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第四十九話 『不細工なタペストリー』


 プーは拳を構えながら歩き出した。――慎重にいかなければ。

「おい」
 プーから声をかける。距離にして六メートル。
 デスビームの射程距離ではない。(それでももし撃たれたらまずい。とても)
 普通、銃を持っている相手を見つけたらすぐに逃げるだろうが、プーはそんなことなどしなかった。
 確かに現状では仲間は居た方が良いし――何より、この極限状態の中でプーは人を信じることを忘れていなかった。
 それは一種、プーの王者としての自覚、或いは素質から来るものなのかも知れない。
 男は男で気付いたようで、こちらに顔を向けた。もちろん――デスビームが、ぴくりと上がっている。
「その銃を下ろすんだ……」
 男の眉が、上がった。
「お前はゲームに乗っていないのか?」
「そもそも人を殺すことに禁忌があるだろう」
 あくまで正当防衛を除いてだが。素直に殺されます、とは思えなかった。
「そうか、ならよかった」
 幾分男の声量が変わり、少し微笑みながら、プーに近づいた。
「俺はマリオ。弟のルイージと友達のピーチ姫を捜しているんだ」
 ルイージ――あの緑帽子のことだろう。
「プーだ。よろしく頼む」
 そうして言葉を出して、続けた。
「俺も、ネスと、ポーラと、ジェフと言う友達を捜している」
 ギーグも倒された今、ネスを頭(かしら)などと言うべきだろうか? (ポーキーの事はともかく)
 相手に不必要な期待を抱かせ、もしかしたらネスに負担をかけてしまうかも知れない。そんなわけでネスの詳細を教えるのは避けた。
「そうか、でも良かったよ、最初に会ったのがゲームに乗ってない奴で」
 それから、マリオはデスビームをベルトにしまい込んだ。本当にプーを信用したのだろうか。
 ――それとも、ゲームに乗っていて、騙し討ちする為に? 或いはプーが武器を持っていないこと(その通りなのだが)で油断していると? ……そんなことは無い。
 やる気ならここまで接近した時点で襲い掛かって来ている筈だ。

 それからしばらく、マリオと話し込んだ。
 支給品の確認や友人達の特徴、自分達の境遇と能力――
 一時間近く経ってから、これからの事も考えておいて、食事もとっておいた。

「とにかく、急ごう。もしこんな戦いに乗った奴に襲われていたら取り返しのつかないことになる」
 マリオはそう言いながら、ようやく立ち上がった。
 そこまでルイージ達が心配なのか?

 確かに――あの教室で絶叫していたのはプーも確かに見ていたので、とてもではないが精神的に強いとは思えなかった。
 しかも、殺されたのが友人、或いは恋人――
 プーは言い知れぬ不吉な予感を覚えた。
 あくまで予測の域すら出ていない考えだったが、それはプーにとって大きな脅威になりつつあった。
 もし、実際にそうなって、それをマリオが知ったら? そして、マリオはどうなるのだ?
 まさか――ルイージがゲームに乗ってしまったら?
 友人を生き返らせる為に――

 プーの思考は中断された。
 ぱららららら、と古いタイプライターよろしく、小気味よい音が大きくプーの耳に届いたので。
「おい、今のは……」
 もちろん、マリオが言う前に理解した。
 明らかにジェフがペンシルロケットを連続発射する時のように、危険な音と認識出来たからだ。
 更に続けて、ぱららららら、と、また響いた。
「遠いけど……まずくないか?」
 南からの銃声――つまり、ゲームに乗った参加者は明らかに存在している!

 瞬間、マリオがその方向へ走りだそうと足を浮かせていた。
「おい!」
 まさにマリオの身体が動こうとした時、プーがデスビームを握り締めてていた右腕を握り締めた。
「やめろ!」
「なんでだよ、今、襲われているのはピーチ姫やルイージかもしれないんだ。そうじゃなくても、やる気の無い奴が襲われているかもしれないんだぞ」
「そんなことを言っているんじゃない」
 プーが歯を剥いた。
 彼自身、あまりにも敵に近付きすぎるのは危険なのは一番分かっている。
 そうだ、敵を倒そうと接近しすぎて逆に意識不明になる程強烈な打撃を浴びせられた事もあった。

 第一――ここからでは距離が遠すぎるのだ。
「あの場所までどれだけ距離があると思っている? 途中に誰が居るかも分からないし」
 一旦、息を止めて、続けた。
「いきなり敵陣に入って生き残れると思っている程、無謀な事はないぞ」
「じゃあ見殺しにするのか!」
 マリオはプーの手を振りほどき、今度こそ走り始めた。
 もう遅かった。
 マリオの姿は、プーと完全に決を割った事を表すかの様にすぐに森の茂みの中へ消えていった。
「――」
 プーは言葉を失っていた。
 たった今、仲間だと認識していた人物が確かに消えたのだ。
 行ってしまった。
 しかも――自分がもう少しうまく説得すれば止めることが出来たんじゃないのか?
 いずれにせよ、マリオはもう居ない。居ないのだ。
 ゆっくりと、プーは諦めて上げたままの手を下ろした。
 もちろん――マリオを追う事は出来ない。
 完全に自殺行為だ。
 だが、マリオは間違っている訳ではないし、自分が間違っているかもしれない。だが――
 それに、いや、この状況でなくてもだ。仮に、ネス達が殺されたとなれば?
 そうなれば――自分は”願い”を叶えてこんな戦いに巻き込まれてしまった者達を蘇らせよう。
 ポーキーにいくら蔑まされ、笑われようと、自分は、犠牲になった者達を救う。
 だが、そうならなければ今なら間に合う。人に苦しみを与えずに済むのだ。例えその対象が既に血塗られた罪を背負った者だろうと。
 マリオの心境は分からない。だが少なくとも、自分をかえりみず襲われた者を救おうとはしているのだ。
 だが、プーはそうはいかなかった。
 自分はまだ死ねない、少なくともネス達、戦いに乗らない者達が安全な状況を作らなければならない。
 そうする為、今進むべき方向は西――町のある、エリア2だ。地図は先程確認していた時に頭に叩き込んでいたので、
 コンパスに狂いがなければ灯台から真っ直ぐ、エリア2へ着く筈だった。
 少なくとも需要がある町なら誰か、仲間が居るかも知れない。

 またぱららららら、と聞こえた。もし全てが別々に放たれたもので、全てが命中しているならば、三人も倒されたことになる。
 どうやら、思ったより急がなければならなかった様だった――

 マリオは森を走り続けた。
 マリオの身体の中に何もかもが響いてくる。
 木々のざわめきも、自らの心臓の鼓動も、人が倒されてゆく感覚さえも。
 それが――マリオはとても気に入らなかった。
 許せる筈が無い。
 人が人を殺すなんて、それが許される馬鹿な世界なんて何処にある?
 認める訳にはいかない。こんなクソゲームのルールなんてどうでもよかった。
 プーには悪かったが、あのマシンガンで蜂の巣にされても、ポーキーに首輪に首を引き千切られても俺は助けなければならない。
 ピーチ姫を、ルイージを、ヨッシーを、マロを、ジーノを、一応、クッパも。

 絶対に、だ。

【一日目/午前】
【名前:マリオ・マリオ(マリオブラザーズ)
健康状態:良好
 武装:デスビーム@MOTHER2
所持品:支給品一式
現在位置:C-11
第一行動方針:銃声がした方向へ急ぐ
第二行動方針:ルイージ、ピーチ達を捜す
第三行動方針:率先して説得を行う
最終行動方針:ゲームを潰す
備考:南に移動中、シリカの銃声をマーダーのものだと認識しました】

【名前:プー(MOTHER2)
健康状態:良好
 武装:素手
所持品:支給品一式  サンダー@FE封印/残り5回 ガールートのサークレット@アニメ星のカービィ
現在位置:B-10
第一行動方針:エリア2へ行く
第二行動方針:ネス達を捜す
第三行動方針:出来れば、ゲームを止めさせる
最終行動方針:全員を助け、ゲームから脱出する 。出来ればポーキーを倒す。
備考:西に移動中。シリカの銃声をマーダーのものだと認識しました】


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最終更新:2007年06月24日 18:48