年金機構は納付率が高い団塊の世代のうち49年生まれが60歳に達し、受給者側に回ったことも悪化の原因に挙げる。未納率を世代別に見ると、25~29歳は52・9%と最も高く、最低の55~59歳(26・7%)の倍近い。若い世代を中心に年金制度への不信が高まっているのに加え、非正規雇用労働者が増え、定額保険料(10年度は月1万5100円)を払えない人が急増していることも影響している。
こうした事態を踏まえ、民主党は所得に応じた払いやすい保険料とし、国民年金の代わりに全額税による最低保障年金を創設するとしている。しかし依然具体性に欠け、国民の不信解消には結びついていない。同党は年金機構と国税庁を統合した歳入庁をつくり、徴税ノウハウを用いて未納を減らすとも言う。だが、徴税していない課税最低限より低い所得の人から保険料を集める能力があるのかどうかも未知数だ。
国民年金保険料の未納率は92年度の14・3%を底に年々上昇し、02年度に当時過去最悪の37・2%まで悪化した。年金機構の前身、旧社会保険庁は「納付率80%」の目標を設定し、一時は回復に向かったものの、07年度に年金記録問題が発覚、納付担当職員の6割を記録問題に充てたことが響き、毎年約2ポイントずつ低下している。
年金機構は当面の納付率目標を「現状維持」とする意向だが、年金記録問題を重視することが、制度の劣化を招くという皮肉な状況に陥っている。【鈴木直、山田夢留】
毎日新聞 2010年8月6日 東京朝刊
まずは納める仕組みである。国民年金保険料の納付率の低下に歯止めがかからない。2009年度の納付率は59・98%。過去最低を更新した。未納者は321万人に上る。
第一の原因は、保険料を納める経済的余裕のない人が増えていること。国民年金の加入者は非正規労働者や無職の人が7割を占める。不況と雇用状況の悪化が、ここにも影を落としている。
低所得者は納付の免除や猶予を受けることができる。日本年金機構は、こうした制度の中身を分かりやすく伝える工夫に欠ける。
厚生労働省は、年金記録問題の対応に追われて保険料の徴収対策が十分ではなかったことも、納付率低下の要因に挙げている。
そもそも、自らのずさんな記録管理が招いた結果である。年金記録問題の解決と納付率のアップ、両方に力を注ぐことが、厚労省と年金機構の責務である。
保険料を納めない人は、受け取る額も減る。未納者の増加がただちに年金財政を悪化させるわけではない-。こんな見方もある。
広い視野で考える必要がある。未納者は将来、無年金者や低年金者になるおそれがある。生活保護などの公的扶助が必要になり、社会保障全体のコストは膨らむ。納めている人との公平性からみても未納者を放置できない。
民主党の年金制度改革案の柱はすべての人に月額7万円を約束する「最低保障年金」である。保険料を納めなくても7万円をもらえる、という誤解があると聞く。
仮にこの案が実現しても、新制度への移行には数十年かかる。その間は、いまの制度での納付実績が、受けとる額を左右する。厚労省は丁寧な説明で、納付の必要性を周知することが大事だ。
受け取る仕組みにも穴が多い。なによりも、「消えた年金」をはじめ一連の年金記録問題の被害回復を急ぐことが肝心だ。年金行政の信頼回復が、納付率の低下を食い止める土台になる。
各地で高齢者が所在不明になっている問題で、親の死亡を隠して子どもが年金を不正受給していたり、行方知れずの親の年金を長期間家族が受け取っていた事例が相次いで発覚している。
厚労省が対策を検討している。住所地の確認、医療や介護の利用状況の照会など、市町村の協力も得て受給者の生存を確かめ、不正受給を防ぐ仕組みが要る。
最終更新:2010年08月28日 01:27