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ラブ☆まほ!2

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5時間目 ドッジボール大勝負!斗え!!漢達!!!(前編)

 「うおおおおおおおおおおおっ!!」
麻帆良学園中等部校庭、芝生のところでとてつもなく男臭い雄叫びが響いている。
明石裕也、春日空、柿崎美砂雄、神楽坂明日太、古菲が、目にも留まらぬ速さで腕立て伏せをしている。
 事の発端は、空の「ジュース飲みてぇ~」の一言から、周りがマッチポンプ式に炊き上げて、敗者が勝者にジュース1本ずつ奢る、という『大腕立て伏せ大会』が始まってしまったからだ。
どれくらいの時間が経ったのか、良く分からない。横から、桜子の
 「がんばれー!あと3分ー!!」
というエールが聞こえた。しかし、その声さえもアスタには曇って聞こえる。軽く酸欠にでもなっているのだろうか・・・?そして、俺は何のために戦っている・・・?
 「終~了~!」
ピーッ、というホイッスルと共に桜子の合図が聞こえた。ほぼ同時に、選手達は芝の上にどさっ、と倒れこんで動かなくなった。
 ☆集計結果☆
明石 裕也・・・512回
春日 空 ・・・506回
柿崎美砂雄・・・577回
神楽坂明日太・・789回
古 菲  ・・・701回

 「か・・・・勝ったーーーーーーーー!!!!」
ダントツでアスタの勝ちだった。見事なまでの完全勝利。アスタはかばっと立ち上がると、両手を天にかざして吼えた。
 「あら、何をやってるのか知らないけど、そろそろ退いてくれる?」
へばりきっているアスタたちの後ろから不穏な声が聞こえた。

一方、職員室‐
 「で、やっぱりだれも相談とかには来てくれなくて・・・やっぱり私って教師に向いてないのかも・・・」
 「そんなことないさ、ネギちゃん。ほら、元気出して!」
ネギとしず哉が、いまやおなじみとなった会話をしていた。するとそこに、
 「やっべぇ!ネギちゃんいる!?助けてー!」
 「ひ・・・左腕やられてもた・・・もうアカン・・・」
と、ダラダラに汗を流したまき雄と亜子が転がり込んできた。
 「うひゃっ!?ど、どうしたんですか!?」
ネギが目を見開きながら訊くと、
 「こ・・・校内で暴行が・・・高校・・生・・・や・・・気を・・つ・・・けて・・・」
亜子は切れ切れにそう言うと、ばたっと倒れて動かなくなった。
 「・・・・みんなを・・・・たすけ・・・・て・・・」
まき雄も、それだけ言うとすっ、と眠るように目を閉じた。

 「おーほほほほほ、やっぱり中学生なんて目じゃないのね♪」
ワンピースの制服姿の女子高生は高らかにそう笑った。後ろには何人もの男子高校生もいる。
その連中が、校庭の場所取りの為に中学生達のいたところに、バレーボールでアタックしてきたものだからたまらない。おまけに、中学生は最大戦力が腕立てでへたばっている。
 「ま、これもお姉さまの命令だ。悪く思うなよ」
取り巻きの男の一人がそう言って裕也の襟首を掴んで引きずっていった。
 「・・・・・う・・・・ぐお・・・」
酸欠の裕也は当然声も出ない。しかし、突然
 「ま・・・待ちなさーい!!」
という幼い少女の声が聞こえた。
皆が一斉に振り向くと、そこには担任・ネギ・スプリングフィールドの姿があった。
 「い・・・いじめはよくないことですよ!?わ・・・私、教師だし怒りますよ!?」
ネギはしどろもどろながらそう叫んだ。
静寂。全てが止まったような感覚。そして‐
 「か・・・かわいーーーーーーー!!!!」
予想通り。男子高校生たちが一斉にネギに殺到した。
 「い・・・いやぁーーーーーーっ!!??」
まるで理性を失った獣だ。ぐったりしているアスタがそう思っていると、ちょうそそこにあやかがやって来た。
 「ア、アスタさん!?なんですの、この惨状は!?」
あやかが狼狽して尋ねてきたので、
 「・・・・欲望の赴くままに生きた男ども、とでも言っておこうか・・・・」
と呟いた。
すると、不思議なことが起きた。
スコン!
という低い音が何度かに渡って響くと、その後にはただぼんやりと立っているネギの姿があるのみだった。
いつの間にか、男達が完全にノックアウトされて地面にのびていた。
いや、違う。それだけじゃない。
アスタが何者かの気配を察して振り返ると、そこにはにっこり笑って、タバコを吸いながらポケットに手を突っ込んでいる眼鏡の美女‐タカミ・T・高畑が立っていた。
 「みんな・・・何してたのかしら?もしかしてイジメ・・・・とか?」
 「デ・・・・死の眼鏡・・・・!!」
倒れこんでいた男達(と、リーダーの女子高生)は、一斉に飛び起き、横一列に正座した。
 「違います!我々は何もしておりません!!中学生の後輩とレクリエーションに興じていただけでございます!!そ、それでは午後の授業が近いので失礼!!!」
一同、軍隊並みの綺麗な敬礼をビシッ、と決め、足早に去っていった。
残された中学生達もただ呆然とするばかり。タカミだけがニコニコ笑顔を崩さずにいた。
 「さ、みんな、午後の授業が近いわ!戻った方が良いわよ!」
タカミが優しくそう言うと、
 「ハ~イ」
とみんな素直に教室に戻っていった。
 「やっぱりすごいや!タカミ」
残ったネギがタカミに言うと、
 「いやいや、ネギちゃんもそのうちできるようになるわよ」
と、不気味に眼鏡の端を光らせて言った。

 「やっぱさぁ、タカミさんてスゴくねぇ!?マジで大人の女ってかんじでさぁ!!」
みんなから巻き上げたジュースをあけながらアスタは言った。
午後の授業は屋上でレクリエーション。とりあえずバレーボールをやることになっていた。
アスタたち男子は、女子達と離れて隣の教室で着替えている。
 「でも、やっぱり僕はネギちゃんかな!あのロリさは(ry」
まき雄が前屈運動をしながら返す。
 「俺はどっちでもいいぜ~、食えりゃぁなww」
 「美砂雄・・・・お前彼女いるだろ・・・」
美砂雄は、さっきの腕立てで完全にのびきってしまっている。今、横にいる円に運んでもらってここまで来たのだった。
 「でもさぁ、俺ら期末試験近いじゃん?だからやっぱタカミさんのほうがさぁ・・・」
 「ん?でもこのガッコさ、エスカレーターだから別に良くね?ネギちゃんの方が内職しやすいし・・・」
どこの学校でもありがちな会話である。すると、突然隣の部屋から
 「キャーーーーーッ!!クモーーーーーっ!!??」
という甲高い悲鳴が聞こえてきた。
 「大丈夫かーーーっ!?」
アスタ、空、美砂雄、裕也が隣の部屋に駆け込むと、恐るべきスピードでクモを発見し、つまんで窓から外に放り出した。
 「よし!もう大丈夫・・・・」
そういって振り返ったアスタ。ふと我に返る。
着替えの途中で下着一丁の男が4人。着替え途中の女子がたくさん。
アスタが真っ白になりながらドアのほうを見ると、にっこり笑ってカメラを構え、ついでにドアを閉めて鍵をかけている和実が目に入った。
 “ぐっどらっく”
和実の唇がそのように動くのをアスタは見逃さなかった。
 ハ・メ・ヤ・ガ・ッ・タ・ナァァァァァァァァッ!!!!!!!!
アスタが怒りの炎に燃えたその刹那、
 「いやぁぁぁぁぁっ!!!!」
という悲鳴と共に殴りかかってくる女子が軽く視認できた。
            ドン・マイケル♪

 「さ、もう授業始まるし、さっさと行こうぜー」
顔中絆創膏だらけになり(のどかと亜子から貰った)、地肌の面積の方が狭くなってしまっているアスタが先頭になって2‐Aは屋上に向かっていった。
 「う~痛え・・・・事故じゃんかよ・・・事故・・・」
同じくリンチに遭った空が呟く。
 「アスタさん、あなたは自分が何をしたのか、ちゃんと理解していますわよね!?」
あやかがキレ気味に詰め寄る。
 「だ~か~ら~、事故だっつってんじゃんよ!」
 「まぁまぁ、二人ともケンカせぇへんとさぁ、な?」
このかが冷静に仲裁に入ってくれる。
一方で、和実はさっきの写真を速攻で現像し、仕上がりを見て楽しんでいた。
 「朝倉ぁ!!てめぇっ!!!」
裕也が和実に飛び掛る。和実はそれを華麗によけて、
 「まぁ、キミ達の尊い犠牲によって明日のまほスポの一面はゲットだよ!」
移動中にも関わらず、ギャーギャーと言い合う声が絶えない。
 「でもさぁ、この学校敷地広い癖して校庭狭いよね~」
 「だよねぇww」
それにはアスタも心の中で同感していた。

屋上に上がると、そこにはなぜかいないはずの先客がいた。あろうことか、それは先ほどの高校生達だった。
 「あら、あなたたちも来たの?」
リーダーの女子が振り向いて話しかけてくる。
 「おいおい、あんたらのコートは隣の塔だろ?そっちいってやってくんねぇかな?」
完全にヤンキーの風体となっている美砂雄が噛み付いた。
 「あ~ら、別にどこでやろうと関係ないでしょ?なんだったらあなたたちが向こうに行けば?先輩の言うことは素直に聞いとくもんよ?」
女子高生も負けていない。
どこでどうなったのかは分からないが、2‐A男児のスイッチが入ったようだった。
 「いよっしゃぁぁっ!!!やったろやないかい!!」
 「後悔すんなや!このスカタンどもが!!!」
 「神に抗う者には死あるのみ、アルよ!!!」
みんなが飛びかかろうとしたその時、
 「ちょっとまったぁーっ!これが目に入らねぇかっ!!」
と、取り巻きの男が人形のようなものを突き出していた。
アスタが目を凝らして見ると、それは人形ではなく人間‐ネギ・スプリングフィールドだった。
 「ネギー、お前そんなトコでなにやってんだー?」
アスタが極めて冷静に呼びかけると、
 「あぅぅ、体育の先生が来られなくなったから代理でって・・・・」
とネギがあたふたと返事をした。
 「さぁ、これでもまだかかってくる?」
女子高生が意地悪く微笑むと、
 「ぐっ・・・まさか人質とは・・・」
 「ネギちゃんが囚われてちゃな・・・・分が悪りぃ・・・」
と、中学生達はすっかり意気消沈してしまった。
 「え~いもう!いい加減にしてください!!!!」
ネギの叫ぶ声が聞こえ、ズン!!という低い音が響くと、みんなが驚いてそちらの方を向いた。そこには仁王立ちになっているネギの足元に数人の男子が転がっている、という奇妙な光景が広がっていた。
 「ネ・・・ネギ・・・?」
アスタは、ネギがまた人前で魔法を使ってしまった、ということを危惧した。本当に節操のないやっちゃ・・・・。
ネギはそんなアスタの思いをよそに、とてとてと中学生のところに走り寄った。 
 「と、今私は多少の暴力を行使して逃げ出したワケですが、基本的に私は暴力は嫌いです!だから、ココは一つ、スポーツで勝敗を決めませんか!?」
ネギはできる限りの言葉をつむいで、両陣営に呼びかけた。
 「ふふ・・・いいでしょう。その勝負、受けてあげるわ!」
と、女子高生は気丈に答えた。
 「でもさぁ、ネギちゃん。種目はどないするん?向こうの方が体格ええ男の人多いからバレーは無理やと思うんやけど・・・」
 「あ、そっか・・・」
・・・ネギもたいした考えがあったわけじゃないみてーだな。
 「ふ~ん、それじゃあドッヂボールなんてどう?分かりやすいと思うんだけど?」
女子高生は余裕の顔つきで提案してきた。
 「それと、ハンデとして、こっちは11人、そっちは倍の22人できていいわよ。どう?」
願ってもない条件だった。それに、ドッヂボールならまだ勝機がある。
 「・・・OK,分かりましたわ。その勝負、お受けいたしましょう!」
アスタが言おうとしていたことをあやかはさらっと持っていってしまった。アスタは肩透かしを食らい、少しずっこけた。
 「?アスタさん、どうなさいましたの?」
 「・・・・なんでもねぇ・・・」
 「その代わり!!!」
女子高生は大声で叫びながらネギを引っ張り寄せると、
 「うちの子分の男達がどうしてもって言うし・・・私達が勝ったらネギ先生を教生として譲り受けるわ!あんたたち、それでいいね!?」
 「はい!お姉さま!!」
 「え・・・えええええええええええぇっ!!??」
どうやら、向こうの頭の中ではもう決定事項らしい。仕方がない‐
 「あやか」
アスタは右隣のあやかに話しかけた。
 「・・・なんですか」
あやかも集中力を高めているのか、非常に短い言葉で返す。
 「・・・勝つぞ・・・」
 「フッ」
あやかは少しだけ笑った。
 「そんなこと・・・あたりまえですわ!!」
 「おう!!」
普段は喧嘩ばかりしていても、やはり二人はここぞのところでは仲が良いようだ。
神楽坂明日太と雪広あやかは、ガッチリと手を組んだ。

こうして、一人の美幼女をめぐる、男どもの醜い聖戦が今、幕を開ける‐(一応、続く)


6時間目 ドッジボール大勝負!斗え!!漢達!!!(後編)

 「それはそうとして、チームはどうするんだ?俺は行きたくないぞ?」
いつもの様子からいうと、極めて冷静に美砂雄が口を開いた。

久しぶり。お馴染み、神楽坂明日太だ。現状を口で説明するのもヒジョーにメンドイので省略する。
なんのかんので22人のドッジボール代表メンバーを選出せねばならんことになったわけだ。
 「女のコをこんな中に放り込むってどうよ~?」
桜子が何か言っている。やかましいことだが、微妙に正論だ。俺もフェミニストだし。
 「・・・よし!できる限り男だけでチーム作るぞ!」
美砂雄や空がギャーギャーと喚いている。無視無視。アホは無視に限る。
 「じゃあ、男子は全員参加で、他に参加したい女の子がいたら言ってくれ!」

こうして、なんとかメンバーが出揃った。
明石・朝倉・綾瀬・大河内・神楽坂・柿崎・春日・釘宮・古・桜咲・佐々木・龍宮・鳴滝(弟)・葉加瀬・エヴァ・村上。
そして女子は和泉・近衛・早乙女・鳴滝(姉)・宮崎・雪広。

その場凌ぎにしてはなかなかのメンバーである。
それに、普通だったらみんなヤル気なんて全く無いが、ネギがかかっている。これなら流石に動かざるを得ない。
 「さて、こっちは揃ったぜ?年増姉さんよ?」
アスタの特に意味の無い挑発に、相手のリーダーの女子高生‐英子と名乗ったが‐は、こめかみをヒクッと痙攣させた。
 「・・・あ~ら、そうなの?せいぜいがんばってね・・・!」
・・・別に高校生で歳を気にする必要は無いと思うがな。

 「ゲームスタート!」
高校生の中で唯一余ってしまった少年が審判をやることになり、その掛け声でゲームは始まった。
ジャンケンの結果、高校生達からのボールだった。
あ、そうそう、ネギはスコアボードのところでグルグル巻きになってるぞ。
 「おっしゃぁぁーーーーっ!!」
英子の横についている二人‐ビビとしぃだったか‐の片割れが大きく振りかぶった。すると、こちらのチームから一人の生徒

が前線に出てきた。
エヴァンジェル・A・K・マクダウェル。
普段から全くと言っていいほどクラスに馴染めずにいた留学生。
そいつが、なんとこの場ですすんで前に出たのだ。アスタは信じた。エヴァが実は物凄いドッジボールが得意だということを


   
    ボスッ。

 「・・・・え?」
アスタはマンガのようなまん丸目になってその音の方を見た。
そこには、エヴァがやれやれ、といった顔と仕草でコートの外に出て行く姿と、その足元に転がるボールがあった。
そう、エヴァは始めから戦意などなく、さっさと離脱するために自ら当たりにいったのだ。
 「おいゴルァァァァァァァァーーーーーーーーッ!!!!」
クラス中の男子の叫びもどうやら聞こえないようで、比較的仲のよさそうな絡繰茶々丸の所へ行ってよっこいしょ、と座った


しばしの耐え難い沈黙。そして、
 「あ・・・あははははは!何々!?いきなり仲間割れ!?おっかしーーー!!」
英子の大爆笑。それにつられて他の高校生も一斉に笑い出した。

 「ほ~ら、必殺・・・・」
英子がそう叫んで振りかぶるだけでみんなが後ろに行きたがって背を見せた。
 「うおっ!?な、何か来るぞ!!」
 「いやぁっ!後ろに入れてっ!!」
 「ハルナちゃん!俺でよければ!ヤラナイカ!!?」
 「バカーーーーーーーーッ!!!ソッチじゃないっての!!!」
・・・いや、ホントみんなバカっスけどね。
しかし、英子は思いっきりは投げなかった。いや、投げない方がよかった、といえるだろう。
ポイッ、と軽くボールを投げるだけで後ろを向いていた連中の背中や頭にバウンドし、そして地面に落ちた。
それだけで、たったのそれだけで中学生は柿崎、釘宮、早乙女の三人を失った。
 「へ・・・へへへ・・・案外やるな、あいつら・・・」
軽く驚愕しているアスタは、あやかに背中合わせになって言った。
 「あら・・・アスタさん、もちろん諦めてなんていませんわよね?」
 「ああ・・・とにかくやるしかねえだろ・・・!」
しかし、そんな事を話している間にも状況は着々と悪化していた。先ほどと同じようにかるーく放っただけでまた被害が出た


朝倉、春日、鳴滝(姉)、龍宮の四人がまた消えていた。
 「・・・・あ」
そこで、あやかが突拍子もない声を上げた。
 「ん?どうした?」
アスタが訊くと、あやかは話し出した。
 「ド・・・ドッジボールで人数が多いのはひょっとして・・・」
そこまで言われてアスタも初めて気が付く。その先はアスタが受けて続けた。
 「・・・的が増えてやりやすいだけ・・・・!?」
二人は顔を見合わせた。同時に、会話を聞いていた他の生徒も凍りついた。
静寂。そして、爆発。
 「あはははは!やっと気が付いたの~!?」
英子は相変わらず高笑いしている。
 「やばい!固まるな!!的にされるだけだ!散れ!!」
アスタが必死で指示を出している。
ん?なんでそんなに頑張るのかって?そんなこともはやどうでもいいさ!!
しかし、アスタの目の端に見慣れないものが映った。
ソレは闘志、というよりも殺気をむき出しにして佇んでいた。大きさは140無いだろうか。
双子の姉をやられた弟、鳴滝史也だった。
 「お姉ちゃんの・・・敵!!!」
目を吊り上げた史也は、先ほどの攻撃でこちらの陣に転がっていたボールをとって、全力で英子に向かって投げた。
 「ハイハイ」
しかし、気力で体力は埋められないようだ。英子は駄々っ子をあやすような顔でボールを取ると、カウンター並みの速さで投

げ返した。
 「きゃうっ!!」
史也は頭に一撃食らい、あっさりと退場になった。
 「ちょっとー!ひどすぎないー!?」
外野から桜子の声が響く。
 「ふーんだ、弱いのが悪いのよ。弱いのが。と、いうわけでその繋がりで弱いのをまたやっちゃいまーす♪」
英子は桜子に向けて舌を突き出し、またこちらに向き直ってゆっくりと振りかぶった。
その視線の先には、内気な少女、宮崎のどかがいた。
 「・・・・!」
のどかは恐怖で声も出ない、といった感じだった。
 「そ~れっ!!」
英子が、声に合わない剛速球を投げた。
のどかは硬く目を瞑った。・・・・やられる! 
 「うおおおおおおおっ!!!!」
のどかの真横から漢臭い絶叫が聞こえ、次の瞬間に目の前に影ができた。
うっすらと目を開けると、そこには比較的筋肉質な背中‐神楽坂明日太が顔だけ振り向いてにっこり笑っていた。
 「大丈夫だったか?本屋ちゃん」
その手にはちゃんとボールが握られていた。
かばってくれたのだった。自身の危険など省みずに。普通に考えたらのどかが消えても大して影響は無いのに。それなのに‐
 「は・・・はい・・・大丈夫です・・・・/////」
のどかは真っ赤になって答えた。幸い、前髪で顔色の変化は悟られなかったが。
 「じゃあこっちからもいくぜえーーーーーーっ!!!」
アスタは持てる限りの力でボールをブン投げた。しかし‐
 「あら・・・この程度?」
英子は楽々キャッチしていた。しかも、片手で。
 「・・・・馬鹿な!!!」
 「『脳筋のアスタ』の球が止められた・・・・!?」
アスタは裕也の頭を軽く叩いてから英子を凝視した。
 「・・・てめぇ・・・一体何者だ・・・!?」
すると英子はフッ、と笑って
 「ふふふ・・・そろそろ教えてあげても良いわね。私達こそは・・・」
メンバーは一斉に服を脱ぎ始めた。アスタに裕也は英子を目を見開いて見ていたし、のどかは男衆から真っ赤になって目を逸

らしていた。
しかし、制服を脱ぐと、そこには変わった体操着を身につけていた。
 「ドッジボール大会全国優勝!の麻帆良ドッジボール部『黒百合』!!」
レフリー少年がパン!とクラッカーを引いた。
 「・・・・・・・・」
中学生たちの反応がおかしい。
 「・・・ん?どうしたの?」
英子が問うと、
 「すげ・・・高校生にもなってドッジボール・・・?」
 「親泣くよな、そりゃ・・・」
 「大会って2,3チームしか出なかったんじゃ・・・?」
 「だ、黙りなさい!ビビ!しぃ!トライアングルアタックでいくわよ!!」
英子は真っ赤になって叫んだ。呼ばれた男二人がハイ!と返事をしていたが、中学生達は誰も聞いていない。
 「いいでしょう!どういった技かは存じませんがこの私、雪広あやかがお相手いたしましょう!」
あやかが威勢たっぷりに言い放つ。英子は半目でフン、と不敵に笑っていた。
片手にボールを握り締めて。
 「そぉれぇっ!!」
英子はあやかめがけてボールを放ってくる。
 「きゃぅっ・・・」
あやかは身を翻してよけるが、実際その必要はなかった。ボールはあやかの体よりも20cm近く離れたところを抜けていっ

た。
そう、言ってみれば、英子に当てる意思など毛頭無かったのである。
 「ハイッ!」
パスを受けた男子高校生が掛け声と共にボールを放り投げる。
 「ひゃぅっ・・・」
あやかはよけるが、これもフェイク。
 「はい、アウト♪」
その高校生は、ただ飛んできたボールを掌で押し返しただけである。それだけである。
しかし、それでも、何度も避けようとしたために平衡感覚を狂わせれていたあやかを仕留めるのには十分だった。
あやかは「へぷっ!?」という滑稽な声を出して果てた。
圧倒的不利。そんなことはさすがのアスタにも分かっていた。始まってからまだ一人も倒せていないのに、もうこちらは残り

11人‐最悪だった。

アスタが焦っている間にも状況は着々と悪化していった。あやかがやられたのと全く同じ方法で葉加瀬、村上の二人がやられ

たのだ。残り‐9人。
 「さぁて、そろそろ本命・神楽坂明日太クンでも頂きますかぁ・・・♪」
英子はにやりと笑ってアスタに向けてボールを投げた。その笑顔とは裏腹に相当な力で。
 「これがどうしたぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!」
しかし、中学生のエースも伊達ではない。英子の球を受け止めると、ほとんどカウンターの要領で一人孤立していた高校生に

投げ返して仕留めた。
 「えぇっ!?」
これにはさすがに英子も驚いたようだった。しかし、すぐにいつもの冷笑にもどって気を引き締めた。相手をするわ・・もう

・・・手加減はなしでね!!!
英子はゆっくりとしたモーションで自分の陣地に転がっていたボールを取ると、さながら熊のようにギラギラと光る眼をアス

タに向けた。
 「・・・・ッ!」
アスタは一瞬怯む。当然、英子がこの隙を逃すはずもなかった。
 「あはははははっ!!」
次の英子のモーションは、初めて見た人間には何がなんだか分からなかっただろう。
英子はできるだけ高く飛び上がり‐相当な高さだが‐バレーボールのアタックの構えを空中で取った。
通常、このような場合は相手の位置を把握して左右に避けるのが適切である。しかし、今はそれさえもかなわなかった。アス

タには、英子の位置をつかむことさえもままならなかった。
太陽である。
英子は、自分の背のほうに太陽が来るようにして飛び上がったのである。光の方向の関係上、英子からはすべてが見え、アス

タには何も見えない。
 「ひっさ~つ!太陽拳ーーー!!!」
英子は年甲斐も無く大声で叫んだ(余談だが、この声は授業中の教室まで響き、英子は職員室で色々と絞られたようである)


見えないものを逃れる術は無い。ボールは凄まじい速さでアスタを捉え、仕留めた。
 「おふぉう!!??」
どてっぱらに強烈な一撃を叩き込まれ、アスタは動きが止まる。
 「そーれ、も~いっか~い!!!」
大○愛のごとき声で英子は、アスタに当たって跳ね返ってきたボールを再度叩き込んだ。
 「もっ」
あまりよろしくない側頭葉を抉り取られたアスタは一発でダウンした。残り‐8人。絶望的だった。
 「ちょっとー!二回も当てんのはズルいんとちゃうかー!!」
亜子が高校生たちに講義する。その体はアキラの影にしっかりと隠れていたが。
 「フン!勝てばいいのよ、勝てば!!それが私たち、『黒百合』のポリシーなのよ!」
英子は亜子に再度舌を突き出した。
アスタは外野でまたまた焦っていた。イカン。マジでイカン。このままでは皆‐
アスタはそこまで考えて思いとどまった。
 ソウイエバナンノタメニヤッテルンデシタッケ?
内野に向けて思い切り叫んだ。
 「おーい、そういえばこれって何のためにやってるんだったっけー!?」
内野はフリーズした。あまりに濃厚な試合に、そんなことはあまり考えていなかったためだ。
 「まず・・・校庭でケンカして・・・」(まき雄)
 「そしたら屋上でも会って・・・」(菲)
 「それで試合を・・・・・」(裕也)
何か。何かの要素が足りていない。
ふいに、その足りないものを、パックジュースを啜っていた夕が埋めてくれた。
 「あの・・・ひょっとしてネギ先生では・・・?」
 「・・・・・・え?」
一同がロボットのようにぎこちない動きで得点版のほうを向く。
そこには、グルグル巻きで眠っているネギと(あんまり喋らないので忘れてた・・・)、その横で寄り添って寝ている眼鏡の

主審がいた(さっきからホイッスルがしなかったのはこれか!)。

忘れてた。
完全に忘れてた。
だって試合が濃いんだもん。
一同は目に炎が宿っていた。
 「そうか・・・そういやそうだったな・・・・」(裕也)
 「あ・・・あの・・・みんな・・・?」(アキラ)
 「他のロリコンどもには・・・渡さない・・・!!」(まき雄)
 「う~む、あのメガネへの制裁も必要アルね・・・」(菲)
基本的に、戦う目的が具体的に定まった人間は強い。それが、大切なものであればなおさら。
 
 ハンゲキダ!!サツガイセヨ!!!

みんなの心は一つになっていた。・・・禍々しかったが。

 「え・・・えいっ!何よ!そんなんじゃ私たちには勝てないんだからね!!」
英子は自らの恐怖を取りはらう意味もこめて、全力でボールを投げた。それほど、今の中学生たちには嫌な威圧感があった。
 「ちょいとお姉さんよ・・・」
現在の中学生のエース・明石裕也は半歩前に出ると、かるがると片手でその球をおさえた。
 「え!?あ、うそっ!?」
 「そういや・・・・うちの担任のタマかかってたんだっけなぁ!!??」
いや、担任は一応高畑サンなんスけど。
 「ああああああぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」
ネギに対する不純な愛情は、通常の三倍・・・とまではいかないものの、確実に肉体に影響してきていた。
 「ぐ・・・・ほぁっ・・・・」
腹部に強烈な一撃を受けた男子生徒はその場に崩れ落ちた。
 「くっそ!もうこっちも本気だからな・・・・!」
相手の男子生徒の一人が振りかぶって投げようとしたとき、
 「きゃっ!」
という声を出してのどかがしゃがみこんだ。
 「ぐほっ・・・ストライクゾーンど真ん中・・・・!!」
その高校生はボールを放す前に鼻血を噴出して昏倒し、ボールが中学生のほうに転がってきた。
 「ほい、終わりアル」
菲がその球を拾い上げ、男子生徒のの頭の上に落下させた。
 「じゃあ、次はまき雄に頼んだアル!」
菲はまき雄に向けてボールをパスする。後ろの方で夕がそのことについて騒いでいるが気にしないようにする。
 「そーれっ!」
まき雄の球は速度も威力もなく、高校生は当然それをキャッチしようとする。だが、突然異変が起きた。
ボールがいきなり軌道を変えて落下したのだ。
 「なっ!?」
英子たちが狼狽する。しかし、ボールはまるで生き物のように高校生たちを次々と襲っていく。
よく見ると、まき雄の手には新体操のリボンが握られており、それによってボールを操っているのが分かった。
 「ちょっとぉ!!!それは反則でしょぉーーーー!!!!」
・・・もはやルールなんてものは彼らの中から消し飛んでいた。

 「終ーーー了ーーーー!!」
眼鏡のホイッスルが鳴り響いた。
                          中学生・8人、高校生・3人
結局、高校生側には最初の三人しか残らないことになり、中学生の圧勝に終わった。
 「ま・・・負けた・・・・!?」
 「イヤッハーーーーーー!!!」
中学生の全員が狂喜している。しかし、その輪の中で、唯一殺気にも似たオーラを放つ人間がいた。
ネギ・スプリングフィールドである。
もともと、決してプライドの低くない彼女にとって、今回の顛末は絶対に許せるものではなかった。グルグル巻きにされて、

挙句には男と一緒に寝‐
 モウ、マホウガバレルトカカンケイナイヤ。ヤッチャエ♪
彼女の頭の中で、何かがプツッと音を立てて切れた。
アスタはすぐにこの異変に気付いた。見れば、ネギが杖先を高校生のほうに向け、思いっきり呪文詠唱に入っている。これは

まずい。これは・・・・止めないと!!
 「ちょーーーーーっと待ったーーーーーーーーーーっ!!!」
アスタは全力でネギの杖の矛先に向かった。いざとなったら自分が盾になってでも・・・そういう考えだった。
 「ファイアーッ!!」
完全にイっちゃった目でネギが叫ぶ。と同時に杖から真っ白い閃光が放たれる。
 「だめだってーーーーーーーーー!!!!」
閃光は見事に、アスタと英子のところに命中した‐

霧が晴れる。一同、何が起こったかわからず息を呑んでいる。
そして霧の向こうから出てきたものは‐

アスタと英子。
英子は下着姿、アスタは全裸。
アスタが英子を押し倒しているような体勢。

気まずい沈黙が流れる。
 「へ・・・・・・変態ーーーーーーーーーーー!!!!!!!」
 「ち、違うって!事故だよ、事故!!?」
 「女押し倒しといて事故だの何だのあるかーーーーー!!!!!」
 「ギャーーーーーーッ!!!!!!」

ネギは終始知らぬ存ぜぬで通し、アスタの危惧した事態は起こらなかったが。

こうしてまた平和な日々が戻っていく。

アスタの反省文が、文房具屋の原稿用紙全部買い占めるほどの量にのぼった事を除いては。

6時間目、終


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