昼休みの屋上に一人の生徒が携帯電話越しに怒鳴っていた。
「は?別れるってなんだよっ!?おい、ちょ…」
話す間もなく一方的に切られた。携帯を持つ手が力なく落ちる。
「はぁ…、またかよ…。」
彼の名前は“柿崎美砂雄”。2-Aで数少ない彼女持ちなのだがよくフラれるらしい。
美砂雄は屋上の手すりに掴まり何となく景色を眺めた。あちこちでカップルが楽しそうにお喋りしているのを見てまた溜息をつく。
「な~に溜息なんかついてんのよ。」
声がしたと同時に首筋に冷たい物が当たった。
「うわっひゃ!」
余りにも冷たくて変な声を上げたしまう美砂雄。後ろを向くと少女が立っていた。
「なんだ、円かよ…。」
彼女は“釘宮円”。同じクラスで同じチア部(と言っても美砂雄は男なので応援団)で、彼女とは親友である。
「なんだはないでしょ。はい、これ。」
そう言うと円は美砂雄の目の前に缶ジュースを差し出した。先程の冷たい感触はこれだったらしい。
美砂雄は一言お礼を言うとジュースを受け取り蓋を開けた。
「怒鳴り声がすると思って来てみれば…、なに暗い顔してんのよ?」
円の問いには答えず美砂雄は黙ってジュースを一口飲む。
「どーせまたフラれたんでしょ?」
美砂雄が一瞬ピクッと反応する。
「あ、図星だったんだ…。」
その場に気まずい空気が流れる。耐えられなくなった円は必死で励ます。
「ほ、ほら。そんなくよくよしてないで。…ね?」
「………」
「そ、それに女の子なんか沢山いるんだし…。」
「彼女…、好きな人が出来たんだって。」
「え…?」
今までずっと黙っていた美砂雄の口が開く。
「その前の彼女も浮気、その更に前の彼女も元彼とヨリを戻して。今まで付き合った奴は皆ほかの奴に取られた…。」
弱々しく語る美砂雄。その表情は俯いてるため見えないが今の表情は容易に想像できる。
「…俺、何が悪いのかなぁ?そんなに魅力ないのか?ああ、もう嫌になるよ。いっそここから飛び…」
言い終わらないうちに美砂雄の頬に痛みが走り、辺りに鈍い音が響いた。気がつけば円の右拳が突き出ている。
「…痛ってえな。」
「いつまでもウジウジしてなんじゃないわよ!男だったらシャキッとしなさいよ!」
「……せぇ」
「はぁ?」
「うるせぇんだよ!お前に何がわかんだ!?好きな人を取られる気持ちがよぉ!」
美砂雄は今まで以上に声を張り上げて怒鳴った。
「…わかるよ。」
「え?」
「好きな人が取られる気持ち。どんなに仲良くしても他の人に取られて…、その度に胸が苦しくて…。」
さっき美砂雄を殴った時の威勢はなく静かに語り始めた。少し声が震えている。
「だから…、だから今度は私が…!」
円はいきなり美砂雄の唇を奪った。時間にして数秒間だが恐ろしく長く感じた。そしてゆっくりと唇を離す。
「今度は私があなたを取る番だからね。」
そう言い残し屋上を出て行く。後に残された美砂雄は未だ状況を理解できないといった感じである。
美砂雄は先程の出来事を思い出す。柔らかい唇、甘い香り、潤んだ瞳。思い出して胸が熱くてドキドキしてくる。
「どーすりゃいいんだよ…。」
彼の呟きはセミの鳴き声にによって掻き消された。
「は?別れるってなんだよっ!?おい、ちょ…」
話す間もなく一方的に切られた。携帯を持つ手が力なく落ちる。
「はぁ…、またかよ…。」
彼の名前は“柿崎美砂雄”。2-Aで数少ない彼女持ちなのだがよくフラれるらしい。
美砂雄は屋上の手すりに掴まり何となく景色を眺めた。あちこちでカップルが楽しそうにお喋りしているのを見てまた溜息をつく。
「な~に溜息なんかついてんのよ。」
声がしたと同時に首筋に冷たい物が当たった。
「うわっひゃ!」
余りにも冷たくて変な声を上げたしまう美砂雄。後ろを向くと少女が立っていた。
「なんだ、円かよ…。」
彼女は“釘宮円”。同じクラスで同じチア部(と言っても美砂雄は男なので応援団)で、彼女とは親友である。
「なんだはないでしょ。はい、これ。」
そう言うと円は美砂雄の目の前に缶ジュースを差し出した。先程の冷たい感触はこれだったらしい。
美砂雄は一言お礼を言うとジュースを受け取り蓋を開けた。
「怒鳴り声がすると思って来てみれば…、なに暗い顔してんのよ?」
円の問いには答えず美砂雄は黙ってジュースを一口飲む。
「どーせまたフラれたんでしょ?」
美砂雄が一瞬ピクッと反応する。
「あ、図星だったんだ…。」
その場に気まずい空気が流れる。耐えられなくなった円は必死で励ます。
「ほ、ほら。そんなくよくよしてないで。…ね?」
「………」
「そ、それに女の子なんか沢山いるんだし…。」
「彼女…、好きな人が出来たんだって。」
「え…?」
今までずっと黙っていた美砂雄の口が開く。
「その前の彼女も浮気、その更に前の彼女も元彼とヨリを戻して。今まで付き合った奴は皆ほかの奴に取られた…。」
弱々しく語る美砂雄。その表情は俯いてるため見えないが今の表情は容易に想像できる。
「…俺、何が悪いのかなぁ?そんなに魅力ないのか?ああ、もう嫌になるよ。いっそここから飛び…」
言い終わらないうちに美砂雄の頬に痛みが走り、辺りに鈍い音が響いた。気がつけば円の右拳が突き出ている。
「…痛ってえな。」
「いつまでもウジウジしてなんじゃないわよ!男だったらシャキッとしなさいよ!」
「……せぇ」
「はぁ?」
「うるせぇんだよ!お前に何がわかんだ!?好きな人を取られる気持ちがよぉ!」
美砂雄は今まで以上に声を張り上げて怒鳴った。
「…わかるよ。」
「え?」
「好きな人が取られる気持ち。どんなに仲良くしても他の人に取られて…、その度に胸が苦しくて…。」
さっき美砂雄を殴った時の威勢はなく静かに語り始めた。少し声が震えている。
「だから…、だから今度は私が…!」
円はいきなり美砂雄の唇を奪った。時間にして数秒間だが恐ろしく長く感じた。そしてゆっくりと唇を離す。
「今度は私があなたを取る番だからね。」
そう言い残し屋上を出て行く。後に残された美砂雄は未だ状況を理解できないといった感じである。
美砂雄は先程の出来事を思い出す。柔らかい唇、甘い香り、潤んだ瞳。思い出して胸が熱くてドキドキしてくる。
「どーすりゃいいんだよ…。」
彼の呟きはセミの鳴き声にによって掻き消された。