくアルフ。
アルフ・ザビーと二人に殴られ続けたサリスも、だんだんと数を減らし、残す所1匹となっていた。
「これで……!」
『Rider Sting(ライダースティング)!!』
ザビーはザビーゼクターのフルスロットルを押した。タキオン粒子がチャージアップされ、眩ゆい光がほとばしる。
ザビーはそのまま、サリスへ向かって走り出した。後はこの左腕を突き刺せば終わりだ。左腕を振りかぶり、ライダースティングの体制に入る。
しかし。
この時クナイガンを回避するために飛び回っていたフェイトが、タイミング悪くサリスの背後に移動してしまったのだ。
ザビーはそれに気付かずに、ライダースティングを撃ち込もうとしている。
そして、さらにタイミングが悪い事に、サリスは回避しようとそこから動いてしまったのだ。
ボクシングやK-1でも、集中している選手は攻撃のモーションに入った時点で、その攻撃を止めるのはほぼ不可能だ。
ザビーはそのまま、ゼクターニードルを高速でフェイトに突き刺そうとする。
「……なッ!?」
「……フェイト!?」
驚愕するフェイトとアルフ……そしてクロノ。
ザビー……いや、クロノは心の中で「どいてくれ!」と祈るが。時既に遅かった。
光り輝くライダースティングはそのままフェイトに向けて放たれた。
凄まじい音と共に、ゼクターニードルは突き刺さった。
そして突き刺さった体からほとばしる電撃。衝撃。輝き。
「そんな……!」
「バカな……!?」
アルフもザビーも、驚愕のあまり動きが止まってしまう。
『Clock over(クロックオーバー)』
目の前で。ライダースティングの直撃を受けているのは、フェイトでは無い。
「うぅ……クッ……!」
ザビーの目の前にいるのは、カブトだ。もはや立っていられるのも限界らしく、かなり苦しそうな声を出している。
ザビーはその赤いヒヒイロノカネからニードルを引き抜き、言った。
「なんでお前が……!」
「……お前の……たった一人の……妹……」
だが、カブトがその言葉を言い終える事は無かった。そのまま、力無く地面に倒れたのだ。
ザビーの目の前で横たわる天道の体から、ライダーの装甲が消滅し、カブトゼクターもいずこかへと飛んで行く。
クロノの体からもザビーゼクターが離脱。クロノもフェイトも、そのまま呆然と立ち尽くす。
『今のうちに、天道総司を捕獲して頂戴!』
フェイト達に、アースラのリンディから通信が入る。
「え……でも……」
「でも艦長!こいつはフェイトを助けてくれたんだよ!?それなのに……」
混乱しているフェイトに代わり、アルフが抗議する。
『それはわかっています!でも……今しか無いの。』
リンディも、アースラで悔しそうな顔をする。
『手遅れになる前に、天道総司をアースラの医務室に収容します。……お願い……!』
「…………。」
アルフは悲しげな瞳で、意識を失い、地面に横たわった天道を見つめる。
「ごめんよ……天道……」
アルフは目をつむり、小さな声で呟いた後に、天道をバインドで拘束した。
バインドされた天道の体はゆっくりと浮かび上がり、そのままこの場所から……いや、再びこの世界から姿を消した。
まるで天道の敗北に合わせるように、太陽も完全に沈んでいる。
これにて天道と管理局との戦いも、管理局の勝利に終わった。はずだが……。
どこか釈然としない。認めたく無い。こんな勝ち方は。
「僕の……完敗だ。」
日が落ち、暗くなった雑木林で。悔しそうなクロノの声が響いた……。
「お兄ちゃん、どうしちゃったのかなぁ?」
首を傾げる樹花。
ここは、樹花達のいるキャンプ場。俺も後で行くと言ったはずの天道が、いつまで経っても現れないのだ。
そんな樹花を見つけた加賀美は、励まそうと根拠の無い事を言う。
「あ……天道はきっと、何か用事で遅れてるんだよ。きっと樹花ちゃんに会いに来てくれるよ!」
「そうだよね?だってお兄ちゃん、私に嘘なんてついたこと無いもんね♪」
幸せそうな顔で笑う樹花。加賀美はどこか胸が痛くなるような気がした。
なのはやフェイト、さらには天道と一緒に来たはずのはやてまで、キャンプ場に戻っている。
それなのに天道はいない。間違いなく天道の身に何かがあったのだろう。
翌々考えてみれば、天道が加賀美に頼み事をする事自体が不自然なのだ。
加賀美はあの時、天道に逆らってでも最後まで見届けるべきだった。そう、非常に後悔した。
「(天道……お前一体、どうしちゃったんだよ!!)」
加賀美は誰にも悟られないように、拳を握りしめた。
「フェイトちゃん、なんかおかしいよ?どうしちゃったの……?」
「なのは……」
フェイトは、帰って来てからずっと虚ろな表情をしている。そんなフェイトを気にかけたなのは。
「ううん……なんでもないよ……!」
しかし、なのはに心配をかけたくは無い。無理して笑顔を作るフェイト。
だいたい、ずっと倒したかった敵を倒したのだ。嬉しく無いはずは無いのだ。
泣いて悲しめって言うのか。そんな理不尽な話は無い。
なのに、何故か喜べ無い。あんな物、フェイトにとっても勝利とは言い難い。
「天道さん……まさか……」
そんなフェイト達を見たはやても、どこか不安を抱かずにはいられなかった。
一方のアースラでは。
「これでカブトも捕獲しました。後は……」
「ええ、分かってるわ。ハナちゃん」
リンディの横にいるのは、黒いドレスのような服を来た女性だ。
ハナと呼ばれた女性は、そのままブリッジを後にした。
「はぁ……僕ってなんでこんなについて無いんだろ……」
何故か自室でつまずいた良太郎は、額をさすりながら呟いた。
「何か憑いてるんじゃないかな……」
『ああ……憑いてるぜ?』
「え……?」
どこからか聞こえる声。そして良太郎の前に、白い砂でできた鬼のような怪人が現れた。
次回予告
時を越える電車……デンライナー……?
なんだか知らねぇが、マスカレードは俺が貰ったぜ!
次回!魔法少女リリカルなのはマスカレード
ACT.16……
時を越えて、「俺、参上!」
言っとくが俺は、最初からクライマックスだぜ!!
スーパーヒーロータイム
北岡「吾郎ちゃん、やっと俺達の出番だよ?」
吾郎「はい。今まで長かったですね」
北岡「俺、参上?まぁそれもいいけどさ、その前にExtra ACT.5だね」
吾郎「ついに先生が主人公になります。大活躍します。」
蓮「それはどうかと思うがな」
北岡「まぁとにかく、Extra ACT.5「その男ゾルダ」を先に見る事をオススメするよ」
真司「お前ら、自分の宣伝しに来ただけかよ!?
最終更新:2007年10月25日 21:18