静かな部屋。
僕はじっと、本を読む。
同室の二人は今日はお出かけ。
僕も一緒に行こう、と誘われたけど断わった。
たまには二人でゆっくりデートでもしてきてほしい。
というか、二人は僕に気を使いすぎだと思う。
確かに、いつも一緒にいた仲だからちょっと寂しいというのは本当だ。
だけど、そんな寂しさよりも二人が幸せそうな顔をしてるのを見るほうが、僕にとってはよっぽど大きいから。
それに――――――――
「・・・のどか、さっきのページもっかい読ませて。 筋わかんなくなっちゃった」
「あ、わかりました」
僕もこっそり、こうして明日菜さんと本を読んだりしてるし、ね?
僕はじっと、本を読む。
同室の二人は今日はお出かけ。
僕も一緒に行こう、と誘われたけど断わった。
たまには二人でゆっくりデートでもしてきてほしい。
というか、二人は僕に気を使いすぎだと思う。
確かに、いつも一緒にいた仲だからちょっと寂しいというのは本当だ。
だけど、そんな寂しさよりも二人が幸せそうな顔をしてるのを見るほうが、僕にとってはよっぽど大きいから。
それに――――――――
「・・・のどか、さっきのページもっかい読ませて。 筋わかんなくなっちゃった」
「あ、わかりました」
僕もこっそり、こうして明日菜さんと本を読んだりしてるし、ね?
「秘密の時間」
「う~~~・・・この本、あちこちに伏線張ってあるから読んでるうちにこんがらがっちゃうのよねぇ・・・・・・」
僕の耳元で口を尖らせながら、明日菜さんが小さく唸る。
そんな様子が可愛くて、僕は思わずくすくす笑ってしまう。
すると明日菜さんは、顔を真っ赤にして僕の肩を揺さぶってくる。
「あ! ちょっと、何笑ってんのよ!」
「うわぁっ!? べ、別になんでもないですよぉ!」
「なんでもなくなーい! 本読み慣れてないんだからしょーがないでしょー!?」
「わ、悪いなんて言ってませんー!」
「うるさいうるさーい! わーらーうーなー!」
明日菜さんの力で思いっきりがくがく揺すられると本当に目が回る。
なので、本当に目が回りそうになったら僕は明日菜さんの手を必死で叩く。
すると明日菜さんはぱっと揺するのをやめて、頬を可愛く膨らませたまままた僕の首に腕を回して本の続きを読み始める。
「もぉ・・・のどかが変なとこで笑うからどこまで読んだかわかんなくなっちゃったじゃない・・・」
「ぼ、僕のせいじゃないですよぅ」
「なに?」
「なんでもないです」
横目でじろりと睨まれて、慌てて眼をそらす。
うう、女の子の明日菜さんに力で敵わないっていうのはこういうとき辛いよね・・・・いや普段も結構辛いけどさ。
なんというか、男としてのプライドというか、そのあたりがこう・・・・わかるでしょ?
そんなことを考えていると、
「のどかー? 何ぼーっとしてんの、早く続き続き」
明日菜さんに続きを急かされる。
「あ、ごめんなさい」
慌てて次のページをめくり、本に集中する。
・・・ふりをして、こっそり明日菜さんの様子を伺う。
明日菜さんは、開かれたページの序盤はふんふんと訳知り顔で、中盤はんん?と首を傾げ、終盤は嘘!と小さく叫んで目を丸くしたりしている。
そんな明日菜さんのくるくる変わる表情が可愛らしくて、自然と頬がほころぶ。
ぺら、次のページ。
ぺら、その次のページ。
ぺら、またその次のページ。
ページをめくるたびに明日菜さんの表情がどんどん変化していくのが面白い。
明日菜さんは『本を読むのが苦手だ』というけど、こんなに楽しんで読めるのだから、単なる食わず嫌いだと思う。
目下の目標は、明日菜さんが一人でもいろんな本を読みたいと思えるくらい本に興味を持ってもらうこと。
・・・いやまぁ、今みたいに明日菜さんが僕の首に抱きついて一緒に本を読んでくれるっていう状況はとても捨てがたいんだけども。
「のどか? もう終わったよ?」
「え? ・・・あ、ホントだ」
言われて気づく。
確かに、何時の間にか僕らが読んでいた章は終わり、ページは次の章に移っていた。
まずい、また考え事すると周りが見えなくなる悪い癖が。
いい加減直さないとなぁ。
「どうでした? 明日菜さん」
ぱたん、と本を閉じて感想を尋ねる。
明日菜さんは、んー、と口元に手をやってしばらく考えてから、
「なんかあちこち話が飛んでこんがらがることがあるけど・・・やっぱ、面白いかなー」
と、言ってくれた。
この本を薦めて一緒に読んでいる人間としては嬉しい感想だ。
「よかった・・・もう少し読み進めればもっと面白いと思いますよ」
「そっかなー・・・そうだよね、うん、楽しみー」
そう言いながら明日菜さんは、機嫌よさそうに顔をすり寄せてくる。
明日菜さんの柔らかいほっぺからいい匂いがして、なんだかどきどきしてしまう。
顔が火照ってきたのを明日菜さんに悟られないうちに立ち上がり、飲み物を取ってくると言い訳。
明日菜さんはありがとー、と笑っている。
その顔を見ないようにして、そそくさと台所に入る。
冷蔵庫には・・・・・・よかった、普通のジュースが入ってた。
悪いときは夕映のお気に入りのジュース(不思議すぎて僕の味覚では理解できない)かハルキの栄養ドリンクしか入ってないときがあるからなぁ。
そんなことを考えながらジュースをコップに注ぎ、ふと鏡を見る――――まずい、まだ顔が赤いや。
ぱんぱん、と顔を叩いてからジュースを持って明日菜さんのところに戻る。
明日菜さんの前にジュースを置いて、それから僕が口をつける。
一口飲んで、一息つく。
ふと明日菜さんのほうを見やると・・・うわぁ、豪快に一気飲み。
あまりのいい飲みっぷりに思わず見入る。
ぷはー、とおいしそうにジュースを飲み終えた明日菜さんと目が合う。
その途端、明日菜さんは顔を赤くしてうつむいてしまった。
「あ、明日菜さん? どうかしましたか?」
何かまずいことをしてしまったのか、と慌てて尋ねる。
けれど明日菜さんはふるふると小さく首を振り、
「・・・・・・け」
小さな声で、ぽつりと何かを呟いた。
「え?」
思わず聞き返す。
すると明日菜さんは、赤い顔をうつむかせたまま、上目遣いでこちらをうかがいながら、
「・・・のどかの前で、あんな飲み方しちゃって、恥ずかしいだけ」
とだけ呟いて、今度は膝を抱え込んで顔を隠してしまった。
僕は一瞬きょとんとしたあと、思わず笑ってしまった。
だって、ずっと僕に抱きついたまま本を読んでいたのに、それくらいのことが恥ずかしいなんて。
あはは、と声を出して笑う僕を、明日菜さんが少しだけ顔を上げて睨んでいる。
その視線に気づいて、そっと明日菜さんに近づく。
僕が近づいて、また顔を隠してしまった明日菜さんに、ゆっくりと手を伸ばす。
僕の手が、明日菜さんの柔らかい髪に触れる。
ぴくん、と体を震わせる明日菜さんの髪を、優しく、優しく撫でてあげる。
しばらく撫でてあげると、明日菜さんは赤いままの顔を上げて、上目遣いで僕を見る。
普段の明日菜さんが絶対見せないような気弱な表情にどきどきしながら、それでも笑って頭を撫で続けてあげる。
すると明日菜さんが、くいくい、と僕の手のひらに頭を押し付ける。
はいはい、もっと撫でればいいんですね?
可愛いなぁ、なんて考えながら、もうしばらく頭を撫でてあげる。
すると、明日菜さんがぱっと顔を上げて、「ありがと」と微笑んだ。
どういたしまして、と答えると、明日菜さんはご機嫌な笑顔のままで僕のほうに近づいて、僕の膝の上に座った。
それを合図に、僕はまた本に手を伸ばす。
明日菜さんを後ろから抱える格好になりながら、しおりを挟んだページを開く。
そしてまた、明日菜さんと二人で、一冊の本を読み進めていく。
僕の耳元で口を尖らせながら、明日菜さんが小さく唸る。
そんな様子が可愛くて、僕は思わずくすくす笑ってしまう。
すると明日菜さんは、顔を真っ赤にして僕の肩を揺さぶってくる。
「あ! ちょっと、何笑ってんのよ!」
「うわぁっ!? べ、別になんでもないですよぉ!」
「なんでもなくなーい! 本読み慣れてないんだからしょーがないでしょー!?」
「わ、悪いなんて言ってませんー!」
「うるさいうるさーい! わーらーうーなー!」
明日菜さんの力で思いっきりがくがく揺すられると本当に目が回る。
なので、本当に目が回りそうになったら僕は明日菜さんの手を必死で叩く。
すると明日菜さんはぱっと揺するのをやめて、頬を可愛く膨らませたまままた僕の首に腕を回して本の続きを読み始める。
「もぉ・・・のどかが変なとこで笑うからどこまで読んだかわかんなくなっちゃったじゃない・・・」
「ぼ、僕のせいじゃないですよぅ」
「なに?」
「なんでもないです」
横目でじろりと睨まれて、慌てて眼をそらす。
うう、女の子の明日菜さんに力で敵わないっていうのはこういうとき辛いよね・・・・いや普段も結構辛いけどさ。
なんというか、男としてのプライドというか、そのあたりがこう・・・・わかるでしょ?
そんなことを考えていると、
「のどかー? 何ぼーっとしてんの、早く続き続き」
明日菜さんに続きを急かされる。
「あ、ごめんなさい」
慌てて次のページをめくり、本に集中する。
・・・ふりをして、こっそり明日菜さんの様子を伺う。
明日菜さんは、開かれたページの序盤はふんふんと訳知り顔で、中盤はんん?と首を傾げ、終盤は嘘!と小さく叫んで目を丸くしたりしている。
そんな明日菜さんのくるくる変わる表情が可愛らしくて、自然と頬がほころぶ。
ぺら、次のページ。
ぺら、その次のページ。
ぺら、またその次のページ。
ページをめくるたびに明日菜さんの表情がどんどん変化していくのが面白い。
明日菜さんは『本を読むのが苦手だ』というけど、こんなに楽しんで読めるのだから、単なる食わず嫌いだと思う。
目下の目標は、明日菜さんが一人でもいろんな本を読みたいと思えるくらい本に興味を持ってもらうこと。
・・・いやまぁ、今みたいに明日菜さんが僕の首に抱きついて一緒に本を読んでくれるっていう状況はとても捨てがたいんだけども。
「のどか? もう終わったよ?」
「え? ・・・あ、ホントだ」
言われて気づく。
確かに、何時の間にか僕らが読んでいた章は終わり、ページは次の章に移っていた。
まずい、また考え事すると周りが見えなくなる悪い癖が。
いい加減直さないとなぁ。
「どうでした? 明日菜さん」
ぱたん、と本を閉じて感想を尋ねる。
明日菜さんは、んー、と口元に手をやってしばらく考えてから、
「なんかあちこち話が飛んでこんがらがることがあるけど・・・やっぱ、面白いかなー」
と、言ってくれた。
この本を薦めて一緒に読んでいる人間としては嬉しい感想だ。
「よかった・・・もう少し読み進めればもっと面白いと思いますよ」
「そっかなー・・・そうだよね、うん、楽しみー」
そう言いながら明日菜さんは、機嫌よさそうに顔をすり寄せてくる。
明日菜さんの柔らかいほっぺからいい匂いがして、なんだかどきどきしてしまう。
顔が火照ってきたのを明日菜さんに悟られないうちに立ち上がり、飲み物を取ってくると言い訳。
明日菜さんはありがとー、と笑っている。
その顔を見ないようにして、そそくさと台所に入る。
冷蔵庫には・・・・・・よかった、普通のジュースが入ってた。
悪いときは夕映のお気に入りのジュース(不思議すぎて僕の味覚では理解できない)かハルキの栄養ドリンクしか入ってないときがあるからなぁ。
そんなことを考えながらジュースをコップに注ぎ、ふと鏡を見る――――まずい、まだ顔が赤いや。
ぱんぱん、と顔を叩いてからジュースを持って明日菜さんのところに戻る。
明日菜さんの前にジュースを置いて、それから僕が口をつける。
一口飲んで、一息つく。
ふと明日菜さんのほうを見やると・・・うわぁ、豪快に一気飲み。
あまりのいい飲みっぷりに思わず見入る。
ぷはー、とおいしそうにジュースを飲み終えた明日菜さんと目が合う。
その途端、明日菜さんは顔を赤くしてうつむいてしまった。
「あ、明日菜さん? どうかしましたか?」
何かまずいことをしてしまったのか、と慌てて尋ねる。
けれど明日菜さんはふるふると小さく首を振り、
「・・・・・・け」
小さな声で、ぽつりと何かを呟いた。
「え?」
思わず聞き返す。
すると明日菜さんは、赤い顔をうつむかせたまま、上目遣いでこちらをうかがいながら、
「・・・のどかの前で、あんな飲み方しちゃって、恥ずかしいだけ」
とだけ呟いて、今度は膝を抱え込んで顔を隠してしまった。
僕は一瞬きょとんとしたあと、思わず笑ってしまった。
だって、ずっと僕に抱きついたまま本を読んでいたのに、それくらいのことが恥ずかしいなんて。
あはは、と声を出して笑う僕を、明日菜さんが少しだけ顔を上げて睨んでいる。
その視線に気づいて、そっと明日菜さんに近づく。
僕が近づいて、また顔を隠してしまった明日菜さんに、ゆっくりと手を伸ばす。
僕の手が、明日菜さんの柔らかい髪に触れる。
ぴくん、と体を震わせる明日菜さんの髪を、優しく、優しく撫でてあげる。
しばらく撫でてあげると、明日菜さんは赤いままの顔を上げて、上目遣いで僕を見る。
普段の明日菜さんが絶対見せないような気弱な表情にどきどきしながら、それでも笑って頭を撫で続けてあげる。
すると明日菜さんが、くいくい、と僕の手のひらに頭を押し付ける。
はいはい、もっと撫でればいいんですね?
可愛いなぁ、なんて考えながら、もうしばらく頭を撫でてあげる。
すると、明日菜さんがぱっと顔を上げて、「ありがと」と微笑んだ。
どういたしまして、と答えると、明日菜さんはご機嫌な笑顔のままで僕のほうに近づいて、僕の膝の上に座った。
それを合図に、僕はまた本に手を伸ばす。
明日菜さんを後ろから抱える格好になりながら、しおりを挟んだページを開く。
そしてまた、明日菜さんと二人で、一冊の本を読み進めていく。
――――これが、僕と明日菜さんの、二人だけの、秘密の時間。
人に言うにはちょっと恥ずかしい、けれど、とても幸せな時間。
人に言うにはちょっと恥ずかしい、けれど、とても幸せな時間。