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裏切り - (2010/03/10 (水) 01:47:34) のソース
両者は去った者の姿を見届け、改めて間合いを取った。 一方は、全身余す所無く傷を負い、戦闘に支障が出る度合いだ。 とてもではないが万全の態勢は見込めないし、出血による肉体的な疲労、筋肉の損傷も相俟って 可動力は半分以下にまで落ち込んでいる。唯一変わらないのは、精神力だろうか。 もう一方も身体の損傷具合は引けをとっておらず、戦闘の直後というのも相乗して危険な状態だ。 便りのスピードもこうも肉体疲労が酷くては長持ちはしないだろう。気力のみで支えている時分、到底 無理を出来る身体ではない。勝機を見出すならば短期決戦に持ち込むしかないだろう。 (何故こんなことをせねばならんのだ……!今は争っている時分ではないのに) ただの快楽殺人者や悪党ならば組しやすい。 だが、目の前の男はそんな人間ではない気がする。 もっと話をすれば分かり合えるのではないか。そんな思いが、彼の胸中で渦巻いていたのだ。 それはもう叶わない。既に戦いに入っている以上、後は生きるか死ぬかの駆け引きだ。 「一つ……いいだろうか」 「何だ?」 だと言うのに、メタナイトはやはり諦められなかった。 「私が勝ったらその後は従ってもらおう。無論、逆も構わない」 「何を悠長なことを。殺さない方がどう考えても難しいだろう。戦いとはそういうものだ」 「そうだろうな。お前は好きにすればいい。だが、私はお前を殺しはしない」 「好きにするがいいさ。こちらも条件を出した身分、お前の条件も飲んでやろう。勝てればの話だがな」 約束は取り付けた。 おそらくだが、メタナイトはこの男がそういう人間だというのを直感で感じ取った。 武人としての誇りがあるが故に、その想いを貫き通す。そして一度決めたことを翻しはしないだろう。 だから、勝つことが出来ればこの男も――。 これ以上の会話は無用。 後は己の渾身をぶつけ合うのみ。 一瞬の油断も許されない。瞬き一つで死に至るような、そんな感覚。 呼吸が苦しいのは疲労やダメージの所為だけではないだろう。 周りの空気そのものが圧縮され、場に集約されていく。 無論比喩だ。そんな物理現象はこの状況で起こり得ない。 しかしそれは彼らの中では事実なのだ。両者共に同じ感覚を体感しているのだから、納得には足る。 爛と輝く瞳には、些かの気力の衰えも見られない。 双方が必殺を以って仕掛けるならば意識の揺らぎは致命的になる。 気が抜けないというレベルでは収まらない、有我の境地。 殺す殺さないの覚悟の違いがあれど、『勝つ』という意気込みはどちらも劣らない。 意志で差がつかないならば決する要因は肉体のスペックか、或いは運か。 想定される手は百を超える。だが、それすらを打ち消す力を共に有している以上、有効打は限られてくる。 一撃で殺傷するならば頭部への攻撃か。メタナイトの体構造を馬岱が知る由も無いために狙うのは其処しかない。 動きを封じるならば手足の腱への攻撃だろう。しかし、馬岱に対してメタナイトはリーチ差がありすぎる。 それでも、互いの狙いが的中するならば―― 閃。 影が奔る。 初動はメタナイトが早かった。 だが、それを馬岱が捉えられぬ道理は無い。 残った眼で彼の動きを筋一本すら見逃すまいと見続けた結果、それは可視の域に達した。 むしろ先手を譲ってやったくらいの意気込みだ。どの道間合いに入らねば刃は届かない。 動きを見破られているのはメタナイトも承知。最高速度を出せない以上、その想定は当然と言える。 ギラリと馬岱の得物が光る。それは切っ先が振るわれた証拠であり、対象の動きを完全に捕捉した証でもあった。 このまま行けばメタナイトは確実に鉄刃の餌食となることだろう。抉るように抜けた放物線は違うことなく延長上にある物体を薙ぎ払う。 否。そのような予定調和で終わる筈が無い。 鍬先がメタナイトの体表に到達する数十センチ前に、彼の身体は加速した。 何処から攻撃が来ようとも関係はない。穂先に刃が装着されている武器の場合、致命に足るのはその一点に限られる。 詰まる所その一点の間合いに集中し加速及び減速を行えば攻撃は避けられるのである。 馬岱が間合いを変える懼れはない。血は止まっているものの足の傷が癒えているわけではなく、動作の機敏はやや遅れる。 あったとしてもそれはメタナイトにとっては今のところ誤差の範囲に過ぎず、回避は可能だ。 現時点で馬岱とメタナイトの位置関係はちょうどメタナイトが鍬の刃先を潜り抜けた地点、つまり2m未満の距離しかない。 だがその刹那、馬岱はメタナイトに感心していた。 (臆すことなく向かってきたか…流石だな) 必殺の一撃と決意しながらもそれが躱されることは解っていた。 むしろ大振りの斬檄が命中するなど考えが甘すぎる。この程度の想定は素人でも出来るだろう。 それを両者が知らないというのは有り得ない。だからこそ、馬岱は感心したのだ。 想定から紡ぎ出される結論は、『二撃目の存在』だ。 馬岱の得物の構えは片手のみだ。当然だがそれを繰り出すときも変わりはしない。 故に残った手に何かあると考えるのが妥当。命の懸かった真剣勝負ならば、有り得ると断ずるに値する可能性。 事実、メタナイトはそれを予測していた。にも関わらず、敵中の懐に飛び込んでいったのだ。 当たらぬようにフェイントで安全圏に抜け、再度一撃を放つことも出来た。 しかしスタミナは限られている。いつまでも次の手に怯えているわけにはいかない。 いつか決さねばならないならば、早めに決断する方がいいのは明らかだ。 その決心をすることは難しい。ならばこそ、その領域に達せねば望むものは得られない。 馬岱の一撃が必殺を以って繰り出すならば、メタナイトはそれに対し必至のスピードで応える。 僅か一秒程度で為された駆け引きはいつも以上に彼らの精神を削っていく。 恐るべきは、それがまだ続いているということで。 メタナイトは包丁を構える。 狙うは四点、いや、二点。左右どちらかの手足の腱。 最低でも一つを奪ってしまえばそれで勝負は決する。相手の命を獲らないならばこれが一番の方法だ。 それでも、リーチ差の問題が生じてくる。メタナイトの体長はおおよそ40cm。人間に対してそれらの攻撃を 行おうとするならば空中に飛ぶ必要性も生じ、迎撃される虞も生じる。リスクを抱いて突破することは充分に可能だが、 メタナイトの方法では必ず追撃を回避せねばならない。要するに、カウンターを喰らっては勝利に繋がらないのである。 結論。最初の一撃は、片足を持っていく――! 残り1m未満。 経過時間にして瞬きの速度。 極限まで凝縮された体内の時間は、その一瞬総てを捉えることを可能とする。 そして、馬岱の左袖から何かが滑り落ちてきたのも見落としはしなかった。 それはメタナイトの得物と同じ、包丁であった。 しかし刃渡りはメタナイトのものの方が長い。足元の敵を狙うには些か厳しいものがあるだろう。 おまけに突き出された軸足は左。どうあっても攻撃は先に到達する。 が、唐突に、その脚が跳んだ。 視界からの消失。 いくら動体視力で動きを追っていると云えども眼球運動の速度は変化しないわけで、当然照準から外れることもある。 メタナイトは脚の軌道を辿り、視界を上に向ける。答はすぐに知れた。 脚だけではない。馬岱の身体そのものが、宙を舞っている。メタナイトの攻撃が到達する直前ならば、それは相手によって 行われた動作であることに他ならない。では、その理由は? 脚を狙ってくることが解った上での退避? しかしここまで大きな挙動をする必要があるだろうか。 軸足の自由が効かなかったために鍬を振った反動での身体の回転。 これはあまりにも捨て身過ぎる。どうぞ狙ってくれと言わんばかりの隙だらけだ。 無防備に見せかけて警戒を誘う作戦か。なら、それが失敗したならどうする。 正解はそのどれでもない。もっとアウトローな意志だった。 独楽のように回転しながらも瞬間に垣間見えた独眼は間違いなく殺意を持っていた。 体勢を変えながらもメタナイトは察知する。この男の攻撃は、まだ終わっていないということを。 とにかくもこの期を逃すわけにはいかない。これから来るであろう手は脅威だが、こちらにも有利な状況である。 飛行可能でない人間は空中で無防備になるため(避けることが出来ないから)そこを撃ち落すように撃破すれば、いとも容易く成るだろう。 (確か、武器の持ち手は左だったか?ならば……) 包丁を取り出したのは間違いなく左手だ。それに見間違いは無い。 鍬の柄が見えないことからおそらくどこかに放り投げたか、ともかく手には持っていない筈だ。 留意すべきは左手の包丁。其処から繰り出される攻撃。こちらから見て半時計回りのスピンをよく見極めれば見え ――違和感。 最も効率よく持ち手に回転を合わせるならば時計回りでなければならない。 そうでなければ力を最大限に入れられないからだ。まともに威力を持たせようと思えばやはり回転に乗せるやり方が正しい。 ならば相手のミス?そうであればどれほど僥倖な事か。真実は全く違う。 メタナイトが『殺さない』という選択をした以上、下手に胴体に突き刺しては致命傷になる。 斬りつけることに意味は無い。持久戦ではないのだから少々の出血など問題ですらない。現に相手は、体中に傷を負いながらも 動いているではないか。故に、どれだけ胴体や頭部ががら空きであっても攻撃は出来ない。 それを心の中で確認したとき、メタナイトは戦慄した。 馬岱はいつの間にか包丁を右手に持ち替えていた。 メタナイトはすぐさま防御に切り替える。こんなものは想定の範囲内だ。 彼が戦慄したのは、この程度の事実ではない。 刃物同士がかち合う。 ギィンと鈍い音を響かせ、両方の刃が震えた。 どちらの刃も欠けたか。やはり耐久性はよろしくない。あと二、三度本気で打ち合えば使い物にならなくなるだろう。 メタナイトの得意の連続切りはこの場合は難しい。剣と比べて切れ味もさほど良くない包丁でそんなことは出来ない。 第一あれは浅い傷を与える程度のものだ。深く切り込むならばその敏捷性は失われる。 しかし馬岱の身体はこのまま地面に倒れこむ。そこを上手く穿てば、勝利は見えるだろう。 だが、其処を狙うことは、相手に知られている。 これこそがメタナイトの戦慄の原因だった。 メタナイトは『殺さない』と明言した。 それを馬岱は正直に受け取り、相手が狙ってくるのは四肢だろうと判断した。 そこまではいい。誰もが想定するであろう事実だ。 彼が実行したのはその先。四肢を守るためにはどうすればいいか。 それは、致命的となる急所を防御に回せば、本命は狙われないという閃きだった。 (くっ……考えていても普通はやらんだろう!) 両足を庇うのに腰を持ってくる。 両腕を守るのに背中を向けてくる。 殴打での戦いではないのだから、そんなところを刺されでもしたら簡単に死んでしまう。 恐ろしいのは、その考えに至る因がメタナイトの発言に拠るものだからだ。 相手の発言が真だということは発言した本人しかわからない。博打だとしても余りにも危うすぎる賭け。 結果的に裏をかいた形になるのだろうが、こんなものは狂気の沙汰だ。 敵を疑うのではなく、信じることで活路を見出す。 真っ直ぐでありながらそれは明らかな歪みだった。 但しメタナイトに驚愕の暇は無い。 相手が背を地に着ける今が好機。その一瞬に関節に切り込みを入れれば腕の動きは封じられる。 確実に間に合う。間に合う、筈なのだが。 意外。馬岱は着地すると同時に寝そべった体勢のまま間髪入れずに中空に跳ね上がった。 まさしく全身の力を使っての跳躍か、背中に発条でもあるかのような動きだ。 掠った。が、それでも標的には達していない。馬岱の曲芸のような回避に刃が届かずにいた。 かろうじて肩の腱数センチ外して切り傷を入れるもののそれは大したダメージではない。 さらに半回転した馬岱はようやく四つん這いの状態で停止。すかさず立ち上がると右手を高々と上げた。 また何かのギミックか。メタナイトは攻め込むことに少し躊躇う。 たった一度の交錯だったが、彼には理解できた。 今の目の前の敵がどういう在り方を自分に課しているかを。 必死でありながら、必殺でありながら、彼はこの状況を愉しんでいた。 危機的状況において自分の限界を、可能性を試している。 奇抜な動きもその内なのだろう。そこがメタナイトとの決定的な違いだった。 どうした?かかってこい。 馬岱の眼は、間違いなくそう告げていた。 おそらく挑発の意図は無い。馬岱も今の遣り取りでメタナイトとは違うことを実感していた。 こいつは戦うに足る存在だ、と。自分を思う存分に散らせてくれる存在に他ならない。そう感じていた。 無論、云われるまでもない。 応えるようにメタナイトは弾け跳ぶ。 同時に、放り投げられていた鍬が上手い具合に馬岱の右手におさまった。 状況は最初と何ら変わりない。しかし重要だったのはお互いの覚悟を確かめられたということであって。 もはや焦りはない。為すべきことを一瞬の総てに乗せれば、自ずと結果は見えてくる。 そうして。二度目の交錯が始まった。 ◆◆◆ 「む……」 食べられる物なのか。 いや、それ以前に触れられる物なのか。 このような鮮やかな色彩では毒キノコにしか見えない。 食うべきではないのは当然だが、フワフワと少女を追走していた原理が気になる。 それ以上の問題は、このキノコが誰から放たれたかということだ。 キノコが動く気配はない。 「放置でいいか。それより雄山を探さねば……」 少女は担いでいくことにした。 置いていくわけにもいかず、無防備である以上害も無いだろうということでだ。 少々足取りを重くさせて、当ても無く探し回った。 いつになったら見つかるのやら、雄山の身体(デイバッグ)を見つけることは砂漠でオアシスを見つけるくらい難しいのではないか。 そんな考えが頭を過ぎった。 が、取り越し苦労だったようだ。 10分もせずに雄山の遺体は見つかった。 そして傍に置かれているデイバッグも。 「回収完了だな。しかし9個か。配分を考えて使わねば」 オーバーテクノロジーの産物か。 食べれば身体の傷が総て治癒するなど俄には信じがたかったが、今のスネークにとってはもはや瑣末な問題だった。 それより気になるのはこの少女。藤崎の証言が正しいならば―― 「……誰だ?」 遠くに人影が見える。 こちらに真っ直ぐに向かってきているわけではないようだが、隙が駄々漏れなところから只の一般人だろうと判断した。 待つのも面倒なのでスネークは自分からその影に近づいていった。 「スネーク!…よかった、見つからんかと思ったわ」 「藤崎か。……メタナイトと馬岱はどうした?」 「それが……――」 藤崎はスネークが背負っている少女の存在に気づいていた。 しかし、今重要なのはそちらではないと判断し自分の件を先に言うことにした。 「――てなわけやねんけど、スネークはどうする?このまま図書館に行くんか?」 藤崎は、一度は馬岱のことはメタナイトに預けてスネークと図書館に向かおうと思った。 しかしそれは彼の信条を考慮してみれば明らかに間違っている。 もしメタナイトが死んでしまったら?もし馬岱がそのまま去ってしまったら? せっかく首輪の手掛かりを見つけたというのにそれでは本末転倒だ。 それに手の届くところにいる仲間をみすみす見捨てるようなマネは出来ない。 そう考え、藤崎は言ったのだ。 「俺がそんな無責任な人間に見えるか?助けに行くぞ」 「当たり前や!んで、スネーク……急いでるところ悪いんやけど」 「ああ、この少女の事か。戦闘になるだろうからお前が担いでくれるか?」 「いやいやいや!そういう話やなくて!いきなり何言うとるねん!」 「……そうか、お前も年頃の男子である以上性欲を持て余すだろうな。しかし今はそういうことを言っている 場合ではない。生きるか死ぬかの瀬戸際に、女子の胸が大きかったからと言って何だというのだ」 「そういう見透かしたようで微妙に外れた発言は止めてくれんか……」 「確かに直前で降ろしたほうが良さそうだな。とにかく急ぐとしよう。話は走ってでも出来る。この少女の素性も含めて、な…」 「……ああ」 結局少女はスネークが運ぶことになった。 効率的にもその方がよろしいのは明らかだ。 「発見したときは疲労困憊だったからな。しばらく起きることはないだろう」 「起きて首絞められたら怖いんやけどな…」 「その心配は無い。逆に絞め落とせばいいだけだ」 「俺が出来ると思うんか?」 首絞め柔道CQC。 妙な言葉が頭を過る。 「逆に訊くが藤崎、お前は同年代の女子にやられるほどひ弱なのか?」 「んなわけあるかい!……いや、どうなんやろな。自信ないわ……」 「無理も無い。俺も信じがたい化物ばかり見てきたからな」 お互いの心中察して余りある。 目が覚めてからほんの一日しか経ってないというのに、色々な事を体験しすぎた。 「この娘が目覚めたら、どうする」 「決まっとるわ。今までしてきたことを謝らせるんや。それから……」 「それから?」 「……少なくとも俺は何もせえへん。けど、理由くらいは訊くわ。あんなことしたんも、何か理由があるはずやからな」 「そうか」 少女のやったことは罪になるかもしれない。 だが、誰がそれを責められるだろうか? 少なくともそこには小さな願いがあった筈だ。 理由無しに生きていけるほど人間は強くない。けれども、簡単に道を外すほどには弱くない。 再び影が見えてきた。 それが判ると、スネークは藤崎に言葉を引き渡す。 今度こそ味方を救うべく、彼は一目散に走り出した。 ◆◆◆ 「ハァッ……ハァ…!」 「くっ…――!!」 予想以上に長い時間が経過していた。 体感時間、そして実時間も含めて。 短期決戦と決め込んだつもりが交えること既に数十合。 両者共に攻めあぐねている状態だった。 正確には疲労困憊で決定打が全く与えられないという事なのだが。 一撃一撃を渾身で込めている以上、精神の消耗は常時より激しく、もはやまともに構えているのかも怪しい姿勢だ。 明滅する視界がもう限界だとシグナルを放っているようにも思えたが、メタナイトは止まれなかった。 もう殺されないようにするので精一杯。包丁も所々が欠けて、終には罅が入った。 動きすぎて傷口が開き、さらに新しい傷からの出血も相俟って身体に血が充分に巡らなくなっている。 極度の緊張と興奮で喉が渇く。しかし勝負の最中に水をかっ喰らうワケにはいかない。 元々暗いがさらに薄暗くなったようで、馬岱はそれを忌々しく思った。 ついぞ終わらない勝負に次第に苛々し始めていた。 もはや持久戦もクライマックス。 勝負がグダグダになれば大抵救いの手や余計な手を入れる奴が現れるのだが、元々疲れ気味だった所為でそのリミットが 早めに来てしまい助けに来る前に勝負が終わっちまうぞ、みたいな雰囲気を醸し出している。 だが終わらない。 両者の疲労が激しすぎる。 前述どおり肉体も精神も限界目前。 残っているのは『勝つ』という気迫だけだったのだがそれも、 (ああ、クソ……なんでこんなことやってるんだ、俺………) その意味すら、忘れかけていた。 (これで終わりだ…これで……!) そう思い続けて何度目だろうか。 「はぁ――、――」 戦いが好きなわけではなかった。 あんなわけの判らない化物どもの戦場に放り込まれるのは嫌だったし、早いとこ三国統一してしまえとも思ったこともあったかもしれない。 でも、ここに来て、殺し合いをしろと言われて。自分は此処で死ぬのだ、と薄々実感した。 だから諦めもついた。決心も出来た。どうせ長く生きられないのなら、自分の可能性を見つけようじゃないか。 そう思い、腕試しなんかを始めることにしたのだ。 ふいに、頭の中にイメージが映し出される。 懐かしい故郷の風景。 もう自分の常識では測れないような異次元大バトル。 そして、わけのわからん仲間達。 ある一日の出来事らしい。 きっと今の俺には関係のない話だろう。 彼はそう思い、 「――く、あああああああああああ!!!!」 理由のわからない怒りが全身に込み上げてくる。 自らへの不甲斐無さか、或いは。 そんな姿を見て、メタナイトは何も語らない。 勝負が始まった以上は、そのつもりだった。 「もう、止めにしないか?」 これ以上続けても辛いだけだ、と。 彼の目がそう告げていた。そう思ったのは、馬岱の思いに何処か違和感を感じたからだろう。 「……逃げる気か…!」 違う。逃げているのは誰だ。 共に戦おうと声を掛けられても、諦めて転化したのは誰だ。 見苦しく偽者の願いに固執して、自分を見失っていたのは誰なんだ。 自分が望んでいた、本当の願いは――。 「――ああ、そうか」 馬岱は鍬を構え、包丁を捨てる。 どの道これで最後だ。次はどちらも立てはしまい。 刃を重ねあったからよく分かる。そう、これで最後だ。 応えるようにメタナイトもボロボロになった包丁を構える。 握り締める手には血が滲む。滴る汗も気にならない。 最後に向かう立った一振り。幕切れはいつもあっけない。 (そうだ。俺は――) 帰りたかった。 自分が元いた場所に。 自分が、本当に帰るべき場所に。 撓るようにボロボロの袖がはためく。 鍛え続けた会心の一振り。得物が何であろうと、力量は個人に委ねられる。 目の前には一人の騎士が。自分のエゴを満たしてくれた相手に感謝する。 我侭はこれで終わり。唸るように腕を振るう。 それは、彼の渾身のラストショット。 それは虚しく空を切る。だがこれは予定調和だ。 迫る影を見送る。その目は、どこか澄み切っていて、 そうして、彼は終わりを告げる音を聞いた。 ◆◆◆ こうして真夜中の戦いは恙無く終了した。 顛末を見送るのは一部の者だけである。 尤も、内容は只の剣戟戦。興味を持つ者がいるかどうかも不思議だが。 メタナイトは地に倒れ伏している。 極度の緊張から解き放たれた開放感と、疲労感から立てないでいるのだろう。 しかし意識は次第にはっきりとしてきた。なんとか力をこめて立ち上がる。 傍には、地に伏せたままの馬岱がいた。 「……続けるか?」 「いや、止めておこう。もう立てそうに無いしな」 馬岱の右足はアキレス腱の部分がブツリと斬られていた。 喩え立てたとしても、まともに動くことは叶わないだろう。 「だがこんな足手纏いを生かしてなんになる?もう盾にもなれそうにないが」 「問題は無い。まあその内わかるさ……」 完全回復アイテムが10個もありさえすればその内の一つ使おうがどうと言った事はないだろう。 それに、この男が約束を破る心配は無い。メタナイトはそう確信していた。 「…そうだ、約束どおりこれは返そう。俺が持っていようと何の意味も無い」 そう言って馬岱はプレミアム首輪を放り投げた。 メタナイトはそれをキャッチすると、バッグに仕舞う。 遠くから声が聞こえる。 よく聞いた声だ。仲間を見捨てられないという気持ちは、やはり強いのだろう。 意地を張るのはこれで終わりだ。 これからは逃げるために戦うのでなく、生きるために戦う。 今からでも、遅くは無いだろう。 【D-4 草原/2日目・黎明】 【メタナイト@星のカービィ(メタナイトの逆襲)】 [状態]顔面打撲、全身に切り傷、火傷(小)、肉体疲労(極大)、精神疲労(大)、左肩に銃創(処置済み)、ゼロマスク (半分破壊) [装備]ヤンデレ妹の包丁(刃がボロボロ)@ヤンデレの妹に愛されて夜も眠れないCDシリーズ、ゼロの仮面(顔が入るサイズに改造、半分が損壊)@コードギアス [道具] プレミアム会員専用首輪(白) [思考・状況] 基本思考:参加者の救出及びゲームからの脱出 1:馬岱を治療する。 2:映画館に向かう。 3:プレミアム会員専用首輪をタケモトに見てもらう 4:殺し合いに反対する者を集める 5:脱出方法を確立する 6:触覚の男(呂布)との決着 [備考] ※E-2付近の川底で何か見たようです(気のせいという可能性もあります) ※フランドール、スネーク、藤崎、馬岱と情報交換をしました。また、東方project出展のキャラについてそれなりの情報を得ました ※藤崎、馬岱と情報交換をしました。 【馬岱@呂布の復讐】 [状態]:右目喪失 疲労(極大)、精神疲労(大) 腹部と足にポテトによる怪我 右腕に火傷 その他全身に傷 応急処置済 [装備]:鍬@吉幾三、三国志大戦カード(群雄SR馬超)@三国志大戦、包丁(刃がボロボロ)@現実 [道具]:基本支給品、プレミアム会員専用首輪(白) [思考・状況] 1:メタナイトと共に行動する。 2: これからは生きるために戦う。 3:もっと武器が欲しい 4:藤崎を信頼……? 5:弱い奴からは情報を聞きたい。 ※参加者の多くの名前を見た覚えがあることに気が付きました。ニコ動関連の知識の制限は実況者達等に比べて緩いようです。 ※藤崎のダイイングメッセージに関する考察を聞きました。 ※徐々に記憶制限が解けてきた様です ※スネーク、メタナイトと情報交換をしました。 ※マイリストに映画館を記録してあります。 【藤崎瑞希@現実】 [状態]さらなる決意、パンツレスラー、疲労(中)、脛に軽い刺し傷(鱗粉付き)、足に痺れ [装備]金属バット@現実 [道具]支給品一式*9(水一食分消費)、医療品一式、ショートカッター(残り0枚)@ドラえもん セーブに使って良い帽子@キャプテン翼 、射影機(07式フィルム:28/30)@零~zero~ 予備07式フィルム30枚、寝袋@現実 、写真(残り数枚)@心霊写真にドナルドらしきものが DMカードセット(スピード・ウォリアー、魔法の筒、ガーゴイル・パワード)@遊戯王シリーズ 普通のDMカード数枚@現実、折り畳み式自転車@現実、乾パン入り缶詰×3@現実 忍具セット(火薬玉、忘却玉)@忍道戒、不明支給品0~2 ねるねるね3種セット@ねるねるね、鏡@ドナルド、美希の私服 禁止エリア解除装置@オリジナル、リボン@FFシリーズ てゐの木槌@東方project、防弾チョッキ@現実 上海人形@東方project、変化の杖@ドラゴンクエスト [思考・状況] 基本思考:主催者の目論見を粉砕し跪かせる 1:メタナイトに会う。 2:映画館に向かう。 言葉には… 3:全てはチャンス 4:参加者を救う 5:受け継がれた意志を持って、闘う 6:十六夜咲夜、獏良了、桂言葉、ドナルドを警戒 7:馬岱を信頼……? ※ダイイングメッセージからビリーを殺したのがドナルドだと思っています。 ※馬岱から教唆をラーニングしました。 ※記憶が戻りかけています ※スネーク、メタナイトと情報交換をしました。 ※スピード・ウォリアーが再使用出来るのは8時間後。 ※ガーゴイル・パワードが再使用出来るのは10時間後。 【ゆっくり霊夢、ゆっくり魔理沙@ゆっくりしていってね】 [装備?] 偽起爆リモコン@オリジナル [道具] ※ゆっくり魔理沙の頭に偽起爆リモコンが刺さっています。命に別状はありません。 344 名前:裏切り 代理[sage] 投稿日:2010/03/09(火) 00:02:41 ID:zBVj5UgR 【ソリッド・スネーク@メタルギアソリッド】 【状態】肉体疲労(大)、精神疲労(小)、全身に擦り傷、切り傷、強い決意 【装備】コルトパイソン(1/6、予備弾14/36)@現実、TDNスーツ@ガチムチパンツレスリング、越前の軍服 愛犬ロボット「てつ」@日本郵販テレホンショッピング 【持物】やる夫の首輪、ハイポーション@ハイポーション作ってみた、馬鹿の世界地図@バカ日本地図、全世界のバカが考えた脳内ワールドマップ 咲夜のナイフ@東方project、さのすけ@さよなら絶望先生、基本医療品 A-10のマニュアル(英語)@現実?(おじいちゃんのエースコンバット6) 【雄山のデイバッグ】 支給品一式、桑の実×10@現実、至高のコッペパン×9@ニコニコRPG ニコニコ列車のダイヤ表、佐賀⇔ソウル間の往復航空チケット@塚☆モール、A 【思考・行動】 基本思考:情報を集める。また、首輪を専門の奴に見てもらう。 1:少女(桂言葉)に関しては…… 2:A-10を回収する 3:メタナイト達と映画館に向かう 3:自分から攻撃はしない。見つかった場合も出来れば攻撃したくない。 4:十六夜咲夜のような奴が居れば、仲間に誘った後、情報を聞き出した後倒す。 5:てつを使用し、偵察、囮に使う。 6:十六夜咲夜、獏良了、桂言葉、ドナルド、馬岱を警戒 7:これ以上仲間を死なせない [備考] ※馬鹿の日本地図の裏に何か書いてあります。 ※ミクが危険人物という情報を得ましたが、完璧に信用はしていません。 ※盗聴されている可能性に気付きました。また首輪に電波が送られているか何かがあると思っています。 ※電波を妨害するチャフグレネード等の武器を使えば、どうにかなると考察しています。 ※てゐからは千年以上生きている、知り合いの事を話してもらいました。 ※メタナイトを通じて、美鈴、咲夜、フランドールの関係について新たな情報を得ました。 ※藤崎、馬岱と情報交換をしました。 【桂言葉@SchoolDays】 [状態]:気絶中、肩に刺し傷、疲労(極大)、全身に痛み、空腹、絶望 全身に暴行の後、撹乱(極大)、ドナルドへの恐怖感 [装備]: [道具]: [思考・状況] 基本思考:誠君を生き返らせるために生き残る 1:????? ※アニメ最終話後からの参戦です。 ※第四回定時放送を聞き逃しました。