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ある日のお弁当

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匿名ユーザー

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「おーい、夏くーん。 そろそろ起きないと遅刻するよー」

台所のほうからちづ兄の声がする。
でも駄目だ、眠い。
新しい台本読んでて寝るのが大分遅くなったから、まだ全然寝たりない。

「うぅ~・・・あ、あと5分・・・」

「駄目駄目、もうあやかも小太美も出ちゃったんだから。 それに、5分も寝てたら遅刻するよ?」

「・・・・・・え?」

その言葉で一気に目が覚める。
え、たった5分で遅刻?
いくらなんでも極端じゃないちづ兄、いくら僕でもそこまで寝坊は――――――――
はた、と枕元の時計に目が行く。
その時計の針が刺していた時間は、五分どころか今すぐ跳ね起きて準備しても遅刻ギリギリという時間だった。

「・・・うわぁぁぁぁぁぁ?! な、なんでもっと早く起こしてくれなかったのさちづ兄?!」

「何度も起こしたよ、でも夏君が『あと少し、あと少し~』って言うから・・・」

「だからってこんなギリギリまで寝てたら駄目に決まってるよ! ていうかちづ兄も間に合わないよ?!」

「大丈夫大丈夫、走ればなんとか間に合う時間だから」

慌てふためく僕をよそに、のんびりエプロンを外してカバンを取りに行くちづ兄。
もう大分長い間同じ部屋で暮らしているけど、あのおおらかさというか、器の大きさには呆れるのを通り越して尊敬すらしてる。
でも今日ばっかりはさすがにもうちょっと慌ててほしかったよちづ兄!

「えっと、ネクタイどこやったっけああそういえば今日英語あったんだあとサイフサイフ・・・」

もう準備を終えて僕があたふたしてるのをにこやかに眺めてるちづ兄をちょっと恨みつつ、大慌てで自分の用意を整える。
ちづ兄が渡してくれたサンドイッチをほおばったまま、ネクタイを締めて英語の教科書とノートをカバンに放り込みサイフをズボンのポケットに突っ込んで、急いで玄関に向かおうとした。

そのとき。

「あ、夏君夏君、忘れ物」

「えっ?」

靴を履き終えてドアに手をかけたところで、ちづ兄に呼び止められた。
あれ、何忘れたっけ、アレは持ったしアレも入れたし、えっとあとは・・・

「ほら、コレ」

そういってちづ兄が手渡したのは、可愛らしい布で包まれたお弁当。

「夏君、新しい台本の台詞覚えなきゃいけないでしょ? だったら学食よりお弁当のほうが都合がいいんじゃないかな?」

そういって笑うちづ兄。
ホント、敵わないや。

「・・・うん、ありがとうちづ兄」

「お礼なんていいよ、それより急ごうか。 このままだとネギ子先生に余計な仕事をさせちゃうからね」

「あ・・・。 い、急がないと、遅刻だぁぁぁぁっ!」

ちづ兄から手渡されたお弁当を慌ててカバンに詰め込み、僕とちづ兄は全力で学校まで走り出した。
・・・結論から言うと、僕とちづ兄はなんとか遅刻は免れたものの、僕は完全に体力を使い果たして、午前中の授業の大半を寝過ごしてしまった。
その授業の中にはネギ子先生の英語も含まれる。
ごめんね、ネギ先生・・・・・・


~昼休み~


キ~ンコ~ンカ~ンコ~ン・・・

「ふぅ~・・・、やっと昼休みだよ~・・・」

「あれ、あんなにたくさん寝たのにまだ疲れてるの?」

「・・・・・・勘弁してよ、ちづ兄」

ぐでーん、と机に突っ伏した僕が疲れてる理由を一番よく知ってるくせに、いつものようににこにこしながらからかってくるちづ兄を恨めしく思いながら、僕はそのままひと眠りしようとした。
したんだけど・・・

『ぐぐぅ~~~・・・・・・っ』

「・・・・・・あ」

「おやおや、朝ごはんがアレだけじゃ足りなかったかな?」

くすくす笑うちづ兄、僕に何か恨みでもあるの?
でも、とりあえずおなかが減ったことは確か。
早くお弁当食べて、ひと眠りさせてもらうことにしよう・・・

「あ、ちょっと待って」

「へ? どうしたのさ、ちづ兄」

お弁当の包みを開こうとした僕を押しとどめたちづ兄の意図がわからなくて、思わずきょとんとしてしまう。
ちづ兄は、しばらく難しい顔をしたあと、何かを思いついたみたいな顔をして僕にこう勧めた。

「いや、今日はいい天気だから屋上で食べたらどうかな、って思ってね」

それまでの間がちょっと気になったけど、それもいいかな、と僕は思った。
ちづ兄の言うとおり、今日は雲ひとつない青空で、こういう日に外でお弁当を食べるとまた格別なんだろうな。

「・・・うん、そうだね。 そうするよ、ありがとうちづ兄!」

「はい、いってらっしゃい」

あれ、ちづ兄来ないの?
言いだしっぺなのに・・・まぁいいや。
そんなことを考えつつ、僕は教室を出て、屋上への階段を上った。

「ん~~~・・・・・・、気持ちいいなぁ」

屋上のドアを開けると、さわやかな風が頬を撫でていった。
教室の窓から見るよりずっと近い空をひとしきり眺めてから、適当なところに座ってお弁当に手を伸ばす。
へへ、おなかペコペコなときって、お弁当を開く楽しみもひとしおだよね。

「今日のおかずは何かな~・・・・・・っと、あれ? 何だろう、これ・・・」

わくわくしながら包みを開くと、そこには今日の空と同じ、澄んだ青色の便箋が入っていた。
頭に『?』マークを浮かべながら開いてみると、そこには可愛らしい丸文字でこう書いてあった。

『夏兄へ
今日のおべんとうはウチがつくりました
ちづ兄みたいにおいしくないかもしれへんけど、たべてくれるとうれしいです 小太美』

「・・・これ、小太美が?」

手紙とお弁当を交互に見比べながら、僕は呆気に取られてしまった。
まさか僕が寝てる間に、小太美が僕のお弁当を作ってくれてたなんて、想像もしてなかったから。
でも、そう考えるとちづ兄が僕に「屋上で食べたら?」と勧めたのも納得できる。
・・・もしうわさ好きな誰かに見られたら、と思うとね。

「それにしても・・・小太美、頑張ったんだなぁ・・・・・・」

思わず感心。
お弁当の中にはちょっと不ぞろいなおにぎりがつめられ、その隣に卵焼きとタコウィンナー(小太美はコレが大好きなんだ)、それにプチトマトが3個並んでいる。
ちづ兄が手伝ったんだろうとはいえ、10歳でこれだけ綺麗に調理できるならたいしたものだと思う。
卵焼きだって綺麗に作るのは結構難しいし。

「そ、それじゃ・・・いただきます」

なんとなく、正座してきちんと手を合わせてしまった。
だ、だってなんだか神妙な気分になっちゃったんだよ!
まぁそれはともかく、まずは卵焼きからいただくことにした。

「あむ・・・んむ・・・うわ、おいしい!」

思わず叫んでしまうほど、本当にその卵焼きはおいしかった。
もちろんおにぎりやウィンナーも上出来で(プチトマトは料理とは言わないよね?)、帰ったら小太美を思いっきりほめてあげようと心に決めた。

「ふぅ~・・・ごちそう様」

丁寧にお弁当を包みなおして手をあわせる。
なんだかおなかがふくれたら眠気もどっか行っちゃったし、ホント小太美にお礼言わないとなぁ。

「あれ、食べ終わっちゃってたみたいだね、遅かったかな」

「あ、ちづ兄」

屋上でごろんと横になって空を眺めてると、ちづ兄が顔を覗き込んできた。
ちづ兄の顔がほころんでいる理由も、今ならよーくわかる。

「ちづ兄、どうして教えてくれなかったのさ?」

「ん、なんのことかな夏君」

まだとぼけるつもりですかちづ兄。
小太美は頑張り屋だけど、さすがにひとりであそこまでおいしいお弁当を作るのはまだ無理だと思う。
だったら、どうしてあんなにおいしいお弁当を小太美が作れたのか、答えはひとつ、でしょ?

「ごまかさないでよ、小太美がお弁当作るのを手伝ったの、ちづ兄なんでしょ?」

「ふふっ、やっぱりバレちゃったか」

ちょっと困ったように眉を寄せながら笑うちづ兄。
でも、あれだけ色々手を回しておいて気付かれないと思うのもどうかと思うよ?
・・・まぁ、確かにお弁当開けるまでおかしいと思わなかった僕も僕だけどさ。

「小太美、すごく頑張ったんだよ。 『夏兄に食べてもらうんやー』って、朝早くがんばって起きてね。 帰ったらちゃんとほめてあげてよ、夏君?」

「わかってるよ、ちづ兄」

そう答えた僕とちづ兄の間を、風が颯爽と吹き抜けた。


~放課後~


結論から先に言います。
・・・ごめんなさい、午後の授業もほとんどアウトでした。
ほ、ほら、ご飯食べてすぐよりしばらく経ってからのほうが眠くならない?!
・・・ならないね、ごめん。
そんななんともいえない後悔を抱えつつ、寮への帰り道を歩く。
部活のほうは、とりあえず台本を読み上げて感覚を掴むだけだったので早く終わった。
まぁ、新しい台本もらってすぐだしね。
と、そんなことを考えながら何気なく視線をめぐらせると。

「・・・あれ、小太美じゃないか」

「あっ・・・お、お帰り夏兄」

とは言うものの、なんだか小太美の様子がおかしい。
なんだかそわそわしてるし、僕に眼を合わせてくれないし。
ぼ、僕何か悪いことしたかな・・・・・・?

「な、夏兄、あのな・・・・・・」

「ん? 何?」

しかし小太美はもじもじしながらその先をなかなか切り出そうとしない。
けれど、これで僕はピンと来るものがあった。
・・・鈍かったね、ごめん小太美。

「お弁当、すっごくおいしかったよ、ありがとう小太美」

「あ・・・・・・」

僕がそういうと、小太美は安心したように微笑んだ。
その笑顔は、本当に本当に、愛らしい笑顔だった。

「・・・じゃ、帰ろっか」

「・・・うん!」

そして僕と小太美は、手をつなぎながら寮への帰り道を、二人並んで歩いていった。

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