誰事(戯言)
「出て来い」
左右田右衛門左衛門の一言、
近くにはその声に反応する者は居ない……はずだった。
しかし、
「……よく、気が付きましたね」
一人が少し離れた建物の影から出てき、
「ちょ、ちょっと、勝手に出て行くんじゃないわよ」
同じ建物の影から二人目も出てきた。
その答え。
それに対する左右田右衛門左衛門の返答は簡潔。
「不気付」
「気付かずに居たのは、精々虚刀流だけだろう」
まあ、気が付いていたかも知れないがな。
そう付け加えながらも当然の様に言う仮面の≪それ≫を見ながら、
戯言遣いはしっかりと確信した。
ああ、こいつは危険だ、と。
世界が違う怪物だ、と。
あの
匂宮出夢と同じ様に、
まるで御伽噺の様な存在だと、
確信した。
いや、確信させられた。
それ程の番外的な、
普通に生活を送っていれば、
会う筈の無い相手。
それが今、目の前に居ると。
否が応でも、確信させられた。
まさにそんな存在が目の前に居る状況を、
下手したら今から二秒後には死んでいるかも知れない状況を、
持っているバタフライナイフすら霞んで見え、
もし銃があっても勝負にならないだろう。
マシンガンならまだ判らないでもないが…………
何だか自分の事なのに傍から見ている様にまさに諦め切ったぼく。
しかし横に居るひたぎちゃんはそうでもない。
と言うか目の前の存在の危険さに気付いてもいない。
いや、気付いているが――――
「とりあえず聞くけど、殺し合いに乗ってる?」
確認が必要な相手かは、
さっきの会話を聞いて判っていたはずなのにも関わらず、
念の為の確認を行う。
無論、その相手の仮面の男が言う事は判り切っている。
「不判」
「なぜ聞くか判断出来ないな――名は?」
今にも溜息を付きそうな声で仮面の男は聞く。
さっきまでの会話を聞いていれば判り切った事を聞く相手の、
名前を聞く。
「私は
戦場ヶ原ひたぎ。
こっちの目が腐った感じのはいっくんよ」
状況さえ違えばまるで普通の会話であるが、
「で、あなたの名前は?」
状況が状況であるために普通に見えない。
と言うよりも恐らくここに居る時点では普通ではない。
無論、ぼくも含めての話。
「左右田右衛門左衛門」
「もろに偽名じゃない?」
瞬時に帰って来たそれを無視してカチャリと音が響く。
ぼくは何も言えない。
「覚える必要はない」
ボウガンに矢を番える音。
この展開は不味いと思いながらも。
この予感はかなり不味いと思いながらも。
「なぜならば、」
そして番えてやる事は一つ。
何と言えばいいかわからない。
「なぜならば」
狙いをすませて、
何を言えばいい、何を言えば止められる――――
「ここで死ぬからだ」
何を言えばいい、何を言えば止められる!
「さて、お前達は何と言って――」
死ぬのかな?そういう前に
「ちょっと待った」
とりあえず普通に止めた。
思わず、膝を着きそうなほど気が抜けたらしく、
ズルッと言う擬音が付きそうなほど一気に、
左右田右衛門左衛門の体が傾いた。
「こ、ここまで行って「待った」と?」
「情報交換といきませんか?」
左右田右衛門左衛門の発言を完全無視。
ぼく、戯言遣いは言葉による交渉を開始した。
ふっ、
「不解」
「解せず――そんなもの、軽く拷問でもすればいいと判っているだろう?」
軽く、当然の事の様に、必然の事に様に、自然の事の様に、超然の事の様に、
極アッサリとそう聞かれる。
寒気がするほど、
感情が篭っていない様にしか聞こえないその質問。
それに対する答えも自然。
「まあ、知らないでしょうけど、ぼくの嘘吐きは半端無いですよ?
そんなぼくから真実を吐かせる自信がありますか?」
「そんな事、簡単に吐かせて――」
「でも、確信は出来ないでしょう?
仮に、仮に今言った事が嘘である確立もありますが、逆に真実である確立もある。
その上で、その引きずり出した情報が間違いなく真実であると思えますか?
もしかしたらあなたを陥れる為の罠かも判りませんよ?」
即座にそう返す。
反応は上々、
「――――――――」
「――――――――」
黙る左右田右衛門左衛門。
このまま上手く行けば…………
「甘いな」
「一人――――忘れていないか、いっくん?」
言いながら何故か呆れた口調の左右田右衛門左衛門。
え?
「何を――――ッ!」
「………………」
ちょっと落ち込んでいる忘れられていたひたぎちゃん。
無意識に前に出ていた性で、
視界に入っていなかった戦場ヶ原ひたぎの存在を忘れる。
いくら忘れっぽくてもすぐ近くに居る人物は忘れるとは!
いろいろと末期かもしれない!
前には額を軽く抑えながらではあるが冷静な左右田右衛門左衛門、
後ろのひたぎちゃんからの視線に脂汗を垂れ流すぼく、
強烈な視線を送ってくるひたぎちゃん。
最初の頃の敵意もきつかったけどこの視線も痛い!何と無くヤバい!
「まあいい」
最初に声を出したのはやはり左右田右衛門左衛門。
まあ、脂汗を流しているぼくは話を続け難いだろうし、
交渉を完全にぼくに任せていたひたぎちゃんも無理。
結果的には順当に回って来たと言った感じ。
「二人も拷問していては時間が掛かる」
そう言う訳だから、情報を出せるだけ貰おうか?
そう二人に向かって言った左右田右衛門左衛門の声は、
まるで氷の様な冷たさと刃物の様な鋭さを秘めていた。
直訳するとツララであるが。
まったく…………背筋が凍る思いだよ、人間失格。
その後は、
いくら相手が主導権を握った会話であるが、
言葉での交渉と言う点で、
戯言遣いを名乗っているぼくが負けるはずも無く、
「そう言う訳なので協力してもらえませんか?」
宥め、流し、賺し、聞き、褒め、煮詰め、
完全にぼくのペースに持って行った交渉だったけど、
「不受」
「残念ながらそんな穴だらけの、
いや、穴しかないような計画に付き合うつもりは毛頭も無い」
通じなかった。
いや、途中まで通じたが最後まで通せなかったと言えるかも知れない。
「脱出するにしても首輪をどう外す?
脱出するにしても主催者をどう見付ける?
脱出するにしてもこれに積極的な人間をどう引き込む?」
否定し尽くされてしまった。
「詰まる所――」
「交渉決裂……ですか?」
答えは予想通りに、
当たって欲しくない予想通りになり、
その後の事は予想できた。
「ああ、それではさっきの続きだ」
情報も貰ったしな…………
そう続けながらずっと、交渉中でも決して話さずに持っていたボウガンの先を、
まずはひたぎちゃんに向けて、
「お前はなんと言って死ぬの」
かな?と最後まで言おうとしたみたいだけど、
シュッと言う音と共に上から黒い物体、
それが左右田右衛門左衛門の頭を狙い振って来て、
それを避ける為に動かざるおえず――――
結局の所、またも失敗した。
まあ、ぼく達としては嬉しい限りだけど。
「ちッ!」
しかし、普通なら避けれないであろう攻撃、
それを避けられたのは単に……
「不待?」
「後少しの所なのだが――待てぬか?」
多少なりとも予想出来ていた攻撃らしい。
まあ、ぼくの前であんまり死んで欲しくないからありがたいけど。
その相手は返答代わりにかぼく達の間を更に取らせる様に、
もう一つ何かを左右田右衛門左衛門の前の方に投げたようだ。
どうやらビルの上にでも居るのか?
周りを見ても見えないがとりあえず近くに居るのか?
少なくとも左右田右衛門左衛門は居場所に気付いている雰囲気である。
その返答を予想出来ていたが、
当たって欲しくなかった左右田右衛門左衛門だが、
一つ溜息を付いて川の方向に向かって歩く。
「命拾いしたな――いっくんに戦場ヶ原ひたぎよ。
しかし次は、次に会った時は…………」
「不逃」
「次に会った時は殺す」
そう言い残し、左右田右衛門左衛門は静かに消えて行った。
ぼくは地面に刺さった物体、黒い手裏剣を二個とも引き抜きながら、
「――――――いっくん?」
「判ってるよ。約束は守る」
一人目は失敗か…………でも命が残っただけ貰い物かな。
など今後の事を考えていた。
「可能な限り、努力はするさ」
「あら?「必ず生き残る」って言ったのはどこの誰だったかしら?」
あー……やっぱり騙しは効きそうに無いな……
本当になんて戯言――いや、傑作な展開なんだろうな人間失格?
そしてまだまだ戯言は続く。
「それより歩いたせいで右足が結構痛いんだけどどうしてくれるのよ」
「え…………」
いや、自分で移動しようって言ったじゃん!
それに今更言われても…………どうしよう?
【1日目 黎明 E-5から移動中】
【戯言遣い@戯言シリーズ】
[状態] 頭部に軽傷、頬に軽傷、身体の数ヶ所に打撲(行動にそれほどの影響なし)
[装備] バタフライナイフ@人間シリーズ(
零崎人識が所有していたナイフの一つ)
王刀『鋸』@刀語シリーズ 手裏剣×2@刀語シリーズ(手裏剣砲のやつ)
[道具]支給品一式、ランダム支給品(1~2)
[思考]
基本 ここから脱出する方法を探す。そのための協力者、情報を収集する。
1 協力者の第一候補として、まずアララギ君を探す。
2 戦闘に関しては、基本的に逃げの一手に徹したい。あるいはうまく丸めこんで、あわよくば仲間に引き入れる方向で。
3 ひたぎちゃんは、怪我が治るまでできる限りフォローする。
4 協力者探しは予想以上に厄介そうだと思った様子。
5 無理して動くべきじゃあ無かったと後悔中
【戦場ヶ原ひたぎ@物語シリーズ】
[状態] 右手甲負傷(物がうまく掴めない程度)、右足首捻挫(ある程度痛みだしています)
[装備]スタンガン@戯言シリーズ(
哀川潤が使用していた物)
[道具]支給品一式(懐中電灯の乾電池を除く)、ランダム支給品(1~2)
[思考]
基本 阿良々木くんと一緒に生きてここから出たい。
1 阿良々木くんに早く会いたい。
2 殺し合いには参加したくない。ただし阿良々木くんに害なす人間がいたら話は別。ていうか容赦しない。
3 生きて出るため、いっくんに協力する。
4 一回どこかで休みたい。
※二人とも王刀『鋸』をただの木刀だと思っています。
※
玖渚友が来ていることは、いーちゃんは可能性すら考えていません。
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左右田右衛門左衛門 |
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戦場ヶ原ひたぎ |
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戯言遣い |
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最終更新:2009年12月17日 21:42