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たとえ寂しくても。



「今日も疲れたでござるなぁ~」

のんきな声が大浴場に響く。『長瀬楓』は任務をこなした後、遅めのお湯を頂いていた。
今日こなした任務は、結構時間がかかってしまうものだった。
遅くなったため、大浴場には今、楓1人しかいない。
無駄にてこずらせてしまったため、帰りが遅くなり、こうして1人っきりでお風呂に入っているのだ。

少し熱めのお湯が、楓のスタイルの良い身体を包み込む。
身体の中心からジン…と温まってきて、今日一日の疲れを癒してくれる。
ドラム缶風呂も好きだが、このような広いお風呂も良い、楓はふとそんな事を考えていた。

「…広いでござるな…。」

そう呟くと、少しだけ楓は寂しい気持ちになってしまう。
1人っきりのお風呂は慣れている筈なのに…。



いつの日か、楓が裏山で修行しているところに、ネギが山に迷い込んで楓を見つけ、一緒に修行をしたことを思い出す。
一緒にお風呂にも入った。その時に、楓はネギの悩みを聞いて、アドバイスをだした覚えがある。
いつも狭いドラム缶風呂が、ネギと二人で入ってもっと狭く感じたその日。
なんだか、誰かの温かさを感じることが出来て、嬉しかったんだ。

でも、それはその日だけで、それからネギは一度も来てくれなかった――――。



「って、何を考えているでござるか、拙者は…。」
半ば自嘲気味にそう呟いた。
「確かに、拙者がいなくてもネギ坊主は見違えるほど強くなったでござる…。だから、悩みなどない筈…。来なくて当たり前でござろう…。」

その考察は少し外れているが、楓はそう思っていた。
ネギ坊主のことを考えるのはやめよう、そう思った瞬間。

「ふぅ、今日も疲れたな~。」

どこかで聞いた事のある声がする。
さっきまで頭の中で考えていた人物。
そして、考える事をやめようとおもっていた人物。

「ネギ坊主…」
「うわっ!!か、かかか楓さん!!?」
入浴中の一糸纏わぬ楓を見るなり、顔を真っ赤に染めて慌てふためくネギ。
そんな「まだ子供」のネギを見て、ほんの少し、笑みが零れてしまった。

「ネギ坊主。明日菜殿達と一緒では…」
「今日、職員会議が長引いてしまって、その後マスターの修行も受けたので、こんな時間になってしまったんです。」
先生も大変だなぁ、と楓は思う。

ネギはものすごく目のやり場に困っていた。そのせいで顔も真っ赤であり、あわあわしている。
「あぅ…というか、すみません楓さん!僕今すぐでますので―――」
「…待て、ネギ坊主。」

ネギの言葉を遮り、楓は言葉を放つ。お風呂に浸かりながら。
優しく微笑み、ネギに向けて。
「拙者も、1人で寂しいでござる。だから、ネギ坊主も入るでござるよ。」

かぽ~ん

「ふぁ~、気持ちいいですね…。でも、お湯が少し熱いですね…。」
「これくらいの熱さが疲れを取ってくれるでござるよ。それより、そんなに離れなくてもよいでござらぬか…?ほれ、もっとこっちに寄るでござる♪」
言って、ネギの首に腕を回し、無理やり自分のほうへ寄せる楓。
やはり子供といえど、ネギは恥ずかしいようだが、楓は天然なのか、それともわざとなのか、そのような素振りを見せていた。
楓のクラスNo.2の巨乳がネギの肩に当たっている。

(あっ、あぶぶ、む、胸が…)
「気にしたら負け♪でござるよ、ネギ坊主。」
「ぅえ!!?え、笑顔で心を読まないで下さい―――!!!///」
(あれ、前もこんなことなかったっけ…?楓さんとお風呂入って…)

「ネギ坊主、疲れは取れたでござるかな?」
「あ、はい、ばっちり取れました!!!」
今までの思考を停止、ばっちりと言わんばかりの元気な返事を返すネギ。
ん~、っと短い相槌の後、ネギの腕を引っ張った。そして…
「さて、髪と身体を洗うでござるよ♪」
にっこりとネギに言う。
「へぅ!!?だだだ大丈夫です楓さん!!!ぼぼ僕、1人で…!!!」
「嘘はダメでござるよネギ坊主。明日菜殿が言うには、1人じゃ洗えないのでござろう?汗もかいている。どれ、拙者が綺麗に洗うでござるよ、にんにん♪」
そういうと、いつの間に印を組んだのか、影分身を出していた。
「えぅ!?楓さん!!なんで分身を出すんですか!!?というか、満面の笑みでじりじりと近づくのは…!?っていつの間に後ろに!!?うぇっ、う、腕を掴まないでください――――!!!」
楓は満面の笑みを浮かべ、ネギの腕をがっちりとつかむ。
そして、洗い場に向かった。



「ネギ坊主。もしも目に泡が入ってくるのが怖ければ、ギュッと目をつぶるでござるよ。そうすれば痛みなど無いでござる。」
「は、はぃ…ありがとうございます、楓さん。」
当たり前のことを言って、ネギの頭を優しくごしごしと洗っていく楓。身体にはバスタオルをしっかりと巻いていた。
どこか楽しそうに見えた。

「最近の修行はどうでござるか、ネギ坊主。」
頭を洗いながらネギに質問する。
「あ、はい。大丈夫ですよ。相変わらず師匠は手厳しいですけど、でも、やっぱり強くなりたいので…。」
強くなりたい。その言葉に、ピクッと反応する楓。

「…ネギ坊主は」
「はい?」
「ネギ坊主は、なにゆえ強くなりたいでござるか?」

なんとなく聞いてみた。答えは分かっていた。きっと自分と同じ答え。

「それは、その…なんというんでしょうか…。僕にとって大切な人が危なくなったりしてしまったら、その人を全力で護りたいんです。いや、危ない目に遭わせたくもないんです。出来る事なら…危ない目に遭う前に、僕は、その障害を退けたいです。お父さんにも逢いたい。だから…」

ネギは、仲間思いすぎる。
それが原因で、その力が暴走してしまう事もあるであろう。

「ネギ坊主。時には誰かを頼る事も必要でござるよ。正直言えば、拙者はとても、寂しいでござるよ…。」
「え…?」
ネギはうっすら目を開けて、振り返った。
「拙者、皆と同じように、ネギ坊主を護りたいでござるよ。しかし、ネギ坊主ばかり強くなって、誰も頼らなくなってしまったら、皆、寂しいでござる。其れは拙者とて同じ事でござるよ?」
話しながら、ネギの頭をごしごし洗う楓。綺麗になったと思うところで頭にお湯をかけて、泡を洗い流した。
そして、優しい瞳をしたまま、続けた。

「強くなっても、仲間の事だけは忘れるな、でござる。というよりも拙者、今ネギ坊主とまたお風呂に入れて、嬉しいでござるからな。」
ふふ、と微笑んで言った。綺麗な笑顔だった。
「あぶぶぶっ!!か、楓さん!!!」
「おと、すまぬでござる。からかいすぎたようでござるな。」
顔を真っ赤に染めて、ネギが慌てる様を見て、ついもっとからかいたくなってしまう。
そして、楓が立ち上がろうとしたところで、(足元に石鹸があることに気づいてなかったらしく)そのまま石鹸を踏みつけてしまい、

ずべた――ん!!
「うわぁぁ―っ!!!」
足を滑らせて倒れてしまった。

「いたたたぁ…」
「す、すまぬでござるネギ坊主、大丈夫でござるか?」
ネギを倒れた拍子に押し倒してしまったらしく、楓がネギに覆い被さっている。

「ふぇっ…!?か、楓…さん…」
目の前には楓がいる。かなり近い距離。
流石の楓もマズイと思ったらしく、(あくまで女子中学生だから)
「す、すぐにどくでござる!!!」
と言って、どこうとしたものの、また足元に石鹸があり、踏みつけてしまい、

ずべた―――ん!!

また滑ってしまい、ネギの上に寝転がるようになって倒れてしまった。
そこで、楓の身体を包んでいたバスタオルが外れてしまい、一糸纏わぬ姿になった。
「あぶっ、あぶぶぶ…///」


ガラララッ
そしてそこになんともタイミング悪く、浴室のドアが開いた。

そこにいたのは明日菜と真名だった。
どうやら偶然会ったのだろう。そして、この状況を見て、顔を真っ赤に染めた。

「ネッ、ネギ…、あんた、楓ちゃんと…、なに…してんの…?」
「楓…、お前、ネギ先生と…、なに、を…」

「あっ、明日菜さん!!?」
「まっ、真名!!?」

お互いが顔を真っ赤にしたまま鉢合わせている。
明日菜は握りこぶしをいつの間にかわなわなと震わせていた。

「あんた…、楓ちゃんに…なにしてんのよ―――!!!このエロネギ―――!!!!」
「楓ッ…!!酷いぞ!!私というものがありながら――――!!!」

明日菜はネギを追いかけ始め、真名は泣きながら浴室から走り去っていった。

「ぅぇええん!!!どうしてこんなことに――!?明日菜さん怖いです!!僕何もしてませ―――ん!!!」
「真名!!誤解でござる!!!拙者なんにもしてないでござる―――!!!」
ネギは明日菜から必死で逃げて、楓は走って真名を追いかけ始めた。

『ただでさえ仕事でてこずってしまって疲れているのに…今日は厄日でござるかな――。』
真名を追いかけながらちょっとだけ愚痴ってしまうものの、

『でも…、今日はいつもと違う、温かい風呂だったでござる…』
すこしだけ、楽しかったという感情があった。







そして真名を捕まえた後、真名に貴様の身体を洗わせろと言われ、恥ずかしかったけど断れずに、洗われる度に無防備な身体が妙にくすぐったくて真名を思いっきり平手打ちしてしまって、もぅ完全にいじけている真名にあんみつを奢った上『あ~ん』して食べさせてあげた事は二人だけの内緒のお話☆

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最終更新:2009年08月22日 17:21