「そもそも・・・ここは何をする集まりなのでしょうか?」
いきなり核心を突くのはまずいだろうかとも思いつつ、だけどこれぐらいなら自然な質問のはずだ
私の質問に嬉々として答えたのはやはり例の少女、涼宮ハルヒだった
「いい質問だわ。いい?このSOS団はね、宇宙人・未来人・超能力者・異世界人・魔法使いを見つけて一緒に遊ぶのが目的なのよ!」
思わず硬直してしまう
(やっぱり・・・ばれてる!)
どうするティアナ?戦闘する?でもまだ向こうは明確な敵意を示した訳ではない
(でも後手に回るのは危険だわ)
私はクロスミラージュに手をかける、その時男子生徒の一人がゆっくりと立ち上がった
「ハルヒ、頼むから事情の分かってない人間を置き去りにするような発言は止めろ。そっちの二人も混乱してるだろうが」
その言葉に私は一旦動きを止める。
(どういうこと?事情?)
「いやいや、さすが涼宮さんだ。面白い人を連れてくる」
「え?え?えええ?!」
もう一人の男子生徒は無意味にさわやかな笑顔を浮かべ、侍女姿の少女は困ったようにまごまごしていた
(ティアナ、落ち着いて。今のところ罠の様子はなさそう)
(だけどフェイトさん、今異世界人とか魔法使いとか)
(この世界では異世界の事も魔法の事も一般に知られてはいないけどそういったものに興味を示す人達もいるの
 多分彼女はそういうタイプの人間なんだと思う)
(その認識は正しい)
*1
いきなり私とフェイトさんの念話に第三者が介入してきた。そしてその主は・・・どうやら先程から部屋の隅で本を捲り続けている少女であるらしかった
(警戒しなくていい、涼宮ハルヒの認識下においてあなた達は普通の人間でしかない。
 異世界の存在も魔法の存在も認識している訳ではない)
「どうしたの二人とも、なんだか変な顔しちゃって」
涼宮ハルヒの声に思わず我に返る。いけないいけない、冷静さを失ったら負けよ
よく見れば先程涼宮ハルヒに声をかけた男子がこちらに微妙な視線を向けている
(まさか・・・彼も念話を?)
一瞬念話で話し掛けそうになって慌ててやめる、彼が一般人であった場合さらなる混乱を招くだけなのだ
事態がまったく飲み込めない・・・が、フェイトさんの言う通り差し迫って危険があるようにないのも確かだ。
(ここは様子を見るしかないわね)

「ねぇねぇ、二人ともなにか特技とかないの?」
「え?特技?」
「そうそう、なんかこう空飛んだりとか変身したりとか」
再びギクリとする。だが私たちが返答するより早く先程の男子がつっかかる
「やめろハルヒ、お前が言うと洒落にならん。もとい、そもそもなんなんだそのファンタジー設定は。
 万有引力の法則や質量保存の法則をあっさり捻じ曲げたら世界中の科学者が発狂してしまうぞ。
 そんなに空飛んだり変身したりする女の子が見たければ今すぐ家帰って魔法少女のアニメでも見てなさい」
「なによキョン、あんたには夢ってものがないの?だいたい空飛ぶだけなら鳥だってできるわ、姿変えるだけならカメレオンだってできるじゃない。だいたい魔法少女がこの世にいないなんて証明できる訳?」
「もしいても俺はそんなもんに巡り会いたくはない。ただでさえ頭のおかしい女の所為で変な事に巻き込まれまくってるんだ。
 これ以上おかしな事態に巻き込まれかねない不思議要員なぞこちらから願い下げだ」
涼宮ハルヒのいちいち核心を突いたような台詞にどきりとさせられるがどうやらあくまでこの世界では魔法という物はありえないものであるらしいし、私達の正体がばれてるという訳でもないらしい
(でも、それならあの子は一体なんなの?)
改めて視線を読書少女へと向ける。
(あなたは一体何者なの?そしてこの涼宮ハルヒという少女は?)
(私が何者かと質問に対しては情報統合思念体が作り出した対有機生命体コンタクト用ヒューマノイドインターフェース。
 涼宮ハルヒが何者かという質問に対してはこの世界の進化の可能性。
 時空管理局が傍観するだけなら構わない、だが彼女に危害を加えるというのであれば私はソレを全力で阻止する)
(?!)
情報統合思念体というのは聞いたことがある。膨大の意識の集合体であるとかいくつもの世界をまたにかける巨大組織であるとか漠然とした情報だけでその正体はいまいちはっきりした事が分かっていなかった。
正直都市伝説の類かとも思ってたぐらいだった
でも情報統合思念体は実在した?そして涼宮ハルヒを保護しようとしてる?涼宮ハルヒが世界の進化の可能性?それがあの次元震の発生に繋がる理由?でも単体の人間にそんなことが果たして可能なの?
友好的な相手かと思われたがこれは迂闊な事が出来ないかもしれない
涼宮ハルヒは次元震を引き起こすほどの巨大なエネルギーを秘めている?情報統合思念体はその力でこの世界に変革を起こそうとしている?だとすれば見過ごして置ける問題ではない
「あの・・・、お茶をどうぞ」
見れば侍女がお茶を二人分入れてくれていた。とは言ってもさすがにこの状況で相手が出したお茶に手をつける気にはなれなかった
「あの・・・」
突然後ろから声がして振り向くとそこには一人の女生徒が立っていた
「こちらで悩み相談をしていると聞いてきたのですけれど」
その言葉に、涼宮ハルヒは溢れんばかりに瞳を輝かせていた
なぜか部外者である私たちまでも一緒に話を聞くことになってしまった。
話を聞いてみるとこういうことである
彼女の名は喜緑 江美里、この学校の二年生であるらしい。彼氏が行方不明になったので探して欲しいとのこと
察するにこのSOS団というのはこういった何でも屋のような活動をメインとしているのだろう
しかし行方不明、彼女が心配するのももっともな話だろう。でもこれは現地の警察に問い合わせた方がいいのでは
(フェイトさん、これは本来の私達の任務からは外れるかもしれませんけどこれぐらいなら協力しても問題ないでしょうか)
(そうだね、あくまで執務官ではなく一民間人として、ね。彼女達を観察するのにもちょうどいいかもしれない)
そして私達は一緒に行方不明になった彼の家に向かう事になったのである
「どうせただの五月病よ、無理矢理連れてくればいいのよ」
「あの子のあういう短絡思考で強引な所ってスバルとちょっと似てるかもね」
「向こうでのお友達ですか?日本人っぽい名前ですね」
「そういえば先祖がこの国の出身とか言ってたわね」
「にしても・・・まぁ、つき合わせて悪いな」
「行方不明者が出たなんて聞いて放っておく訳にもいかないじゃない」
「いやいやいや、そういうのって警察の仕事だろ?素人が下手にクビを突っ込む問題じゃないだろ」
「そうだね、確かに民間人が介入した所為でかえってややこしい事態になった事件もあるしね、だから私はただのお目付け役。あなた達が危険に巻き込まれないようにね」
「だったらはじめから止めてください。」
「それにしてもフェイト先生って日本語上手ですね、ティアナさんも」
「うん、私は小学三年生から中学卒業するまでは日本に住んでたから」
「えぇ?そうなんですか~?」
不意にキョン君がウホンウホンと咳をする
「まぁとりあえずだ、ちょっと二人に確かめておきたい事があるんだがな」
彼は急に声を潜めて耳打ちしてくる
「お前ら、まさかマジで異世界人だったり魔法使いだったりするんじゃないだろうな」
あまりに直球な問いかけに言葉をなくす。
「あなたさっき散々魔法とかありえないとか言ってなかった?」
「ん?ああ、そうだな、うん、魔法とか超常の力とか普通に考えてありえないよな、うん。いや、変な事聞いて悪かった」
妙な口ぶりだった、明らかに彼は何かを知っているがそれを隠してる。そんな態度だった
「もしかしてあなたは何か知っているの?例えば最近、涼宮ハルヒさんの近くで世界を揺るがすような大事件にあったとか」
「・・・やっぱりあんたらも只者じゃないなにかなのか?」
明らかにげんなりした表情を見せる、なんだか奇妙な反応だった
あんたらも、その言葉についっと例の情報統合思念体側の者と名乗った少女に一瞬視線を向ける。名前は長門有希というらしい
彼はもしからしたら彼女の正体も知っているのかもしれない
「その事についてはまた時間があるときにね。その代わりあなたも色々聞かせてもらえるかしら?」
「現実離れした与太話でよければな」

もっとも、この時点では私はこのすぐ後にあんな事に巻き込まれるとは夢にも思っていなかった

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最終更新:2007年11月17日 15:30

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