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明日太の同窓会

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匿名ユーザー

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─あれから何年経っただろうか…エスカレーター式で大学を抜けてから俺はずっと真帆良を出て一人暮らしをしている。それでも俺の中の時間はどこか分からない程の過去で止まってしまっている。朝は新聞配達、昼は会社で、夜もファーストフード店でバイト、体が休まる時間がない。でもそうしないと俺は何か分からない罪悪感にとらわれる。そんなある日、家のポストに一通の手紙があった、差出人は俺のよく知ってる人からだった。─

明日太の同窓会

「ったく、スーツなんて会社用のヨレヨレのしかねーっつーの…」
俺は自宅のアパートで一人愚痴る。あの頃は木乃香がいつの間にか一着用意してるかパパッとクリーニングしてたよなぁ。
「って、そんな事考えてる時間があったらさっさと準備しなきゃ!」
俺はスーツに袖を通し、この間届いた手紙を握り、交通費を持って集合場所へ向かった。

『お久しぶりですね、明日太さん。最後に会ったのは5年近く前ですね。今度いいんちょさんが幹事をしてくれる同窓会を開きますが、ご予定は空いているでしょうか? 日にちは4/21で、開催場所は3-Aのあった教室です。あれから皆はどうなったかも知りたいのでどうか来てくださいね。
ネギ子・スプリングフィールド』

ただの同窓会なのに俺は断りもせず、それに行くとも言わずに想い出の場所へ向かう。無くしてしまった時計を探しに行くためだけなのかもしれないし、皆に会ってもう一つ新しい時計を作るためなのかもしれない。
「俺は…何のために真帆良を出たんだっけ…」
電車に揺られながら通学中に嫌と言う程見た駅に降りた。あとはここから乗り換えて学園前に降りればいいんだっけな。昔の記憶をたぐり寄せて次の電車が来るまで椅子に座る。隣には誰もいない。無理も無い、今日は祝日でしかもとても朝早い。何故か体があの頃と同じ時間に起きてしまった。
電車が来ても、中には全く見た事もないファンキーな男や今では古いヤマンバギャルが居た。俺はじっと目的地までつり革につかまっていた。窓の外に見える景色は所々変わっていたが、懐かしい。そんな事で時間は過ぎ、学園前についた。
「まだ…思い出せない…か」
ぼそりとつぶやきゆっくりと道を歩く。ドタドタと走って行く若い学生がジャージ姿で走っている。このジャージを見るのも5年ぶりか…
中等部のある校舎まで来るとそこは無人で暫く使われていなかったようにボロボロで、とても大きく偉大に見えた。
「こんないい所だったっけ」
俺は笑いながら廊下を持参したスリッパを履いて歩いて行く。またあの頃に戻れるのか分からないけれど。

教室に入っても誰もいなかった。まぁそれが普通か…集合はお昼だもんな…
「…此処だったよな、俺の机…」
自分の座っていた机を撫でる。ふと気付くとある落書きが目に入る。
「これ…って…」
そこにはこう書かれていた。

『迷わないでください。そして幸せを掴んでください』

一体何の事か分からない。俺は待ってる間にヒマなのでそこに座って眠る事にした。誰か来たら起こしてくれるだろう。俺はまぶたを閉じて夢の世界へと行く。


『はよおきなぁ~、バイトに遅れるえ?』
─悪い、木乃香。今そっちへ行くから
『なんてな、今日は休刊やえ』
─あれ? そうだっけ?
『そうですよ、明日太さん。今日は皆で遊園地に行く日ですよ!』
─そうだったか、じゃあ早めに行くか
『あ、いいんちょさんたちを待たなきゃダメですよぅ』
─よく覚えてねぇや、えっと…どこいくんだっけ?
『駅の近くの遊園地ですよ』
─そうだったな、着替えるからあっち向いとけ

─でも珍しいな、いいんちょがこんな安い遊園地にくるなんて
『そ、それは…明日太さんが来るからなんて言えませんわ』
─え?
『何でもありませんわ! 私だってこういう所には来たいんですの』
─へぇ~、以外に庶民的だな
『ふふっ、いろいろと話が進んでますね』
『ウチらが間に入られへんなぁ』
─ネギ子、木乃香!? 急に話しかけるな!
『あらあら。仲がいいのね、あやかと明日太さんは』
『千鶴さん! そういう冷やかしはやめてほしいですわ!!』
─いいじゃん、夫婦みたいで
『明日太さんまで何を言うんですか!!』


「ああ…そんな事もあったな…」
俺は目を覚ました。時間はそれほど経っていなかった。俺はこの後どう時間をつぶそうか困っていた。ふと思いついたのは、この校舎の周りを歩く事。そうすればこの罪悪感の元を見つけられる気がしたから。気付くと既に体は昔の通学路を歩いていた。
『明日太さん! 遅れちゃいますよ!』
『明日太さんって人は…全く、それでも私の教え子ですか?』
『明日太さんって…優しいんですね…』
道の途中でネギ子の声を聞いた気がした。ただの幻聴なのだろうけれど。駅の中に入って切符を買って寮のあった場所に向かう。そこでも何か思い出せるかもしれないから。
「なぁ…誰か居ないのか?」
独り言が多くなって来ている。けれど失った自分を取り戻すためにと考えると何とも思わない。寮の壁にそっと触れてみる。頭の中に何かが出てくる。


『明日太さん、今日でよろしいんですよね?』
─そうだって! ホラ、早くしねーと売り切れちまうぜ
『そうですわね、では行きましょうか』
─金は大丈夫だろーな?
『私を誰だと思ってるんですの?』
─一人の美少女、雪広あやか様だと思ってますが?
『なッ!!』
─なんてな、大丈夫みたいだからさっさと行くぞ!
『あ、待ってください!』


「…ふぅ…」
昔の記憶も忘れている物ばかりで、覚えていたのなんてほんの少しだ。本当に自分を見失っているみたいだった。俺はまた校舎に向かって行く。途中新田に会ったけど、向こうは完全に忘れているみたいだった。すこし寂しいかもしれない。高畑先生は、どうして居るのかな。断られたけど、一度好きになった女性は忘れられないよ。
また俺は教室で眠りについた。また、思い出したい記憶があるのかは別として。


─これじゃないのか? お前が欲しいって言ってた服って
『そうですわ、最後の一着ですわね、お財布は…』
─出さなくていい
『え?』
─そこで待ってろ
『あ、明日太さん!?』

─いいんちょ、買って来たぞ
『明日太さん…あなたは…生活費は残っていますの?』
─気にすんな、そんな事を気にしてたら生きて行けないさ
『もう…これでは私もお返ししなくてはなりませんね…』
─ああ、いらねーよ
『いえ、それでは私の気が済みません。お昼に付き合ってもらいます!』
─しゃーねー、付き合いましょう
『ふふっ』

─ふ~、食った食った
『そう言いますけど、全然食べてませんわよ?』
─彼女から金をせびるような男じゃねぇって
『かっかかかかか彼女!!!?』
─? なんか間違えたか?
『ままままだそーゆー関係ではっ!! んぐ?』
─…
『ぷはっ、いきなりなんですの?』
─こうすればどう頑張ったって恋人さ
『もう…』
─好きだぞ…あやか…
(そっか…俺、いいんちょにこんな事してたんだ)

─そういえばさ、俺らが2人だけで歩くのって久しぶりじゃないか?
『そう…ですわね。そう思うと懐かしいですわね』
─お互いに変わっちまったのかなぁ?
『あの頃のままだから、好きでいるのではなくて?』
─そうだな
『明日また一緒にどこかへ行きません?』
─いいぜ、さっきの服で来いよ
『もちろんですわ』
(あ、いいんちょ走ってっちゃった…あれ? この後って…)
─危ないぞ、いいんちょ
『大丈夫ですわ、明日太さんと違いますから』
─(あ、危ない! いいんちょ!!)
『え?』
(そうだ…此処でいいんちょが交通事故に遭ったんだ…)

『君かね? 神楽坂君と言うのは?』
─はい、そうです
『娘は…あやかは大丈夫かね?』
─分かりません…出血も少なかったし、骨折も無いと医者は言ってくれました
『そうか…』
─失礼ですが…僕には一つ不安な事があるんです…
『何かね?』
─外傷は無くても、頭のダメージは意識が戻らないと分かりません…
(こんな会話してたっけ? あ、ネギ子が来た)
『アスタさん! いいんちょさんは…!?』
─分からない…
『そうですか…』
『君がネギ子ちゃんだね? あやかから聞いてるよ…可愛いね』
『……ありがとうございます』
─まだ…何かあるのかな? まだ病室に入れてもらえないなんて…
『どうでしょう…』
『すまないが神楽坂君…こっちへ来てくれ』
─はい? わかりました…

『あやかとは、どういう関係なんだ?』
─どうって…本当のことを言えばいいんですか?
『ああ、頼む』
─いいんちょ…いえ、あやかとは恋人同士です…
『そうか…』
(あ…たしかここで嫌な事があったんだ…)
『すまないが…君はご両親はおられるのかな?』
─いません…小さい頃から親はいませんでした
『そうか……君の前では言い辛いのだが…あやかにはずっと前から恋人がいるらしい…』
─…え?
『だから…一人と付き合う事が適切だ…あやかとは…そう言う関係はやめてくれ……』
─…
『すまないな…』
(あ! 俺! どこへ行くんだ!!)


俺は夢の中で自分を見失うと目が覚めた。まだ誰も来ていない。時間は本当にあっているんだろうか?
「そっか…たしかあの後、いいんちょと距離置いて、卒業して、避けるように逃げたんだな…」
俺は自分の中の時計を見つけたつもりだ、そして無理矢理に動かしている。そう、仕方の無い事だと。
ふいに、教室のドアが開いた。そこにいたのは、今思い出した一番会いたくない人物。雪広あやかだった。
「明日…太……さん…?」
「………」
俺は顔を反対方向へ向ける。後ろからはすすり泣く声が聞こえた。すると同時に背中を抱きしめられる。
「ごめんなさい…!」
「……何がだ?」
「…え?」
「だから、謝られるような事をお前がしたか?」
そう言うといいんちょは…あやかは俯いて一言。
「お父様が言ったのは…ただの勘違いなのです!」
「……」
俺は何も言わなかった。どうせ勘違いでもあそこで俺は自分の足下を崩されたも同然なのだから。
「…私は、ずっと明日太さんだけを見ていました…ずっと恋人になりたいと思っていました」
「でも…俺らは世界の違う人間だぜ…」
「それでも…私はあなたが好きです…」
強引に体を曲げられキスをされる。あのときの…恋人になったときの感触と同じだった。
「…ぷはっ、でも…お前の親父さんは…」
「もう死にました…」
「あ、悪い…」
「いいんですよ。それに、これで私たちは結ばれる事が出来ます…」
俺はそれを聞いて安心した。けれども、自分の中に出た答えは正反対だった。
「でも、ただのリーマンと美人社長…おっと、お姉さんがいたか…お偉いさんとは釣り合わねーよ…」
「だったら! 何故あの時は私を好きだと言ってくれたのですか!?」
「でもあの時と今じゃ2人の気持ちは全然違うだろーが!」
パチン、と物を叩くような音が聞こえた。その直後に自分の頬が叩かれたのだと気付く。
「私は…雪広あやかは…何にでも一生懸命な神楽坂明日太さんに好きになったんですわ!!」
「いいんちょ…」
「ですから…あの頃の2人に戻りたいのです…」
俺は言葉を出す前に、いいんちょを抱いた。
「悪かった…悪かった……」
あやかも力一杯に抱き返してくる。俺をどこかへ離さないように。
「もう一度…恋人になってくれるか?」
「…それは違います……私を妻にして頂きませんか?」
「……許されるのであれば」
そこで俺たちは、深い口づけを交わした。

それからネギ子が来て、他の懐かしい面々も来た。ネギ子はネギ子でいろんな所が成長してるし、他の皆も変わりはなかった。もしかしたら、俺だけが行き先を見失ってあがいてたのかもしれない。今、俺の中の止まっていた時計はゆっくりと自然に動き出した。俺はもう一度歩き出す。あやかと一緒に歩く、幸せの道を。

  • Fin-

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