「亜~~~~~貴~~~~~~~っ!」
後ろのほうから聞こえてくる、元気そのものの声。
亜貴にとっては振り返るまでもなくその声の主がわかる、聞きなれた声。
大方の予想をつけつつ亜貴が振り返ると案の定、こちらへ向かって全速力で走ってきているのは、亜貴のルームメイト――――まき絵だった。
亜貴にとっては振り返るまでもなくその声の主がわかる、聞きなれた声。
大方の予想をつけつつ亜貴が振り返ると案の定、こちらへ向かって全速力で走ってきているのは、亜貴のルームメイト――――まき絵だった。
――――いくらなんでも、女の子があんな大声出したらあかんやろ・・・
溜息交じりに苦笑しながら、多分聞いてくれへんのやろうなぁ、などと思いながらも一応注意する亜貴。
「まき絵・・・あんま大きい声出したらあかんよ・・・・・・ってうわああっ??!!」
が、その中尉注意が終わりきらないうちに亜貴の言葉は途切れた。
なぜか?
簡単だ、まき絵が亜貴に向かって全力ダイブしてきたのだ。
慌てて亜貴が受け止めにかかる、さもなくばまき絵はまず間違いなく大怪我をするだろう。
全力疾走から思いっきり跳躍したまき絵を受け止めた衝撃は相当なものだったが、なんとか踏ん張った。
さすがにここで倒れたらちょっとかっこ悪いしね、頑張ったよ亜貴。
なぜか?
簡単だ、まき絵が亜貴に向かって全力ダイブしてきたのだ。
慌てて亜貴が受け止めにかかる、さもなくばまき絵はまず間違いなく大怪我をするだろう。
全力疾走から思いっきり跳躍したまき絵を受け止めた衝撃は相当なものだったが、なんとか踏ん張った。
さすがにここで倒れたらちょっとかっこ悪いしね、頑張ったよ亜貴。
「ふぅ~・・・もうっ、まき絵っ! 危ないやんか、怪我でもしたらどないすんの?!」
とりあえずまき絵に怪我がないことを確かめて一安心したのもつかの間、すぐに怖い顔をして――――もちろん本気で怒ったりできるわけがない――――まき絵を叱りつける。
だが、「麻帆良の桃色アホウドリ」の異名を持つこの根っから能天気娘は、えへへ~っと笑って、
だが、「麻帆良の桃色アホウドリ」の異名を持つこの根っから能天気娘は、えへへ~っと笑って、
「ごめんごめん、もうしないよ~」
・・・これである。
反省の色がまったくない、というか何を反省すべきなのかわかってない、無邪気な笑顔。
一気に脱力してへたり込む亜貴。
わかっている、このなんともいえない能天気さ(いい意味での馬鹿さ、とも言う)こそがまき絵らしさであり、そのらしさがまき絵をみんなの人気者にしている、ということも。
だがしかし、身近でフォローする身になってみれば、これほど気疲れすることはない。
朝は遅刻寸前までよだれを垂らして寝こけ、飛び起きたかと思えば朝食の乗ったテーブルに突っ伏して二度寝をかまし。
挙句の果てに顔にバターやら牛乳やらがひっついているのにも気付かずに登校しようとしたうえにどう見てもカバンを持っていなかったり。
毎日こんなナイスボケをかましまくってくれる相方がおる苦労をわかってくれるような人って、どんくらいおんのやろ・・・、などとへたり込んだまま考えていたらば。
反省の色がまったくない、というか何を反省すべきなのかわかってない、無邪気な笑顔。
一気に脱力してへたり込む亜貴。
わかっている、このなんともいえない能天気さ(いい意味での馬鹿さ、とも言う)こそがまき絵らしさであり、そのらしさがまき絵をみんなの人気者にしている、ということも。
だがしかし、身近でフォローする身になってみれば、これほど気疲れすることはない。
朝は遅刻寸前までよだれを垂らして寝こけ、飛び起きたかと思えば朝食の乗ったテーブルに突っ伏して二度寝をかまし。
挙句の果てに顔にバターやら牛乳やらがひっついているのにも気付かずに登校しようとしたうえにどう見てもカバンを持っていなかったり。
毎日こんなナイスボケをかましまくってくれる相方がおる苦労をわかってくれるような人って、どんくらいおんのやろ・・・、などとへたり込んだまま考えていたらば。
「亜貴~、亜貴ってばぁ~! どうしたのぼーっとしてー」
「へっ? ・・・うわわわぁぁぁっ?!」
「あ~やっと気がついた~! もぉー、亜貴ったらぼーっとしすぎだよー!」
「ま、まままき絵、かお、顔が近いって! ちょ、ちょっと離れ・・・」
「ねぇねぇ聞いて聞いてー! 実はね、今度の大会で着るレオタードが届いたんだよー!」
いやこっちの話を先に聞いてくださいまき絵サン、などという亜貴の悲痛な心の叫びをまき絵が察することなど万に一つもなく。
まき絵は亜貴と鼻先が触れるほどの距離に顔を近づけ、上機嫌そのものと言った顔でにこにこしながら話を続行。
まき絵は亜貴と鼻先が触れるほどの距離に顔を近づけ、上機嫌そのものと言った顔でにこにこしながら話を続行。
「でねでね、そのレオタード、すっごく可愛いんだよー! ねぇねぇ、見せてあげるから早く帰ろーっ!」
言うが早いか、顔を真っ赤にしてへたり込んでいる亜貴を満面の笑顔で引っ張って行くまき絵。
亜貴はといえば、もう疲れ果てた顔で引きずられるのみである。
この短時間でここまで人を疲れさせることができるというのはもはや賞賛に値する気がする、したくないが。
亜貴はといえば、もう疲れ果てた顔で引きずられるのみである。
この短時間でここまで人を疲れさせることができるというのはもはや賞賛に値する気がする、したくないが。
――――もう、どーにでもして・・・・・・
ぐったりといい具合にくたばりながら、亜貴はそんな感想を抱いていた。
それからどーした、といえば。
現在、亜貴とまき絵の部屋。
状況、隣の部屋でまき絵がレッツ・生着替え。
亜貴の心境、天使と悪魔が大戦争。
気弱とはいえ亜貴も年頃男子、隣室で女子が今まさに衣擦れの音をさせながら鼻歌交じりに着替えているのをひたすら聞かされて平静でいられるはずもない。
下心が『ちょっとくらい覗いても、まき絵やったら許してくれるんちゃうかな・・・?』などと思えば、すかさず良心が『アカンアカン! な、なんてこと考えとんねんボクは!?』と自己嫌悪。
ああでもやっぱり、いやダメダメ、そんな葛藤を亜貴がひとり悶々と頭を抱えながら続けていたらば。
現在、亜貴とまき絵の部屋。
状況、隣の部屋でまき絵がレッツ・生着替え。
亜貴の心境、天使と悪魔が大戦争。
気弱とはいえ亜貴も年頃男子、隣室で女子が今まさに衣擦れの音をさせながら鼻歌交じりに着替えているのをひたすら聞かされて平静でいられるはずもない。
下心が『ちょっとくらい覗いても、まき絵やったら許してくれるんちゃうかな・・・?』などと思えば、すかさず良心が『アカンアカン! な、なんてこと考えとんねんボクは!?』と自己嫌悪。
ああでもやっぱり、いやダメダメ、そんな葛藤を亜貴がひとり悶々と頭を抱えながら続けていたらば。
「――――うわぁぁぁぁぁぁぁぁん! 亜貴ぃ~~~~~~~~~~~~~っ!!!」
「うわぁぁぁぁっ?! ちちちちが、ボク覗いたりなんか・・・・・・ってまき絵服ーーーーーーーーーーーーーーーっ?!」
わーお向こうのほうから大サービスですよ亜貴君。
何があったかって、隣の部屋で着替えていたはずのまき絵が突然“パンツ一枚で”泣きながら飛び出してきたわけで。
突然そんなことになったらなんでもない人間でもビビるというのに、いわんや覗くか覗くまいかで悶々と悩み続けていた(本人は否定)人間はそりゃー驚いた。
しかし肝心のまき絵は素っ裸なのを気にしていないのかあるいは気付いていないのか、そのままで亜貴に先ほどと同じように飛びついて泣きながら、
何があったかって、隣の部屋で着替えていたはずのまき絵が突然“パンツ一枚で”泣きながら飛び出してきたわけで。
突然そんなことになったらなんでもない人間でもビビるというのに、いわんや覗くか覗くまいかで悶々と悩み続けていた(本人は否定)人間はそりゃー驚いた。
しかし肝心のまき絵は素っ裸なのを気にしていないのかあるいは気付いていないのか、そのままで亜貴に先ほどと同じように飛びついて泣きながら、
「どどど、どうしよぉぉぉぉぉぉ!!! れ、レオタードのサイズが合わないよ~~~~~!!!」
そう叫んだと思ったら、そのまま亜貴の胸に顔をこすり付けて号泣。
だがしかし、実は亜貴にとってこのまき絵の軽いヒステリー騒ぎは初めてどころではない。
まき絵と同室になった頃から、あるときはお菓子の食べすぎで微妙にお腹周りがアレなことになってしまったり、またあるときはサイズ自体を間違えて注文していたり。
食べすぎはまだしも、サイズ間違いは一度やればもうしなさそうなものだが、このバカピンクはもう何度も何度もそれをやらかしてはこんな風に騒ぎ立てた前歴があるのだ。
なので亜貴は(悲しいことに)もうこの手の騒ぎの対処法はマスターしている。
なだめて、おいしいものでも食べさせて(ウエストの問題の場合でも)、そして問題解決するまでフォローする約束をしてやる。
それで大体まき絵は泣き止み、とりあえず一件落着。
あとは、サイズ問題なら再注文、ウエスト問題なら運動メニューを作ってやる(このへん保険委員なので詳しい)、それくらい。
However、しかしながら。
今回ばかりはそうはいかない。
なぜってアンタ、
だがしかし、実は亜貴にとってこのまき絵の軽いヒステリー騒ぎは初めてどころではない。
まき絵と同室になった頃から、あるときはお菓子の食べすぎで微妙にお腹周りがアレなことになってしまったり、またあるときはサイズ自体を間違えて注文していたり。
食べすぎはまだしも、サイズ間違いは一度やればもうしなさそうなものだが、このバカピンクはもう何度も何度もそれをやらかしてはこんな風に騒ぎ立てた前歴があるのだ。
なので亜貴は(悲しいことに)もうこの手の騒ぎの対処法はマスターしている。
なだめて、おいしいものでも食べさせて(ウエストの問題の場合でも)、そして問題解決するまでフォローする約束をしてやる。
それで大体まき絵は泣き止み、とりあえず一件落着。
あとは、サイズ問題なら再注文、ウエスト問題なら運動メニューを作ってやる(このへん保険委員なので詳しい)、それくらい。
However、しかしながら。
今回ばかりはそうはいかない。
なぜってアンタ、
「まっ、ままままき絵お願いやからふふふ、服着て・・・・・・・・!!」
亜貴のほうも、あからさまな大パニック。
だって覗くか覗くまいかって考えるだけで心臓がとんでもないことになってたのにいきなりほぼ全裸で出てこられちゃあねぇ。
目は回るわ手はなんかばたばた動いてるけどまったく意味がないわ、まったくどうしようもない。
だがいつまでも騒いでいるわけにはいかない、理性がいつ飛ぶか知れたものではないし何より他の部屋のクラスメイト――――アキラや裕奈あたり――――に騒ぎを聞きつけられて現状を目撃されたら・・・想像するだに恐ろしい。
というわけで、亜貴はわずかに残った理性をかき集めて、泣きじゃくるまき絵がさらけ出している小さくて綺麗な背中――――背中でよかった、とは亜貴の談――――に手近にあった布団(朝までまき絵が包まってた)をかけてやり、頭をなででなだめてやる。
だって覗くか覗くまいかって考えるだけで心臓がとんでもないことになってたのにいきなりほぼ全裸で出てこられちゃあねぇ。
目は回るわ手はなんかばたばた動いてるけどまったく意味がないわ、まったくどうしようもない。
だがいつまでも騒いでいるわけにはいかない、理性がいつ飛ぶか知れたものではないし何より他の部屋のクラスメイト――――アキラや裕奈あたり――――に騒ぎを聞きつけられて現状を目撃されたら・・・想像するだに恐ろしい。
というわけで、亜貴はわずかに残った理性をかき集めて、泣きじゃくるまき絵がさらけ出している小さくて綺麗な背中――――背中でよかった、とは亜貴の談――――に手近にあった布団(朝までまき絵が包まってた)をかけてやり、頭をなででなだめてやる。
「な、なぁまき絵、とにかくなんか着よ? 風ひいてまうし、な? レオタードのことやったら、ボクも手伝ったるから・・・」
よしよし、と頭を撫でてやりながら、同じようなことを何度か繰り返す。
2、3度目でまき絵の泣き声が弱くなり、それからもう少し撫でてやると、まき絵が涙でぐしゃぐしゃになった顔をあげて、
2、3度目でまき絵の泣き声が弱くなり、それからもう少し撫でてやると、まき絵が涙でぐしゃぐしゃになった顔をあげて、
「ほ、ホント・・・・・・?」
と、上目遣い。
泣いてて目が潤んでるから破壊力抜群。
あああまき絵お願いやからもうちょっとボクが男って意識して、心の底で悲鳴をあげつつ、亜貴はなんとか理性を保つ。
泣いてて目が潤んでるから破壊力抜群。
あああまき絵お願いやからもうちょっとボクが男って意識して、心の底で悲鳴をあげつつ、亜貴はなんとか理性を保つ。
「ホンマホンマ、やからほら、泣き止んで服着て」
「う~・・・わかった・・・・・・」
ぐしぐし、と腫れた目をこすり(どんだけ泣いたんだ)、布団に包まったままふらふら~っと隣室へ戻るまき絵。
どっと疲れが押し寄せ、はぁ~~~・・・・・っと大きな溜息をつく亜貴。
それにしてもまき絵さんはどれだけ亜貴に気苦労させれば気が済むんでしょうね。
どっと疲れが押し寄せ、はぁ~~~・・・・・っと大きな溜息をつく亜貴。
それにしてもまき絵さんはどれだけ亜貴に気苦労させれば気が済むんでしょうね。
――――まき絵、ボクのこと男の子やなくて、家政婦さんかなんかと思とるんちゃうかなぁ・・・・・・
なんて、亜貴が思ってしまうのも無理はない。
まぁ、一緒におって退屈せぇへんし、悪気があるわけちゃうから憎めへんねんけど、などとも思うのがお人よしの亜貴らしいが。
だがそういえば、今回は何も苦労だけではなく役得もあったりするわけで。
まぁ、一緒におって退屈せぇへんし、悪気があるわけちゃうから憎めへんねんけど、などとも思うのがお人よしの亜貴らしいが。
だがそういえば、今回は何も苦労だけではなく役得もあったりするわけで。
「まき絵、ちょっと胸大きなっとったなぁ・・・・・って何言うとんのボク?! ちゃうねん、これはちゃうねんーーーーーーっ!!!」
あーあー墓穴掘っちゃってるよこの人。
ところでこれは何も覗きの前科がある証拠ではない、ひとえにまき絵の(よく言えば)無邪気っぷりによる。
何せ同室になったばかりの中1の頃は裸で風呂から飛び出してくるわ(ゴキブリが出たとかで)、夏場に裸で寝てるわ(暑かったので寝ながら脱いだらしい)、否が応でもまき絵の成長していく様を見せ付けられているのが亜貴である。
さすがに最近はそんなことはなくなったとはいえ、当時の記憶をちょっと思い出せば比較は容易なわけだ。
・・・あれ、結構うらやましくないかコレ。
まぁとにかく、そんな亜貴が自分の発言への自己否定と自己嫌悪で騒ぎ立てていると、
ところでこれは何も覗きの前科がある証拠ではない、ひとえにまき絵の(よく言えば)無邪気っぷりによる。
何せ同室になったばかりの中1の頃は裸で風呂から飛び出してくるわ(ゴキブリが出たとかで)、夏場に裸で寝てるわ(暑かったので寝ながら脱いだらしい)、否が応でもまき絵の成長していく様を見せ付けられているのが亜貴である。
さすがに最近はそんなことはなくなったとはいえ、当時の記憶をちょっと思い出せば比較は容易なわけだ。
・・・あれ、結構うらやましくないかコレ。
まぁとにかく、そんな亜貴が自分の発言への自己否定と自己嫌悪で騒ぎ立てていると、
「亜貴~、何やってるの~?」
「うわぁぁぁ?! ななな、なんでもあらへん、なんでもあらへんよ?!」
「そお? ならいいけど」
パジャマ姿のまき絵がいつの間にか隣室から出てきていた。
なんか今日叫んでばっかりや・・・、そんなことを考えながらとりあえず呼吸を落ち着け、まだちょっとぐずっているまき絵をソファに座らせてから、台所に行ってアイスココアを作ってやる。
それを二人分持っていって、片方をまき絵に手渡してやる。
ありがと、と言ってまき絵が口をつけるのを見届けてから、自分も一口。
冷たくて甘い液体が喉をすーっと通り、気持ちがふっと安らぐ。
どうやらまき絵も同じようで、一心不乱にココアを飲んでいる。
なんか今日叫んでばっかりや・・・、そんなことを考えながらとりあえず呼吸を落ち着け、まだちょっとぐずっているまき絵をソファに座らせてから、台所に行ってアイスココアを作ってやる。
それを二人分持っていって、片方をまき絵に手渡してやる。
ありがと、と言ってまき絵が口をつけるのを見届けてから、自分も一口。
冷たくて甘い液体が喉をすーっと通り、気持ちがふっと安らぐ。
どうやらまき絵も同じようで、一心不乱にココアを飲んでいる。
「・・・落ち着いた?」
亜貴がそう聞いてやると、こくり、とうなずくまき絵。
やれやれ、とりあえずひと段落。
さて、後はこの騒動の原因を確かめるだけ。
やれやれ、とりあえずひと段落。
さて、後はこの騒動の原因を確かめるだけ。
「で、レオタードのサイズが合わへんって、レオタードが小さかったん?」
「うん・・・・・・」
やっぱりか、と肩をすくめる。
一応確認しないといけないが、まき絵は素直なので入らなかったのなら「入らなかった」と言うはず。
小さかった、と言うなら本当にサイズが小さかったのだろう。
二ノ宮先生に言いにいかなあかんね、と微笑んで、ココアをもう一口。
すると。
一応確認しないといけないが、まき絵は素直なので入らなかったのなら「入らなかった」と言うはず。
小さかった、と言うなら本当にサイズが小さかったのだろう。
二ノ宮先生に言いにいかなあかんね、と微笑んで、ココアをもう一口。
すると。
「ごめんね、亜貴・・・私、いっつもこんなのばっかりで・・・・・・」
うつむいてしゅんとしたまま、まき絵がぽつりとつぶやいた。
何をいまさら、と心の中で苦笑しつつ、明るく元気づけてやる。
何をいまさら、と心の中で苦笑しつつ、明るく元気づけてやる。
「ええよ、気にせんで。 なんでもしっかりできとるまき絵なんて、ボク逆に怖いし」
「ひ、ひっどーい!」
「あはは」
笑い事じゃないよー、と頬を膨らませるまき絵をまぁまぁとなだめて、飲み終えたコップを台所へ運ぼうと亜貴が立ち上がった、そのとき。
「あ、ちょっと待って、亜貴」
「ん? どうし・・・・・・」
ちゅっ
「なっ・・・・・・・」
「えへへ、今日のお礼!」
ありがとうねー、といいながらたたたーっと部屋を駆け出していくまき絵。
残された亜貴は呆然と、カップを手に持ったまま、しばらく立ち尽くしていたそうな。
残された亜貴は呆然と、カップを手に持ったまま、しばらく立ち尽くしていたそうな。
一件、落着?