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ここはリフレーションに関連する海外の記事や論文を日本語に翻訳し紹介することを目的としています。リフレーションへの理解を深めるために様々な活動がなされており、すでにかなりの分量の翻訳があちこちに蓄積されています。これらを一カ所にまとめて置くことで、利用価値をさらに高めたいと思います。

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リフレーションに関係する記事を翻訳された方は自由に投稿して下さい。ただし、ページタイトルの付け方のルールは「著者名 タイトル 発行者 発行年」でお願いします。

ご案内

現在の日本のおかれている状況は1991年の金融引締めによる資産価格(地価・株価)の大幅な下落を第一段階とし、1997年の消費税増税を直接のトリガーとする金融危機の第二段階、そしてやっと回復してきた2008年のサブプライムローンからの金融危機の第三段階による断続的な負のショックとマクロ経済政策の失敗の結果だと思われます。

第二の大恐慌を救ったバーナンキのFRB

2008年のリーマンショックを契機とした金融危機は第二の大恐慌への入り口を大きく開けていました。しかし、 バーナンキのFRBが財務省や議会・大統領との協力を得て救ったことをドキュメンタリーで伝えたのがデイビッド・ウェッセル『バーナンキは正しかったか?』です。そして、理論的にそれを説明したのがプリンストン大学の清瀧教授やNY連銀のエガートソンらの論文・Negro, Eggertsson, Ferrero, and Kiyotaki "The Great Escape? A Quantitative Evaluation of the Fed's Non-Standard Policies" working paper 2010です。危機の際にFRBがとった非標準的政策は金融システムの機能不全を防ぎ、同時に経済がデフレへ落ち込むことを防いだことがわかります。

金融危機

まず、事態を正確に理解するためには金融危機一般についての理解を深めることが大切であると思います。金融論の第一人者であるフランクリン・アレンとダグラス・ゲールによる金融危機を理解するが金融危機の歴史を簡単に振り返るのによいでしょう。また、クルーグマンによる次世代の通貨危機は通貨危機の理論を金融危機に応用したモデルを提示しています。これはDSGE(動学確率的一般均衡モデル)を使った最近のマクロ経済学の流れとは違うものですが、DSGEが経済を理解する唯一の手段というわけでもないでしょう。

バーナンキ他「エージェンシーコスト、純資産、景気循環」AER 1989ではデットデフレーションの現代的解釈ともいえる、資産価格の低下がエージェンシーコストの存在のために加速的不況をもたらすことが示されています。1991年以降のバブル不況や1997年の日本での金融危機を理解する一助になると思います。

今後もこのような金融危機に関する論文や論説などを増やしていきたいと思います。

流動性の罠

短期名目金利がゼロになっている状態を「流動性の罠」といいます。この定義に従えば、今の日本は流動性の罠に陥っています。ここから脱却するためにはどのような政策が有効なのでしょうか。まず、日本が流動性の罠にあることを指摘したのはクルーグマン(1998)ですが、これをDSGEのニューケインジアンモデルで精緻化したのがエガートソンとウッドフォードです。エガートソン自身によるサーベイが、まず参考になるでしょう。流動性の罠には二つの大きな流れがあり、一つはエガートソン&ウッドフォードで、もう一つはベンハビブ他による流動性の罠の回避です。この論文の考え方は、流動性の罠と正常な状態の二つの均衡があるという複数均衡のモデルです。

財政政策と金融政策の協調

流動性の罠を抜け出すためには、金融政策だけで十分という主張と、財政政策との組み合わせで抜けるという主張があります。前者の場合は「時間的非整合性」が問題とされます。後者の場合には政策の協調が重要になります。後者の場合の政策の効果について論じたのがエガートソンの財政乗数と政策協調です。

為替介入によるリフレーションと時間整合性問題の回避

ズベンソン等によるJeanne and Svensson「流動性の罠からの脱却のための信認ある確約」AER 2007は中央銀行が自身のバランスシートの毀損を忌避する傾向に注目して、為替介入によるリフレーション(Svensson 「流動性の罠とデフレーションからの脱出:The Foolproof Way他」2003参照)が時間整合性の問題を回避できると論じています。

IMF、FRB、BOEなどの海外機関の発表資料

理論的な研究の蓄積は急務ですが、今そこにある危機には、今あるツールで対応するしかありません。実際に政策を担当している各国の中央銀行や、中央銀行に様々なアドバイスをするIMFから提示される資料は示唆に富んでいます。例えばイングランド銀行の解説!量的緩和はインフレ目標を達成するためのイングランド銀行の信念が表れているパンフレットです。IMFの公式見解ではないものの、ブランシャール他によるレポートマクロ経済政策の再考は各所で話題になったように、これまでの経済政策を振り返り、これからの経済政策がどのようなものであるべきかを表明したものになっています。一つの指針を与えてくれるでしょう。クリーブランド連銀によるゼロ金利近傍での金融政策のあり方も参考になるでしょう。


その他

  • 短期名目金利がゼロの状況においては国債と貨幣が完全な代替物になる点に着目して、国債発行を通じて財務省が金融政策を行えるという主張がAndy Harlessによる財務省の金融政策です。
  • 日本では岩本康志「デフレの罠」脱却のための財政金融政策のシナリオがデフレ脱却のための「利上げ+減税」を提案しています。「利上げ」という海外の論文には見られないオプションが特徴である。同様の主張を斎藤誠氏が「経済セミナー」2003年2月号で展開しています。
  • これまであちこちのブログで翻訳されてきた海外記事の蓄積は田中秀臣氏がまとめてくれているのでそちらを参照あれ。これらの中でも特に、himaginary氏、svnseeds氏、hicksian氏、okemos氏の活動には頭が下がります。そしてなにより山形氏の一連のクルーグマン論文の翻訳に感謝です。日本のブログ力:経済問題(翻訳篇)ベスト100+α
  • デフレから一気にハイパーインフレになるとご心配な向きはクルーグマンのブログスタグフレーションvsハイパーインフレーションのoptical_frog氏による訳またはhicksian氏による訳をご覧あれ。

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最終更新:2010年06月20日 01:15