番外編:ANOTHER STORY
楓が『居なくなってしまったコト』を知った、その日の夜。
真名は病院を1人で去り、さっさと寮に戻る。
泣き疲れたのか、泣ききってしまったのか、真名の瞳は虚ろになっていて…。
刹那はそんな傷心中の真名を心配していた…。
…かえでのいないせかい。
今まで隣に居てくれる事が当たり前だった、昨日までの日常。
その日常は、もう帰ってこない。
その『現実』は、真名を更に苦しませた。
楓の居ない日常を過ごした事はなかった。
真名は楓より遅くうまれてきたから。
女子寮に着き、自室に戻り中に入ると、真名は着ていた上着を脱ぎ、そこら辺に投げ捨てると共にベッドにダイブし、布団の中に潜り込んだ。
…お布団は暖かかった。布団の暖かみせいで、あの時の楓の温もりが再びリフレインした。
それが真名の感情を外に押し出す要因になった。
「ひっく…、かえで…っ、かえでぇ…!!!」
隣の部屋の人にばれないよう、必死に声を押し殺して、真名は泣いた…。
時刻は夕方を過ぎた頃。
真名は夕陽のまぶしさに眼を覚ました。
泣いているうちにいつの間にか真名は眠ってしまったのだろう。
ベッドのシーツはは自身の涙で濡れていて、すこし気持ち悪い。
ゆっくりと身体を起こし、近くにあった手鏡を手に取り、自分の顔を鏡に映す。
「……ひどい顔だな」
半ば自虐的にそう呟いた。
「…風呂に入るか。」
なぜか分からないが、急に風呂に入りたくなった。
だが、大浴場に行く気にはなれなかったから、自室のシャワーを利用した。
脱衣所でゆっくりと服を脱いでいく。
すると、真名はある異変に気づいた。
…真名の胸の谷間あたりに、変なしるしが刻まれていた。
どこかで見たことがあるようなしるし。
どういうことなのか、真名には分からなかった。
足音が聞こえてくる。
「ただいま」
玄関のほうでドアの開く音と、ルームメイトである刹那の声がした。
「!!!!刹那!!」
真名は刹那ならこのしるしのコトを知っていると思い、玄関で靴を脱ぎかけている刹那の元に行った。
下着姿のまま刹那の元に行ったため、刹那も驚き気味だった。
しかし、真名の胸の谷間あたりにあるそのしるしを見て、少し真剣な顔つきになった。
「龍宮…、その谷間のしるし、どうしたんだ…?」
「分からないんだ…風呂に入ろうとして、服を脱いでる時に見つけて…。」
刹那はなにか知っているような感じだった。
真名はそれに気づき、刹那に問いただしてみた。
刹那は躊躇いながらも、真名に告げた。
「それは、最高の回復術を使用した証しなんだ…。相手のどんな傷や病を、完全に完治させる回復術…。術者にもしるしが残る。木乃香お嬢様は『魔力』を使って傷を治したりするが、其れとはまた違うんだ…その術は…。」
真剣に、だが深刻そうに刹那は説明する。
「其れとはまた違うとは…どう違うんだ?刹那…。」
刹那の言葉に疑問を持った真名が、刹那にそう聞いた。
やはり少し躊躇った後、覚悟を決めたようにうなずき、真名に話した。
「お嬢様は『魔力』を使って傷を治すんだが…、その術は、術者の『命』と引き換えに…相手を回復させる術なんだ…。」
『命』と、引き換えに…?
真名は谷間のしるしに視線を向けた。
そして、刹那の言葉が残響していく。
そして、真名は『あの時』最後に逢った楓を思い出す。
あの時、楓はワンピースを着ていた。
あの時、胸の谷間にしるしがあった…?
何度思い出しても、同じ記憶しかない。
確かに楓の胸の谷間にはしるしがあった。
…私を、楓は助けてくれたというのか…?
本当は、楓が助かるかもしれなかったのに、私に術を施してくれたというのか…?
唯一の証拠は、真名の谷間のしるし、そして、傷を負ったはずの体に傷がついていないこと。
真名の眼に涙が溢れてくる。
「…あの、馬鹿忍者…!なんで助けたんだ…!!私は戦場で多くの人間を殺してしまったから、死んでも後悔しないと…、思っていたのに…、お前はやる事があるんじゃないのか!!?誰が双子の面倒を見るんだ!!誰がバカレンジャーのバカブルーを勤めるんだ!!!なんで、なんで…!!!!」
次々に溢れだす涙。溢れだす感情。
刹那も涙を流していた。悔しくて、悲しくて。
真名の感情が、直に伝わってきて。
刹那は、真名を優しく抱いた。
刹那の薄い胸に押し付けられながら、真名は泣いた。
震える声で、刹那は真名に言った。
「龍宮…お前を助けた楓の意思を、無駄にするなよ…。楓はお前を心から愛していた。愛していたからこそ生きて欲しかった。そしてまたいつか、天国で再会しようと、強くなって、また手合わせ願おうと…、そう思って、お前を生かしたんじゃないのか…?」
刹那は、それだけ告げると、真名を力強くぎゅっと抱きしめた。
「生きろ…!生きて強くなって、それだけで楓は、きっと嬉しいんだと…私は思う…。だから…、だから…!!!」
刹那の暖かさ、強さが嬉しかった。
――そのとおりだな、刹那、楓。
――私は強くなるよ。強くなって、楓にまた逢いに行ってやる。
――次はお前より強くなる。そして戦って、楓に勝つんだ。
――楓を負かして、『拙者も修行が必要でござるなぁ』って言った時。
――その時にはこう言ってやるよ、楓…。
――次は、私が楓を護るから――
天国で待っていてくれ、楓。
地獄には行かないよう、今度は殺すんじゃなくて、救うから、沢山の人を。
真名は、刹那の胸の中、そう、決意した。
―――ありがとう。
…end
- みつけたーーーーーーーーーっ!(;ヮ;)君は人を泣かせるのが趣味なのか? -- ごんちゃん (2009-07-22 11:56:32)
- マジ泣けました!いままで読んだネギま小説の中で一番良かったです。 -- カゲシン (2009-10-31 13:54:24)
最終更新:2009年10月31日 13:54