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第五十三話『ボクにその手を 』


ある意味でスピンは安堵し、これまたある意味でスピンは驚愕した。
 草以外に何も無いような、ただ広い空間の近くの道で、名簿と地図を手に取りながら。
 ポーキーではなく、カジオー――だったか。
 そう言う名前の放送担当の(取り敢えず、ポーキー一人が事を運んでいたわけではないのが分かった)放送がさっきあった。
 そして、そのカジオーは退場した参加者の名前を事務的に読み上げた後に、”禁止エリア”の発表を行ったのだった。
 その名前の列の中にはもちろんリリーナの名前もあったのだけれど、彼が敬愛する団長――ドロッチェは居なかった。
 それでスピンは心の何処かで安堵したが。

 あまりにも多すぎたのだ、呼び上げられた数が。

 ――二十一人。
 たった六時間で二十一人も死んでしまったのだ。いや、狂った誰かに殺された。或いは自ら静かにこの世とおさらばしたのかも知れない。
 とにかく、あの時点でもう四十人になってしまっていたのだ。
 今だって減り続けているかも知れない――
 それでスピンは頭が少し眩む気がした。

 スピンはあれから東の草原に入って、エリア7――学校へ続く道に居た。
 リリーナの死体はまだ、あのボロボロになった病院前に転がったままだ。
 そう、埋葬もしてやれず、背中の石も抜いてやれず、ただ目を閉じさせただけの死体が。
 ――それを考えて、スピンに更に怒りが沸き上がった。
 ポーキーに対する怒りが。
 もちろん、今はそんな感情が存在したとしてどうなる、と言う結論にはなった。
 冷静にならなければならない。今度は誰も居ないし味方も居ないのだ。
 一度でも隙を見せれば、――やられる。

 当座スピンが居るところには関係していなかったが、”禁止エリア”とやらに引っ掛かるのはごめんなので、正確に移動しなければならない。
 今、スピンはコンパスを見ながら、真っすぐと北を歩いている。
 昼の時点では草原に居たのだが、スピンが昼に居たのはK-5、つまり北に見える学校に縦に垂直なブロックを目指していた。
 E-6とG-4はちょうど、学校のあるエリア7の近くだったので、把握しなければならなかったのだ。
 ドロッチェは何処に居るのか、それは分からなかったが人が居そうな建物は調べなければならない。
 学校から街へ、そう巡ろうとしていた。

 この地図のグリッドの区切りの距離が何メートル、或いは何キロか、それは今は考えなかった。
 ただ――

 スピンは放送とか、禁止エリアのそれ以外にも気圧されていた。
 草原に、しかもほぼ同じ場所に死体が三つも転がっていたのだ。J-5――ちょうど、学校の玄関が真っ直線に伺える場所だった。
 もう炭クズのボロボロになって死体かも分からない死体、額に穴が空いた死体、頭の半分が爆発した死体。
 いずれも凄惨、と言った方がいいのだろうか?
 それでリリーナの死体の事を思い出してしまった。
 明らかにゲームに乗った参加者が居たのだ。
 しかも、もしかしたまだこの近くにいるのかも知れなかった。

 今、スピンは死体の集団から離れてI-5を急いでいた。
 とにかく団長に会う前に自分が死んだら駄目なのだ。リリーナが自分を庇った意味を成さない。
 そう、死んだら――


 死んだら。――団長が。
 そうだ、仮に、だ。
 団長がもし、誰かに殺されていたら?
 間違いなく、自分はゲームに乗って、喜んでゲームに優勝する為に殺すだろう。
 全て、団長の為に。それに――リリーナ、他のみんなも救えるだろう。
 願いを使って。
 しかし、団長はともかく、リリーナ達も救う――それだと団長が殺される必要があった。自分ではなく、ゲームに乗った輩が。自分には団長が殺せないから。
 このまま団長が殺されなければ、自分は団長とどうにか脱出して、永遠にリリーナ達は失われる。
 自分は団長に「死んでください」なんて言えない。
 いや、それどころか団長に会ったら後は平然とリリーナ達を見捨てる道を歩むかも知れない。

 ポーキー達は、どこまでボクを苦しめるのだろう。
 ――ボクにその手を汚せと言うのか――

【J-5/日中】
【名前:スピン(星のカービィ)
健康状態:落ち着いた、しかし少し葛藤
武装:無し
所持品:支給品一式 フレイボム@FE烈火/残り3個 救急パック(箱。中身は未確認)
現在位置:I-5 廃校の近く
基本行動方針:ドロッチェと合流する、もしドロッチェが死亡したら優勝する覚悟
第一行動方針:学校経由で街に向かう
第二行動方針:禁止エリアは嫌なので慎重に移動する
最終行動方針:ドロッチェとゲームから脱出する 、又は優勝して参加者達を生き返らせる
備考:スカーフが少し汚れています】


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最終更新:2007年09月17日 00:55